屋根の上でフランに見つかった後、咲夜さんは大急ぎで朝ご飯を作り、その後は詳細な説明を強制された。
咲夜「───という訳なのです…」
カルゴ「初めてのデートで、つい長引いちゃったんだ…許してくれ…」
徹夜なんて、「つい長引いた」というレベルでは無いような気がするが。
フラン「ふーん…今度からはこういう事の無いようにしてくれる?」
フランはかなりご立腹のようで…。
説明だけで済んでるのが奇跡に思える。
カル咲「すみませんでした…」
俺も咲夜さんも、平に謝るしかできない。
フラン「しょうがないから、2人には罰ゲームを受けてもらうわ」
カル咲「罰ゲーム…?」
フラン「そ♪私の見てる目の前で、えっtモゴ」
カルゴ「待て待て待て待て!それはダメだ!!」
何を言わんとしているのかを察した俺は、全力でフランの口を塞ぐ。「わかったから」ということを伝えたいのか、口を塞ぐ手を退かそうとする。
咲夜「(“えっ”…って何でしょうか…)」
フラン「じゃあ、私と戦ってもらおうかなぁ♪」
おっ、比較的楽そうなのキタぜ。
咲夜「そ、それは…」
フラン「エスカルゴ居るから大丈夫でしょ?」
笑顔で咲夜さんを威圧するフラン。これは怖い。
咲夜「…はい…」
カルゴ「頑張りましょう!」
咲夜「はい…」
フラン「やっぱり、2人とかずるいっ!!」
戦いが終わり、フランは地団駄を踏んで悔しがっている。可愛い。
カルゴ「フランが言ったんだろう?」
フラン「うー…ナイフばっかりヤダよ!!なんでエスカルゴまでナイフ使ったのよ!」
カルゴ「合わせてみたくなった」
咲夜「(エスカルゴさん…♪)」
フラン「何よそれー!」
結果は、俺と咲夜さんのペアの勝利。
俺は、弾幕と我流のナイフ術を。咲夜さんは、体術とナイフ術を組み合わせ、フランを翻弄したのだ。俺が使用したナイフが、雷刀を小さくしたものである事は言うまでもない。
カルゴ「それにさ、1対2が嫌なら、分身すればよかったじゃないか」
咲夜「いや、それはちょっと…」
フラン「室内で使うと、館壊しちゃうもん」
ぷっくり頬を膨らませるフラン。可愛い。
4人でスペル使わなきゃ大丈夫なんだがなぁ…。
まぁ、やられたら避けられないし、ラッキーだったな。咲夜さんは人間だしな、俺が怪我しない威力でも怪我する恐れがある。
カルゴ「なるほどね。…それじゃあ、そろそろ…帰るね」
時計を見やりつつ、帰ると発言する。
フラン「もう!?まだお昼前よ!?」
カルゴ「霊愛が心配だ。霊夢じゃなくて」
フラ咲「あっ…(察し)」
察した2人は、これ以上何も言わなかった。
申し訳ないとは思うが、まだ赤ん坊なので仕方の無い事である。
カルゴ「レミリアにも挨拶したいんだけど…」
咲夜「お嬢様はまだお休みになられております。夜の散歩で、お疲れなのでしょう」
カルゴ「なるほど、わかりました」
なんで時計台に居たんだろ?
まさか、マジで覗いてたんじゃ…?
カルゴ「じゃ、また来るよ」
フラン「うんっ!」
咲夜「はい、また…♪」
ペコリと頭を下げて、2人から見送られながら、玄関を出る。
フラン「バイバーイ!」
咲夜「……///」
フランは、大きく手を振っている。
咲夜さんは、フランより1歩後ろで、顔を赤らめながら小さく手を振っている。
俺も笑顔で手を振り返し、門外へと踵を返す。
美鈴にも挨拶しておこうかな。
ろくに話せなかったし。
カルゴ「やっほ」
美鈴「ども!もうお帰りですか?」
カルゴ「うん。娘が心配でさ」
苦笑混じりに頬を掻く。
美鈴「なるほど、霊夢さんはガサツですからね。心配になるのもわかります」
うんうん、と繰り返し大きく頷く美鈴。
さすが美鈴、言いたいことを言ってくれたな。
カルゴ「そうなんだよ…。分身置いてきてるとは言ってもさ、不安で仕方ない。という訳で、もう帰る事にするよ」
美鈴「わかりました…。また今度、ゆっくりお話しましょう!」
カルゴ「うん、そうだね」
美鈴まで俺のこと……って、ンな訳ねぇから。
話し相手が欲しいんだろ、門番って暇だから。
美鈴「ハッキリ言って、門番は暇ですからね〜、話し相手が欲しいんですよ〜」
言ってくれたし…。
一度門番体験してからは、美鈴に対する心持ちが変わった。批判から同情の対象になった。
美鈴「あ!今の発言、無しでお願いします!!」
手を合わせてペコペコ繰り返し頭を下げる美鈴。
門番が暇なのを理解している俺は勿論、それを快く受け入れる。
美鈴「よかったぁ〜……」
カルゴ「俺が起こしてた事もずっと秘密にしてんだから、安心しなって」
美鈴「はい☆」
カルゴ「それじゃ!」
美鈴「はーい!さよならー!」
翼を広げ、その場から飛び立つ。
急いでいる訳では無いので、ゆったりと飛ぶ。
紅魔館から博麗神社までは、結構な距離がある。
だからその間は、飛ぶことを楽しもうと思う。
いつ何時も、心からゆとりを無くしてはいけないと俺は思うのだ。
カルゴ「んー…イイ風だ…」
現在俺は、魔法の森の上空を飛行中。
胞子やら瘴気やらが立ち上っているように見える…いや、実際にかなりの量の胞子等が舞がっているが、上空まで上がればなんの問題も無い。
そんな中、暖かい日差しに包まれ、心地の良い風に吹かれ、ついつい眠りそうになる。もしそうなったら、頭からダイブする事間違いなしだが。
そのように、風を感じていた俺。
だが、その“風”にある変化が現れる。
カルゴ「……?」クンクン
どこからか、鉄分の臭いが漂ってきた。
具体的に言うなら、“血の匂い”だ。
なんだァ…真昼間の幻想郷で血の匂いとは…。
何かロクでもねぇこと起こってんじゃねぇよな?
風上へ…血の匂いのする方へ、方向転換する。
事件には首を突っ込みたくないとは思う俺だが、自身の平和を脅かす可能性がある場合は別だ。
では、なぜそう判断したか。
それは、血の匂いが濃いからだ。
人間の殴り合いや殺し合い程度なら、目視できる距離くらいまでしか、血の匂いは届かない。
そもそも、人間同士の殺し合いでも、ここまでの血は出ないだろう。だから俺は、この血の匂いには人間以外の何かが関わっていると判断した。
そうなれば、止めさせるしかないだろう。
殺人事件ほど、気分の悪い事件は無いからだ。
…尤も、間に合わない可能性もあるが。
カルゴ「な、なんだこりゃ!?」
天子「…うっ……くっ……」
現場に着いた俺は、ただ驚くしか無かった。
匂いの元では、鎌を持ってローブを纏った何者かによって、天子がズタボロにされていて、血塗れだったからだ。
??「なんだお前は。邪魔するつもりか?」
此方に向き直り、鎌と敵意を向ける。
だが、そんな奴には目もくれず、天子の元へ真っ直ぐに駆け寄り、血がつくのも構わずに抱き起こす。
カルゴ「おい天子、どうしたんだ!?」
顔と腕…いや、足にも切り傷が…。
下手に動かして傷が開いたんじゃダメだな。
天子「…し…に、がみ……」
震える手で、鎌を持つ奴を指さす天子。
カルゴ「死神?死神っつーと……」
小町か。でもアイツは三途の川の船頭で…。
魂の回収はしないって確か…。
いや…こいつは、小町とは別なのか。
天子「…たす…け……て……」
ボロボロと涙を流しながらお願いする天子。
カルゴ「チッ…しゃーねーな。黙って待ってろ」
天子「う……ん…」
頷いた天子をその場に倒し、立ち上がる。
以前は、「死んで欲しい」「消えてくれ」などと思っていた。だが、いざその場面に出くわすと、そうも言っていられなくなる。
ましてや、泣いてお願いされたのでは…断るなどということは出来なくなってしまう。
相変わらず、女子の涙には弱い。
カルゴ「俺が相手だ、死神」
死神「邪魔をするなァァッ!!」
カルゴ「雷装備『死神の纏い』」
ローブをはためかせ、鎌を振り上げながら襲いかかってくる死神。しかし俺は、あせることもなくスペルを発動させ、装備を整えて敵を迎え撃つ。
間合いに入ったと確信した死神は、ヒュッと空気を切る音を発しながら鎌を振り下ろしてくる。
カルゴ「ッだりゃぁぁっ!!」
カァンッ!
死神「っ!」
勢いよく鎌を振り上げて死神の鎌と衝突させて、弾き飛ばす。飛ばされた方は体勢を崩し、それを見逃さなかった俺は、硬度を落とした鎌で死神の首を真一文字に斬った。
死神「つっ……」
ドシャアァッ
気絶した死神は、膝をついて前のめりに倒れる。
カルゴ「っし、こんなもんか。…大丈夫か?」
装備を解いた俺は、天子の元に戻って意識の有無を確かめる。だが、天子からの返事は無い。
カルゴ「…おい?」
首の血管に指を当てる。
ほんの僅かしか、脈拍を感じ取れない。
よくよく顔を見れば、いつものような血色の良い顔ではなくて、血の気が引いたような、薄い顔をしていた。
やべぇ!これ死にかけてる!!
カルゴ「死ぬんじゃねぇぞバカヤロウ!」
天子の帽子や緋想の剣を拾って、気絶した死神もそのままに永遠亭へと向かった。
カルゴ「永琳先生!急患です!!」
診療所に駆け込んだ俺は、開口一番そう叫んだ。
中に居た患者たちは、血塗れの天子に驚き、それを抱えている俺にも奇異の視線を向ける。
鈴仙「あっ、エスカ…きゃああっ!どうしたのよその血は!?」
あまりの出血に驚いた鈴仙は悲鳴を上げ、患者達は若干ビクッと体を震わせる。
カルゴ「鈴仙か!永琳先生は!?」
鈴仙「今丁度トイレに行ったのよ!」
マジかよこんな時に!
カルゴ「とりあえず治療室に入れるぞ!」
鈴仙「うん!」
バタバタと足音も荒く治療室へと向かい、天子をそっと下ろす。息はしているし、心臓も動いてはいる。現在、出血自体は止まっているが、先程大量に出血したため、貧血状態に近いだろう。
とその時、永琳がやってきた。
永琳「あら、酷いケガね」
カルゴ「あぁ、永琳先生!早くこいつを治療してやって下さい!このままじゃ出血多量で死んじゃいます!」
永琳「血液検査しなきゃ輸血は出来ないわ。さ、あなたは外行ってて大丈夫よ」
カルゴ「お手伝い出来ることは…」
永琳「無いわね」
無いのか…。
でもそうはっきり言われると少し悔しいな。
カルゴ「わかりました…」
天子を永琳と鈴仙に預け、俺は待合室に戻った。