※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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トーナメント表に不具合があったのでちょいと修正しました。申し訳ないです。やはり投稿直前の最終確認は大切ですね。ゲームのヤリすぎに注意。
追記(2023/01/25 00:21:45)


準々決勝第3試合・第4試合 〜外界かぶれの子供達〜

「とうとう準々決勝も大詰めだねっ!残った8人はこちら!さっきも紹介したと思うけど、改めて確認してみてねっ!」

 

【挿絵表示】

 

 

「しかもしかも、次なる戦いは……なななんと、博麗対決だー!これは盛り上がること間違いなしッ!」

 

【挿絵表示】

 

 

「共通の両親を持ち、共通の住まいに住み!互いの手の内を知り尽くしている間柄!!これまでよりも一層、バッチバチになること請け合い!それでは、意気込みをどうぞ!!」

 

 きた。俺が一番楽しみにしている戦いが始まる。巫月vs霊愛よりこの博麗対決の方がワクワクする。霊子の誕生と性格や、能力についての詳細の判明に伴い、霊愛も霊麗も霊魔もこれまでより自己研鑽に励んでいた。

 今こそ、その成果を発揮する時。それに霊魔は、霊麗よりも吸血鬼らしさが濃い子供。霊子と霊麗の中間くらいだと言えるだろう。

 人間らしさの濃い姉と、吸血鬼らしさの濃い弟。性別だけでなく、その特性までもが相反している。

 この戦いだけは、博麗神社のメンツの所で一緒に観戦しよう。

 

「えっと……まぁ、なんて言うんだろう。多分、私が勝つよ。宣言しとく。私は────博麗の巫女になる女なんだから。弟になんて、負けてらんないから」

 

「……僕は……全力を尽くす。霊愛お姉ちゃんには、勝てた事ないから……限界の限界まで出し尽くすよ。出し惜しみなんて……しないから」

 

 霊愛は、弟のことを舐めてはいないが、そこまで危険視もしていない。霊愛はここで勝ち上がれば、念願の巫月……もしくは神愛との対決である。だから霊愛にとってこの勝負はただの通過点に過ぎない。

 対して霊魔は、通過点どころか、1つのゴールになっている。先を見据える霊愛か、その時その時を必死に戦う霊魔が勝つか……正直、予想できない。

 

「霊愛。しっかり勝つのよ。霊魔。……超えなさい」

 

「お姉ちゃんも霊魔も頑張れ〜」

 

 霊夢も霊麗も、2人を応援している。俺も、何か声を掛けた方がいいだろうか。

 

「頑張れよ2人共〜、しっかり見てっかんな〜!」

 

 ただ、願望を言わせてもらうのなら────俺は、霊魔に勝ってほしいと思っている。

 霊愛が勝てば、また少し博麗の巫女となる自信をつけられるだろう。霊魔だって雑魚じゃないのだ、勝てたらそれなりには嬉しいはず。自信を持つのは良い事だ、決して否定はしない。

 しかし霊魔が勝てば、シガレットをはじめとする他の姉、兄、妹、弟からの彼の見方も変わるはず。霊魔は人見知りな部分がまだ治っておらず、兄弟や姉妹が集まる集会でもあまり発言していないそう。霊魔のような性格だと、霊子やリサのような、少し生意気さのある子供から舐められてしまう。それは兄として避けてほしいところ。だからこそここで、強大な強さを持つ姉を超えてほしいと思っている。

 

「おーっと2人共、いつになく真面目な顔だぞッ!これはワクワクが止まらなぁい!!」

 

「「それでは準々決勝第3試合、始めッ!!」」

 

 姉弟は同時に動き出す。霊魔は徒手空拳、霊愛はお祓い棒で襲い掛かるが、そのまま空中でガッチリ組み合う。霊愛は霊力で身体強化しているらしく、吸血鬼であるはずの霊魔と、単純なパワーの対決で互角に渡り合っている。

 霊魔から身を引いても霊愛はすかさず追い縋り、距離を一定に保っている。

 

「ッ……お姉ちゃん、接近戦がしたいのかな?」

 

「そーだね……!離れると、けん玉のスペカで完全に妨害してくるだろーしッ!」

 

「……」

 

(霊魔は遠距離戦が得意なはず。剣での攻撃だってまだまだ拙い。妖舞に比べればゴミレベルだろう。妖舞の剣は速度、霊魔の剣は正確さが持ち味だから比べるのは間違ってるかもしれないけどね────)

 

 霊愛が真面目な顔で、そして相手から目を離さず戦っている時は、大抵何か考え事をしている時だ。

 前に話を聞いた所によると、分析しているとか。霊夢が勘や本能に頼り、無意識に動くのに対して、霊愛はある程度の理性を働かせ戦い、動いている。

 

(問題は結界。何だっけ?ATフィールドだっけ。もしアレやられると『夢想天生』レベルじゃないと壊せないから、無駄に霊力を消耗しちゃう……!)

 

「「霊符『夢想封印』ッ!!」」

 

 2人は示し合わせたかのように夢想封印を同時に放った。霊魔とて霊夢と俺の子、夢想封印くらいはお手の物だ。

 2人の夢想封印は、鏡合わせのようにピッタリとぶつかり合って、完全に相殺されてしまう。

 直後、霊愛はお祓い棒の端へ持ち替えて、頭から股間までを垂直に一刀両断するように空間を斬る。パックリと楕円のスキマが開かれ、霊愛はそこに、更に夢想封印の弾幕を送り込んだ────。

 

「……ッ!」

 

 スキマの出口は霊魔の背後。しかし霊魔だって、伊達に霊愛の特訓相手をしていない。この戦法も、とっくの昔に知っている(・・・・・)のである。

 

「自己『スフェリカルバリア』!!」

 

「そう来ると思った!霊符『夢想封印 零』!!」

 

 球状の結界で自分の身を包み防御をする。しかしこれは、霊愛にとってお見通しの行動だったのだ。

 霊魔のあの結界は、極めて強力ではあるのだが、本人では庇いきれないくらいに大きな弱点がある。それは、移動できない事だ。

 まず前提として「円」や「球」とは最も安定する形状だとされている。何処かが歪んでもすぐ修正し安定性を保ちやすいからだ。だからこそ俺や巫月のスキマは正円なのである。

 そして安定性があるイコール強力。しかしながら強力で安定した強さであるが故に機動力が削がれ、さながら「自分から袋小路に追い詰められに行く」ようにも見えてしまう。

 これまで大抵の攻撃は防げてきたのでこの弱点も見えていなかったが、惜しむらくは、今回の相手は寝食を共にして、共に切磋琢磨してきた姉だという事である。

 これまでずっと無視できていた程の小さな弱点が致命的な弱点になってしまったのだった。

 

「はああああぁぁぁっっ…………!!」

 

 霊愛のあの技は、まず初撃に掌底しそこから夢想封印の弾幕を放つという技。「零」は「零距離」を意味し、霊愛がこのスペルを宣言した場合、回避や防御をするなら距離を取るのが必須である。

 しかし今回の場合だが、既に防御はされていて、それを崩す為にこの技が使われた。霊魔の結界は、呆気なく破壊されてしまった。

 技の終わる頃には霊魔は全身に弾幕を受け、遙か後方へ吹っ飛ばされていた。

 

「ふぅ。ざっとこんなもんかな」

 

「……やっぱり……霊愛お姉ちゃんの夢想封印、凄く強いや。霊力で身体を強化して受けても……吸血鬼の僕には嫌でも効いちゃうし……」

 

「負けを認めるんなら────」

 

「でも!……特訓した僕は……強くなったんだから!こんな簡単には負けない……っ!」

 

「……!」

 

「お母さんが教えてくれた。『基礎は大事』って。お父さんが教えてくれた。『知は力、知ってる事は力に変えられる』って。だから僕は見習ったんだ!

『知は力なり』を体現するお父さんを!今の僕は、どんな事でも戦いに活かしてみせる!!」

 

 けん玉を取り出す。それを見て、けん玉の弾幕が襲い掛かってくると感じた霊愛は距離を詰め、再度徒手空拳にて霊魔を攻撃する────!

 

「死合(しあ)え────『白面郎遊戯』ッ!!」

 

「はぁ……!?」

 

 けん玉の紐が解け、玉が中皿へと移動。そして、けん玉そのものの形がまるで粘土であるかのようにグニャリと変わり、けん玉っぽい形のレイピアへとその姿を変えた。

 

「な……け……けん玉の形が変わった!?」

 

「これは僕の『始解(しかい)』。もしコレが斬魄刀だったら鬼道(きどう)系の斬魄刀になるし────使い手は僕だから、普通レベルよりは強いと思うよ」

 

「……!?」

 

 霊魔が、霊魔が始解を使った。いや勿論、本物の始解などではなく、模しただけではあるのだが……。しかし、BLEACHは俺世代の漫画。興奮も一入だ。

 

「お父さん、たまに『喘げ、魔剣「妖魔雷霊剣」』みたいに、剣の名前を言う前に何か単語を言うの、分かる?」

 

「あ、あぁ……戦闘中に『喘げ』とか何考えてんの?とは思ってたけど……それが何?」

 

「僕、気になってさ。お父さんに聞いてみたんだ。それは『解号』、剣の能力を解放する為の言葉って教えてくれた。元ネタはBLEACHっていう漫画で、お父さんが子供の頃に大流行したんだって」

 

「……!」

 

「僕、今……BLEACHに大ハマりしてるよ」

 

「潰す!霊符『夢想封印』ッ!!」

 

「僕は……始解でどこまで戦えるかな」

 

「消え────」

 

 ブンッと一瞬だけ残像を残して霊魔の姿が消失。アレは瞬歩(しゅんぽ)か響転(ソニード)か飛廉脚(ひれんきゃく)か────恐らくは瞬歩に近いものだと思われるがそこは重要ではない。

 

「ハッ!!」

 

「ガッ…………」

 

 霊魔の剣先は、丸くなっているらしい。背後から霊愛を突き刺しても貫通せずそのまま霊愛を押して吹っ飛ばしてしまった。

 それにしてもあの移動速度、半端じゃない。俺の初期スペカの「雷速『クイック』」なんかよりも、ずっと速い。アレが霊魔の始解の副次効果なのか、速度が上がっただけでなく雷も纏っているようだ。

 

「イテテテ……何なのその剣、丸くて逆に痛い……」

 

「『霊魔はかなりチョコラテだよ』ってお父さんに言われた。かなり甘いヤツだ、って意味らしいよ。でも仕方ないよね。……卍解(ばんかい)じゃないもんね。別に、始解で本気を出す必要は無いんだから…………!!」

 

「まさか霊魔ッ……まだ上(・)があるっての……!?」

 

「錬金魔法、お父さんと恋夜に教えてもらったの。僕が魔法を使うには霊力を削らないといけないって条件があったけど……それに値する力を得たッ!!」

 

「!?」

 

 そもそもの話になってしまうのだが、霊魔は剣の攻撃や防御がメインだ。弾幕はそれほど鍛えてなどいない。そして先程、霊魔と霊愛の夢想封印は丁度ピッタリ相殺した。

 そしてその「霊魔と霊愛の夢想封印が相殺した」という事が、そもそもおかしい事なのである。

 本来ならば、霊魔の夢想封印が霊愛の夢想封印を相殺できるハズがないのだ。霊愛が一方的に霊魔の弾幕を打ち破り、そのまま霊魔を攻撃する、それが本来あるべき流れ。

 しかし現実はそうではなかった。

 理由は────あの夢想封印に、霊魔の持つ霊力の大半を注ぎ込んだ事により、一時的に弾幕の威力を上げていたからだ。

 

「いくよ…………」

 

「させない!!『幻想空想穴』ッ!!」

 

「────卍解『安穏遊戯』」

 

 纏っていた雷が消失する。逆立つような気配が、彼の帯電が消えた。卍解の発動直後、霊愛が霊魔の頭上に現れ、頭から潰そうと蹴りを放つも、まるで残像に触れたかのように攻撃は当たらず……。

 

「…………」

 

「い……いつの間に背後に……」

 

「卍解した僕の速さは……お兄ちゃんと同じだよ」

 

 妖舞の速さ、即ち幻想郷最速。霊愛はそれを悟り顔を青ざめさせて、できる限りの身体強化をする。目、つまり視力を重点的に強化した。

 卍解した霊魔と戦うには、霊愛にとっては極めて場所が悪い。

 まずここが地底である事。もし夜で満月ならば、その光を浴びる事で霊愛も吸血鬼化する。しかし、ここは地底。月光など入ってくるはずもない。

 そして、霊愛が吸血鬼化する条件とは「その時が満月であること」ではなく「満月の光を浴びる事」なので、地底である時点で霊愛のこの能力は封印をされているのと同義なのである。

 視力を重点的に強化しないと、霊愛とて…………。

 

「くっ……」

 

「雷の威力だって!!」

 

 剣を向けると、そこに雷がズドンと落ちる。更にそれを見せた上で霊愛に剣を向ける。霊愛はすぐに頭上に結界を張り、攻撃に備えるが。

 

「夢符『二重結界』!!……ああぁあああっっ!!」

 

 結界は簡単に破られ、早々に被弾してしまった。霊魔はここぞとばかりに畳み掛ける。雷を落として感電させ、彼女の周囲に雷を連続して落とす事で、行動範囲を制限したり。

 しかしそんな強力な力に代償が無いハズがない。

 

「ッ……」

 

 突然、霊魔の剣はけん玉に戻る。フラついた彼はその場に尻もちをついてしまった。

 

「り……霊魔……?」

 

「はぁ……はぁ…………。僕の創造魔法って、一時的なモノなんだよね…………。やっぱり僕は……剣よりも、けん玉が好き……だから…………。剣の、形状(かたち)を……維持する方に……魔力を使っちゃうの…………」

 

「……」

 

「それに、卍解してるったってさ……雷で、身体強化して、頑張って速く動いてるだけだから……ははっ、疲れるの、スゴく……早いん……だよね…………」

 

 けん玉を大事そうに仕舞う。まさか錬金魔法に、そんな使い方があったとは。俺は確かに錬金魔法の使い方は恋夜と一緒になって霊魔に教えた。しかし敢えて変化させた形を維持して、維持を辞める事で元の物体に戻すなんてのは、教えていない。

 あれは紛れもなく霊魔が開発、成長させた技術。なんて偉い子だ。なんて向上心のある子だ。霊愛に勝っても負けても、しっかり褒めてやらなくては。

 まさに「男子三日会わざれば刮目して見よ」だ。

 

「……あはは……揃いも揃ってフラッフラじゃん……。どーすんのよコレ……2人でリタイアしよっか?」

 

「降参するワケないってさ……そんなのお姉ちゃんがよく知ってるでしょ……?」

 

「ふふ…………それも、そーだね……ッ」

 

 震える足に鞭打って、2人共、立ち上がる。俺も霊夢も霊麗も、言葉を発さず固唾を飲んで見守る。霊子は……無感情かのように真顔で見ている。

 

「それに僕には……まだ手があるんだ…………!」

 

「!?」

 

「帰刃(レスレクシオン)『轟雷悪魔(トゥルエノ・デモニオ)』」

 

 再び全身に雷を纏う。だが先程とは様子が違う。ただ帯電しているのではなく、その雷そのものに、攻撃力があるかのような……。

 

「僕の帰刃は純粋な身体強化、雷による自己防御。吸血鬼としての能力を底上げしてる」

 

「それって……お父さんの……!」

 

「お父さんがお母さんやその他、皆のスペカを真似するように……僕もお父さんのスペカ、真似したよ」

 

 やられた。まさか俺の技術まで模倣されたとは。だが息子の成長は、喜ぶしかない。よもやここまで成長しているとは思わなかった。

 一体この場の誰が予想した?霊魔が身体強化系のスペカを真似して、霊愛と互角に渡り合うなんて。

 

「……トドメだ……!!」

 

「ッ、力を貸して、魅須丸ッ!!」

 

 来た。今度は霊愛が、いつもと違う力を使った。

 今回は魅須丸を神降ろしして魅須丸の能力を使うつもりのようである。

 

「玊符(しゅくふ)『不可測な陰陽玉』」

 

 魅須丸の弾幕のようなカラフルな陰陽玉の弾幕を放つ。だがその軌道は極めて不規則。というより、見ていて気持ち悪くなるような軌道だ。読みにくいどころか、まるで読めない。

 跳ねたりカーブしたり追尾したり。例えるなら、重心が偏っている球が転がるように、弾幕の軌道が読めないのだ。

 

「これは……」

 

 卍解のような速さは無いにせよ回避は楽そうだ。吸血鬼の身体能力なら、本来なら半妖に負けるはず無いのだが……相手は例外中の例外。次代の巫女だ。その強さは霊魔もよく知っているので、警戒だけは緩めないようだ。

 

「────どうして球や珠の偏が玉じゃなくて『王』なのか分かる?」

 

「どしたの、突然。…………知らないよ」

 

「────その昔、『たま』を表す漢字に点は無く、

『王(たま)』って書いてたの。王様の王ね。でも、王様の王と区別できないから、便宜上、見分けやすくする意味で点を付け始めた……。それが『玊(しゅく)』。魅須丸の力を借りているこの私だからこそのスペルカード……突破できるモンなら突破してみなッ!!」

 

「っ、動きが読めない……何これ…………何、これ……」

 

「もっと当たれ当たれ当たれええええっ!!そんな鎧なんて木っ端微塵に壊してやるんだからッ!!」

 

 魅須丸は、神としてはかなり格の高い神である。そんな神の力を借りた霊愛は、吸血鬼の力を底上げしているはずの霊魔を滅多打ちにする。

 

「う……卍解で……力、使い過ぎた…………」

 

「さっさと気絶しなよ!耐久力どーなってんのよ、吸血鬼ってのはさァ!!」

 

「……帰刃で耐久力も底上げしてるから……それで、何とか意識を保ってる……けど…………」

 

「?」

 

「痛いものは痛いんだッ!!」

 

 霊魔の妖力が跳ね上がる。霊魔、何かする気だ。俺には想像もつかないが……霊魔ならやってくれる。アイツは俺の想像を超える成長をしてくれている。今回もまた、やってくれるはずだ。

 

「刀剣解放第二階層(レスレクシオン・セグンダ・エターパ)『轟雷大悪魔(レランパーゴ・グラン・ディアブロ)』」

 

「……!?」

 

 霊魔が更に何かを解放した。だがおかしい。彼がアレを発動してから、弾幕が全く当たっていない。どう見ても当たっているのに、弾幕は消えず、彼の背後へ進んでいく。まるで、透過しているようだ。

 その手応えに霊愛も違和感を覚え、追求する。

 

「何よそれ……当たってんの!?当たってないの!?何なのよそれはッ!!」

 

「当たってるけど当たってない」

 

「ハァ!?」

 

「暖簾に腕押し。豆腐に鎹(かすがい)。……忘れた?吸血鬼は細分化して蝙蝠になれるけど……霧にも成れる(・・・・・・)って」

 

「……ッ……まさか!?」

 

「そう、当たる瞬間に(・・・・・・)、その部分だけ(・・・・・・)霧になった(・・・・・)。これは僕の能力じゃない。吸血鬼の特性を鍛えれば誰だって出来る。お母さんも、霊麗お姉ちゃんも、霊子も。弦月姫お姉ちゃんも、お父さんだってね。というかコレってお父さんから教えてもらったし」

 

「なん……ですって…………」

 

「僕はただの技術に僕用の名前をつけただけなの。だって……ウルキオラ…………カッコイイから……///」

 

 心理学で言うところの、防衛機制の1つである、

「同一視」というヤツだ。自分にない優れた能力や名声を持つ他者を真似して、自分を対象に近づけることで自分自身の価値を高めているとされている。

 霊魔の場合は、単にBLEACHの登場キャラであるウルキオラ・シファーに憧れて、という事だろう。俺もウルキオラが好きだ。というか彼にBLEACHやウルキオラを布教したのは俺だ。香霖堂に一冊だけ流れてきていたのを見た事で、当時のまだ幼い頃の感情を思い出したのだ。

 ……おっと。「布教」なんて、オタクの悪い癖だ。

 

「攻撃が自動で無効化するって意味では、ある意味それは夢想天生みたいなモンなのかな……」

 

「うん」

 

「でも残念、霊魔がソレを発動した所で、そっちは何も攻撃できないよね。それなら制限時間まで待つだけでいいよ。霊力の回復もできるしね」

 

「一体いつから────無敵状態では攻撃できないと(・・・・・・・・・・・・・)錯覚していた(・・・・・・)?」

 

「!?」

 

「なんてね。今の僕じゃ、この状態を維持するので精一杯。もう少ししたら、自動攻撃もできるようになるから……それまで待っててね」

 

 言い終わるのと同時に制限時間を迎える。霊愛はすかさず弾幕の発射を再開するが、霊魔は────。

 

「負けたら、意味が無い。奥の手────使うよ」

 

「今度こそ、そんなのさせないんだからっ!!妨害してやる!!霊符『夢想封印 夢幻』ッ!!」

 

 霊力をかなり酷使している。魅須丸の方の力は、一旦保留しておくのだろう。霊力を濃くして、更に弾幕の密度も濃くすることでトドメを刺すらしい。

 

「霊愛お姉ちゃんにも、見せてあげる。お母さんとお父さんにしか止められない……僕の力を」

 

「ハアアアァァァッッ!!させないっての!!」

 

 最終奥義はアレか。少し前に、俺と霊夢と霊魔の3人で、魔界の広場で特訓した事があった。神社で特訓すると、己の奥の手が姉、妹にバレると霊魔が懸念したからだ。そして単に危険が伴うので、俺も霊夢も、霊魔のこの特訓に関しては魔界で、そして両親同伴で行う事にしたのだ。とうとうアレにも、技名をつけたか。

 

「刀剣解放第三階層(レスレクシオン・トレス・エターパ)『狂悦至極(エスタロコ・ラ・メホル)ノ大悪魔(・グラン・ディアブロ)』」

 

 俺も霊夢も持っているあのスペカに、霊魔だけの名前をつけたらしい。どうも俺が思っていたよりもずっとBLEACHの破面(アランカル)編にハマってくれたらしい。俺の布教が上手くいったと見える。

 因みに、霊魔の帰刃(レスレクシオン)名はスペイン語だ。それは元ネタのBLEACHの中で虚(ホロウ)関連の語句はスペイン語だからである。

 特に十刃(エスパーダ)関連だとそれが顕著だろう。

 霊魔はこの為だけに紅魔館でシガレットと一緒にスペイン語の勉強をした。勿論、気になる語句だけなのだが、それでも十分大変な努力だと俺は思う。やはり霊魔の事はしっかり褒めてやらねば。

 

「……ガァアアアァアアあぁああぁあァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッッ!!!」

 

 この技を使った霊魔は理性を失う。そして霊力や電力、魔力、妖力を順番に(・・・)動力源として暴れ回る。これは、霊魔の深層にも所謂「狂気」が眠っていることから発現した特性である。

 俺と霊夢の「暴走『オーバードライブ』」に彼が思うカッコイイ技名を付け直しただけだが。

 動力源である霊力、電力、魔力、妖力を失えば、回復するまで眠りにつく。強制的に止められるのは現時点では俺、そして霊夢だけ。

 この状態を解放した霊魔と戦う事で霊愛の技術が試される。霊夢はそう思っている。

 

「ガルァッ!!」

 

「きゃっ……なんて速さ…………!ばんかい(・・・・)ってのより遅いけど、それでも速すぎる!」

 

 理性を失って暴れる事で、卍解のスマートさは、嘘のように消える。だが攻撃力は卍解以上だろう。速度を取るか攻撃を取るか。2つに1つ。二者択一なのである。

 そしてギリギリ見えるか見えないかという絶妙な速度に翻弄された霊愛は、遂に…………。

 

「ゲギャアアァアアアッッ!!!」

 

「ガッ…………がはっ……」

 

 その腹に霊魔の拳を受け……孔(あな)が空いてしまった。

 理性を失った代償か、これはまずいと思い時間を止めようとした、その時。

 

「やっぱ分身は弱いな〜」

 

 霊愛の暢気な声が遙か上の方から聞こえてきた。多少の怪我をしている様子はあるところを見るに、最初から分身に戦わせていたワケではないらしい。

 だが、そうすると、このハイスピードの戦闘中に分身と入れ替わった事になるが……。

 

「けど……ありがとう、霊魔。せぐんだえたーぱ(・・・・・・・・)を、もっと成長した状態で、もう1回発動させてたら……私が負けてた」

 

 霊愛の分身は多数の御札となり、ホーミング性を帯びて霊魔へ襲い掛かる。

 

「ガァアアアァァアアッ!!」

 

「あんたの敗因は2つ。理性を捨てたこと……そして未完成の状態で私に挑んだこと!『夢想天生』!!封印の御札にホーミング効果を与えるッッ!!!」

 

 霊魔は雄叫びを上げ、ホーミング御札を受けつつ霊愛へと向かっていった。それでも、許容量以上の封印の御札をその身に受けてしまったことにより、霊魔が動力源としていた4つの力は一時的に封印。

 暴走は鎮圧され、霊魔は気を失ってしまった。

 

「────……霊魔の電圧が……消えた…………?」

 

「……流石に、霊愛には勝てないようね」

 

「もっと……もっと鍛えてりゃ……きっと勝てたさ」

 

「霊愛と肩を並べるくらいにはなれてたかも……ね。これは良い収穫だわ……色んな意味でね」

 

 

 ◆

 

 

「壊れた会場は、いつも通り、神綺さんに修復して頂きました!ありがとうございますッ!」

 

「次なる戦いは……永遠亭に住まう2人の対決っ!!最強の娘、またまた登場だ〜っ!!」

 

【挿絵表示】

 

 

「そしてッ!言霊で無双、言霊の神!再度降臨!!では2人共、意気込みをどうぞ!!」

 

 巫月と神愛の対決が始まる。これもまた楽しみにしていた対戦カードだ。神愛の能力は運命に関する能力を持っていなければ抵抗できない。だから本来巫月にはどうしようもない相手なのだ。

 悲しいかな、能力の相性で言うなら巫月の敗北は確定事項だ。

 

「……私が、勝ってみせる!勝つ!」

 

「いいよー、胸を借りるつもりで掛かってきな♪」

 

 巫月は言った。「神愛の能力は研究済み」だと。だから今、神愛が「私が勝つ」と宣言しても、その言葉の通りにはならないのだそうだ。過去の巫月の言葉を信じるならそうなる。しかし……。

 

「「それでは準々決勝第4試合、始め!!」」

 

 巫月はにこにこして動かない。神愛はそんな姉の様子を見てから動き出す。

 

「私は被弾しない(・・・・・・・)。パンチもキックも(・・・・・・・・)、受けない(・・・・)。巫月お姉ちゃんが(・・・・・・・・)、攻撃を受ける(・・・・・・)。私が勝つ(・・・・)」

 

「おーすっごい理論武装の数々……用意周到かな」

 

「……」

 

「さて。これで神愛の勝利が確定したから、もう、神愛は何もしないで私の自滅を待つ……ってワケね。勝ちに来るなら一番確実な方法だと。うん、それは正解だと言わざるを得ないよね」

 

「……」

 

「でも神愛?私、前に言ったよね。神愛の能力への対処法を思い付いたってさ」

 

「!」

 

「見せてあげる。言霊が無に帰す程の力をね」

 

「っ……」

 

「なぁに、怖くはないよ。至極簡単な事なんだよ。言霊を打ち破るのに必要なものは────強さだけ。一閃『Mishap of Thunder』ッ!!」

 

 バカな。弾幕には被弾しないと宣言しているのにここで普通のスペカを使うだなんて。有り得ない。巫月が何を考えているのか分からない。

 魔法陣を広げたって、変わらないはずなのに……。

 

「BANG☆」

 

「え」

 

「〜♪」

 

「なん…………で……」

 

 巫月は魔法陣を広げ雷を落とした。それは確実に神愛を貫き、全身を感電させてしまい、神愛は地に膝をついてしまった。

 何が起きたのか分からず、混乱している様子だ。

 

「教えてあげる。この技はね、魔法陣を広げるのに伴って落とせる雷の太さ・強さ・速さが変わるの。今回はこのステージ全域を(・・・・・・・・・)一度に攻撃出来る太さ(・・・・・・・・・・)に設定したよ」

 

「それは……分かるッ…………で、でも…………!!」

 

「考えてみて。弾幕ごっこでは原則、不可能弾幕は認められてないよね。つまり普段使ってる弾幕は、頑張れば確実に回避が出来る弾幕……なんだよね」

 

 そこまで巫月が発言して、俺と神愛は殆ど同時にハッとした。そういう事かと。してやられた……と。

 

「ここまで言えば、神愛だったら分かるね?神愛が設定した『被弾しない』っていうのは、そもそも、戦闘中に『被弾するorしない』という選択肢が発生しているからこその『設定』なんだよ」

 

「……つまり。『選択肢が発生する状況』を潰せば、私が『被弾しない』と設定しても何の意味も無い。何故ならそもそも『被弾する』と『被弾しない』を選択できる状況ではないから────」

 

「せーいかーいっ♡」

 

 神愛を攻略する方法、何とそれは「彼女の発言の前提を無効化すること」だった。確かにこうすれば発言されても無意味だ、後は実力でカタがつく。

 

「……降参。私の負け」

 

 こうして神愛が敗北を認めたことで、第4試合の勝者は巫月となったのである。




前大会〜今大会の間に霊魔が覚えたこと一覧
・錬金魔法(霊力を削った上で魔力を行使する事)
・BLEACH(エスカルゴの影響)
・一部のスペイン語(BLEACHの影響)
・錬金魔法の応用(一時的に物質の形を変える事)
・「狂気」の扱い方
・自分の力の引き出し方


霊魔は本来、穏やかで静かな性格です。
強くはなりたいけれど、できるなら、日々を静かにけん玉で遊んで、のんびりと過ごしていたい。
そんな彼の斬魄刀(ではなく、けん玉の剣)の名は
「安穏遊戯」となりました。
仮の名前が「白面郎遊戯」です。意味の解説まではしませんが、彼に合っているワードだと思います。

そしてこの戦いの数日後、霊愛とエスカルゴ経由で魅須丸に伊弉諾物質を少し融通してもらいました。その伊弉諾物質を球体に削り取り、霊魔自身の魂をコピーしたことで、斬魄刀ならぬ斬魄玩具が完成。
けん玉の玉の部分が伊弉諾物質です。
戦闘にはこちらを使って、真の意味で始解と卍解を使えるようになりました。

BLEACHでは通常形態が刀で、始解や卍解で形状を変えますが、霊魔の「安穏遊戯」に限り通常形態がけん玉、始解でレイピア状の刺突武器、卍解で剣になります。
これにより今回の話で出た霊魔の卍解の弱点「創造魔法の維持が難しい」という弱点が消えました。
エスカルゴが与えたけん玉は戦闘に使わず、大切に保管するようになったようです。

卍解した霊魔の速度は、妖舞の居合と同程度です。
(BLEACHの中で言うと、瞬歩(しゅんぽ)に該当します。残念ながら霊魔のアレは、響転(ソニード)や飛廉脚(ひれんきゃく)ではないです)
霊魔の瞬歩と妖舞の居合のメリットとデメリットを軽くまとめてみました。

霊魔の瞬歩(のようなもの)
・速度はダントツ
・体力続く限り距離は不問
・直線軌道以外も可
・長く動ける代わりに疲れやすい

妖舞の居合
・速度はダントツ
・残り体力に関わらず超短距離のみ
・直線軌道のみ
・瞬間的なモノ故に体力がある限り回数不問

本作を読んでいて、新たに推しが増えたという経験はありますか?

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  • ある(ゲーム原作キャラ)
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