カルゴ「ッ……」
天魔「………」
互いに距離を取る2人。
天魔の一挙一動に警戒するエスカルゴに対し、天魔は微笑を浮かべている。
合図はまだか…!
この緊張…長くは味わいたくない。
合図が無い戦いならばとっくの昔に仕掛けてるというのに…早くしろクソ大天狗!!
そんなエスカルゴの心中を察したかのようなタイミングで、合図を出す大天狗。
大天狗「始めッッッ!!」
カルゴ「ハアァァッ!!」
合図と同時に踏み込むエスカルゴ。
フッ…
カルゴ「!?」
天魔を刀の間合いに捉えたところで、ふと天魔が消えてしまった。
天魔「ガラ空きじゃ」
ドスッ…メキメキッ…
カルゴ「ぐえぇ…っ…」
ドオォォォッ…
柄で脇腹をド突かれ、肋骨が悲鳴を上げる。
そしてそのままの勢いでエスカルゴは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
カルゴ「イテテテ…」
脇腹を抑えながら立ち上がる。
天魔「どうした、そんなものか?(手応えがまるで無いな…期待外れか?)」
カルゴ「んな訳…!『雷速断刀』!」
天魔「むっ…」
一時的にスピードを上げ、天魔に斬り掛かる。
キィィィン…
カルゴ「っ…!」
防がれた…?
天魔「ふん、その程度、見切れぬと思ったか?」
速すぎんだろ、マジでバケモンかよ…ッ!
メリッ…
カルゴ「!?」
振り返り、再び斬り掛かろうとした時、背中に衝撃が走った。
ドオォォォッ…
天魔に背中を蹴られ、顔から壁に叩きつけられた。
カルゴ「ゲホッ…」
振り返る間すらねぇのかよ…?
天魔「ふん、剣を使うまでも無いか」
そう言い放ち、剣を腰に差した鞘に収める。
────今だ。
カルゴ「雷符『Dark Side of the Full Moon』」
フッ……
天魔「む?」
大天狗「ぐああああ!!」
大天狗「なんだこれはァ!ぐああああ!!」
テメェらじゃねぇ!!部屋から出てろ!!
天魔「ぐっ…少々痛いな…」
天魔にも当たってんの!?反応うっす!!!
舐めやがって…!
視界奪ってる今がチャンスだ!
カルゴ「紅眼『吸血鬼の本質』」
闇に紛れ厨二病ポーズを決める。
フッ…
闇が晴れた。
天魔「う…少々眩しい…」
そりゃ、闇が晴れたら眩しく感じるよ。
天魔「今の攻撃、中々効いたぞ」
カルゴ「………」
嘘つけ、痛いで済むはずねぇだろ。
大天狗を見ろよ、全員気絶してるぞ。
そう。両脇に居た大天狗らは一人残らず気絶していた。つまり、場には天魔とエスカルゴの2人だけだった。
カルゴ「雷神『Thunder☆Fall』!」
大量の雷を発射する。
ドドドドドド…
天魔「おっと……ほっ……」
カルゴ「!?」
天魔は雷の弾幕すら避ける。
避けてる!?
そりゃそーか、文以上に速いんだもんな…。
そしてスペルの効果時間が終わる。
天魔「どうした?そんなものか?ならこちらから行くぞ!…我が剣技、その身で味わうが良い!」
カルゴ「!!」
警戒して少し後退し、構えるエスカルゴ。
そして、再び細身の刀を構える天魔。
2人の距離はおよそ12m程だろうか。
天魔「絶倒ノ太刀壱式『縮地~戒縛〜』」
宣言通り仕掛けてくる天魔。
ドシュッ
速い──!
天魔「はぁっ!」
踏み込みからの一撃。
キィィィン……
何とか受けられたものの、その一撃で雷刀は砕けてしまった。
何て速いんだ…しかも、一撃で砕けるなんて…。
すげー重い攻撃だったな…。
天魔「ふむ、何とか受けたか」
カルゴ「えぇ…」
天魔「ならもう少し力上げても良いな」
カルゴ「…!」
ダメだ、本気で行かなきゃ負ける。
男とか女とか、そんなの関係無い。
暴力で対抗してやる。
カルゴ「『雷神拳』!!」
“拳”だが、足にも雷を纏う。
天魔「む…?」
カルゴ「雷装備『翼竜の舞』」
バサァッ
カルゴ「はぁぁぁぁっ!!」
天魔「ふんっ、受けてやる」
出来るだけ高く飛び上がり、キックをお見舞いする。天魔は微笑を浮かべながら防御する。
ドカァァッ
カルゴ「ぐっ…!」
天魔「おっ…」
天魔は腕を胸の前でクロスさせて防御したが、エスカルゴのキックの威力に体勢を崩す。
カルゴ「おるぁ!!」
更に羽ばたき、押し続ける。
天魔「ぐっ…!」
バリィッ!
壁を突き破り外へ出る。
天魔「ふふっ…やるではないか」
カルゴ「くっそ…」
全然ダメージ入って無くね?
まぁ俺にも入ってねぇけどさ…。
天魔「もっと力出しても良さそうじゃな。…死ぬなよ?」ニヤリ
カルゴ「…!」
こ、殺される…(泣)
天魔「絶倒ノ太刀弍式『破滅~夢幻ノ連鎖~』」
カルゴ「え…」
瞬間移動?消えた?
天魔「ハァッ!」
ズババババッ…
カルゴ「ぐはっ…」
背中斬られた…!
しかも同じとこ…集中攻撃ってか…!?
天魔の怒涛の連続攻撃により、雷の翼も、背中から生えてる翼も切り落とされた上、背中はズタボロになり、地面に落ちかけるが、そこは吸血鬼。
カルゴ「ぐっ…ふんっ!」
ズズッ…バサァッ
瞬時に再生し、再び羽ばたく。
斬られた時に出た血液が流れズボンを濡らす。
天魔「ほう。今ので仕留めたと思ったぞ?」
カルゴ「俺はそんなに…甘くないですよ…」
天魔「…のようじゃな」
今だ!
カルゴ「雷牢『雷神の牢獄』!」
バチバチッ…
天魔「おっと」
カルゴ「っ!?」
避けただと…!?
そんな…今の完全に不意打ちだろ!?
囲もうとしたものの、形成し終わる前に脱出してしまった天魔。
天魔「ふんっ、小賢しい」
カルゴ「……」
どーすりゃ勝てる…?
電気玉?溜めてる間にやられるだろ。
接近戦…しか無いか…。
カルゴ「雷武器『雷斧』!ぬおおおお!!」
真上から斧を振り下ろす。
天魔「ふんっっ!」
ガキィィィィ……
剣で斧での一撃を軽々と受け止める天魔。
天魔「はぁっ!」
キィン!
受け止めた斧を振り払う天魔。
カルゴ「っ!」
斧を振り払われたエスカルゴは無防備になる。
もちろん天魔はその瞬間を見逃さなかった。
天魔「絶倒ノ太刀参式『咲乱~荒乱スル吹雪~』」
ズバッ……
エスカルゴの左側を通り抜けながら何かを斬った天魔。
え…腹が斬られ………あれ?
怪我してな……
パカッ……ズルルッ…
カルゴ「ゔっ!?」
脇腹が急に開き、臓器が漏れ出す。
天魔「おっと…加減したつもりだったのだが…」
カルゴ「〜〜〜〜〜!!!」
自分の臓器を見るなんて2度目だぜ…?
エスカルゴは、斬られて開いた脇腹を抑えながらなんとか浮かんでいた。そこからは血がドクドクと溢れて来ている。ズボンはもう血だらけである。
目が霞む…これ意識失ったら負けるよな?
ニチャッ…ズルルッ…
天魔「おぉう…」
天魔すら引くような気味の悪い音を立てて再生する。抑えている手も、もちろん血だらけだ。
天魔「よし、ここまでにするか」
カルゴ「!?…何故です?」
天魔「お主はもう戦えんじゃろ」
カルゴ「まだ…戦えます」
天魔「ふんっ。剣でも適わず、力技でも適わず…わしの攻撃を受け止めきれず再生で手一杯…これでもまだ戦えると?」
カルゴ「ふふっ……あっははははっ!」
天魔「!?」
カルゴ「恐れながら…天魔様。私はまだ、本気を出しておりません」
したり顔でそう告げるエスカルゴ。
天魔「…ほぉう?このわしを相手に…今まで手を抜いていた…と申すか?」
カルゴ「…ええ…。どこまで私の攻撃が通用するか…試してみましたが…尽く通じませんでした。なのでこれからは…マジで本気で行きます」
天魔「…思い上がるな」
カルゴ「……」
勝算は…ある。
心臓を串刺しにするんだ。
だがそれだと殺すことになる。
なので、心臓付近を串刺しにする。
天魔「ならわしも本気を出して良いか?」
カルゴ「どうぞご自由に」
天魔「ほう…!では…参る!」
俺が暴走すれば…天魔だろうと誰だろうと…!
擬似的に暴走させることが出来たらな…。
天魔「絶倒ノ太刀肆式『狂乱~再来スル厄災~』!ハアァァァァァッッ!!」
思い切り剣を振り下ろしてきた天魔。
うげっ…まともに喰らったら消し飛ぶか?
カルゴ「雷鎧『サンダーアーマー』最大出力!」
攻撃される直前になんとか鎧を発動させたエスカルゴ。だが、そんな彼の抵抗も虚しく…遥か高い上空から地面まで、とんでもない威力で押される。
あ…ちょ、これ………
ドオオオオオオオオオオオッッ
とんでもない威力で叩きつけられ、彼の全身の骨は砕け、山の一部は削られ、森も消し飛んだ。
もはや山の裏側のクレーターなど比にならない。
隕石が落ちたのと変わらない威力だった。
カルゴ「コヒュー…………コヒュー……………」
巨大クレーターの中で、彼は死にかけていた。
天魔「どうしたァ!!もう終わりか!!」
上空から天魔の声が降ってきた。
クソが…なんで小柄な女1人に勝てねぇ…!?
天魔?山の長?四天王並み?知るか!
こんな奴に勝てないで、文の事守れるはずがねぇだろう…!俺の屑野郎が…!
全身を再構築しながら考えを巡らそうとするが、再生に力を奪われすぎて思考もまとまらない。
もう……考えるのは…辞めだ………。
そんな中、彼は再び、考えることを放棄した。
天魔「(うむ…天晴れじゃエスカルゴよ…。7割で事足りると思っていたのだが、一瞬といえ本気になってしまった。最早お主の勝利で構わん…。さて、力を使い果たしたフリでも…)」
カルゴ「グガアアアアアア!!!」
天魔「!?」
バヒュッ…
地上で立ち上がり、叫び声を上げると同時に上空まで飛び上がるエスカルゴ。
天魔「(地上から上空まで一瞬で…?瞬間的な速さならわしと同等…?)…お、おうエスカルゴよ…。わしは力を使い果たしてしまった…。もはや戦闘不能、お主の勝ちじゃ」
カルゴ「グルルルルル…」
天魔「(おぉ…上半身の服が破けて…。細く見えて、意外とイイカラダしておるでは無いか。…ん?)お主…何じゃその目は?」
エスカルゴの目は、鈍く、紅く光っていた。
カルゴ「ガルルルル……」
天魔「(何じゃ此奴…獣のように呻きおって…)おい、どうした?」
カルゴ「ガルァァ!」
再び叫び声を上げるなり、天魔に飛び込み拳を振るうエスカルゴ。
バキィッ…
天魔「ガッ…(なんて重い拳…!)」
カルゴ「グアアアア!!」
天魔「!?(大剣じゃと!?)」
エスカルゴは、今度は両手に大剣を出し、天魔向けて振るう。
天魔「くっ…!」
キィン!カッ!
2人が剣を交えるたび、閃光が飛び交う。
天魔「うぐぐっ…」
天魔ほどの素早さなら、たとえ2本や3本の剣の攻撃であっても軽くいなす事が可能だ。
だがエスカルゴの連続攻撃は、天魔すら苦悶の表情を浮かべるほどに強力且つ素早いのだ。
天魔「はぁっ!」
キィン!
左手に持っていた大剣を弾き飛ばすことに成功するも、再び左手に大剣を出現させ、連続攻撃を仕掛けてくる。
天魔「(これではキリがない…!)」
天魔「ふんっ!」
剣を弾くことを諦め、エスカルゴに直接蹴りを喰らわせる。だが、その蹴りがエスカルゴに当たることは無かった。
天魔「消えた…」
蹴りが当たろうとしたところでエスカルゴが消えたのだ。
カルゴ「ガアアアアア!!」
天魔「しまっ───(後ろ!?いつの間に!!)」
カルゴ「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」
大剣2本をクロスさせ、十字に斬る。
天魔「くおっ……!」
何とか回避に成功するも、右肩を浅く切った。
カルゴ「グルアアア!!」
再び連続攻撃を仕掛けるエスカルゴ。だが…
カルゴ「グルル…」
急にエスカルゴは攻撃をやめ、少しばかり距離をとる。
天魔「(な、なんじゃ…?)」
フッ…
そして、右手に持っていた大剣を消す。
天魔「(此奴…左利きなのか?)」
カルゴ「……」
エスカルゴは右手の手のひらを見つめている。
そこには、“赤い光”が乗っている。
天魔「…?(何かを…見つめている?)」
もちろん天魔にそれは見えていない。
カルゴ「………」
エスカルゴはニヤリと笑い、右手を握った。
天魔「──ッ!?」