あー、例大祭行きたいなぁぁぁ!!
クッソォォオオオオオッッ!!!
ある日の早朝──────博麗神社上空。
カルゴ「はー、そろそろ帰ろうかなぁ。そろそろ霊愛起きる頃っしょ」
早朝自主練を終えた俺は、剣を鞘に仕舞って一息つく。
分身「そうだな。それはそうと、ずっと聞きたかったことがあるんだが、聞いてもいいか?」
カルゴ「何?言ってみ」
分身「“博麗神社例大祭”ってなんだ?」
カルゴ「っ…」
神社へと向かっていた翼を止める。
カルゴ「…外の世界でやってるイベだ。何で?」
分身「お前、よくその事考えてんだろ」
カルゴ「………………」
分身「(聞いちゃまずかったか…?)」
カルゴ「俺…そんなに考えてたか?最近は育児で忙しいんだが?」
分身は本人の深層心理まで見通せる。
故に、本人が自覚していない思考でも読み取ることが可能である。
分身「忙しいとか忙しくないとか関係無く、お前よくその事考えてるぜ?まさかとは思うがお前…外に未練でも残ってるのか?」
カルゴ「……………」
ピタリと言い当てられては、“違う”と反論は出来ない。
分身「図星か!はははははっ、下らねぇ!本物が目の前に居るんだ、外の事なんか忘れて、こっちでの生活を楽しもうぜ?」
下らない。
そう聞いた途端、俺の中で何かが切れた。
カルゴ「下らない…だと? 今そー言ったかよ?」
分身「言ったが?」
カルゴ「よし決めた、後でぶっ殺す。解除」
分身「(吸収じゃないの!?)」
IN博麗神社
カルゴ「……………………………………」
食事中、俺はずっと眉間に皺を寄せていた。
もちろん、無意識のうちにだ。
霊夢「どうしたの?」
カルゴ「………なにが?」
霊夢「機嫌悪そうだけど、何かあった?」
カルゴ「別に?何でもね」
素っ気なく答えながら白米を口に運ぶ。
霊夢「何でも無い風には見えないけど?」
カルゴ「霊夢には関係無い」
霊夢「何よその言い方!あんたが不機嫌そうにしてるから心配してるんじゃない!」
激昴した霊夢は、皿が浮き上がる程にテーブルを強く叩く。
しまった…その場の感情に任せて発言しちゃダメだろ俺…。しかも八つ当たりとか最低かよ。
カルゴ「ごめん、言い過ぎた。少しイラついててな…。今の言葉は忘れてくれ」
霊夢「…今のあんた、凄くおかしいわよ?本当、何があったの?」
平に謝ったことで、霊夢も落ち着きを取り戻す。
カルゴ「…ちっとな、昔あったヤな事思い出したんだよ。そこまで気にしないでくれ」
霊夢「気にするわよ…。そんなに不機嫌そうな顔してるんだから…」
カルゴ「そんな不機嫌そうな顔してたか?」
霊夢「それはもう酷い顔してたわ。こぉーんな、不良みたいな顔してたんだから」
眉間に皺を寄せ、見てる者まで不快感を感じるような表情を作る霊夢。
カルゴ「オメーはそんな顔してても可愛いけどな」
霊夢「さっきのあんたは全然かっこよく見えなかったけどね」
ツーンと澄ました表情で軽くディスる霊夢。
カルゴ「聞こえてたんかよ…(汗)」
霊夢「まぁね。ストレス発散したら?自然を傷付けないような」
カルゴ「うん、朝飯食べたらするつもりだった」
霊夢「あっそ。気を付けてよね」
カルゴ「わかってるさ」
食事を終え、洗濯物を干し終え、いざストレス発散しようとした時に、ある事を思いつく。
カルゴ「霊夢、霊力強化の御札頂戴」
霊夢「何に使うつもり?」
カルゴ「ストレス発散に。大丈夫、誰かに危害を加える為じゃない」
両手をヒラヒラさせてそんなつもりが無いことをアピールする。
霊夢「…何枚?」
カルゴ「5枚」
霊夢「そんなに強化してどうするのよ!?」
強敵との戦いで分身を強化する時ですら2枚で十分なのだ。5枚も使えば、天魔の本気ですら受け止められるかもしれないほどの強度になる。
カルゴ「言ったろ?ストレス発散に使うんだよ。誰かに危害を加える為じゃあ無いのさ」
霊夢「3枚あげるから、残りは自分の霊力使いなさいよ」
カルゴ「俺の霊力の少なさわかるだろ?夢想封印2、3発分しか無い…」
霊夢「はぁ…仕方ないわね。今日だけよ」
懐から5枚の御札を取り出し、差し出す。
カルゴ「サンキュ」
うお、ほんのり温かい。これが霊夢の温もりか。
霊夢「次までに霊力増やさなきゃね。また一緒に修行しましょうね」
そう言って優しくウインクする。
カルゴ「ああっ!」
笑顔と共に返事を返し、神社から飛び立つ。
カルゴ「さーて…ここならイイだろ」
妖怪の山の頂上より遥か上空まで来た。
この高さならば、自然などを考慮しなくて良い。
カルゴ「『分身』」
時間をかけて自身の電力を全て注ぎ、史上最強の分身を作り上げる。
分身「壊される為に作られるってのは変な感じするなぁ。なぁ、何がそんなに気に触ったん?」
カルゴ「“例大祭”“未練”“下らない”」
分身「え…それで!?」
カルゴ「煩い、コレやるから黙って俺と戦いな。そして壊されろ」
霊夢の霊力強化の御札を5枚、腹目掛けて投げて貼り付ける。
分身「な、何だこれ…凄く力が湧いてくるッ…!誰にも負ける気がしねぇ!!」
カルゴ「せいぜい簡単に壊れんなよッ!!うるぁあああああっ!!」
背中の剣を抜き、目の前の分身に斬り掛かる。
分身「雷武器『雷刀』!!」
火花を散らして武器を交える。
今のコイツは、下手したら俺よりも強いかもしれない。だからこそ、俺も本気を出せる!!
カルゴ「一度すら例大祭に行く事が叶わず…時間はあれど金が無くてグッズが買えなかった、俺の苦しみがテメェにわかるかよっ!?」
分身「ぐ、グッズぅ!?」
カルゴ「はァっ!!」
武器を交えたまま分身の腹を蹴り飛ばす。
カルゴ「世の中ァ金が全てだ!!金がありゃ時間すらも作れる!でも逆は無い!!時間からは金は作れねぇんだ!ましてや俺はァ、学生だったんだからよォォォ!『電力遷移』!!」
剣が黄色のオーラを纏う。
カルゴ「『雷撃刃』!!」
纏っている雷のオーラを刃の形にして飛ばす。
分身「雷壁『雷纏反撃壁』!!」
直撃寸前に壁を作成するも、大量の刃が当たった壁は脆く砕け散る。
カルゴ「喰らえ、深淵『ブラックホール』!!」
直径5m程の小型ブラックホールを空中に出現させる。
分身「うおっ!?ななななんじゃこりゃあっ!」
フワリと吸い寄せられる分身。
分身「雷装備『翼竜の舞』!」
巨大な翼を出して逃走を試みるも、ブラックホールの強大な重力には逆らえず、ついには吸い込まれてしまう。
カルゴ「そのまま焦がされるがいいさっ!!はっはっはっはっは!!!」
分身「ぎゃあああああああっっ!!」
ブラックホールの強大な電力に打たれ、叫び声を上げる分身。
カルゴ「なんだよ、もう終わりかァ!?俺の本気も大したことねぇなぁ!?」
しかし、そこは強化済みの分身、ブラックホールに使われた電力を吸い、逆に己の糧とした。
カルゴ「ブラックホールが…消えた…」
分身「全部吸い取ったぜ…!ははっ、お前もその程度かよっ!!」
カルゴ「ほざけ!その首刈り取ってやんよォ!!雷武器『雷鎌』!!」
剣を仕舞って両手に鎌を出す。
鎌を滅茶苦茶に振り回して連撃を繰り出す。
分身「攻撃が大雑把になってるぞ。もっと冷静になりやがれ」
刀で鎌での攻撃をいなしながら助言をする。
カルゴ「“冷静になれ”だァ!?なれるんなら苦労しないんだよ!!『クロスインパクト』!!」
分身「フンンッ!!」
X字のエネルギー波を放つも、依姫の様にそれを真っ二つに切断する。
カルゴ「チィッ!」
分身「そこまでキレるほどなのか?」
そこまでキレるほど…だと?
カルゴ「“東京”!“例大祭”!!“戦利品報告”!!これがどれだけ羨ましいか、妬ましいか…お前に分かるかァァァァァァッ!!『風の傷』!!!」
分身「ぐあああああああっっ!」
剣から放たれた強烈な衝撃波は分身を包み込む。
分身「…あ、御札!」
衝撃波が止んだ時、腹に貼った霊力強化の御札が2枚剥がれ落ちて煙と消えた。
カルゴ「全部剥がしてブッ壊してやる…!そんでストレス発散だ…!」
目を見開き、肉が千切れるまで下唇を強く噛む。
分身「(怒りのパワーパネェ…)」
カルゴ「我が力よ、無限の槍となりて、この地に降り注げ!!禁弾『降り注ぐ厄雷』!!!」
剣からエネルギーが放たれ、空中でチャージを開始する。
分身「ゆーて、そのまま無抵抗でやられっかよ!雷雨『村時雨』!!」
ランダム性のある雷が俺を打つ。
充電になるので、弾いたり防いだりせずに全てを吸収する。
カルゴ「
電力よりも破壊力を重視した攻撃は集中的に分身に降り注ぐ。
分身「おーおー、容赦無いねぇ…」
ハリネズミの様になった分身はそのエネルギーを吸収してさらに己の糧とした。
分身「無限ループするだけだぜ?」
カルゴ「QED『葛藤の波紋』!!」
吸収不可能な妖力弾でルナティックレベルの弾幕を放つ。
分身「うわっ!?雷鎧『サンダーアーマー』!」
カルゴ「攻撃を止めようとしても無駄だっ!これは俺の怒り!俺の怒りはそう簡単に収まらん!」
ビキビキと音を立てて鎧にヒビが入る。
スペル後半頃に差し掛かると完全に砕け散った。
それと同時に、御札が1枚剥がれ落ちて消えた。
分身「ちょいちょいちょいちょい!?壊れんのが早すぎんだろ!!」
カルゴ「次でトドメ刺してやる!!」
分身「来いぃぃ!!」
カルゴ「霊符『二重結界』!!」
結界を張って分身の動きを封じ込める。
分身「!?動けなっ………」
カルゴ「うおああああああああああッッッ!!!」
再び剣を抜き、縦に回転しながら自ら生み出した分身を真っ二つに斬り捨てる。
分身「(マジか…斬られた…)」
完全に破壊された分身は轟音を上げて爆発し、跡形もなく消え去った。
カルゴ「…そうだな…オメェの言う通り、外への未練は捨てた方がいいよな」
血を振り払うようにして剣を振り、鞘に収納。
カルゴ「ただーいまー」
霊夢「ちょっとあんた!」
神社に戻ると、霊夢が凄い形相でグッと詰め寄ってきた。
カルゴ「ひぃっ!?な、なに!?」
霊夢「ドカドカバチバチうるさいわよこの馬鹿!どこでやって来たのよ!」
カルゴ「え…と…高度4500m位?」
霊夢「そ、そんな高いとこで!?嘘でしょ!?」
霊夢が目を見開くのも無理は無い。
そんな高い所へ行けば、高山病を発症してまともに活動出来なくなるのは霊夢でも知っているからだ。
カルゴ「妖怪の山よりずっと高いからそん位だ」
霊夢「ええ…」
もっとも、そこまでの標高で活動出来るのも吸血鬼の体ゆえなのだが。
霊夢「とにかく、かなり迷惑だからこれからは気をつけてよね」
カルゴ「わぁったよ。霊愛は…まだ寝てるか」
霊夢「音聞こえて来た時は驚いて泣いてたわ」
カルゴ「うあ…やっちまった…」
あちゃー、と顔を伏せる。
霊夢「ストレスは?発散できたの?」
カルゴ「ああ、存分にな。もう未練も何も無い」
霊夢「…?そう、なら良かったわ」
その場に腰を下ろそうとした、その時。
魔理沙「おいコラエスカルゴ!お前朝っぱらからうるっさいぜ!?」
背後に魔理沙が現れた。
その顔は怒気に溢れている。
カルゴ「んー…何かしたっけー…?(棒)」
魔理沙「惚けるな!雷操る力なんてのはお前だけだろ!」
カルゴ「あははー……すまん」
その後も神社にクレーマーが押し寄せ、その対応を強いられた俺であった……。
すいません、行けなかった悔しさをぶつけたかっただけです(´;ω;`)