人里で出会った鍛冶屋、多々良小傘に剣の製作を依頼して、丁度一週間が経った。
カルゴ「俺の剣…どんなやつかなぁ♪」
永遠亭を出た俺は、これから手に入る己の武器に思いを馳せながら、地面に突き立てた槍の根元目指して飛んでいった。
カルゴ「こんちはー!」
扉を開け、大きな声で挨拶する。
小傘「ゲッ、もう来たの!?」
小傘は作業場にいた。
目の前には剣の形をした熱そうな金属があった。
今まさに打っていたところらしい。
カルゴ「あら…まだ終わってなかった?」
小傘「うん…ごめんね、エスカルゴさんにピッタリな剣作ろうとしてたら何にすればいいのか迷っちゃって…あ、まずい、打たないと…」
慌てて振り向き、剣を打ち始める。
カルゴ「じゃあ、完成した頃また来るよ」
と、一言断りを入れて帰ろうとするが…。
小傘「ううん、もうすぐだから待ってて!なんなら近くで見てもイイよ!吸血鬼だもんね!」
もうすぐだから、と引き止められる。
うお、近くで見てイイってマジすか!
カルゴ「じゃあお言葉に甘えて…」
小傘からおよそ2m程離れた所で、小傘に打たれる剣を見つめる。
〜青年見学中〜
カルゴ「…これってさ、力を練り込むとか出来るのかな?漫画とかで見るアレ」
しばらく眺めていて、ふと浮かんだ疑問をぶつける。
小傘「うーん…どーだろ、普通の剣しか打ったことないけど…やってみたら?」
カルゴ「おう、やってみる」
とはいえ、力を出すなんてのは雷しか出来ないんだよなぁ…。ちょっと集中しなきゃ。
坐禅を組み、目を瞑って、自分から力を取り出す様を強くイメージする。
小傘「…?(何してるんだろ?寝てる?)」
その様子を見た小傘は、それを不審に思うがそれに構わず自分の仕事に戻る。
俺の中には、色んな力が混在している。
妖力、電力、魔力、霊力…。
それらを全て取り出すなんてことは無理だろうが、俺はやるぜ。
イメージすると具現化出来るのが電力。
だから、電力で俺の中にある3力………つまり、妖力、魔力、霊力を包み込む。
ビー玉3つを1キロ程の粘土で包むイメージだ。
それ程までに、それぞれの力の量には差がある。
いや、妖力は電力と同等かもしれない。
強くなればなるほど、妖力も高まるものだから。
しばらく集中すると、ある変化が起こる。
カルゴ「ぁぐっ…うぅっ…」
次第に苦痛が伴うようになってきた。
カルゴ「ぐっ……」
パリィッ……パリパリッ…
3力を包み込んだ電力は、黄色い球体となって俺の外へと出始める。
小傘「(エスカルゴの腹から黄色い玉が!?)」
超高密度に圧縮され、花火の尺玉程のサイズとなった力の塊は、打たれている剣の上に乗り、ゆっくり吸い込まれていく。
良かった……出来た………。
ドシャッ…
全ての力を放出した俺は、前のめりに倒れる。
小傘「ちょっと!?どうしたの!?」
小傘がそんな俺の肩を揺する。
カルゴ「剣を……っ…頼む…」
目が霞み、意識が朦朧としてくる。
小傘「エスカルゴさんが倒れてるのにやってられないよ!布団持ってくるから待ってて!」
ちょま…そりゃ無いぜ…。
全ての力出し切ったってのに…。
カルゴ「…剣が、冷める……早く……」
今にも気絶しそうだが、必死に剣の製作を頼む。
小傘「うぅ……わかったよ、もう!」
カルゴ「すま…ね……ぇ………」
弱々しく微笑み、瞼を落とす。
小傘Side
エスカルゴさんが倒れた…。
ホントなら、布団で寝かせてあげなきゃいけないんだけど…。でも、それだとエスカルゴさんの思いを無下にする事になるし、完成しかけている剣が無駄になる。
絶対に、完璧に仕上げてみせる!!
バヂバヂバヂィィッ
小傘「きゃあああっ!」
力の塊を吸い込んだ剣を打ち始めようとするが、強力な電気に阻まれる。
小傘「え…これじゃ出来ないじゃん…」
どうしよう……早く、早く打たなきゃ冷めて剣がダメになる…でも触れそうもない……。
どうすれば打てる様になるの…?
必死に頭を回し、一つの解決案が浮かぶ。
小傘「そうだ!アレ使えば…!」
数年前のある冬の日に、小傘は博麗神社であるものを拾った。手に嵌めろと言わんばかりに手の形をしている、謎の物体。
寒かった事もあり、それを手に装着して日を過ごした。そして、あることに気付いた。
静電気が一度も起こらない…という事に。
だが、それを取ると再び静電気が起こり始めた。
そこで小傘は学習した。
これを使うと電気を通さなくなるんだ、と。
小傘が博麗神社で拾ったモノ…それは、ゴム手袋だった。
博麗神社には、たまに外の世界の物が落ちている事がある。結界を越え、幻想入りしてきたのだ。
小傘「出来たぁー!!」
打ち続け、研ぎ、数時間掛けてついに剣を完成させる。
小傘「……けど……」
完成品を見つめる小傘の表情は、決して明るいものではなかった。
なんだろ、これ…。
自分で作っといてアレだけど…この剣、凄く嫌な感じがする…。
完成した黒き剣は、何処と無く不気味な気を孕んでいた。
綺麗だけど、見てるだけで鳥肌が…。
でも…完成したし、起こした方がいいかな…?
エスカルゴSide
小傘「起きてー。出来たよー」
小傘の声が頭に響く。
瞼が重い…体も重い…。動けん…。
諏訪子《起きろー!》
カルゴ「うひゃあっ!」
頭に大声が響き、体を起こす。
小傘「うわぁっ!びっくりしたなぁ〜…」
カルゴ「ご、ごめん…」
俺も結構びっくりしたんやで、小傘…。
小傘「完成したよ!ちゃんと力も練り込めたし」
カルゴ「マジか!」
やったぁ!!
俺の力が全て入っている剣…どんな強さだろ?
小傘「うん!アレ!」
小傘が指さす先には、黒光りする美しい剣があった。
カルゴ「おおおっ!アレが俺の剣か!」
小傘「そうなんだけど…さ……」
急に視線と声を落とす小傘。
カルゴ「どうした?」
小傘「あの剣、凄く嫌な感じがする…。なんか、禍々しい気配を感じる。危ないかもしれない…」
カルゴ「…?」
嫌な感じ?
全然そんな感じしないけどな。
カルゴ「とりあえず、お金払うよ。おいくら?」
小傘「えと…10万」
カルゴ「おっふ…」
高い…今持ってるかな…?
財布の中をまさぐる。
所持金は、10万6000円。これが全財産だ。
やはり、先週の大出費が痛い。
カルゴ「〜〜〜〜ッ!!」
くっそぉ…!
いくら物価の安い幻想郷でも、6000円であと半月…いや、あと1週間生活するのは少しキツくないか?いや、何とかしよう!
小傘「ど、どうしたの?足りない?」
表情で察した小傘は、焦る俺にそう尋ねる。
カルゴ「いや…大丈夫…」
これが全財産なもんで…。
でも、剣には変えられないな。
カルゴ「ほいっ」
小傘「毎度ありっ!(こんなに持ち歩いてたの!?それとも偶然!?)」
それじゃ、早速帰りま…あ、霊夢の所に行くんだったな。
小傘「忘れてた!鞘も作ったよ!はい!」
物陰から、刀身と同じく漆黒の鞘を取り出す。
カルゴ「おおっ!これはいくら?」
小傘「ううん、セットだから大丈夫!」
カルゴ「よっしゃ!ありがとう!」
小傘「いえいえ!これが仕事だもん!」
鞘まで準備してくれるとは…。
それは予想してなかった。
剣を手に取り、鞘に収める。
無論、嫌な感じなどしない。
小傘「そのまま持ち歩く訳にはいかないね…どうする?腰につける?」
腰に…妖夢みたいな感じかな。
カルゴ「いや、背中にかける感じで」
小傘「わかった!ちょっと貸して!」
カルゴ「はいよ」
小傘に鞘を渡し、彼女が作業する様子を眺める。
しばらくして、加工した鞘が完成した。
受け取った鞘に、剣を差して早速背中にかける。
その姿はまるで、ゼルダ○○説に出てくるリン○の様だ。
うおおお、リ○クじゃんかよこれ!
翼も動かせる!これ完璧じゃん!
小傘「サイズもピッタリ、もう大丈夫だね!」
カルゴ「うん!ありがとう!」
それから数十分ほど雑談し、俺は工房を出た。
もちろん、槍の吸収は忘れずに。
次は、博麗神社へ向かった。
霊夢Side
ザッザッ…ザッザッ…
霊夢「はぁ…つまんないの…」
霊夢はいつも通り境内の落ち葉をはいていたが、退屈に感じ、ため息をつく。
そういえば、剣が完成するのって今日よね?
あいつ、いつ頃来るんだろ…。
そもそも約束覚えてるかしら?
そこよね。そこが気になるところよね。
ま、忘れてたら夢想封印ぶっ放すけど。
1人きりの退屈な掃除を終え、縁側に座ってお茶を飲む。
霊夢「ッ!?何この気配!?」
のんびりとお茶を飲んでいた霊夢であったが、これまで感じた事の無い禍々しい気配を感じ、腰をあげる。しかもその気配は、物凄いスピードで近付いてくる。
霊夢「何か…来る…!」
お祓い棒と御札を構え、来たる外敵に備える。
しばらくすると、人里のある方角から、何かが飛んできた。背中には大きな翼があり、それで羽ばたいている様だ。
何この嫌な感じ…ただ事じゃないわね。
って……え……エスカルゴ…?
だが、境内に降り立ったのは、自分の彼だった。
カルゴ「よっ!」
エスカルゴSide
カルゴ「よっ!」
手を挙げて軽く挨拶する。
なんだ?
なんでお祓い棒と御札を構えてる?
霊夢「あんた…誰?」
警戒心剥き出しでそう尋ねてくる霊夢。
カルゴ「え?俺はエスカルゴだが?」
霊夢「嘘よ。エスカルゴはそんな禍々しい気配してないわ。あんた、偽物ね?」
また出たよ、“禍々しい”…。
そんな嫌な感じするかな?全く感じないんだが?
カルゴ「さっき小傘もそう言ってた。それ、俺の気配じゃなくてこの剣の気配だよ」
霊夢「………本当?ならその剣を寄越しなさい」
カルゴ「あいよ」
歩み寄って剣を渡そうとする。だが……
霊夢「近寄らないで!まだあんたが本物だって信じてないんだからね!投げて渡しなさい!」
えー…そんなに警戒しないでよ…。
カルゴ「落とすなよ」
そう断って剣を鞘に入れたまま投げ渡す。
霊夢「確かに……この剣から発せられてるわね。なんて禍々しいの…?ずっと持ってるとおかしくなりそう…。(エスカルゴの気配は普通通り…異常は無いようね。)もういいわ」
綺麗にキャッチし、鞘から剣を抜く事無く気配の確認だけをして投げ返す。
カルゴ「どーよ、この剣?俺の力を全てこの剣に込めたんだぜ?大変だったぜ、数時間ぶっ倒れてたんだから」
霊夢「(そんなになるまで力を出したの?禍々しい気配は、力を混ぜてしまった所から来てるのね…。)どうやって力込めたのよ?」
カルゴ「電気で全ての力を包んで、剣に練りこんだんだよ」
霊夢「(そんな事が出来るのね…。)あんた、何でこんなの作ってもらったの?色んな力が混ざってて気持ち悪い感じになってるわよ?」
カルゴ「だから禍々しい禍々しい言われたのか」
ほーん…謎が解けたわ。
霊夢「悪い事は言わないわ。使うのはやめなさい。封印しましょ」
カルゴ「ええ!?いや、俺の力しか混ざってないから危険じゃないぞ!?」
それに、10万もかかったんだぞ!
霊夢「…まだ使ってないでしょうね?」
カルゴ「素振りすらしてない」
即答すると、少し考え込む霊夢。
剣をどう扱うべきか考えているのだろう。
霊夢「…そうねぇ……。どうしても使いたいって言うなら…完璧に扱える様になるまで、私の見てるところで練習しなさい。何かあったらすぐ止めるから」
霊夢はあくまでも最悪のケースを想定している。
それは、剣の禍々しさに呑まれて人格を失って、暴走する、というケースだ。
カルゴ「え…別に、そこまでしなくてもいいんだぜ?」
霊夢「そうでもしなきゃいけないくらいその剣は危険なの。言うこと聞けないなら今ここでへし折るわよ」
カルゴ「見てて下さいお願いします」
んな事言ったら霊夢の言うこと聞くしかないだろ…。
霊夢「よろしい」
満足そうに頷く霊夢。
霊夢「私の結界を壊せたら、完璧に扱える様になったって認めてあげる。その次は二重大結界の方ね。はい」
言うなり、即座に結界を作り出す霊夢。
カルゴ「結界を2回壊す…だけ?へへっ、今すぐ壊してやるぜ!だりゃああああっ!!」
ガキィィン…バチバチバチィィッ…
カルゴ「うあっ!」
目の前の結界に切りかかるが、斬撃は阻まれ、弾き返される。
霊夢「どうしたの?今すぐ壊すんじゃないの?」
いつの間にか縁側へ移動した霊夢は、余裕の笑みを浮かべている。
カルゴ「ああ、今すぐ壊してやるよッ!うおおおおおおおおっ!!」
剣を手に入れてから2週間が経つ。
俺は完全に、剣の持つ力を完全に操れるようになっていた。
カルゴ「『霊力遷移』!!」
ドクンッ…
4力が混在している剣は、一時的に霊力のみに切り替わる。
カルゴ「はぁぁぁぁっ!!」
ズバァッ…パキィィィン…
切り裂かれた結界はガラスの様に砕け散る。
霊力のみに切り替わると、剣の属性は霊力となり、霊夢の霊力と同調し、切り裂くことが出来るようになるのだ。
カルゴ「っしゃあああっ!!」
初めて二重大結界を切ることに成功し、喜びのあまりガッツポーズを取る。
霊夢「おめでと。切り替えも早くなったわね」
カルゴ「ドヤァ…」
霊夢「口に出さなくていいから」
カルゴ「えへへ…」
一昨日までは二重大結界切れなかったんだよな。
これが成長ってやつだぜ!!
霊夢「使いこなせる様なるの早いわね…。なんて言ったっけ?その剣…」
霊夢が剣の名前を尋ねてくる。
つい先日、妖夢の“楼観剣”、“白楼剣”に倣い、名前をつけた。俺らしくなったと思う。
カルゴ「“妖魔雷霊剣”、だ」
霊夢「ああ、そんな名前だったわね。何なのよ、その単語を並べただけのような名前は」
カルゴ「俺が持ってる力の種類を並べたんだよ。妖力、電力、魔力、霊力。電だとしっくり来ないから雷にしたが」
霊夢「なるほどねぇ…」
理解しているのかしていないのかは不明だが、ウンウンと繰り返し頷く霊夢。
カルゴ「なぁなぁ!使いこなせるようになったご褒美にさ、なんかくれよ!それか、何かさせてくれ!」
霊夢「あ?」
カルゴ「良いだろ?たまには!霊夢からのご褒美ってのもさ!」
これで許可してくれたら…日が暮れるまでほっぺ触らせてもらお♡
霊夢「そうねぇ……」
カルゴ「(*・ω・*)wkwk…」
霊夢「……じゃあ……/////」
霊夢が恥じらいながら提案した考えとは…?