兵士達を蹴散らし、綿月姉妹を無力化し、飛竜を倒した俺は、結界が解除されるまで、束の間の安息を享受していた。
カルゴ《諏訪子様、本当に甘えて良いんですね?本当に甘えちゃいますよ?》
諏訪子《イイよ、おいで♪ ちゃんと出来たら甘えさせてあげるからね♪》
カルゴ《頑張りますよ。甘える為です!》
諏訪子《(正直だねぇ…♪)》
紫さん…手こずってんのかな…。
そう思った瞬間、都を覆っていた薄紫色の結界が歪み、そして消えた。
カルゴ「あ、消えた」
諏訪子《よーし、潜入だー!行けー!》
上層部の者……国のトップ的な奴ってことだよな。
うーん…何処にいるんだろう?
偉そうな身なりしてるやつを片っ端から?
それしかないのか…?
標的の探し方を思案していると、目の前にスキマが開いた。
紫「お待たせ…。随分待たせたわね…」
中からはゲッソリした様子の紫さんが出てきた。
カルゴ「いえ、大丈夫ですよ。休憩したかったので」
立ち居住まいを正して言葉を返す。
紫「なら良かったわ…。さぁ、あとは…」
カルゴ「都に潜入し、トップをはじめとする数人の暗殺ですよね、わかってますよ」
紫「…行ってきなさい」
カルゴ「はい」
紫さんに一礼し、都へと歩を進める。
諏訪子《でも、このまま入るの?》
カルゴ《もちろん、違いますよ。隠密行動用に、レミリアに技教えて貰ったのでそれ使います》
諏訪子《あれか!》
カルゴ「隠密『スカーレットデビル』!!」
ポンッ!
スペルカードの詠唱をすると、軽く爆発が起き、俺の体は消え、次の瞬間には蝙蝠と化していた。
カルゴ「…………」バサバサ…
よし、蝙蝠になれた。
あとはこのまんま潜入するだけだな。
変身が完了した俺は都へと羽ばたく。
都まではおよそ1キロほど。
これは、レミリアの『きゅうけつ鬼ごっこ』の真似である。本人から教えて貰った。
そーいや、なんでレミリアのは符名がついてないんだろう?○符とか○○とか。
まぁなんでもいいけどね。
諏訪子《ねーねー、エスカルゴの蝙蝠姿見てみたいな〜♪》
カルゴ《今度甘える時にお見せしますよ》
諏訪子《楽しみにしてるね♪》
カルゴ《ういっす》
なお、脳内で会話は継続して出来る。
が、言葉は発せない。
蝙蝠の口の構造は発声に向いてないのだ。
カルゴ「………」バサバサ
遅い…遅すぎる…。
中々都へ辿り着けず、若干イラついている。
ただ、この形態だと遅いと言う訳では無い。
普段が速すぎるだけだ。
普段の形態だと、この姿よりも筋肉量もあり、翼も大きく、更に巨大な翼を作るスペルまであるため、蝙蝠の姿よりも速く飛べるのだ。
この姿でスペルの使用は出来ない。
あくまでも隠密行動の為のスペルだ。
解除は自分の意思で可能だ。
カルゴ「キィ……」バサバサ
ようやく門前に到着した俺は一息つく。
わざわざ門から通る必要は無い。
今は蝙蝠なのだから。
さて、どこ行こうか…?
偉い奴が居るのはデカい所だと相場は決まってるが、何処も彼処もデカいんじゃ、虱潰しに探すしか…。
諏訪子《ねぇねぇ。その中でさ、特に目立つ所とか、特に大きい所は無いの?少しだけ他と違う装飾の建物とかさ》
カルゴ《そうですねぇ…。真正面に天守閣の様なものが。特別大きいという訳では無いですが、装飾が若干派手かも…》
諏訪子《じゃあそこに行ってみよ!》
カルゴ《はい》
そうか…大きさだけじゃなくて、総合的に見て判断すべきなんだな。視野を広く持とうぜ、俺。
心の中で苦笑いし、天守閣の様な建物へ向かう。
窓は全て障子張りになっている。
うーん…どう侵入しようか?
やっぱ窓からは無理か。仕方ない、入口探そ。
滑空して高度を下げ、地表3m程の高さを飛ぶ。
世羅「遅い…月霞殿は何を…」
大将の帰りを待ちかねた世羅が出てきた。
周囲には数人の護衛がいる。
喜ばしいことに、扉は開け放したままである。
好機!!!
カルゴ「キィィィッ!」
世羅の頭上を猛スピードで飛び、建物内に侵入する。
ハーッハッハッハッ!侵入成功だぜ!!!
世羅Side
護衛「あ、蝙蝠が…」
護衛「入ってしまいましたね」
世羅「何故蝙蝠が?………まさか敵か!?」
一旦はスルーしかけた世羅であったが、敵だという可能性を思い付き、血相を変えて引き返す。
護衛「御華影様!?」
急いで屋内へ戻り、護衛もそれを追う。
だが、時すでに遅し。
既に蝙蝠は建物の奥へと消えていた。
護衛「あの蝙蝠が敵などありますかね…?」
世羅「以前、ある文献で見た事がある。吸血鬼は自らの肉体を蝙蝠へと変えることが出来る、と。綿月姉妹のその後の報告によれば、敵は吸血鬼。その可能性は十分過ぎる程にある」
護衛「つまり、敵が侵入した可能性が…?」
世羅「いや…可能性では無く、もはや確定と考えていいだろうな。月霞殿や綿月姉妹が帰ってこないのがその証拠。……既に…門外で…ッ」
悔しそうに唇を噛み締め、言葉を切る。
護衛「そんな!」
護衛「あの御三方が…」
世羅「今すぐ、都に残っている全兵士、全幹部に伝達せよ!蝙蝠を探し出し、見つけ次第即座に殺せと!玉兎達にもだ!!」
護衛達「はッ!!」
エスカルゴSide
カルゴ「キュイィィ…」
見つけた…!
あれが月の都のトップ、皇帝だ!!
俺は、建物内を飛び回り、やっとの思いで皇帝らしき人物を発見した。
何故そう判断したのかというと、ド派手な玉座に座って酒を煽っており、その前で女が舞を舞っているからだ。
よし、まずは皇帝から殺す!
カルゴ「キィキィ…キィ…」
弱々しく鳴きながら部屋へ堂々と入る。
一同「ん?」
その部屋にいた全員が此方を見る。
皇帝は酒を飲むのをやめ、女は舞を止める。
皇帝「なんじゃ此奴…どこから入った?」
カルゴ「キュオォォォ…」
フラフラと飛びながら、盃を持っていない方の手に留まる。
皇帝「ふはははは!畜生までも朕に魅了されたか!!」
カルゴ「キュイィ…」
んな訳ねぇだろクソジジイ。
女「流石
なるほど、この皇帝はメイテイっていうのか。
酒に酔って酩酊してるのか?ぷふふっ…。
よし殺そう。
ガブリッ
腕に思い切り噛み付く。
明帝「痛っ…何じゃ此奴、朕の血を吸っておる」
ヂュウウウウ……
おえっ、クソマズッ!!!
吐きたい!!
◥(ฅº₩ºฅ)◤、;'.・ オボロロロロロロロロロロロロロロロロ
女「急に入ってきたクセに明帝様の血液に口をつけるなんて…図々しいっ!!」
明帝「これこれ、そのようなことを言うでない。此奴とて腹が減っておるのだろう。満足するまで吸わせてやろうぞ」
女「………」
数分後
明帝「まだ吸っておる…そんなに朕の血が気に入ったか?」
気に入るかよクソボケジジイ、寝言は寝て言え!
腹がタプタプだよクソが!!
殺したら即吐いてやる!!
女「そろそろ引き剥がした方が…」
明帝「そうじゃな。皮膚の色が変色してきておるし、何より頭がクラクラしてきた…。すまぬ、離れてくれ」
体を鷲掴みにし、引き剥がそうと試みる。
チッ、仕方ない!
ポンッ
明帝「むぉっ!」
女「きゃっ!」
爆発したかと思うと、玉座の前に剣を背負った1人の青年が現れた。
カルゴ「おっ……おぇぇぇぇ……」
口を開けると、自然と血が溢れてきた。
身体までもこの血を拒絶しているのだ。
溢れてきた血は床を真っ赤に染める。
明帝「何じゃお主は!」
カルゴ「お前の命、貰い受ける」
口元を拭い、指を指す。
明帝「何だと─────」
次の瞬間には、明帝の胴体に大穴が空いていた。
女達「きゃあああああああ!!」
本当は、失血死させるのが良かったんだけどね。
こんなに
女「そ、そんなっ……」
女達は腰を抜かしている。
カルゴ「お前には手を出さない。片付けておけ」
そう言い残し、部屋を出ようとするが。
兵士「居たぞ!蝙蝠じゃない、吸血鬼だ!!」
部屋の入口に大勢の兵士が集まってきた。
手には、昔の日本人が使っていたような武器を持っている。刀と銃が合わさった様な武器だ。
カルゴ「やべ…雷鎧『サンダーアーマー』!!」
兵士「一斉射撃、よーい!……発射!!」
ズダダダダダダダダ……
おっ…効いてない。
よっしゃ、流石俺の鎧だぜ!
カルゴ「上の奴らに用があるんだが」
撃たれながら兵士に問いかける。
兵士「なっ…効いてないだと!?」
兵士「いいからもっと撃ちまくれ!!」
兵士「うおおおおおっ!!」
1人くらい質問に対する反応してくれても…。
カルゴ「殲滅『Breath of Thunderstorm』!!」
腕を振るい、前方向を薙ぎ払う。
壁は抜け、柱は折れ、兵士は吹き飛ぶ。
カルゴ「はぁ…仕方ない。また虱潰しに探すか」
呟き、また蝙蝠となってその場をあとにした。
世羅Side
マズい……この状況、非常にマズい。
都に入られた。これはもう間違いないだろう。
あの蝙蝠、急に加速してこの中に入った。
扉が開くのを待ち構えていたのだろう。
いや、それだと非効率的だな。
潜入する為の入口を探していて、偶然私が出てきたからその隙に…この中……に……。
ある事に気が付き、ピタリと足を止める。
待て。という事は、敵を招き入れたのはこの私?
そんな………嘘だろう?
…そうだ、これはあくまでも可能性の話だ。
首を横に振り、再び足を前に動かす。
迎う先は、上司…皇帝のところだ。
私のせいな訳がない。
私は絶対の軍師、御華影 世羅。
そのようなミスは絶対に無い。
そう考えを固めた世羅だが次の瞬間、風切り音が聞こえたと同時に首が飛んだ。
エスカルゴSide
カルゴ「よしっ、討伐数⑨っと…」
剣を振り、血を払って鞘に収める。
それにしても、何だコイツ…。
他の奴よりとびきり偉そうな格好しやがって。
しかもこの羽扇…諸葛亮気取りか?
軍師なのか?
…何にせよ、飛竜より頭は良いだろうな。
皇帝を始末した後、いったん外に出、丁度そこで出会った玉兎達と対峙した。
そこでレイセンとも出会ったが、他の玉兎を気絶させた後に大まかな事情を教えた。
永琳の名を出すと、大人しく色々教えてくれた。
八意永琳の影響力を思い知らされた。
お偉いさんの数を尋ねた所、綿月姉妹を除いて⑨人だそう。その中には当然皇帝も含まれている。
偉いか偉くないかでは服装を見ればわかるそう。
上の立場なら装飾品も派手だというのは、やはり何処の世界でも同じなのだ。
カルゴ「Mission Clear♪」
上層部の者の殺害という目的は達せられた。
あとは帰るだけだな。
カルゴ「紫さーん!」
俺は廊下で叫んだ。
とんでもなく今更感ですが、クレイの名前の由来載せておきます。物忘れって怖いですね(確信)
何故今思い出したかと言いますと、過去話を読み返したからです…(汗)
夜符「デーモンキングクレイドル」
夜王「ドラキュラクレイドル」
これらはレミリアのスペカ名ですが、その中にある“クレイドル”から取りました。
クレイドール…そのまんまですね…w
翼がフランのと酷似してるというのは、“ドール”という共通点からです。