「と〜っても激しかった準決勝第1試合を終えて、とうとう準決勝も第2試合に突入っ!次はなんと、これまで決勝戦常連だったあの2人の戦いだっ!」
「次代の巫女、博麗霊愛!決勝戦では負け続きだが今回は宿敵とも言える姉と偶然にも同じブロックになってしまった!実質、これが決勝戦だと言っても過言ではないかもしれないわね!!」
「相手は『最強』、巫月・優曇華院・スカーレットという、ある意味、絶望的な組み合わせ!もはや、説明の仕様がないくらいの凄まじい戦績!果たしてどうなってしまうのかっ!?」
「そしてッ!!この戦いで勝った方が、決勝戦にて
『レモン・ヴァンパイア』こと博麗霊子とバトルを繰り広げる事になるわ!!」
「ここは、博麗対決になる方がトーナメントの流れとしては綺麗だけど……どうなるの〜〜ッ!?」
ふむ。やはり外部の者からはそう見えるらしい。だが俺達の……ファミリーからの見立ては少し違う。
霊愛が勝てば博麗対決、これはそうだ。まさに、その通りだろう。しかし巫月が勝った場合。実は、これはこれで中々に面白い組み合わせになる。
そう、突然変異対決だ。巫月も霊子も突然変異の子供なので、どちらが決勝に勝ち上がるとしても、貴重なデータが取れるし、激しい戦いになる。
これはもう確定事項というのが素晴らしい。ただ1つだけ惜しい所がある。霊子の魔力の残量だ。
虔魔との戦いで霊子の魔力はゴッソリ削られた。勿論、虔魔にして見せたのは枯渇したフリ。しかしそれはあくまで「完全に枯渇してない」だけであり
「削られまくったこと」自体は事実でしかない。
だから、全力の対決とは言えないのではないか、というのが1つの懸念点だ。
「な、皆はどっちが勝つと思う?」
「んー……分かんない。霊愛ちゃん、いつもと違って諦めたような顔してないんだよね」
「そうね、私もフランに同意。そろそろ霊愛ちゃんだって巫月ちゃんに勝ちたいでしょうし……何かしら最終手段を用意してきていても、おかしくないわ」
「私は巫月ちゃんだと思う。……そう判断した理由があるとすれば、単にこれまでの経歴ね。何よりも、あの子は突然変異の子……普通の予想じゃ、あの子の強さは決して測ることなど出来ないわ」
「「私達もパチュリー様に同意ですっ!」」
「……美鈴はどう思う?格闘家としての観点っつーか美鈴独自の視点で聞かせてほしいな」
「巫月ちゃん推しのエスカルゴさんには申し訳ない言い方になると思いますけれども……。全てにおいてバランスが取れているのは霊愛ちゃんです。しかもそこに、更に磨きが掛かっています。格闘漫画風に言えば『気が練り上げられている』と言いますか。この10日間、山篭りでもしていたかのような……」
「山篭りって」
「と、とにかく、それだけ全てにおいてバランスが取れてるんですよ……。何をしても対処されそうな、そんな気配がします」
「巫月は?」
「巫月ちゃんは……10日前と殆ど変わりありません。この10日をいつもと同じように過ごしていたのかも」
巫月は、日々が特訓というレベルに達している。日々特訓するのではない。日々が特訓なのである。だから、美鈴が「変わりない」と言うのであれば、きっと、その通りなのだろう。
そして姉妹は進行2人に促され意気込みを語る。
「今度こそ勝つから────とかいうベタなセリフは言わないよ。全力を尽くす。それで勝てばいいし、それで負けたなら仕方ない」
「諦めるの?」
「諦めじゃない。反省だよ」
「『仕方ない』は果たして『反省』なのかな?」
「全力を尽くした上なら、ね。手加減して負けたらそいつはただの怠慢。
少し前まで巫月と同等だったのに、近年になって巫月に負けまくった霊愛だからこそ説得力がある。悔しそうな顔こそすれど、それを引き摺らず、すぐ次の修行に打ち込む……俺もそんな霊愛を見てきて、口で言うほど悔しさを感じているのかと疑問に思う事があるにはあった。
俺も似たような哲学は持っているものの、霊愛も霊愛なりに思う所はあるんだろう。
「ふぅん?良いんじゃない?だけど、それなら私が勝つよ。ただ反省してそれを補うだけの特訓をしただけじゃあ────私には追い付けないね」
「お姉ちゃんに追い付く必要は無いよ」
「!」
「────只、壁を飛び超えればいい……ッ!!」
言い終えるなり、開始の合図も出されてないにも関わらず霊愛は巫月に突撃した。当然、進行2人も止めようとアナウンスするが、巫月も応戦し観客もワッと盛り上がりを見せるので、止めるのを諦め、そのまま流されてしまった。
「アハッ……霊愛ってば、せっかちだねぇ」
真一文字に振るわれるお祓い棒を、巫月は、雷で覆った足で受け止める。ヂリヂリと嫌な音を出して火花を出し、ガッチリ組み合っている。
霊愛は片手、巫月も片足────よく
「幻覚で何もかも誤魔化せるお姉ちゃんには、もう不意討ちしかないからさァッ……!!」
「急とはいえ、正面から突撃してもコンマ数秒しか稼げないと思うけどね」
「十分!お姉ちゃんからコンマ数秒稼げたんなら、勝率アップしたッてモンだよ!!オラァッ!!」
陰陽玉をぶつけ、連撃に次ぐ連撃を加えてやる。霊愛の中の「博麗の勘」が、霊愛に囁く。目の前の姉は幻覚などではなく────紛れもなく本物だと。
「ハアァァァッ!!霊符『夢想封印 夢幻』!!」
「見慣れてるよ♪」
「……だろーねっ!!」
夢想封印を囮に、巫月の背後に回る霊愛。しかし巫月は霊愛がそう来る事を読んでいた。今更、夢想封印が決め手になるはずもない、と。
「……およっ?」
そこには、弾幕を放つ霊愛の陰陽玉しか残ってはいなかった。霊愛本人は、巫月が背後を振り向くと読んで既に頭上にワープしており、振り向いた隙を狙い、ダブルスレッジハンマーで、攻撃を仕掛けてきていた。
「おっ」
流石の巫月も回避が遅れ、一撃、頭に食らった。
ズズンと重い音と共に、巫月の足元周辺の地面がクレーターのように凹む。
あの威力は、霊力で肉体を最大限強化していると仮定しても、妙な威力だ。子供の吸血鬼のような、いや、未熟な妖怪のような。
「いやぁ、重い攻撃だねぇ」
「っ……ピンピンしてんじゃん!!」
「そりゃ受け止めてるし、何より霊愛とは、誰より長く、沢山……たっっっくさん、戦ってきたからね!誤想『
「ッ……!!」
回避行動を見せない。それもそうだ。巫月のあのスペカは「弾幕が飛んできている」と回避する側に誤認させるもの。実際には弾幕など無いのだから、それを知っているなら回避行動を取るはずもない。
「……一瞬、ビビったよ!一瞬ね!!」
「そりゃ良かった♡」
ニッと笑って、霊愛のダブルスレッジハンマーを押し返した。霊愛は落ち着いて着地。勿論、空中を移動する間も巫月からは絶対に目を離さないようにしている。少しでも目を離してしまうと、その隙に幻覚の巫月を分身の代わりにと言わんばかりに用意されてしまうからだ。
「〜〜〜〜〜っ……にしてもパワー増してない?腕、軽く痺れてるんだけど……」
「そりゃ私も、博麗の巫女を継ぐ者としてある程度パワーアップくらいはしなくちゃ」
「そうじゃない。そうじゃないよ霊愛」
「!」
「明らかに、これまでの霊愛のレベルを超えてる。肉体を鍛えるにしたって、人間ベースの半妖である霊愛じゃ、肉体の練度には、どう足掻いても限度がある。
「鍛えに鍛えたからだよ」
「そうだね、それは間違いない。……問題は、何を、どう鍛えたのかだけど………………まっ、その辺は追々見抜いていけばいっか!!」
「そーそー、その方がお姉ちゃんらしいよ!」
「答え合わせはヨロシク!」
「はいはいっ!」
あの2人がイキイキした顔で戦うのなんて、親と兄弟姉妹を含めても、あの組み合わせだけだろう。霊愛は霊夢や俺と戦うのにもあんな顔はしないし、巫月だって鈴仙や俺と戦う時はあそこまでイキイキしていない気がする。
やはり姉妹というものは、こう、親に分からない妙な繋がりと言うべき何かがあるのかもしれない。
「狂砲『
手をハート型に組み、ピンクのレーザーを放つ。今回は貫通バージョンではない。敵を吹っ飛ばす、貫通力を持つレーザーだ。
「夢符『二重結界』!!」
「!!」
前は突破されてしまっていた霊愛の結界。しかしどうだろうか、今回は耐えてしまっている。霊愛の成長具合は凄まじいものがある。新技などがあまり無いから、霊魔に比べたら派手ではないが、基礎の能力が高められている。
まさに「基礎は大事」を体現している。
「はー……すっごいなぁ。まさか防がれるとは……。基礎を鍛えに鍛え抜いた感じかな……それにしたって凄いけど……ダメだなぁ、わかんないや。どうして、霊愛がそんなに急成長を遂げたか……教えてよ」
ピリついた空気が流れる。巫月も霊愛も弾幕など展開せず、様子を伺っている。というより、疑問に思った事を確かめたい。腹を探るつもりのようだ。
やがて霊愛は、くつくつと、まるで悪役のように喉を鳴らして笑い出した。
「……今となっちゃあ、昔の私を知ってんのってさ、お姉ちゃんだとか穹、弦月姫くらいのもんだよね」
「そうだね。今も昔も変わらない『上の4姉妹』。昔の事でも……忘れるワケないよ」
「それじゃあ分かるよね、お姉ちゃん。どうして、昔は
「────もしかして……霊愛!!」
「私の中の『吸血鬼』の部分を鍛えたんだよ……!」
巫月には申し訳ないのだが思わずニヤリと口元が弛んでしまった。そっちの意味で霊愛を鍛えたのは霊夢ではなくこの俺だ。
七つの大罪の大悪魔達が襲来してきたあの時に、俺とパチュリー、小悪魔は、上手い具合に和解したアスモデウスから西洋占星術、幾何学や天文などの秘術を授かった。
それを利用して、霊愛の「吸血鬼部分」の修行に役立てたのである。
ただでさえ歳を重ねる事により自然と吸血鬼化の回数も増え、黒眼に赤みがかっていたのに、今では完全に紅眼だ。
不知火麗葉が復活した頃……霊愛は赤ん坊だった。あの時は完全な黒眼だったから、麗葉が変身してる可能性なんかも考えたりしなくてはいけなかった。
「そういう事か……。でも解せないね、霊愛の吸血鬼部分を鍛えるには満月にしなくちゃいけないはず。満月以外からは影響受けないもんね。でも幻想郷の月齢は通常通り……まさか霊愛の特訓の為だけに外の世界に行った、なんて事は……」
「……」
「まさか?」
「そっ!月齢がメチャクチャになるから、幻想郷の皆には迷惑掛けられないってさ♪」
「えぇ……外の世界が混乱に陥るでしょ……」
「『5日連続満月とか月齢壊れりゅぅ〜』ってさ、お父さん腹抱えて大笑いしてたよ。あれは、もはや魔王に見えたね」
「うっわぁ、外の人達が可哀想……」
アレは実に楽しかった。2日連続の満月の時点で大騒ぎだったのに、3日、4日と続いたのだから。街ゆく人の声を聞くに、テレビはどの局もこの話題だったらしい。まぁ天文学的に考えておかしいし、仕方ない。
「けどそのお陰で、満月じゃなくてもほんの少しはパワー上がったよ!ハァアアアッ!!」
「!!」
霊力弾を更に放ち、巫月を攻撃する。しかしその攻撃は巫月には通じない。何年も何年も見てきた、見慣れた攻撃。当たるはずもない。そして、それを囮に迫ってくるのも巫月は読んでいた。しかし。
「────『
「ッ!?」
霊愛が祈祷すると、何やら純白の結界のような、球体のようなモノが霊愛を中心に現れて、そのまま巫月を飲み込む。しかしそれでも膨張は止まらず、観客席を、コロシアムをも飲み込む。
目を開けるとそこは真っ白な空間。コロシアムも観客席も何も見えない。そこに見えるのは霊愛と、巫月。そして霊夢、霊麗、霊魔、霊子。巫月以外は博麗家に属する面々である。
「何ここ……真っ白……」
「ここは私の世界。どこまでもどこまでも続いてる純白の世界。この世界に入れるのは、私が指定した
『敵』と……『霊力持ち』だけだよ」
「「「「「「!!」」」」」」
合点がいった。早苗はもう現人神ではなく完全な神だから含まれていないらしいが、とりあえず一応納得はできた。
「コレ、博麗大結界を模倣してんだよね。だから、どこまで行っても果てなんて無い。そして戻ろうと思えばすぐに戻れる」
「……!」
「こういう端のない結界は、物理的な攻撃で破壊の仕様がないからねェ。攻撃力だけ高くたって、何も意味が無い。そういう世界なんだよ、ここはさ」
「成程、厄介だねぇ。となると、この類の術を解く方法は主に3つかな。術者の気絶、もしくは死亡。そして根源となる力の枯渇、霊愛の場合は霊力か。最後に本人の意思────かな?」
「!」
「ふふっ、私が何年『エスカルゴの娘』やってると思ってんの?霊愛より歴、長いよ?エスカルゴって研究熱心だから色んな技、術を考案してるけどさ。中にはこういうパターンのもよくあるからねぇ」
ギリリと歯を食いしばる霊愛。初見の技だろうと巫月には関係ない。技自体は初見でも、パターンは既にどこかで見ている可能性が高いからだ。後は、過去に見てきた技や術を思い出して、その攻略法を導き出せば、自ずと、初見の技でも理論的に答えを叩き付ける事が可能だ。
「……何だろう。ちょっと安心したよ霊愛。見えなくなってきていた勝ち筋が……また、見えてきたから」
「は……?」
「吸血鬼部分を鍛えたからこそ、素の力で私に対抗できるようになった────そうだよね?」
「……?そうだけど?」
「残念だね。霊愛がもっと鍛えるべきだったのは……巫女としての能力だよ。『
「しまっ……」
術者の巫月には何のダメージも無い、浄い結界。それは確実に、着実に霊愛を芯まで侵食していく。
あまりに……あまりにも鮮やかに霊愛を無力化する巫月を見ていると、ふわっと血の匂いがした。酷く美味で、俺がよく口にする血。……霊夢だった。
霊夢の方を見ると、拳を強く握り過ぎて爪が深く食い込み、そこから血が流れているらしかった。
「霊夢……」
「……何なのよ」
「え?」
「人間として鍛えれば妖怪のあの子に歯が立たず、吸血鬼として鍛えればその部分そのものを封じられ行動不能にって……!それじゃあ霊愛は、どうやってあの子と戦えばいいのよ!!」
霊夢が声を荒らげてしまうのだって無理は無い。巫月、そして巫月の技術は────それ程までに完成されているという事の証明となっているのだから。
「吸血鬼化とは違って、切り替えも難しそうだね。霊愛は────巫女として鍛えるのが似合ってるよ。というか、そうでないと私と互角にすらなれない。身を以て感じてる通りだよ」
「っ……なんで、どーしてっ……!!どーして私は、追い付けないの……お姉ちゃんに……ッ!!」
「『方向性を間違った』……ってヤツだよ。ただ単に強くなりたいならそれでいいと思うけど、『私に』勝ちたいのなら、頑張る方向性を考えなくちゃね」
「〜〜〜〜〜〜ッ……折角新技も用意したのに……」
「新技をお披露目する戦いは確定で勝つと思った?そんな、漫画じゃあるまいし。というか、漫画さえお披露目回で確定で勝てるワケじゃないでしょー」
「私は『博麗の巫女』になるの!異変の解決屋とかどう考えても主人公のポジションじゃんッ!!私は主人公なの!主人公は、お披露目回では勝つの!!絶対に!!負けないんだからッ!!」
「────多分だけど、この幻想郷は、エスカルゴが来てから動き出した。虔魔の話を聞くに、世界毎に大きく違うもんね。世界を動かすのが主人公なら、この世界の主人公は十中八九エスカルゴ。きっと、霊夢さんでも霊愛でも、勿論、私でもないと思う」
「……!」
「霊愛に倣って、敗因を教えてあげよっか。霊愛の敗因は────外の『漫画』という文化に触れすぎたあまり、自分を主人公だと錯覚したこと。それさえ無ければ、きっと、もっとイイ勝負ができてたよ。幻覚の能力……使うまでもなかったね」
「待って!」
「次に期待してる。……
空気中の水分を水素と酸素に電気分解。それらを触媒に爆発を起こす。そこから生み出される水を、更に電気分解────永遠に続くかと思われた爆発の連鎖は、霊愛の気絶により結界が解除されるまで、ずっとずっと、息が苦しくなる程に続いた。
☆再び突き放される
ハーレム作りのパズルゲーム、「Helltake」の曲に乗せて一部ストーリー仕立てに仕上げてみました。めっさ編集頑張りました。
今の俺にはここいらが限界です。
https://youtu.be/JRoqKlhaVXI
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