ある日俺は、紅魔館の図書館にて、自分の書いたレポートを読み返しては思案に耽っていた。現在、俺が読んでいるのは、「陣風丸凩」を名乗り妖怪の山に潜入した後でパチュリーに提出した、アレだ。
「モシャスの訓練」について纏めたレポートだ。
「……うーん、分からねぇ。よしっ、ちょっと休憩!小悪魔!ヤろっ♡」
「はいっ♡ では失礼して、まずは……」
「少しは誰かに聞くとかしなさいよ。それで?何が分からないの?」
「あ、ごめんパチュリー、1回ヌイてからでいい?もうフェラ始めてもらっちゃってて……」
「んっ♡ んぅっ♡ はぷっ……ジュルルルッ♡」
「……さっさとイキなさい、この早漏男が」
「うっ、小悪魔、そのバキュームヤバいって……♡」
◆
「────それで?何が分からないのよ」
「あーうん、えっと、この部分なんだけどさ。俺、このレポート書いたときには深く考えてなかったんだけど、どう考えてもおかしい部分があって」
「ふぅん?」
自分で書いたにも関わらず「おかしい部分」とはそれの方がおかしな話である。しかし読み返すと、確かに「おかしい」部分があった。
そこには「通常時の自分よりも速く飛行する事ができた」と記載がある。
「女になった高揚感から、自分の速度を測りかねたとかじゃない?」
「そんな凡ミスする俺に見える?」
「……見えない、わね」
「これはどう考えてもおかしいんだよ。だって俺のモシャスは、
「そうね。確かに鴉天狗は、吸血鬼以上の速度での飛行が可能な唯一の種族。それなのに、肉体を女の鴉天狗に見えるよう作り替えただけで、身体機能は吸血鬼のままなのに速度は上がっている────。確かにこれは妙ね。矛盾しているわ」
「だよな。虹牙に頭を吹っ飛ばされたときだって、無事復活したんだ。それはつまり、変身前の体質、ないしは『不老不死』って体質を継続してる証拠に他ならないからだろ。……あと、速度は上がっててもパワーも落ちてたっぽい……?」
「再生力も落ちてるわよ」
「これに関しちゃあ意図的なモノ。鴉天狗のフリをしてたからね、再生とかはわざと遅延、というより止めてたはずなんだよ」
「えぇ……」
「パワーは特に制限掛けてなかったはずだ。なんせあの場は戦場……『火事場の馬鹿力』っつー言い訳も使えたワケだからさ」
「それにも限度はあると思うけどね」
「たはは……」
考えれば考えるほどおかしい。死んだ時には無事復活したのに、パワーは鴉天狗並に落ちて、速度は鴉天狗並に上がっていた。
これではまるで、不老不死という要素はあるが、それ以外は
「!……そういえばなんだけれど……。外の世界の、そのゲーム……『ドラゴンクエスト』だっけ?それに出てくる魔法が元ネタなのよね?」
「そうだよ。『モシャス』の名前は『模写する』が由来で、その由来の通り、この魔法を使う事により他人の能力を写し取って、写し取ったそのキャラ、モンスターと同一の能力を得たり姿を真似たりする事ができる魔法なんだ。俺が好きなモシャスを使うモンスターは、やっぱモシャスナイトが────」
「……どうしたの?いつもだったら止まらないはずのオタク特有の早口?とやらが止まったけれど」
「……今、俺、なんて言った?」
「え?モシャスの語源と……モシャスナイトがって、色々語ってたけど」
「モシャス……いやまさかそんな……まさかな……」
「1人でブツクサ言ってないで、聞かせなさいよ。何か、気付きを得たんでしょう?」
「えっと……モシャスは、決して変身する
「え?」
「ドラクエってさ、長期連載っつーかシリーズ物の作品だからさ。作品毎に効果とか内容も、少しずつ変わってくるんだけど……そこに穴があったのかも」
「……?何が言いたいのよ?ドラクエを知らない私に伝わるように教えてくれる?」
「モシャスは『能力までそっくりコピーするから、変身元のキャラクターしか使えない呪文などを使うことができる。ただし、職業特性や武器防具の特殊能力は変化しない』……主にこんな内容なんだ」
「!!……もしかしてあなた、あなた版のモシャスを使うことによって、
「んなバカな……肉体を『女』に変化させられる程に綿密に術式を組んだんだぞ?」
「でもあなた魔法使うの私より下手でしょ。
「チクチク言葉がエグい、もはやグサグサ言葉だ」
「?」
とはいえ、パチュリーにそう言われて天啓を得た気分だ。吸血鬼を基準にした場合、速度は上がり、パワーは落ちる。これは鴉天狗の特徴と合致する。プラシーボ効果で得られる効果なんてモノは、結局たかが知れてる。だがもし本当に鴉天狗に成ったと仮定すれば、この違和感の正体も説明できる。
「問題は、どうして鴉天狗の基準を真似できたか。気になるとすれば、そこかしらね」
「え?なんで?」
「『なんで?』って……そりゃそうでしょ?あなたは鴉天狗の身体検査でもしたの?そうでないなら何故あなたは鴉天狗の身体能力を細かく真似できたの?文が嫁だからってそこまで把握してないでしょ?」
「モシャスがそういう魔法だから?」
「そう言ってしまえば終わりだけど……。でも本当にそうなのかしら……何か引っ掛かるわね」
解決の糸口が見えたここにきて再度新たな問題が出た。どうして、吸血鬼の俺が鴉天狗の身体能力を高精度で再現できたのか────。
しかしパチュリーには悪いが、俺はこの答えを、既に知っている気がする。頭ではなく、身体で。
「……多分、これは『知ってるから』だ」
「
「俺は、紅魔館の誰より鴉天狗について詳しいって断言できる。博麗神社、白玉楼、永遠亭の誰より、俺の方が鴉天狗に詳しい。戦闘時はどうするのか?どう動き、どう判断し、どう対処してくるのかが、手に取るように分かる」
「……成程。何回も何回も妖怪の山の勢力と交戦したあなたのその
「だと思う。俺より速い速度で動くのも、慣れればどうって事は無い。奴らの攻撃を受けた回数だって数知れず。パワーの限界値も知ってるつもりだよ」
「その経験が魔法に反映されているのだとすれば、もしかして……」
「俺の『モシャス』は、更に成長させられる……!」
そこまで呟き、俺は更にヤバい事に気が付いた。この「モシャス」、元ネタことドラクエの中では、外見や能力をコピーする
その事実に気が付いた瞬間、身体が震え始めた。触れてはならない禁忌に触れてしまい、罰を恐れる人間のように……。
「どうしたの?……震えてるわよ」
「……ヤバい。お、俺……俺……へ、下手したら……多分へカーティアの次くらいに……強くなれる……かも、しれない……」
「え?……へカーティアってあのへカーティアよね?魔術の神……あなたがいつもボロボロにされる、あのへカーティアの事を言っているのよね?」
「あと……そ、それと、もっと下手したら……たっ、多分、霊夢の次くらいになれる……かも……」
「はっ?」
「俺……どう、しよ…………どうしよ、パチュリー……?俺、もしかしたら……夢……叶えられるかも……?」
「!?」
決して叶わないと心のどこかで諦めていた、夢。幻想郷の中で準最強となり霊夢を頂点に据え、俺がその下に立つ。そして霊夢の尻に敷かれる。これが俺の夢。
不老不死となり夢に挑戦する時間は無限にあると油断していた。なのにまさか、こんな所で、
「…………幻想郷で準最強に、なってやる。待ってろ霊夢……すぐにでも俺を尻の下に敷いてもらう……」
(こんな情けない決意表明するのが彼氏かぁ……)
(よく分かりませんが、頑張ってください♡)
ドラクエをやってる方ならば、彼の気付きを察せるかもしれません。とはいえここで書いた通り作品によって微妙に効果は異なるのでアレですが……。