「カレーは辛ぇ」以来ですなwww
カルゴ「オラどうしたどうしたァ!」
剣を縦横無尽に振り回し、天狗の持つ太刀をいなしては反撃、いなしては反撃を繰り返す。
ヒビキ「うおっ、くっ……」
次々と繰り出される凄まじい連撃に、ヒビキは苦悶の表情を浮かべる。
そして、太刀を大きく弾かれ、隙が生まれる。
カルゴ「そ・こ・だァァァッ!!」
ヒビキ「ゔっ……」
すかさず剣の腹をヒビキの腹にめり込ませ、弟を気絶させる。
巫月「わぁー!えすかるごがかったー!」
鈴仙「流石エスカルゴねっ!」
カルゴ「にひひ…」
立会いを見ていた巫月と鈴仙に、笑顔でピースサインを送る。
ふぅ…少し手こずったかな。
強くなったと豪語するだけあって、前よりも攻めが鋭くなってきてたな…油断したら負けそうだ。
カルゴ「よーし…次は誰だァ!!」
剣を肩に担ぎ、周囲の天狗を見回しながら大声で呼びかける。目が合った天狗達はバツが悪そうに目を逸らす。
将輝「俺っス!!」
そんな空気の中、呼びかけに待ってましたとばかりに将輝が反応する。
天狗「よくあんな堂々と言えるな…」
天狗「ああ…天魔様すら下したあのエスカルゴ様相手に、よくもまぁ……」
将輝の堂々たる態度に圧される他の白狼天狗達。
カルゴ「修行はこれ位積極的な方がいい。お前らもどんどん来い。俺がここにいる間はいくらでも相手してやる」
天狗達「は、はいっ!」
声を上ずらせて返事をする天狗達。
あぁ…どうしてこんなことに…。
事の発端は、小一時間ほど前に遡る。
月へ攻め入ったあの日から数日。
さしてやる事が無い俺は、恋人達や娘と散歩し、遊び、必要があれば診療所の手伝いをするという平和な日々を過ごしていた。
カルゴ「平和だねぇ…」
鈴仙「平和ねぇ…」
巫月「?…へーわだねー♪」
上海「シャンハーイ♪」
蓬莱「ホラーイ♪」
俺達は、親子3人と人形2人で、優雅に空の散歩を楽しんでいた。
カルゴ「このまま空飛ぶだけってのもアレだし、どこか行かないか?」
ふと思い立った事を口に出し、意見を求める。
巫月「いくー!いくいくー!」
鈴仙「良いわね!」
なんか家族サービスっぽくっていいな。
カルゴ「どこ行く?」
巫月「あの、おっきいおやまのなか!どうなってるのか、みてみたい!!」
元気よく妖怪の山を指さす巫月。
巫月「いっつもけむりでてるんだもん!」
カルゴ「おっふ…」
山の中とは…予想してなかった答えだな…。
妖怪の山…あれは火山だ。
とすると当然、中にはグツグツと煮え滾る熱〜いマグマがあるという訳で…。
カルゴ「あそこには熱ーいのがあるから、中には入れない。危ないからな」
巫月「ぶー…」
ぷくっと頬を膨らませる巫月。
可愛い。ただただ可愛い。
鈴仙「エスカルゴが守るから大丈夫じゃない?」
カルゴ「それがダメなんだよな…暑い中だと俺の能力は大して役に立たないんだ。それに、吸血鬼は暑いのすらダメだ」
鈴仙「あらら…」
巫月「じゃあ、うえからのぞくのは!?」
この提案にはOKした。
という訳で、次は火口へ向かう事にした。
だがそんな時、正面から見覚えのあるツインテールの鴉天狗が来た。姫海棠 はたてだ。
はたて「エスカルゴさん、久しぶり」
前に来るなり急停止したので俺ら3人も急停止を余儀なくされた。
カルゴ「おう、久しぶり」
はたて「急で悪いんだけど、ちょっと頼まれてくれない?」
カルゴ「んぉ?」
はたての話によると、天狗達のダラけように天魔がブチ切れ、文の発案によりその場は収まったのだとか。文の提案とは、“俺に厳しい稽古をもらう事”だそう。
カルゴ「天狗達に剣術指南?俺がか?」
はたて「その他の技術も含めて、ね」
えぇぇ…折角の散歩中なんだし…それはちょっと困るというかなんというか…。
カルゴ「すまないが、教えるのはちょっt…」
巫月「えすかるご、おしえるの!?けーねせんせーみたいになるの!?すごーい!」
カルゴ「よっしゃ案内しろはたてぇ!!」
はたて「(チョロい…)」
鈴仙「エスカルゴ……(呆)」
因みに、巫月は慧音の寺子屋に通い始めている。
送っていった時は、本当にチルノ達バカルt…妖精や妖怪ばかりで驚いた。
その後の慧音の話によると、巫月は国語と算数が得意で歴史が苦手なのだとか。人付き合いは一人前だそう。だが、娘が己の過去に酷似しているというのは、聞いていてとても危機感を覚えた。
山に着いて、はたての案内で一度天魔に謁見し、「乱れた天狗達を、剣術指南を通して厳しく指導してくれ、半殺しまでなら構わない」という主旨のことを言われ、天魔がどれほどブチ切れているのかがわかり、現在に至る。
死屍累々と(死んでない)倒れている白狼天狗達。
短時間のうちに200名は越えている。
カルゴ「次は誰だ?」
周りを見回しながら問う。
天狗「おい、お前行けよ」
天狗「え、俺がか!?」
小声で話す声も、地獄耳の吸血鬼には筒抜けだ。
カルゴ「おい、そこのお前。誰かに勧める前に自分で来い」
天狗「…はい…」
壁際で仲間と話している者、眠そうにうつらうつらとしている者。
娘や鈴仙が気になるのか、チラ見している者。
それらを見てふと思う。
確かにダラケてる。
これでは天魔がブチ切れるのも無理は無い。
俺も切れそうだ。
見ててイライラするぜ。
修行の時くらいそれに集中しろ。
そしてやはりと言うべきか、俺が剣術指南をすると言って志願者を募った時、真っ先に名乗り出たのは弟のヒビキだった。
あとは将輝、椛、楓の順で続いた。
それからは誰も、自分から名乗り出ようとはしなかったので、俺が指名した。
つまりは、やる気あるのはいつもの4人なのだ。
カルゴ「はぁ…これは酷い。まさか剣術ですら俺を下せないとは…。よし、次行こう」
巫月「おー!」
白狼天狗の宿舎を出、今度は鴉天狗の宿舎へと向かう。
鈴仙「最初の4人以外、みんな秒殺だったわね」
カルゴ「仕方ない。天魔の言ってた通り、怠けてた結果だ。まともに出来た4人だけは、しっかり修行してたんだろうな」
鈴仙「うんうん」
次は鴉天狗か…さっさと終わらせよう。
天魔に頼まれた仕事は2つ。
白狼天狗達への指導と、鴉天狗達への指導だ。
指導とは言うけれど、向かってくる天狗達をただ倒してるだけだから、力の差を見せつけるだけの行為と変わらない気がするが。
これが終わったら「報告などしなくていいから帰って良し」、だそうだ。
頼むだけ頼んで何なんだこれは…とは思ったが、山のトップに頼まれるというのは誇れる事だと思い直した。
2時間後
はたて「お疲れ〜」
文「お疲れ様ですエスカルゴさんっ!」
カルゴ「おっす」
数秒〜1分に1人を捌いていったおかげで、そこそこ多いにも関わらず2時間ほどで終わった。
鴉天狗達は、白狼天狗達とは違って己のスピードを活かした動きをするので、最初こそスピードに惑わされたが、すぐに慣れた。
おかげで、1人を捌く時間が短縮された。
こちらの指導は、俺自身の修行にもなった。
カルゴ「そんじゃ、天魔様によろしくな。俺らはこれから散歩の続きするから」
文「はいっ!ではまた明日!」
はたて&鈴仙「(明日…?)」
無論、毎朝行う新聞配達時の会話の事である。
カルゴ「おうよ。行こうぜ」
巫月「うんっ!」
次の日
カルゴ「何で俺が…」
いつも通り早朝に文と話していた俺。
そんな中、文から驚くべき事を聞かされた。
なんと、もう一度山に来て指導…もとい、天狗を選んでほしいのだそう。
文「いや〜…すみませんが、私に言われても…。なんでも、有事の際に備えて、超が沢山つく程の精鋭部隊を作りたいと仰っていまして…」
カルゴ「天魔様のとこの門番は?あいつらは結構骨があるぞ」
文「ええ…私もそう言ったのですが、門番ではなくちゃんとした精鋭部隊が欲しいと…」
気持ちは分かるけど…昨日の今日で俺に頼むか?
頼りにされるってのは有難いけど、フラン達と過ごす時間がァァァ…。
だが、そういう時に断れないのが俺だ。
カルゴ「しゃーないな…わかったよ。折角だから一緒に行かないか?」
文「はいっ!じゃ、あとで迎えに来ます!」
カルゴ「ほいよ」
昼過ぎ────天魔の屋敷
天魔「また急に呼び出して申し訳ない」
カルゴ「…はい」
はぁ…結局また屋敷に呼ばれるのか…。
先程、文に迎えに来てもらったのだが、天魔の伝言を貰っていたらしく、また屋敷に呼ばれる事になったのだ。
天魔「度々済まないな。呼んだ理由は…射命丸、話してあるな?」
文「はい」
天魔「なら話は早い。最近、天狗達の様子を見たのだが、実に弛んでおる。それで昨日お主に頼んだ訳じゃが…実際に立会ってみてどうだった?まともなのはおるか?」
どうって…正直に言っていいのかな?
天魔「正直に言うがいい。天狗共を罰するつもりなど無い」
本当かな…?
「怒らないから言ってご覧」って言うくせに怒るパターンのやつじゃないよね?
まぁいい、俺は悪くない。
カルゴ「はい。まずは白狼天狗ですが、私の弟のヒビキ、その恋人の犬走 椛、弟の部下の犬渡 将輝、同じく犬走 楓しかまともな者がおりません。その他ははっきり言ってダメです、弛んでます」
天魔「あれだけ居てたったの4人か……。いくら何でも、ちと少な過ぎるのではないか?」
カルゴ「少ないのは、弛んでいた代償としか言えません。さらに、その4人の事は制するのに数分かかりましたが、他の天狗達はほんの数秒で制せましたから…やはりその4人だけかと。少ないのは鴉天狗達と合わせて人数をカバーするのが良いかと思われます」
天魔「鴉天狗と白狼天狗を合わせるのはあまり気が進まんな…。お主も知っておるだろう?種族上の対立などの事…」
気まずそうな顔をする天魔。
対立というか、アレだよな。
鴉天狗が白狼天狗を見下してるってやつ。
カルゴ「いえ、相応の実力がある者は、種族なぞ気にしないものだと思います。そのような事をいちいち気にするような輩は、所詮その程度という事です。白狼天狗がそれを気にするのは、鴉天狗からの圧力ゆえ。鴉天狗さえそれをやめれば、その対立もきっと無くなりましょう」
流れる水のように滔々と述べる。
天魔「ふむ…。よし、そうしよう。やはりお主に話して良かった」
カルゴ「恐れ入ります」
正座したまま深々と頭を下げる。
数十分後
天魔の呼びかけにより、精鋭部隊となる予定のメンバーが集められた。集められた場所は、屋敷内にある道場…過去に俺と天魔が戦ったところだ。
メンバーは、ヒビキ、椛、将輝、楓の4人プラス鴉天狗6人の、計10人だ。
天魔「少ないのう…。エスカルゴよ、お主が見込みありと選んだのはこれだけなのか?」
カルゴ「はい」
天魔「ふむ…」
俺と天魔は、横並びに並ぶ10人の前に立っている。
ヒビキ「(兄貴と天魔様が並んでるってどういう事なんだよオイィィィ!?)」
将輝「(えぇっ!?俺、エスカルゴさんに選ばれたのか!?やべぇ、嬉しくて泣きそう!!)」
椛「(これまでの頑張りが報われたような気がします…。もっと精進せねば…)」
楓「(えぇぇ…緊張するよぉ…)」
やっぱり、みんな少し緊張しているんだな。
表情が硬い。
俺も初めて天魔に会った時はこんなだったな。
天魔「これこれ、そんなに緊張するでない。よしエスカルゴ、ここで一言、なにか頼む」
カルゴ「え」
急に無茶振りすんなやコイツぅぅぅ!!
カルゴ「あー…えーと、ここにいる10人はこれから、天魔様直属の部下となる。種族なんてのは考えず、互いに修行に励み合う様に。以上」
ヒビキ「(直属ぅぅぅぅ!?)」
椛「(なっ…なんと…)」
将輝「(なんでぇぇぇ!?!?)」
楓「(私なんかでいいのかな…)」
表情には出さないが、内心で激しく動揺している天狗達。天魔直属の部下になるという事は即ち、大天狗と並ぶという事だ。
あくまでも身分上の話ではあるが。
カルゴ「あと、鴉天狗達に言う事がある」
鴉天狗達「はい」
カルゴ「ここに居る2人の女には既に彼がいる。変な気は起こすな」
鴉天狗達「はい」
表情一つ変えず淡々と返事をする鴉天狗達。
それから数時間、天狗達は俺らの見ている所で修行をし、それを見た天魔の感想は────。
天魔「おいエスカルゴ、これが精鋭か?」
とんでもない呆れ顔でこちらを見上げる。
もちろん、そんな事言われても俺には「はい」としか返せない。
天魔「ふむ…まぁよい。手本見せるぞ、エスカルゴよ」
カルゴ「私と天魔様で…ですか?」
天魔「他に誰がおる。さぁ、その禍々しき剣を抜け。そして構えろ」
カルゴ「…?何故禍々しいと感じるのです?」
鞘を霊力で強化したから、誰も感じられないはずなんだけどな…。
天魔「邪悪な気配が漏れてきておるぞ。隠してるつもりか?」
カルゴ「…そうですか…」
小さく溜息をつき、剣を構える。
天魔「よし、行くぞっ!!!」
カルゴ「うあああっ!」
そして、例によってテンションの上がった天魔は屋敷を破壊し尽くし、分身の技によってなんとか天魔を鎮めたのであった………。
次は、あのお話でのIFルートを書きたいと思います。