はてさて、どうなる事やら…( •´∀•` )ニヤニヤ
鈴仙「明日は宴会ね」
カルゴ「だな」
異変解決の次の日。
雪雲に覆われていた日常から一変、桜こそ咲いてないものの、すっかり春の陽気である。
体調を崩さないか心配だ。
巫月「えんかい…ってなーに?」
例によって巫月が尋ねてくる。
カルゴ「えーとなぁ…」
“皆でお酒を飲むんだよ”…なんて言ったら、“私も飲む!”なんて言い出すんだろうなぁ…。
カルゴ「みんなで集まって、ご飯食べたりするんだ。楽しいぞ」
巫月「たのしいの!?」
カルゴ「そりゃあもう楽しいな。だから…楽しみにしてろよな」
そう言って娘の頭を撫でる。
巫月「うん!」
鈴仙「でも、子供は寝る時間よね…」
カルゴ「……」
いつも夕方から始まり、夜中に終わる。
巫月は、夕飯を食べて少し腹を休ませたら寝ると言った規則正しい生活を送っている。
良かったぜ…先手を打っといて。
カルゴ「明日の宴会は昼から始まる。俺が霊夢に頼んどいたんだ。巫月も十分楽しめるさ」
鈴仙「あれ?そうだっけ?」
そうだ、“宴会がある”としか言ってなかったね。
カルゴ「ああ。だから、今日の夜から咲夜さんと料理すっから、今晩は2人で寝ててくれ」
兎達「はーい!」
さてと、今日の昼は何してようか…。
文にはちゃんとその旨伝えたし、やる事は無い。
鈴仙「ねぇエスカルゴ」
カルゴ「ん?」
鈴仙「昼からってことは、傘が必要なんじゃ…」
カルゴ「あ…!」
忘れてたァァァ…!
俺らにはペンダントがあるけど、巫月にはそれが無いんだった!
カルゴ「しゃーないな…。巫月だけ余計なモンを持つってのも可哀想だし…作ってもらうか!」
鈴仙「作ってもらうって…ペンダントを?」
カルゴ「そうだ」
巫月「ぺんだんと?」
カルゴ「俺が首につけてる、これだ」
首にかけてるペンダントを見せる。
巫月「あー!!ふらんちゃんとれみりあちゃんとおそろいのやつだ!」
お揃いというのが嬉しいのか、背中の翼を小刻みにパタパタさせる。
カルゴ「そう。これな、俺の友達に作ってもらったんだ。だから、もう一個同じのを作ってもらおうと思う。一緒に行くか?」
巫月「うん!」
大きく頷く巫月。
鈴仙「えっと…炎火さんのことよね。前に宴会で少しだけ話したわ」
カルゴ「……ふーん……」
無意識のうちに、ジト目で鈴仙を睨む。
鈴仙「えっ、何その反応!?浮気とかそういうのじゃないわよ!?お話しただけだからね!?」
早口で弁明する鈴仙。
カルゴ「わかってんよ、そんなの…」
鈴仙「ならいいけど…」
カルゴ「断ろうとした時に俺の事殺そうとしたくせに…浮気なんてしたらなぁ?」
あん時はマジで焦ったぜ。
身体は鈍ってて力出ねぇし、鈴仙は泣きながら俺のこと攻撃するし…。
押さえつけたら丁度レミリア来たもんな。
鈴仙「言わないでぇ…」><
そもそも炎火が他人の女に手を出すはずないし。
あいつは妹紅一筋だものな。…いや待てよ?
確か、凛乃っていう霊夢似の子、来たよな?
結局あの子はどうなったんだろう…?
俺のように元の世界に帰ったのだろうか…?
カルゴ「はいはい。よし、外行くか」
鈴仙「そうね」
おっ、その前に。
カルゴ「禁忌『エスカルゴ・カルテット』」
分身を3体作成する。
カルゴ「お前ら、俺らの留守の間、成りすましててくれや」
鈴仙「成りすまし!?」
分身1「んじゃ俺がお前な」
腰に手を当てて胸を張る。
分身2「そんじゃ俺は鈴仙ちゃんで」
言うが早いが、姿を鈴仙そっくりにコピーする。
格好も、いつもと同じ制服だ。
鈴仙「えっ!?分身って変身出来るの!?」
カルゴ「分身は俺のエネルギーの塊。どんな形にだって成れる」
鈴仙「すごっ…」
やっぱ分身ってスゲー万能だな。
分身3「え、この流れだと俺が巫月ちゃんか?」
カルゴ「そうだよ」
分身達「そうだよ(便乗)」
カルゴ「おいこら、声もちゃんとしろ」
鈴仙に変身した方の声はそのまま俺の声だった。
こんなのではすぐにバレてしまう。
偽鈴仙「これでどう?」
カルゴ「うん、それでいい」
口調も真似たので、どちらが本物か判別つかないレベルまで来ている。
鈴仙「(私が2人…)」
分身3「やれやれ、真似るの難しそうだな…」
ポリポリ頭を掻きながら、みるみる背が縮んでいく分身。姿を変え、そこに居たのは…。
偽巫月「どう?」
もう1人の巫月だった。
巫月「うわー!わたしだー!」
驚きを隠せない巫月。
カルゴ「あとは声と口調だけだな」
見た目巫月で声が俺って気持ち悪っっっ!!
偽巫月「これでどーお?」
カルゴ「よし」
すっかり巫月だ。
鈴仙「凄いわね…あっという間に私達そっくりになっちゃった…」
カルゴ「だな。よし、留守は頼んだ」
分身達「おうよ」
そこだけいつもの声と口調なのか…。
玄関から出ると美鈴に見つかってしまうので、靴だけ持って縁側へ移動。そして中庭へ行く。
カルゴ「紫さーん」
スゥ……
地面に隙間が開く。
そこからニュッと紫さんが登場する。
巫月「ひっ…」
巫月は驚きのあまり俺の後ろに隠れる。
紫「久しぶりね」
カルゴ「お久しぶりです」
紫「あなたが巫月ちゃんね。大きくなったわね。この前新聞で見た時は赤ちゃんだったのに」
膝を折り、目線を巫月に合わせる紫さん。
巫月「こ……こん、にちは…」
後ろに隠れたまま、けれど顔はちゃんと出して、震える声で挨拶する。
紫「はい、こんにちは♪…ちゃんと挨拶出来るのね、偉いわよ」
褒めながら巫月の頭を撫でる。
巫月「えへへ…」
やはり褒められると嬉しいのだろう、顔を綻ばす巫月。
紫「それで、今日は何の用かしら?」
カルゴ「炎火の居る幻想郷に行きたいんです。巫月が外で遊ぶには傘が必要ですが、俺やフランがつけてるこのペンダントがあれば太陽の下でも活動出来ます。なのでこれを作ってもらおうと思いまして…」
紫「うん、良いわよ。いつ頃、どこに迎えに行けばいいかしら?」
あれ、すんなりOKなんだな。ありがたい。
カルゴ「どれ位で完成するのか分からないので…夕方6時頃、永遠亭の玄関前にお願いします」
6時頃というのは、大体夕飯の支度が終わる頃である。
紫「わかったわ。…でも…いつか、借りを返してもらうわね♪」
そう言って怪しげに笑う紫さん。
カルゴ「わかっていますよ。いつまでもお世話になりっぱなしでは申し訳ないです」
紫「…永遠亭の玄関前に繋ぐわよ」
カルゴ「はい」
スゥ…
中庭に、縦長の隙間が開く。
紫「いってらっしゃい」
カルゴ「はい。おいで、巫月」
後ろに隠れている巫月の手をとる。
巫月「なんかこわいよ…」
案の定巫月は怖がっている。無理もない。
鈴仙「大丈夫よ、行きましょ」
巫月「うん…」
渋々スキマに足を踏み入れる。
紫「(親子3人、仲良いわねぇ…)」
スキマを抜けた先は、俺ら3人がよく知っている場所だった。
巫月「あれ?えいえんていだ」
鈴仙「そうね。でも美鈴さん居ないし…」
カルゴ「ああ。ここは別な幻想郷だぜ。行こう」
躊躇なく扉を叩く。
前にも来たこともあり、緊張なんてしていない。
1ヶ月も過ごしていたのだから。
てゐ「はいはーい、どちら様ウサ〜」
予想に反し、鈴仙では無くてゐが出てきた。
巫月「てゐだー!」
カルゴ「よぉてゐ。元気そうだな」
てゐ「エスカルゴウサ!今日はどうしたウサ?(そっちの鈴仙も居るウサね。間に居るこの子供は…?)」
カルゴ「炎火に用があって来たんだ。多分、仕事終わってる頃だと思うけど…」
繰り返しになるが、俺はここで1ヶ月過ごしていた。大体の生活リズムは把握しているのだ。
てゐ「今買出しに行ってるウサ。居間で待ってて欲しいウサ」
半開きにしていた引き戸を全開にし、入れと促す。
カルゴ「わかったぜ。あ、お前また仕事サボってんのか?」
てゐ「炎火には黙ってて欲しいウサ…」カタカタ…
図星かよ…。懲りねぇヤツだな。こいつもMか?
カルゴ「わかったよ」
てゐ「ありがとウサ♪」
鈴仙「(こっちのてゐも変わらないわね)」
そんな話をしながら居間へ行く。
そこにはこっちの鈴仙が居た。
──────────────────────
エスカルゴ側の鈴仙はそのまま“鈴仙”、
炎火側の鈴仙は“別鈴仙”と表記します。
──────────────────────
カルゴ「よっ、久しぶり」
鈴仙「こんにちは」
別鈴仙「エスカルゴさん!?お久しぶりです!!(わっ、もう1人の私が居る…)」
やはり急な来訪には驚くのか、目を見開く鈴仙。
巫月「あー!れーせんがもうひとり!」
巫月がこちらの鈴仙を指さす。
カルゴ「こら、指さすな」
そう言われ、すぐに手を引っ込める巫月。
別鈴仙「え…と…その子は?」
カルゴ「俺と鈴仙の娘だ。巫月、自己紹介」
巫月「わかった!みずき・うどんげいん・すかーれっとです!よろしくおねがいします!…どう?」
ペコリと頭を下げ、自己紹介を済ます巫月。
振り返って出来を尋ねてくる。
カルゴ「上出来だ」
鈴仙「流石ね♪」
2人で頭を撫でる。
巫月「えへへ〜♪」
てゐ「!?!?」
てゐは驚きのあまり目を白黒させている。
別鈴仙「え…えぇぇ?エスカルゴさんと私の娘?ど、どういうこと…?」
鈴仙「私とあなたは同じだけど一応別人よ。巫月は私とエスカルゴの娘よ」
やばい、早速こんがらがってきた。
別鈴仙「娘居るなんてあの時言ってませんでしたよね?」
カルゴ「あの時は娘居なかったからね」
別鈴仙「え?で、でもこんなに大きいし…結構前から産まれてたんじゃ…」
カルゴ「巫月の成長速度がヤバイってだけさ」
別鈴仙「へ、へぇ…」
見るからに落ち着きを失っている鈴仙。
やっぱ、すぐに理解は出来ないだろうな。
そう判断した俺は、てゐとこちらの鈴仙に、ある程度の事情を話した。
詳しくは炎火も来てからにするが。
別鈴仙「そうだったのね…。元気に育ってね、巫月ちゃん」
巫月「( ˘ω˘ ) スヤァ…」
別鈴仙「あら、寝ちゃってる…」
カルゴ「うん、少し前から寝てた」
話途中で寝てしまった巫月のことは、俺が膝枕している。
カルゴ「炎火、まだかな…」
別鈴仙「多分そろそろ帰っt…」
鈴仙がそう言いかけた時、玄関が開く音がした。
買い出し組「ただいまー!」
相変わらず元気イイな。
この声は間違いなく炎火と妹紅だ。
ただ、炎火と妹紅以外の声が混ざっていたように聞こえるんだが?
てゐ「炎火〜、エsモゴッ」
俺が来ていることを言いそうになるのを止める。
炎火「なんだ?またサボってるのかて…うわぁ!エスカルゴじゃないか!!」
居間に来た炎火はかなり驚いたようだ。
カルゴ「よっ、久しぶり。お邪魔してるぜ」
スカーレットは相変わらず胸ポケットにいるね。
でも…変だな、サラが居ない。
炎火「い、いらっしゃい…」
驚いた表情のまま、買出しに行っていたメンバーがゾロゾロと入ってくる。
ん!?知らない子が居るんですが!?
炎火「あれ?鈴仙がもう1人…」
鈴仙「こんにちは」
挨拶して軽く頭を下げる鈴仙。
炎火「あぁ、エスカルゴの彼女の方か」
鈴仙「えへへ…」
少し頬を赤らめる鈴仙。
こういう反応、少し懐かしい気がする。
妹紅「ホントだ!久しぶり!」
おお、やっぱ女の子っぽい妹紅もイイね。
カルゴ「うん、久しぶり!」
鈴仙「(ホントに別人みたいね…)」
??「エス…カル、ゴ…?」
どこか片言な喋り方で、少し炎火の後ろに隠れている1人の幼女。赤い翼と尻尾で、赤い髪だ。
その姿はドラゴンを彷彿させる。
カルゴ「う、うん、そうだよ。えっと、君は?」
サラ「サラ…」
カルゴ「!?」
その発言に思わず口をあんぐりと開け、目を丸くする。
サラ…あの…龍の?えっ……えぇ!?幼女化!?
炎火をチラ見すると、ほんの少しだけ顔を引き攣らせている。
カルゴ「ほ、ほう…。と、とりあえず、深くは聞かないでおくぜ、炎火…」
炎火「助かる…」
話が落ち着いた所で、1人の女性が挨拶をする。
凛乃「あのっ、エスカルゴさん、お久しぶりです!」
霊夢似の人間の女子、清水 凛乃だ。
カルゴ「おお、凛乃じゃないか。久しぶり」
あんまり絡み無かったけど覚えててくれたのね。
それとも炎火と妹紅に合わせただけか?
それでも挨拶はしなきゃな。
それから、1人の女子と目が合う。
カルゴ「………」
???「………」
誰だこの子は。
カルゴ「…こんにちは」
???「…こんにちは」
緊張してるのかぶっきらぼうなのか、素っ気なく答えるその女子。
炎火「そうだ、言い忘れてた。エスカルゴ、そいつは俺の妹なんだ」
カルゴ「妹!?」
へー…炎火の妹か…。てことは人間か。
灯乃子「焔 灯乃子です。よろしくお願いします」
おっとぉ、急に丁寧になりやがった。
カルゴ「ご丁寧にどうも。吸血鬼のエスカルゴ・スカーレットだ、よろしく。タメで良いよ。呼び捨てで構わない」
灯乃子「わかった。私の事も呼び捨てでいいよ」
カルゴ「OKだ」
妹紅に、凛乃にサラに灯乃子…か。
ハーレムじゃん、炎火よ。
いや、それは俺もか。
炎火「ところで、さっきから聞きたかったんだが」
話が一段落した所で炎火が口火を切る。
カルゴ「ん?」
炎火「お前の膝で寝てる、その子は…?」
カルゴ「そう、今日はこの子についての用事があったんだよ。…巫月、起きなさい」
巫月の頬を優しくプニる。
巫月「ん…おはなしおわったの?」
カルゴ「まぁね。さ、自己紹介だ」
巫月「わかった…」
目を擦りながら俺と鈴仙の間に座り直す。
勘のいい炎火の事だ、もうわかってるだろうな。
巫月「みずき・うどんげいん・すかーれっとです…よろしく………ふわぁぁ…ねむいよ…」
眠そうに俺に抱き着く巫月。
カルゴ「あら…。えーと、勘のいい奴ならわかってるだろうけど、この子は俺と鈴仙の娘だ」
炎火&妹紅「えええええええええええええ!?」
案の定大声で驚く2人。
別鈴仙「驚くわよね〜」
先に話しておいたこちらの鈴仙はのほほんとしている。
炎火「そりゃ驚くだろ!というか、フランは!?レミリアは!?」
カルゴ「フランやレミリアとは今までと変わらずだ。子供作ろうなんてしてないぜ」
炎火「そ、そうか…」
灯乃子「ねぇ兄さん、エスカルゴって何人彼女居るの?」ボソッ
小声で炎火に尋ねる灯乃子。
おっと、聞こえてるぜ灯乃子よ。
吸血鬼は地獄耳なんだ。
というか、炎火がフランとレミリアの名前を出しただけで“何人彼女居るのか”という疑問を抱くあたり、勘がいいんだな。
炎火「え?確か、3人…だったよな?」
灯乃子「多っ…」
そりゃ驚くって…。
でも、6人なんて知ったらもっと驚くよな…。
カルゴ「うんそう、3にn」
鈴仙「5人よ」
カルゴ「あっ、おい…」
一同「はああああああああああああ!?」
小悪魔との事は鈴仙にも話してあるが、“付き合ってる”とは言ってない。よって、鈴仙の中では俺の彼女は5人のままなのだ。
炎火「おいエスカルゴ!今度は誰に手を出したんだ!?」
カルゴ「あ、文と霊夢…」
炎火「へ、へぇ…文と…れ、霊夢ぅぅぅ!?あの怠惰巫女か!?」
きた、怠惰巫女!
カルゴ「ま、まぁな…あはは…」
炎火「お、お前…ハーレム作ってるんだな…」
カルゴ「別に…誰も泣かせたくねぇだけだ。フランも他の皆も賛成してくれてる」
灯乃子「女たらし…」ボソッ
俺が気にしてることを…!
ガンガン言うねぇこの子は…。
炎火の妹…いや、女じゃなかったら
炎火「おいっ…」
炎火が妹を止めようとする。
灯乃子「だって、5人も彼女作るとかおかしいでしょ。女たらしじゃなかったら何なの?」
お前、女で良かったな。
男だったら
炎火「やめろっての」
カルゴ「…まぁ、そう言われても仕方ないよな。そんなのは誰よりも俺がわかってる。…それでもこっちは話し合いで解決している。余計な口出しは無用だぜ。これ以上増やそうとも思ってないし、増やしたくもない」
灯乃子「ふーん。泣かせたらタダじゃ済まさないわよ」
同じ女として、何か思う所があるのだろうか…?
カルゴ「わかっている。泣かせない為に…自分を犠牲にしてるんだよ、俺は」
一同「………………」
気まずい空気が流れる。
カルゴ「彼女は1人…それが普通だもんなぁ…。人間は…」
そもそも、イケメン俳優とかじゃなきゃここまでモテないだろ。
灯乃子「吸血鬼に、人間の何がわかるの?」
未だに喧嘩腰の灯乃子。
あまりに自分の常識を覆されたので警戒しているのだろう。
カルゴ「いや、わかるよ。元人間だし」
さり気ないその一言で、こちら側の皆は目を丸くする。
炎火「え…お前が元人間?冗談だろ?」
カルゴ「こんな冗談言って何の意味があるよ?」
そして久しぶりに、自分が幻想入りした経緯を話した。わざと“高専”、と言ったあとに“寺子屋”と言い直したので、炎火達人間にも、鈴仙達妖怪にも通じたことだろう。
ちなみに、高校ではなく高専と言うのは、ただの意地…いや、誇りだ。
別鈴仙「寺子屋帰りに薬…ねぇ…」
灯乃子「高専生だったの…!?超頭良いんじゃん…」
カルゴ「俺はその中でも下の方だったけどな」
あー、嫌なこと思い出したなぁ。
学校生活なんて思い出したくもねぇ。
炎火「吸血鬼化したエスカルゴを幻想郷に連れてきたのは紫さん、か…。ホントあの人はよくやるよなぁ」
カルゴ「そうだな。俺の弟まで連れてくるしな」
炎火「えっ、そうなのか?」
カルゴ「弟はヒビキっつーんだが、天狗になる薬とやらを飲んで白狼天狗になったんだ。そして、俺と同じく紫さんの力によって幻想入り…。今は白狼天狗最強と謳われ、犬走 椛と付き合ってる」
炎火「へー…凄いなぁ…」
ただひたすら感嘆する炎火。
炎火「エスカルゴが幻想入りした経緯を話してくれたし、俺も話すとしよう。ザックリ言うと、一回死んで、神様に転生させてもらったんだ」
カルゴ「えぇ…死んだのか…」
神様か…。
諏訪子様…元に戻っても甘えさせてくれるかな?
灯乃子「死んだと思ってた兄さんが、私が迷い込んだ先であるこの幻想郷で、元気に暮らしてたと知った時はとても驚いた」
落ち着いた口調で灯乃子が話す。
迷い込んできたのか…。
カルゴ「死…か。死ぬのは嫌だな…」
炎火「そりゃそうだよなー。でも、吸血鬼はそう簡単には死なないだろ?病気なら永琳先生が治せるんだし」
カルゴ「そう…だな。でも俺はそんなに長生きは出来ないかもしれない。この幻想郷から帰って、何回も死にかけたぜ?3回位かな」
勇儀さんの時、侵入者扱いの時、天魔の時。
うん、3回かな。
炎火「お前程の実力者がか?」
カルゴ「ああ。地霊殿に遊びに行こうとした時は勇儀さんの相手をして…腕とか色々吹っ飛んで、骨とかバッキバキに折れたりしたけどギリ勝った」
炎火「おいおい…」
カルゴ「なんで人間の炎火が勇儀さんに勝てたのか不思議でならねぇよ」
あの時の激戦を思い返す。
建物倒壊したとかクレーター出来たとか、滅茶苦茶だったよな…。
炎火「あれは…リミッターが外れてたって感じでさ…普通の状態では勝てないよ」
カルゴ「リミッターねぇ…。キレてても自分をコントロール出来るのが羨ましいよ」
炎火「…何かあったのか?」
そりゃ気になるわな…。
カルゴ「文に告られる少し前…“妖怪の山に気軽に来すぎだ”って理由で白狼天狗の大軍に襲われてさ。その次の日には、文に呼ばれたから山に行ったら、鴉天狗から“文を拘束してる”って聞かされてな」
炎火「あの文が拘束される…?ホントか?」
炎火も文のスピードを知っているもんな、そりゃ驚くよな。
カルゴ「山の裏側に宿舎があってね。その地下牢に捕えられてたんだ。俺のことをおびき寄せる餌として。そんで天狗達は俺の事を…こう…真っ二つにして殺しかけた」
手刀で左肩と右脇腹にかけて斬られたラインをなぞる。
灯乃子「そんな事されて生きてる訳ないじゃん」
炎火「いや。吸血鬼は肉片からでも再生するって聞いたことがある。…だろ?」
カルゴ「ああ、そうだ。それで、上半身から下半身が生えて、再生は完了した。だが、そのあとからしばらく記憶が無い。ブチギレて暴走したんだと思う」
炎火「なるほどね…」
咲夜さん来なかったらどうなってた事か…。
灯乃子「それで、3回目は?何があって死にかけたの?」
灯乃子が身を乗り出して尋ねてくる。
カルゴ「その事件は、天狗たちの長、天魔の部下である大天狗が黒幕でね。天魔や紫さんに買われてる俺の事が気に入らないから、俺を殺そうとしたらしい」
炎火「嫉妬かよ…」
カルゴ「そうなんだよ。天魔の話によると勝手な行動をした奴らは死刑になったみたいだけど」
炎火「こっわ…」
全くだよ、炎火。
カルゴ「…天魔の提案で、俺の力を山のヤツらに認めさせるために、天魔と戦った。その時に、とんでもない力で上空から地面に叩きつけられて、全身骨折で死にかけた。地面は抉れ、森は一部消し飛び、山さえも少し抉れた」
灯乃子「うわ……」
カルゴ「そんで、また記憶が途切れて…気付いたら紅魔館のベッドの上だった。後から聞いた話だが、引き分けに持ち込んだらしい」
炎火「そんな事あったんだな…。今度修行として天魔に挑んでみようかな?」
ふと思い立ったように言う炎火。
カルゴ「悪い事は言わねぇ。やめろ。死にたくないだろ」
炎火「そりゃ死にたくないけど、向こうだって手加減くらいするだろ?」
俺もそう思ってたなぁ…懐かしい。
カルゴ「文とはたてから聞いたが、手加減してても自分のテンションが上がると力を解放するんだとよ。俺ん時もそうだったな。勇儀さんが文以上のスピードで移動し、尚且つ剣まで使うとしたらどうだ?もちろん素手でも超強いんだぞ」
炎火「バケモンだろ」
そういうお前も十分バケモノレベルだがな。
人間にしては、な。
カルゴ「それが天魔だ、炎火…」
炎火「それと引き分けたのかよお前…」
カルゴ「まぁね。その後、訳あって体が幼児化したんだが、その時に天魔に挑んで、勝ったよ」
好き放題したのは黙っておこう。
灯乃子「よ、幼児化?」
炎火「小さくなった…のに勝ったのか?流石に嘘だろう?」
流石に疑うのか、引き攣った笑みを浮かべている炎火。
カルゴ「小さくなったのに、じゃなくて、小さくなったからこそ勝ったんだ。斬撃も避けやすくなるしね。それに、もっと強いスペルも用意してた」
炎火「どんなスペルなんだ?」
気になるか…。
カルゴ「簡単に言うと、強力な分身を3体同時に作って暴れまくるって感じかな。これで、フランと遊んで紅魔館は半分吹っ飛ばしたし、湖を更に大きくしたし、天魔にも勝ったし、守矢神社の面々にも勝った」
灯乃子「遊びのレベル越えてるでしょそれ…」
炎火「( ゚д゚)ポカーン…」
カルゴ「まぁね。これが“種族の違い”だよ、灯乃子。人間と吸血鬼の明確な違いさ」
灯乃子「ふーん…規格外だね…」
感心したように何度も頷く。
灯乃子「兄さんとエスカルゴってどっちが強いの?」
カルゴ「俺と炎火は…属性的には炎火が有利だけど、高火力ならぬ高電力で押し切れるよ。仮に能力が効かなくても、人間なら吸血鬼の身体能力でぶっ飛ばせる。とはいえ、炎火は人間だからね、力はセーブするしかないけど」
炎火「おいおい、俺もあの時より強くなったんだぜ?綿月姉妹にも勝ったし」
えっ、綿月姉妹に勝った!?
何があった!?…いや、聞かないでおこう。
カルゴ「おお、それは凄いな。ただ、自称幻想郷最速の文にはスピードで勝てないだろ?」
炎火「そうかもな…流石にあれは速すぎだ」
カルゴ「俺もその領域に辿り着いた。その速さで炎火の背後に回り込み、剣で首や心臓を刺されたら?電気ショックを流されたら?」
炎火「全部炎でガードするさ。1兆度だぞ」
カルゴ「もちろん覚えてるさ。でもそれは最高温度であって、常に出せる訳じゃ無いだろう?体力や霊力の消費も激しそうだし」
炎火「う、うむ…確かにな」
カルゴ「なら、消耗するまで十分逃げ回れるし、仮にその攻撃喰らって死にかけても暴走するからね。再生力も前より上がったし」
炎火「えー…んじゃあもう勝てないのかな?」
カルゴ「殺し合いじゃなくてスペルカードルールならワンチャンあるだろうね。けどまぁ、負ける事は無いと思う」
炎火「ケッ…。もっと修行するか…」
炎火のこと殺すなんて俺には出来んし、する気も無いけど、本気で戦いたいって気持ちはあるな。
灯乃子「へー…2人の戦うところ見てみたいな」
炎火「お、おい、そんな事言ったら…」
いつもの俺なら“よしやろう”って即OKしたな。
カルゴ「ダメだね。今は、分身に力使ってるから4分の1の力しか残ってない」
灯乃子「分身って…どこに?」
カルゴ「俺らの幻想郷に、俺ら3人の分身を置いてきたんだ。こっち来るって言ったら他の皆もついてくるだろうしね」
灯乃子「あれ?そういえば何しに来たんだっけ?」
そういえば、喋ってばっかで目的を忘れていた。
カルゴ「炎火、妹紅。このペンダントと同じやつをもう1つ…巫月の為に作ってはくれないか?」(`・ω・´)キリッ
キリッとした顔で眠っている巫月の頬を伸ばす。
炎火「わかった。時間かかるけど大丈夫か?」
カルゴ「夕方の6時に迎えが来るんだが…間に合うか?」
炎火「結構ギリギリだな…。でも、間に合わせてみせる。やるぞ、妹紅!」
妹紅「うん!」
腰を上げる2人。
別室に行くのかな。
サラ「炎火……」
サラは炎火について行く。
いつも一緒なのは幼女化しても変わらない様だ。
炎火「てゐはそろそろ仕事に戻ったらどうだ?」
去り際にそう言い残す炎火。
てゐ「は、はーい!」
そそくさと部屋を出るてゐ。
炎火のお仕置きはキツいからな。
灯乃子「そのペンダントに何の効果があるの?」
カルゴ「これには日除けの効果があってね。日光が弱点である吸血鬼も外で活動出来るようになるんだ」
灯乃子「凄っ…」
カルゴ「ああ。ホントに炎火達には感謝しか無いよ」
それから数時間、残ったメンバーで談笑した。
死ぬ前の炎火の事などなどなど…。
転生前も今と変わらない、優しくもアツい性格だったようだ。
カルゴ「おっと、もうそろそろ6時だな。炎火達はどうなったかな…」
時計は5:55を指している。
炎火「お待たせ」
妹紅「出来たよ〜!」
カルゴ「おお、2人共!巫月、出来たぞ!」
頬をつついて娘を起こす。
巫月「…ふわぁぁ…。ぺんだんと…できたの?」
炎火「出来たよ。はい、どうぞ〜」
膝をついて巫月と目線を合わせ、首にペンダントをかける。
幼い子供にも優しく接する辺り、流石炎火だよなぁ。
巫月「ありがとう!」
炎火「どういたしまして!」
巫月「みてみて!えすかるごとおそろいだよ!」
やっぱお揃いってのは嬉しいんだな。
カルゴ「ああ、そうだな!大事にしろよな」
巫月「うん!」
鈴仙「ね、そろそろ…」
鈴仙が俺の袖を引っ張る。
カルゴ「だな。炎火、俺らはそろそろ帰るよ」
炎火「おう」
親子3人で外を出ると、炎火達もついてきた。
見送ってくれるようだ。
カルゴ「急で悪かったな。今度は手紙か何か書くよ」
炎火「わかった。確かにそうしてくれた方が助かる」
灯乃子「また、色んな話聞かせてね!」
カルゴ「はいよ」
色々話すうちに、警戒心を解いてもらえた。
神様と話せるようになったというのは驚いた。
その話から察するに、その神様というのは諏訪子様や神奈子様とはまた少し違う神様の様だ。
諏訪子様にちょっと聞いてみようかな。
明日の宴会に来るかな?
紫「ど〜も〜♪」
カルゴ「うおっ…」
背後から紫さんが登場した。
炎火と妹紅、サラは兎も角、灯乃子と凛乃は驚いている。
紫「ほら、もう閉まっちゃうわよ」
カルゴ「あ、はい!それじゃまたな!」
鈴仙「バイバイ!」
巫月「ばいばーい!」
急いでスキマに飛び込む3人。
炎火「じゃーな!」
女子達「ばいばーい!」
振り返ると、閉まりかけているスキマの向こうで手を振って見送ってくれる皆が見えた。
スゥ……
スキマが閉じた。目の前はいつも通りの竹林だ。
巫月「みえなくなったねー」
鈴仙「そうね」
カルゴ「紫さん、ありがとうございました」
紫「良いのよ、別に。今度色々と手伝ってもらうから」
一体何を手伝うんだろう?
カルゴ「俺に出来ることなら何でもやりますよ」
紫「あなたにしか出来ないことよ。まぁ、準備が整ったらまた来るわね。説明もその時にするわ」
カルゴ「わかりました」
紫「じゃあね」
いつも通りスキマで帰っていった。
カルゴ「さーて。帰りますかね」
巫月「うん!」
分身を遠隔解除し、中に入る。
美鈴はいつも通り寝ている。
あとは当初の予定通り過ごし、明日の準備を始めた。
炎火側の人数多くて大変杉ワロタ( ᐛ )