廊下で紫さんを呼ぶ。だが、現れる気配はない。
カルゴ「あれ…?」
諏訪子《どうしたの?》
カルゴ《あ、いえ。紫さんが来ないので…》
諏訪子《あらら…》
カルゴ《探してみますかね…来て貰ってばかりも申し訳無いですしね》
諏訪子《それがいいね!》
軍師のような男の遺体を廊下の隅に寄せ、手近な部屋の窓から外に出る。
カルゴ「うーん、綺麗な空気だ…」
諏訪子《幻想郷とどっちが良い?》
カルゴ《んー…そうですねぇ…幻想郷ですかね。こっちの空気は、僅かに何かの匂いが混ざってるので、新鮮に感じます》
諏訪子《なるほどねー》
はよ探さなきゃ…夜中になっちm…
紫「待たせたわね」
背後から突然紫さんの声が。
カルゴ「まーた背後から……。兎から聞き出して聞いた、偉そうなやつ8人の暗殺、完了です。大将も合わせれば⑨人です」
紫「お疲れ様。さぁ、帰りましょうか」
目の前にスキマを開く紫さん。
カルゴ「そうですn……あれ?月を支配するとかどうとかって…」
紫「…あなた、綿月姉妹を殺ってないでしょ?」
カルゴ「はい」
だってそーゆー約束だもん。
つーか、女を殺すのはなんかな…。
月の重鎮共はみんな男だったから良かった。
紫「あの2人が居る以上、月の乗っ取りは無理。全く、肝心な所で甘いんだからあなたは…」
不満そうな声を漏らす紫さん。
カルゴ「なんかすみません…。でも、永琳とそういう約束してるので…」
紫「仕方ないわね…。でも、かなり苦しんでくれてるからそれで良しとしましょうかね」
カルゴ「ありがとうございます」
内心、ほっと胸をなでおろす。
紫さんの事だから、「あなたが殺らないなら私が殺るわ」などと言いそうだと思っていたからだ。
紫「なんであんなに悶え苦しんでいるの?」
未だ地面に倒れ伏し、顔を歪めている姉妹を指さす紫さん。
カルゴ「脳の記憶を司る部分に電気を流し、その人の中にある悪い記憶を鮮明に再生させているんです」
紫「へぇ…なるほどねぇ…。なまじ長く生きてるから、その分悪い記憶も多そうね♪」
楽しそうに口元を歪める紫さん。
カルゴ「そうですね。あの苦しみは、誰かに強い刺激を与えられるか、全ての悪い記憶の再生が終わるまでいつまでも続きますよ」
以前、これを使ったあとに天子を起こした時は、電気を流して起こしたので“強い刺激”に入る。
これは一種の催眠だ。
催眠から覚ますのにはそれ相応の刺激が必要だ。
紫「あらあらあら…♪ ザマァ無いわね♡」
満足げに扇子を扇ぐ。
それを見、豊姫の扇子を思い出して思わず身体をブルッと震わせる。
俺は見てないけど…多分俺の前の俺はそれを食らったんだろうな。俺が出てきた時は、豊姫が扇子閉じた瞬間だったから。
紫「スッキリしたわ♪」
カルゴ「それは良かったです」
ふぅ…2人の命だけは助かったか。
紫「しかも、都の立て直しという仕事も出来た。…凄く忙しくなるでしょうね♪」
カルゴ「あはは…」
紫「殺すよりもこっちの方が良かったかもしれないわね。過去の記憶に苦しめられる上、仕事が山積みだなんて♪」
カルゴ「…そうですね。さて、帰りましょうか」
紫「ええ、そうね。行きましょう」
スキマを開いてさっさとその中に入る紫さん。
俺はというと、紫さんを急かしたくせに、スキマを前にしてまだ月の景色を眺めている。
殺伐とした月面、古代中国風の都。
これらを目に焼き付けておきたかったからだ。
また、この軽い重力とももうおさらばなのだ、と考えると、“戻りたくない”とも考えてしまう。
カルゴ「……いや、帰ろう。俺には、あいつらが居るんだ。帰る場所も…」
首をゆっくり振って自分の考えを否定する。
それに、月に俺の居場所は無い。
最後に一言、「地球は青かった」と、ソビエト連邦のユーリイ・ガガーリンの名言を叫んでから、スキマヘ入った。
ずっと裏側に居たので見れていないが。
スキマを抜けるとそこは、よく見知った永遠亭…では無く、博麗神社だった。
カルゴ「博麗神社だ」
紫「遅いわよ…」
カルゴ「さーせん」
夜空には煌々と輝く満月がある。
つい数秒前まであそこに居たなんて、夢の様だ。
月、かなり高いな…。
夕方に出たというのに、もう夜中なんだな…。
霊夢「ねぇ」
満月を見ていると、背後から霊夢の声が聞こえた。
カルゴ「あれ、起きてた─────」
バチンッ…
振り向くと同時に、左頬に激痛が走る。
カルゴ「っ……何すんだよ…」
ビンタされたのか…。
力加減しろよ、首もげるかと思ったぞ…。
頬を押さえながら霊夢に抗議の目を向ける。
だがそこには涙目の霊夢が居て、一瞬何が何だかわからなくなる。
カルゴ「えっ……ちょ、何で泣いて……」
霊夢「何で月なんかに行ったのよこの馬鹿ッ!」
え…えぇぇぇ……そう言われても…なぁ…?
カルゴ「ダメ…なのか?」
霊夢「ダメに決まってるでしょ!?前に言ったわよね!?月は危ないって!!」
カルゴ「…言ってたね」
霊夢「しかもたった1人で都に潜入ですって!?バッカじゃないの!?」
涙ながらに大声で捲し立てる。
紫さんに聞いたか…。
カルゴ「別に良いだろ、そんなの…上手くいったんだしさ…」
霊夢「良くないっ!!そんな所に行くのに、何で私に黙ってたのよ!?」
そう言えば言ってなかったな…こりゃしくったぞ俺…どうする…?
カルゴ「それについては謝る。…ごめんなさい」
深々と頭を下げ、足元に広がる石畳を見つめる。
霊夢「謝罪なんか求めて無いわよ!!私が言いたいのは、なんで私を連れていかなかったのかって事よ!!」
カルゴ「それはそのっ……危ないから……」
霊夢「その危ない所に自分1人で行っていいとか思ってんの!?」
カルゴ「紫さんも居た」
紫「ちょっ…」
霊夢「どーせ結界の解除とかで、そのほかの事はあんたに任せっきりだったんでしょ!?そんなの一緒に行った内に入らないわよ!!」
気まずそうにそっと視線を逸らす紫さん。
カルゴ「ごめんってば…。もう行かないから、許して欲しい…」
霊夢「まだわかってないわねぇ…!」
カルゴ「えぇ…?」
霊夢「行くとか行かないとかじゃなくて!あんたを1人になんて絶対にさせないから、何かあったら絶対私に言いなさい!!」
カルゴ「でも…」
霊夢「でもじゃない!あんたが危険な所行く時は私も一緒に行くのよ!!あんたは私と一緒に居るの!!異論は認めないわ!!」
目の前に歩み寄り、人差し指で俺の胸を突く。
カルゴ「…わかったよ。ごめんな」
霊夢「わかったんならいいわ。さ、寝るわよ」
背を向けて中に戻ろうとする霊夢。
カルゴ「おやすみ。また来るよ」
霊夢「…は?こんな時間に帰るの?一緒に寝るわよ」
カルゴ「え?」
霊夢「私に言わなかった罰よ」
カルゴ「…はい」
寝床を提供してくれるのか…。
なんか、申し訳無いな。
霊夢「でも、罰だからアレもキスも無しよ」
カルゴ「わかってる。それやるために霊夢のとこ来てる訳じゃないからな」
結局そのまま、霊夢と共に夜を過ごした。
翌日早朝、太陽が昇る前に霊夢に別れを告げ、永遠亭に戻った。
だがその後、衣類を入れてあるカバンを忘れたことに気付いた俺は、また次回月に行くまでのタイムカプセルとして埋めておく事にした。
先程(?)、私の友人が小説投稿を始めました。
初めてにも関わらずかなりの良作ですので、皆さんも是非、目を通してみて下さいね。
作者…………けんちく
タイトル……忌み子と呼ばれた青年が幻想入りしてほのぼのする話
なお、小説投稿を勧めたのは私です( ̄▽ ̄)ニヤリ
虹晴先生に勧められたのと同じように…。