※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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えっ…戦闘じゃないのか?…と?
エイプリルフールなんですよね…忘れてました。
ならばてゐが活躍するな、と?しませんよw


エイプリルフール

さて。今日から4月だ。

外は寒いが、今日も作業を頑張ろう。

 

朝も暗いうちにさっさと朝食の準備を済ませて、巫月の遊具制作に取り掛かる。

永琳からちゃんと許可を取り、竹林の一部を伐採して20m×20m程のミニ公園を作っている。

だが俺の技術では滑り台とブランコで精一杯だ。

伐採した竹は、滑り台を上るハシゴにしたり、ブランコにしたりしている。

ただ、それでもかなりの量が余ったので、竹炭を売っているという妹紅に安値で譲り売った。

ちなみに、滑り台の板や壁の部分は、森から伐採してきた数本の木を斬って斬って斬りまくって板状にした物を釘で打ち付けただけの簡単なものだ。

ノコギリ?そんなモン要らない。

己の能力で出す刀や斧で十分だ。

作業は朝にチビチビ進めている。

因みに、俺の朝のスケジュールはこんな感じだ。

 

2時………起床

〜3時……朝食作り

3時〜……作業開始

4時〜……作業終了&文と談笑

5時〜……文帰宅&2度寝

6時半……起床&朝食

 

本当にざっくりと…だが、朝はこのスケジュール通りに動いている。

診療所が開院したら鈴仙は永琳の手伝いに行くので、俺は巫月の相手をする。

親子で出かけるのは患者が減ってからだ。

その時はてゐを駆り出している。

 

カルゴ「ふぃ〜。……あっ」

 

東の空が明るくなってきたな。

そろそろ配達を終えた文が来る頃だろう。

 

木材などは簡単にまとめておいて、永遠亭の玄関前でスタンバる。

 

文「おはようございます…エスカルゴさん…」

 

ほんの少しだけ待っていると、何故かげっそりした感じの文が来た。

 

カルゴ「おはよう。どうした?」

 

文「いえ…。少し、話がありまして…」

 

話があるのは毎朝の事だろう?

 

…という言葉を飲み込み…。

 

カルゴ「そうなの?…どういう話?」

 

とだけ聞く。

 

文「…怒らないで聞いて欲しいんですけど…」

 

カルゴ「うんうん」

 

シリアスっぽい雰囲気なのは気のせいか?

 

文「…エスカルゴさんより…イイ男性を見つけましたので…今日限りで別れて欲しい(・・・・・・・・・・・)な、と思いまして…」

 

カルゴ「!?」

 

ダニィ!?

予想の遥か上を行くシリアスさだなオイ!

えー…俺よりイイ男?そんなんゴマンと居るよ。

別れるのか…?寂しいなぁ…。

…けどまぁ、俺がするべき事は…文を引き止めることじゃなくて…。

 

カルゴ「そっか。寂しくなるけど…良かったな。幸せにしてもらえよな♪」

 

笑顔で文を祝福する事だ。

 

文「はい…。でも、エスカルゴさんとはお友達のままが良いんです。こうして話したり…仕事場に遊びに来てもらったりとか…」

 

カルゴ「その男に浮気だと疑われない程度にな」

 

文「…はいっ♪」

 

にこりと微笑む文。

 

良い笑顔だな、文…。ちょっと寂しい…ね。

良いんだけどさ。文が幸せになるならそれで。

 

カルゴ「そりゃ、俺達、あんまり恋人らしいこと出来てなかったもんな…。たまーーに散歩するくらいじゃん…」

 

文「あはは…そうですね…(汗)」

 

カルゴ「チッ…………じゃ、俺やることあるから」

 

竹林へと向かい、文に背を向ける。

 

なんだろこの気持ち…?喪失感?

やっぱなんだかんだ言って、俺も文のこと想ってたのかねぇ?いや、自分の事好きって言ってくれた子なんだから、何とも思わない訳ねェ。

 

文「待って下さいっ!」

 

徐ろに腕を掴む文。

 

カルゴ「…どうした?」

 

振り向いて尋ねる。

弱々しい笑顔は変わらない。いや、変えられない。

 

文「ごめんなさい、今の嘘だったんです!」

 

先程の暗い声から一転、明るい声の文。

 

カルゴ「………………へ?ドユコト?」

 

文「ですから、別れて欲しいっていうのは嘘なんです!」

 

カルゴ「ほ、ほんとか?」

 

文「はいっ!エスカルゴさんよりイイ男性なんて居る訳ないじゃないですか!」

 

いつもの笑顔で明るく言い放つ文。

 

カルゴ「…居たら?」

 

文「仮に居たとしても、別れたりなんかしませんよ!だって、結婚を約束してますもんね♪」

 

いや、その言い方だと…。

 

カルゴ「約束してなかったら?」

 

文「してなくても、エスカルゴさんと別れる訳がありませんのでご安心下さい!」

 

カルゴ「…良いのかよ?俺で」

 

文「ええ、もちろん♪大好きですよ、エスカルゴさん♪」

 

急に抱きつく文。

 

カルゴ「うおっ……あ、ありがと」

 

俺も文を優しく抱く。

 

胸柔らかいなぁ…。

というか、抱き合うのも初めてだな…。

 

カルゴ「なんか、初めて恋人らしいことしたって感じだな」

 

文「そうかもしれないですね。でもこれから、もっと恋人らしくなれますよ♪きっと♪」

 

カルゴ「…そうだな」

 

文「あそこまで簡単に騙されたって事は…今日がエイプリルフールだと分かってなかったんですか?」

 

カルゴ「あ……!あー、あー…」

 

確かそんなのもあったな…。

 

カルゴ「わ、わかってたさ、うん。わかってたわかってた」

 

文「そうですか…私もまだまだですね……。(これは絶対にわかってなかったヤツですよ!私の演技力の賜物ですね!)」

 

全く…ビックリしたぜ。

 

 

 

 

 

 

巫月「えすかるごー、あさだよおきてー」

 

ユサユサと俺の体を揺する巫月。

 

カルゴ「ん……ふあぁぁあ…寝みぃ…」

 

娘に起こされるとか最高か?最高だな。

さっきは文と話し過ぎたな…。

 

カルゴ「ありがとよ、巫月」

 

上半身を起こし、巫月の頭を撫でる。

 

巫月「えへへ♪ほめられちゃった♪」

 

ズキュゥゥン!(ハートが撃ち抜かれた音)

 

カルゴ「巫月〜!」

 

ギュウウウ…

 

少し強めに巫月を抱き締める。

 

巫月「どうしたの?ちょっとくるしい…」

 

カルゴ「巫月巫月巫月ィ〜!!」

 

くぁ〜!可愛えええええええ!!!

 

鈴仙「むにゃむにゃ……どしたのエスカ…えっ、何やってるの!?」

 

目を覚ました鈴仙が目を見開く。

 

カルゴ「巫月が可愛いんだよぉ…!」

 

鈴仙「そ、そりゃわかるけど…(朝からどうしたのかしら…?発情期?)」

 

巫月「ねーえすかるごー、おなかすいたー」

 

巫月が空腹を訴える。

 

カルゴ「おっ、そうだな!今温め直すぞ!」

 

巫月「うん!」

 

 

 

 

 

もうすぐでお昼だ。

俺は今、縁側でボーッとしている。

今日はエイプリルフール…。

意外にも、てゐからの嘘は無かった。

だが、まだ終わった訳では無いので油断大て…

 

てゐ「エスカルゴ…」

 

カルゴ「ん?」

 

噂をすれば…ってヤツだな。

 

てゐ「驚かないで聞いてほしいウサ」

 

カルゴ「ほう。なに?」

 

てゐ「私……エスカルゴのこと好きウサ」

 

カルゴ「!?!?」

 

てゐ「困らせちゃうかもだけど……大好きウサ。付き合ってほしい…ウサ。というか、ここに住んでるようなもんだし、半分付き合ってるのと同じだけど…」

 

てゐに限ってそんなんある訳…。

 

カルゴ「そ、そうか…ありがとよ…。でもそれ…嘘だろ?今日はエイプリルフール…だしさ」

 

てゐ「嘘じゃないウサぁ!なんで信じてくれないウサ!?うえええええん!!」

 

唐突に泣き出すてゐ。

 

カルゴ「うぇえ!?ちょ、泣くなよ!?」

 

てゐ「信じてくれなかったら泣くに決まってるウサ!そんなこともわからないウサ!?」

 

カルゴ「ええー…いつも嘘ついてるお前が悪んじゃんか…」

 

てゐ「だからって告白まで疑うヤツがいるウサ!?」

 

カルゴ「…すまん。でもやっぱお前とは付き合えない。ごめんな」

 

座ったままぺこりと頭を下げる。

 

てゐ「てぇ〜ゐっ!」

 

ビシッ

 

頭を下げて無防備になった俺に、チョップをかます。

 

カルゴ「あてっ…何すんだよ!?」

 

顔を上げると、そこには泣き顔ではなく、笑顔のてゐがいた。

 

てゐ「何マジになってるウサ?私がエスカルゴのこと好きとか幻想郷滅んでもありえないウサww」

 

笑いながら言い放つてゐ。

 

それを聞いて安心したぜ。

 

カルゴ「そーかよ。まっ、それでいいぜ」

 

てゐ「なーんか、どんな嘘つけばいいのか思いつかなかったウサ」

 

ペタンと俺の隣に座るてゐ。

 

カルゴ「へー…お前がなぁ…」

 

てゐ「でも、エスカルゴがどんな反応するのか、見てみたかったから…目標達成ウサ♪」

 

ニコッと可愛らしい笑顔を浮かべる。

 

カルゴ「反応見るとか…悪趣味ウサねぇ…」

 

てゐ「真似するなウサ。まさか、本気にするとは思ってなかったウサ。伊達に彼女居ないウサね…」

 

カルゴ「お前が信じろって言ったんじゃん…」

 

てゐ「でも、それだけであそこまで取り乱すものウサ?普通あそこまで慌てないウサ」

 

そんなに取り乱してたか?

 

カルゴ「そりゃ、出来るだけ泣かせたくないって思ってるし…。それがお前でも」

 

てゐ「優しいウサねぇ…。……あ」

 

ピョンと飛び降りて距離をとるてゐ。

 

カルゴ「ん?」

 

てゐ「お仕置きされるウサ…」

 

耳を抑えてカタカタ震えるてゐ。

 

カルゴ「ははっ、今回は許してやるよ」

 

笑って手をヒラヒラとさせる。

 

てゐ「えっ?なんでウサ?」

 

キョトンとするてゐ。

 

カルゴ「エイプリルフールだからな。これ位なら許してやるさ。…尤も、誰かが死んだとか、そういう嘘は許さねぇけどな」

 

てゐ「あ、ありがとウサ…。でも流石に、そんな酷い嘘はつかないウサ…」

 

カルゴ「なら良いんだが。つーか、お前ってば、エイプリルフールに関わらず…」

 

てゐカル「ほぼ毎日嘘ついてるもんな(ウサ)」

 

おぉう…てゐとハモるの初めてだな…。

 

てゐ「ハモるとか気持ち悪いウサ…」

 

嫌悪感丸出しで距離を取るてゐ。

 

なんだとこの兎め…!

 

カルゴ「こっちのセリフだボケナス」

 

てゐ「んなっ…!ナスじゃないウサ、兎ウサ!」

 

ツッコむ所そこ!?

 

カルゴ「ボケ兎」

 

てゐ「酷いウサ!」

 

カルゴ「どっちが酷いんだよっ!」

 

2人「……………」

 

見合ったまま沈黙が続く。

 

てゐ「……ぷっ…」

 

こらえきれなくなったてゐが吹き出す。

 

カルゴ「ふっ……」

 

2人「あははははっ!」

 

平和だなぁ…。

 

 

 

 

 

カルゴ「それじゃ、また明日な」

 

兎達「うん!気を付けてね!」

 

カルゴ「ああ。いい子にしてるんだぞ」

 

ポンと巫月の頭に手を置く。

 

巫月「うんっ!」

 

鈴仙と巫月に見送られて飛び立つ。

父親が1日おきに別な家に泊まるということを、娘はどのように思っているのだろうか?

おかしいと思っている?普通だと思っている?

 

答えは後者…“普通だと思っている”、だ。

 

子供は、自分の育った環境によって、自分にとっての“常識”と“非常識”を判別する様になる。

それ故、他人とズレが生じる事があるのだ。

大雑把に言えば、“文化の違い”に他ならない。

だから巫月は、自分が産まれた時から父親がそのような生活を送っていることで、これが普通なのだ、と判別しているのだ。

 

…このズレ、いつかは矯正しなくちゃかもな…。

 

苦笑いしながら紅魔館へと向かった。

 

 

 

いつも通りかなりトバした俺は、門をスルーし、直接玄関前に着地。

 

夕方だし、夕飯前に少しはイチャつけるかな♪

 

ガチャッ

 

カルゴ「ただいまー」

 

レミィ「ああ、来たわね。丁度良かったわ」

 

カルゴ「ん?」

 

レミィ「少し話があるのよ」

 

カルゴ「どんな?」

 

まーたこのパターンですかい…。

やれやれ、エイプリルフールは午前までだぞ?

 

レミィ「私ね、あなたじゃなくて、咲夜と結婚する事にしたわ」

 

カルゴ「ほーん…」

 

咲夜さんと…ねぇ…。

 

カルゴ「……え?咲夜さんと?」

 

レミィ「ええ」

 

フン、面白い冗談だ。

 

レミィ「来なさい、咲夜」

 

咲夜「はい」

 

カルゴ「おっ…」

 

レミリアが咲夜さんを呼ぶと、レミリアの背後に咲夜さんが現れる。

 

咲夜「申し訳ございません、エスカルゴさん。そういう事ですので、お嬢様の事は諦めて下さい」

 

営業スマイルで微笑んで、レミリアの首に手を回す。

 

仕方ない。ノッたフリでもするか。

 

カルゴ「あは…ははは…。そ、そっかぁ…。ま、良いんじゃないか?俺にはフランが居るしね…。あれ?フランどこだ?」

 

レミィ「フランならあなたの後ろにいるわ」

 

カルゴ「!」

 

それを聞いて即座に振り返る。

そこには確かにフランが居た。

何故だかはわからないが、俯いている。

 

カルゴ「よっ、フラン!」

 

フラン「……」

 

ん?どうした?

 

カルゴ「会いたかっ…」

 

パシッ…

 

フランに、頭へ伸ばした手を振り払われる。

 

カルゴ「え……?」

 

フラン「触らないでくれる?穢れるから」

 

カルゴ「!?」

 

そう言って顔を上げたフラン。

だがその瞳は、とても冷たかった。

そして、手を振り払うなり俺の横を通過し、レミリアの隣へ歩いてゆく。

 

カルゴ「え…え?どういう事だ?」

 

レミィ「…言わなくても、あなたならわかるでしょう?ずっと一緒に居てくれないから、あなたの事が嫌いになったみたいよ」

 

そう言ってニヤニヤと笑うレミリア。

 

カルゴ「なっ…!?」

 

レミィ「そもそも、元人間のなり損ないなんかが本物の吸血鬼と相容れる訳が無かったのよね」

 

??????

 

レミリアの言っている事が頭に入ってこない。

 

カルゴ「そ、それ言ったら…レミリアと咲夜さんだって…。人間と吸血鬼じゃんか…」

 

レミィ「はぁ?一緒にしないでくれるかしら?…咲夜はあなたなんかと違って完璧だし、私とは昔から……咲夜の幼い頃から一緒に居るのよ?大丈夫に決まってるじゃない」

 

笑えねぇ冗談だなぁオイ…。

 

カルゴ「……何が言いたい?」

 

フラン「恋人関係を解消して、ここから出てってくれるかしら?」

 

レミィ「そしてもう二度と来ないで頂戴。小悪魔の件については、パチェから許可取ってるから」

 

えー…いくら冗談でも傷付くぞ…。

 

カルゴ「タチ悪ぃ冗談はやめてくれよ」

 

手をヒラヒラさせて笑い飛ばす。

 

レミィ「冗談?冗談なんて言う訳ないじゃない」

 

フラン「そうよ。そんな事言って何の得があるっていうのよ?」

 

いや、遊びなんだろう?

エイプリルフールってのは。

 

カルゴ「もう終わりにしようぜ?アレなんだろ?エイプリルフールだろう?」

 

姉妹「?」

 

何の事?と言わんばかりに顔を見合わせる姉妹。

 

レミィ「何を言ってるのか分からないわね。とにかく、そういう訳だから今すぐ出てって頂戴?」

 

カルゴ「……なぁ、フラン?冗談だろう?」

 

フラン「消えて。私の前から今すぐに」

 

相変わらずの冷たい目で言い放つフラン。

 

カルゴ「───ッ!!」

 

え…いやいや、タチ悪すぎ…。

メンブレキャラ…じゃない俺も…メンブレしちゃう…。

 

カルゴ「ははっ…嘘だろう?」

 

レミィ「いい加減現実を見たらどうかしら?貴方はもう、ここには不要よ」

 

フラン「…じゃ、そういう事だから」

 

背を向けてどこかへ歩き出すフラン。

 

カルゴ「えっ、ちょっ、待てって!」

 

当然それを追い掛ける。

 

カルゴ「待っ────ッ!?」

 

左大腿に激痛が走る。そこにはナイフが3本。

 

咲夜「妹様の所へは行かせませんよ」

 

ナイフを構える咲夜さん。

 

カルゴ「咲夜…さん…?」

 

だからさ…冗談キツいってば…。

つーかフラン見えなくなったし…。

 

レミィ「咲夜、殺しちゃダメよ?仮にも、私の彼だったんだからね」

 

咲夜「ええ、わかっていますよ。さ、殺されたくなければ、速やかにお引き取り下さい」

 

営業スマイルを崩さない咲夜さん。

 

ナイフで刺しといて笑顔って…。

やっぱ普通じゃねぇよこの人…。

いや、幼い頃から吸血鬼に仕えてたなら“普通”の概念は一般人なんかとは違うか。

 

カルゴ「いや…嘘でしょ?全部演技でしょ?」

 

レミィ「はぁ…。良いからはやく出てってくれないかしら?こっちはね、あんたの顔を見るだけで虫唾が走るのよ。この女たらし」

 

嫌悪感丸出しでそう言われ、俺の中でブチンと音を立ててナニカが切れた。

 

カルゴ「なら見んじゃねぇよ?あ?」

 

半ギレとなった俺は、言葉遣いが悪くなる。

 

レミィ「…この私に対して、何ていう口の利き方…」

 

怒りを露わにするレミリア。

 

カルゴ「やんのかよ?」

 

レミィ「あなたがその気なら…相手してあげてもいいわよ」

 

指をポキポキ鳴らすレミリア。

 

カルゴ「フンッ、虚勢を張った所で意味ねぇぞ?今の幻想郷じゃあ俺が最きょ…いや、トップ5には入ってるぞ?勝てるとか思ってるのかよ?…弱っちい、人間……なんかと……吸血鬼で……」

 

咲夜「…ッ!」

 

キレたのか、ナイフを投げる咲夜さん。

狙いは顔面ド真ん中だ。

 

カルゴ「この遅さ、舐めてるのか……?」

 

首を横に曲げてそれを避ける。

 

そんなモンより速いモノを…俺は知ってる。

 

レミィ「別に殺したいとは思ってないのよ?これ以上床が汚れる前に帰ってくれないかしら?貴方には子供も居るでしょう?」

 

カルゴ「…」

 

確かに…コイツらを2人同時に相手したとして…俺でも確実に勝てる訳じゃない。

咲夜さんの時間を止める能力……あれをフル活用されたら分身もクソもない。

ナイフの集中砲火を浴びて分身は砕け散り、俺は銀のナイフによって…。うん、確実に死ぬ。

 

カルゴ「それなら大人しく帰ろうかな。俺には、もう娘が居るしな」

 

わざとらしくニタニタと笑いながら言う。

 

レミィ「そうね、それがいいわ。というか、最初からそうしてもらえればこんな喧嘩紛いな事しなくて済んだのにね」

 

カルゴ「…じゃあな、楽しかったよ」

 

レミリアの言うことには返事をせず、二言だけ返して玄関を出る。コイツらの返答は要らない。

どうせ、これから死ぬ(・・・・・・)のだから。

 

パタン……

 

カルゴ「……過去ハ破壊ヲ以テ清算ス、か……」

 

後ろ手に扉を閉め、棒読み口調で呟く。

紅魔館上空へ飛び上がる。

 

カルゴ「全て、を…無かった……事に……!ウォオオア゙ァアァ゙ァァ゙ァア゙ア゙ア゙!!」

 

両の拳を握り締め、雄叫びを上げる。

それと同時に大量の落雷が乱発した。

 

 

 

 

 

紅魔館Side

 

フラン「…エスカルゴ、どう?」

 

物陰からひょこっと顔を出すフラン。

 

レミィ「ふふっ、イイ感じよ♪」

 

出てきたフランにグッドサインを送る。

 

フラン「なら早く行きましょっ!永遠亭に!」

 

レミィ「エスカルゴでもまだ着かないわよ。もう少し待って、着いた頃を見計らって出発しましょうよ」

 

フラン「まだかなまだかな〜♪」

 

既にルンルン気分のフラン。

 

咲夜「…………」

 

レミィ「どうしたのよ咲夜。浮かない顔ね」

 

咲夜「いえ…。先程のエスカルゴさん…酷く悲しんで居たように見えたので…。少々やり過ぎではありませんか?」

 

フラン「でも、エスカルゴなら泣いて喜ぶわよ。さっきのが嘘だったって知ればね♪」

 

咲夜「私には、とてもそうは……」

 

レミィ「バレそうになった時は焦ったわね〜」

 

フラン「そうね〜…」

 

カルゴ「ウォォオア゙ァアァ゙ァァ゙ァア゙ア゙ア゙!!」

 

3人「!?」

 

レミィ「エスカルゴ……?」

 

フラン「帰ったはずじゃ……」

 

レミィ「いえ……帰ったとは言っても、玄関から出たのを見ただけ。飛び立ったのは見てないわ」

 

ドドドドドドドドドドドドドド……

 

ビリビリビリビリ…

 

咲夜(ッ…すごい振動ね…)

 

カルゴ「一閃『Mishap of Thunder』!!」

 

フラン「外見て!!」

 

窓際に居るフランの一言で、窓際へ行く2人。

そこから見えたのは、夕暮れの空を覆いつくさんとばかりに広がる、超巨大な魔法陣だ。

 

レミィ「なんて大きさなの…」

 

咲夜「エスカルゴさん…」

 

 

 

 

 

エスカルゴSide

 

カルゴ「フゥゥウウウウ…」

 

大好きだから……俺が殺す。自分で殺してやる。

好きだから……そう、好きだからこそ殺す。

 

カルゴ「…?」

 

窓際から空を見上げる3人が目に入った。

だが、思い止まる事は無い。

 

カルゴ「最後ニもう一度ダケ…フランのホッペ、触リタカッタナ…」

 

俺の頬に、静かに一筋の涙が流れる。

 

カルゴ「ジャアナ。……召喚!!!」

 

ズアッ…ドオオオオオオオオオ……

 

ゴシャアアアッ

 

轟音を立てて紅魔館が崩れる。

 

カルゴ「…殺っちゃった…。でもこれで…フランと一生…一緒に居れるね……。大丈夫…お墓は作ってあげるからね……毎日参るから……。愚かだって、笑われてもいい……」

 

思いをぶつけて、正気に戻った俺は涙を拭い、その場をあとにする。

 

 

 

 

 

 

 

その晩

 

鈴仙「ねぇエスカルゴ。どうしたの?」

 

巫月が眠った頃に、そう問い掛ける鈴仙。

 

カルゴ「……なにが?」

 

鈴仙「なんだか……凄く悲しそうな顔してる…」

 

カルゴ「……そうか?」

 

鈴仙「うん。紅魔館で何かあった?」

 

カルゴ「……。いーや?なんも?」

 

あくまでも平静を装う。

 

鈴仙「嘘よ。何も無かったら、なんで今あなたはここに居るの?今晩は紅魔館に泊まる日でしょ?今頃、あっちに居るんじゃないの?」

 

カルゴ「……ま……少し喧嘩したのよな。鈴仙が気にすることじゃないさ」

 

鈴仙「ホント?」

 

カルゴ「…………ああ」

 

何でだろ…さっきの事、鮮明に覚えてる。

多分あれは…暴走じゃなくて、ブチギレて周りが見えなくなってただけかもしれない。

でも、いくらフランでもあの言い方は傷つく。

仏や炎火じゃなきゃ誰でもキレるだろうな。

もうフランには会えない。

けど、心の中ではいつでも会える。

とはいえ…やり過ぎたのかもしれない。

いくらブチギレていたとはいえ、限度がある。

なんで……あんなこと……。

 

カルゴ「…っ……うっ………」

 

とんでもない事をしてしまったと今更自覚する。同時にとてつもない喪失感と吐き気に襲われる。どういうわけか涙まで溢れてくる始末だ。

 

鈴仙「ど、どうしたの!?」

 

カルゴ「いや……喧嘩したのを思い出してさ……なんか、やな気持ちになったっつーか……。少し夜風に当たってくるよ……」

 

鈴仙「そう……?気を付けてね?」

 

カルゴ「ん……」

 

ごめん、と心の中で鈴仙に謝る。耐えられない。もう無理だ。きっと罪悪感に押し潰されるというのはこういうことを指すんだ。

全てを投げ出して死んでしまいたい。

縁側から外に出た俺は、ゆっくり飛び立って遥か妖怪の山の火口を目指す。火山なら、強靭なこの肉体でも死ねるはずだ。常に煙が出ているなら、あの中はマグマで満たされているはずだから。

しかしその道中、見覚えのある3人組、感じたことのある気配を察知した。その気配は永遠亭方面を目指している。

何か引っかかった俺は、死ぬ前に疑問を片付けようと思い、引き返すことにした。

永遠亭の玄関前では、「いるかな?」「いるわ」という会話が聞こえてきた。静かな闇夜の中だ、地獄耳でなくとも聞こえる。

 

カルゴ「あのっ……どちらさ…」

 

フラン「あっ……エスカルゴぉっ!!」

 

カルゴ「え……フラ、ン…?」

 

唐突にフランに抱きつかれた俺は、しばしの間、思考が停止する。あまりの速さで見えなかった。けれどこの気配、匂いは……。

 

殺してなかった……生きていた!

 

カルゴ「本物か…?幽霊じゃない…?」

 

フラン「さっきはゴメンなさい!あれ、ほんとは全部嘘だったの!そのエイプリル何とかってやつだったの!」

 

フランから視線を外し、残り2つの人影を見る。

 

カルゴ「あ……あ……!」

 

レミリア…咲夜さん……。

 

レミィ「ゴメンなさいね。少し度が過ぎたわね」

 

咲夜「申し訳ございませんでした」

 

2人共深々と頭を下げる。

 

カルゴ「良がっだ…生ぎてた…!あぁぁ……」

 

3人が見ている前で泣き出してしまう。

 

フラン「ごめんなさい…。限度考えろってこの前言われたのに…考えてなかった…!」

 

カルゴ「俺こそ…ごめんなさい……!俺、また、何も考えられなくなって……取り返しのつかねーこと、してしまった……っ……」

 

俺達はしばらく、抱き合ったまま泣き続けた。

俺は、大好きな人を殺しかけたという大罪に苛まれて。フランは、約束を守れなかったことに対して。そして、ようやく泣き止み、状況を尋ねる。

 

カルゴ「そういえば…どうやって助かったんだ?館ごと潰したと…思うん、だけどさ…」

 

フラン「それはね…」

 

咲夜「お忘れですか?私の能力を」

 

カルゴ「……あ…。なるほど…」

 

咲夜「崩れてきた瞬間に時を止め、お嬢様方、パチュリー様や小悪魔を外に運び出したのです」

 

カルゴ「ありがとうございます…。俺…ほんとに取り返しのつかない事を…」

 

レミィ「大丈夫よ。私が余計なことを提案しなければこうはならなかったんだから」

 

カルゴ「…それについて、1つだけ言っておくことがあるんだけど……」

 

3人「?」

 

眉をひそめる3人。

 

カルゴ「エイプリルフールは……午前までだよ」

 

3人「えっ……そんなっ…」

 

目を見開き、驚きの声を漏らす3人。

 

カルゴ「止めなかった俺も悪いけど…来年からは気を付けてね………」

 

レミィ「そうね…」

 

申し訳なさそうに肩を竦める。

 

カルゴ「ところで、美鈴と小悪魔とパチュリー様は今何処に…?」

 

咲夜「美鈴と小悪魔には瓦礫の整理を。パチュリー様は現場監督のような形で留守番をしております」

 

咲夜さんが簡潔に説明する。

 

カルゴ「なるほど。…あ、上海と蓬莱は!?」

 

レミィ「あぁ、なんかバリアみたいなの張ってて無事だったから、整理を手伝わせてるわ」

 

フラン「バリアというか、エスカルゴの鎧みたいなやつだったわね」

 

レミィ「そうね」

 

カルゴ「良かった…」

 

前にあげたエネルギーが残ってたのかな…?

 

その後もしばらく玄関先で話し続けた。

そして、フラン達の住まいの問題だが、そこは俺から永琳に頼んで、紅魔館の建て直しが完了するまで永遠亭に住まわせてもらえることになった。

パチュリー様なら建て直しも魔法で出来るそうだが、魔力の消費がえげつないとのことだった。

 

カルゴ「禁忌『エスカルゴ・カルテット』」

 

分身を3体生み出す。

それからそれぞれに指示を出す。

1体目には、河童達を呼ぶ事。

ただしこれは朝イチにやらせる事にした。

2体目には、上海と蓬莱を運ぶように。

3体目には、美鈴の補佐兼伝達役を。

美鈴の事だから、体力の無いパチュリーを運ぶ事だろう。しかし、幾ら体力があるとはいえ、美鈴にもキツいかもしれないと判断したのだ。

そして伝達役とは、“紅魔館が直るまで永遠亭に住む”、という事を伝えさせる役だ。

 

 

 

朝方、上海達を連れた分身と、予想通りパチュリーを運んでいる美鈴、小悪魔、補佐の分身が到着。事の顛末を話した。

 

この日から、永遠亭内はとても賑やかになった。




一回、こういうハチャメチャ展開書いてみたかったんだー

ハチャメチャな話で何を伝えたかったかって?
“エイプリルフールでも、ついていい嘘には限度がある”ってことだね。それがきっかけで…仲が悪くなったりするかもしれないから…。
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