※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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現代のノア

「────ごめんね茜ちゃん。私、これから大事な用事があるの。……菫子と……蓮子ちゃん、だっけ。あの子の事、お願いね」

 

「分かりました」

 

 菫子の遺体は涼しいお堂へ布団と共に寝かせて、泣きじゃくる蓮子と、涙を堪えようと我慢する茜を博麗神社に置いて、子供達に遅れて、霊夢は神社を出発する。目指すは紅魔館────。

 

 

 ◆

 

 

「エスカルゴファミリー、その他全員、揃ったな。よし、点呼とるぞ。巫月」

 

「はい!」

 

「霊愛」

 

「はいっ!」

 

「穹」

 

「はいっ!!」

 

「弦月姫」

 

「はい」

 

 子供達の点呼を取ると共に母親達が来ているのも確認する。茜に関しては、霊夢が来た時に、「博麗神社に置いてきた」と聞いているのでノーカンだ。

 

「時間が無い。結論から言うから落ち着いて聞け。そう言っても無理なのは分かってるから、一先ず、俺の話を聞いてくれ」

 

 現在、紅魔館には、俺のハーレムメンバーの嫁や子供、その他、家族が集結している。太陽が見えるようにと、敢えて真っ昼間の外で集会だ。

 

「結論から言う。地球が滅びそうになってるから、家族、幻想郷の皆で力を合わせて、地球を守ろう。以上だ」

 

 今頃、分身が世界中に散っていって、各テレビに訴え掛けている頃だろう。これで、ほんの少しでもへカーティアの力が回復してくれればいいのだが。焼け石に水でも、雀の涙ほどの効果でも、無いよりマシ程度ならばそれでいい。

 

「……えっ、と、エスカルゴさん。もしかしてその、

『地球を守ろう』というのは……?この異常な暑さを指しているのですか?」

 

「流石は文、話が早い」

 

「!?」

 

「掻い摘んで話をしよう。へカーティアと同郷の、ゼウスという神様が居た。そいつは太陽に追放され身を焦がされ続ける罰を受けるようになった。が、最近になって、太陽を手駒に加えてしまった」

 

「「「!?」」」

 

「太陽を手駒に加えたゼウスは、こう考えたんだ。

『太陽を地球にぶつけ、全て消し去ろう』……とな。無理だと思うだろう、だがそれが出来てしまうのがゼウスという神なんだ。先代の最高神────そのゼウスが、現在、敵に回ってしまっているんだ」

 

 日差しが少し強くなった。結界の影響だったか、ギリギリ初夏の気候と言える程だった外の気温は、夏日へ。そして今は真夏日へと向かいつつある。

 

「作戦がある。まず、チームを大きく分けて4つに分けよう。防御部隊、迎撃・攻撃部隊。補助部隊は2つ。そのうち迎撃・攻撃部隊、補助部隊①のみ、宇宙に行く。防御部隊、補助部隊②は地上担当だ」

 

「待ってよエスカルゴ、防御するったって……」

 

「霊夢ならできる。いいや、霊夢だけじゃあない。博麗神社の子供達、そして紫、藍も居るぜ」

 

「……なっ……私!?」

 

「霊夢は防御部隊だ。迎撃、攻撃は参加させない」

 

「何でよ!?私が参加しないでどうやって……」

 

「ギリシャの神を誰より知ってるのは俺だッ!本を読むだけじゃあない、実際にこの手で屠ってる!!奴らの考えも実際に体験し、見てきたんだッ!!」

 

「っ……」

 

「霊夢!霊夢や紫の本気の結界じゃねぇと、地上は守れねぇんじゃねぇのか!?そんな奴が攻撃なんかしちまったら、誰が地上を守れるってんだ!?」

 

「……そうだけど!でも!!」

 

「今回ばかりは譲らない!誰だろうと俺らの作戦に従ってもらう!でなければ地球諸共死ぬだけだ!!そんな事は断じて許さない!!」

 

「アンタの作戦には確実性はあるのッ!?アンタの自己満の作戦と心中なんて出来ない!!」

 

「少なくとも、霊夢が攻撃に参加するより確実性は間違いなく高い……とだけ、断言してやるよ」

 

「アンタ……!!」

 

「付け加えると────俺がこうして皆に話してるだけで、俺だけが考えた作戦じゃあないよ……とも、言っとくよ」

 

「ッ!」

 

「……話を続けるぞ」

 

 ジクジクと胸が痛む。だが仕方がない。今だけは霊夢の事すら突き放すしかない。ダメだ。霊夢には地上に居てもらわなくてはならない。

 この為に分身を飛ばしに飛ばして入念に下準備を済ませた。ここまでしたからには絶対に────。

 

「チルノ。お前は、地上が暑くなりすぎないように熱を吸収しまくるんだ。この後レティも合流する。やれるな?なんなら、幻想郷を真冬にしちまっても構わない。いや、もし叶うなら真冬どころか氷河期手前くらいにしてもいいんだぜ」

 

「分かった!バーニングチルノに変身していい?」

 

「そこはチルノに任せるよ。妹紅、慧音は自警団の皆と一緒に里に居る人間達、妖怪達を神子、または華扇と芳香の仙界に避難させて。純狐の仙界も、と思ったが純狐には妖精達のサポートを任せるから。神子には俺の分身が話してあるし避難誘導には後で命蓮寺の連中も参加する手筈になってる」

 

「分かった、人里は私や妹紅に任せろ」

 

「赤蛮奇もこっちの助っ人にしていいか?アイツの能力、何かと役に立つかもしれない」

 

「もちろん。────妖精達は純狐とピースに強化してもらったら、自分の住処を全力で守ってくれ。自然が失われたらまず皆が死ぬ。『1回休み』から復活できなくなるだけじゃない上に、そこは荒れた土地になってしまう。……分かるね?」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

 その他、地上部隊は早苗、諏訪子、神奈子様が、俺の脳内を通して指示を回してもらうようにした。ただし最後にこの勢力だけは俺が声を掛けなくてはならない。

 

「それと────妖怪の山の妖怪達。しかも天魔様御自ら来て下さった事……深く、深く感謝します」

 

「なぁに、この非常事態じゃからのぅ。さぁ、話せエスカルゴ。儂らに指示をくれ。各種天狗、河童、山童、野良神、山女郎……よりどりみどりだぞ?」

 

「ではまず、風を扱える鴉天狗から」

 

「む、という事は儂も入るな」

 

「……河童、河城にとりの指示に従い、妖怪の山及び魔法の森、無縁塚……三途の川まで続く区域を全力で冷やしてください。チルノとレティだけでは恐らくカバーしきれない箇所もある。そして下手をすれば全て燃えて灰と化しましょう。それは避けたい」

 

「うむ。して、天狗の里も避難所としては使えるがどうかな?」

 

「天狗の里は……天狗の子供達、山のその他の雑魚、いや弱小妖怪の避難所にしてください。その他妖怪なども、神子や華扇達の仙界に避難させる手筈にはなっていますが、妖怪達を深く恐れる人間は多い。各仙界への避難民は全て人間共を優先(・・・・・・)しています。ですので、天狗の里については人外の避難所として使わせて頂きたい」

 

「あい分かった」

 

「白狼、及び山伏、鼻高天狗は、人間の避難誘導の補助を願います。妹紅や慧音やばんきちゃん、あと小兎姫をはじめとする自警団のメンバーだけでは、絶対に人数が足りない。それと、人が仙界へ避難をするにあたり、必ず里の外に出る必要があります。周辺の雑魚妖怪が、ここぞとばかりに集まってくる可能性がある。天狗の皆、特に白狼天狗はそういう妖怪をブチのめすように。……やれるな、ヒビキ」

 

「任せろ兄貴」

 

 瞬間、背後の霧の湖の霧が、一気に晴れた。霧が蒸発する凄まじい熱が、幻想郷に降り注いできた。生半可な覚悟では、アレに対処などできようはずもないが……外の世界はどうなってるだろう。とうに、八千慧をへカーティアの元に送り込んだが……。

 

《こちらエスカルゴ。へカーティア、どう?》

 

《状況はすこぶる「最悪」。私、そろそろ「魔術の神」としての力を完全に失いそうよ……》

 

《そっ……それ程か……!?》

 

《ギリシャの民が殺され続けている。こうなれば、他のギリシャ神共も力を失うのに。そこまでして、私を弱体化させようとしてきてる……参ったわね》

 

《クソッ、根絶やしにするレベルで自国の民を殺すなんて……》

 

《神なんてそんなモンよ。「ノアの方舟」伝説が、形を変えて今まさに起きている────それだけの事なのよ》

 

《なら、全世界に訴えかけた俺が現代のノアかよ?ノア……俺を信じたヤツらは救われますよ〜ってか?ふざけやがって、クソが……》

 

《ふふ、そうかもね。それにしても八千慧の能力は便利ね。状況そのものは好転してないけど、幾分か対処が楽になったのは間違いないわよ》

 

《それなら良かったけどさ。……ピースは、そっちに行かせなくてよかったのか?》

 

《来させないで(・・・・・・)。……こんなに弱った私、ピースには見られたくない。せめてあの子の中では、ずっと、強い私(ご主人様)で在りたいから》

 

 悲痛な声でへカーティアが言う。全力を出しても全盛期の3分の1、まして主戦力である魔術すらも満足に扱えないとなれば、こうなるのも仕方がないというものだろう。

 今も尚こうして戦えているのが奇跡みたいなものだろうと思う。

 

《武甕槌命にギリシャ(そっち)に行ってもらう?冗談抜きで日本最強の雷神様だしさ》

 

《あの人には、地上のサポートをするようにって、私から言ってあるわ》

 

《マジか》

 

《私はギリシャ神が世界に散らないよう、せめて、人の犠牲がギリシャ、周辺諸国の範囲で留まるよう押さえとく。叶うなら制圧もしたい所よね。だからエスカルゴくん。あなたは、太陽────ゼウスの対応をお願い》

 

《……言われなくても、やってやんよ。任せろ》

 

《────ありがとう。あなたは歴代最高の器よ》

 

 プツリと通信が切れた。へカーティアも、本気で対処に追われているんだろう。生半可な攻撃では、決して勝てない連中を相手に戦っている。

 

「おおよそだが、部隊編成はこんな所だ。対応中、何かしらの不測の事態が起きれば、各々他の部隊と協力して補うように。部隊の間を移動する場合は、紫、茜、もしくは魔理沙、俺の誰かに言うように。スキマや瞬間移動魔法で移動するようにする」

 

 

 

迎撃・攻撃部隊

エスカルゴ、フランドール、レミリア、パチュリー

モルモー、霊子&サリエル、幻月、リサ、夢月

etc……

 

補助部隊(宇宙)

姫&真宵、お空&八咫烏、鈴仙&月の都の玉兎達

咲夜、レイチェル&アスモデウス、サグメ、輝夜

etc……

 

補助部隊(地上)

守矢神社、チルノ、巫月、霊麗、緋月、華扇&芳香

勁剛霊三者同盟、その他紅魔館勢、神子、ルーミア

妖怪の山勢力、美宵、赤蛮奇、慧音&妹紅、自警団

純狐&クラウンピース&その他妖精達、命蓮寺

魔理沙etc……

 

防御部隊

紫、霊夢、藍、茜、霊愛、霊魔、ここあ&シガー

小悪魔、永琳etc……

 

 

 

《カルちゃん、お母さんは!?》

 

《まさに今、連絡しようと思ってたよ。母さんは、姫、お空、鈴仙、その他月都の玉兎の能力の強化をしてくれ。それから、魔界の防衛は母さん達だけに任せる。アリス姉ちゃんも今、魔界に向かってる。途中でサラ、オレンジ、くるみ、エリーを回収する手筈になってる。多分だけど、くるみは俺の言う事じゃないと聞いてくれないが、アリス姉ちゃんなら無理矢理にでも捕縛できる。今の姉ちゃんは強え》

 

《……幽香は?》

 

《幽香と風見幽香は太陽の畑から動かないってさ。変に動かれるよりはマシだろう》

 

《地底は?》

 

《勇儀に指揮を任せてある。古明地姉妹や、お燐も補佐についてる》

 

《……姫ちゃんとお空ちゃん、鈴仙ちゃん、玉兎達の能力を強化だなんて、あなたまさか……》

 

《それしかないんだ》

 

《姫ちゃん……ね。成程、だから真宵ちゃんを……》

 

《ああ。この世に、無駄な事なんてないんだなと、つくづく思ったよ》

 

《それなら……冥界や地獄は?》

 

《冥界も紫さんの管轄にしてる。本人の希望だよ。幽々子さんにも任せてある上に……魂魄家や小春は、揃いも揃って近接攻撃向けだからね》

 

《ふふ……それもそうね》

 

《地獄は久侘歌(くーちゃん)を通じて映姫が指揮してる。敵が、ギリシャ神が侵入してこないとも限らないからね。他に質問は?》

 

《今の所は無いけれど……私が迎撃に行かなくても、大丈夫?》

 

《今の所は。この時点で最強の布陣だと思ってる》

 

《……勝って、皆で笑い合いましょう。もうこの際、こうなった原因なんてどうでもいいから、幻想郷、ううん、世界を……守りましょう》

 

《そだね。頑張ろ》

 

 この作戦は、誰も欠かせない。妖精すらも大事な戦力としてカウントしている。ここで名前を挙げていない知り合い達も当然、参加している。幻想郷に住まう1人1人が、大事な戦力だ。

 俺は大きく息を吸い、喉を枯らしながら叫ぶ。

 

 

「ふざけた神をブッ飛ばしてッ!」

「幻想郷、俺らの世界を守るッ!」

「俺達なら(・・)できるッ!そんな言葉を言うつもりは無い!!」

「これは俺達にしか(・・)できない!!」

「女も男もロリもショタも、なにも関係なんか無い!皆で協力しねえと世界ごと全てが死滅するんだ!!」

「そんなの許せる奴が居るかッ!?今この場所にッ!居るのかッ!?」

「ふざけた神をブッ飛ばしてッ!!外の世界の連中にッ!月の民に!!俺ら穢土に住まう者の本当の強さを見せ付けてやろうぜェッッッ!!!俺らは神すらも倒せるんだとッ!!世界中に見せ付けてやれッッ!!」

「幻想郷オォォォッ!!ファイッ!オオオオオオーーーーッッ!!!」

 

「「「「オオオォォオオオオオオオオオォォォーーッッ!!!」」」」

 

 遂に太陽とゼウス迎撃作戦が始まった────。

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