ちょっぴり日差しが強くなってきた6月某日。
俺たち吸血鬼一族は、少しばかり遠方へ出掛けようとしていた。
カルゴ「よし、出発前に点呼取るぞー!呼ばれた者は元気に返事をしろー!巫月!」
長女から順に、点呼を取る。
相変わらずとても元気で、いい子達だ。
カルゴ「全員揃ってるな!みんな、準備は出来てるだろうなぁ!?」
四姉妹「はーい!」
カルゴ「よーし、地底へ向けて出発だー!」
四姉妹「おーっ!」
今日は、地底にある地霊殿へ遊びに行く予定だ。
もちろんの事だが、アポはとってある。
さとりも歓迎してくれているようで何よりだ。
と言っても、俺が直接アポをとった訳では無い。
それと、“遊びに行く”では少々語弊がある。
“腕試しに行く”と言った方が適当だ。
鈴仙「ちょっとエスカルゴ〜?私達の事忘れてない?」
出発しようとしたその時、鈴仙が不満そうに横槍を入れる。無論、忘れていたのではなく、わざとそうやったのだが。
カルゴ「今回のメインは巫月達だから点呼の必要無いと思ってさ」
鈴仙「酷いわねぇ…」
カルゴ「それじゃ、鈴仙達もやりますか。鈴仙」
鈴仙「はーい♪」
カルゴ「霊夢…は来ないっと。文!」
文「はいっ!(いやはや、地底ではどのような写真が撮れるのか…楽しみですねぇ!)」
カルゴ「咲夜さん!…は、メイドの仕事っと…。残念だなぁ…」
霊夢は、「地上より暑いなんてごめんだから」と言って、今回はパスだ。咲夜さんはと言うと、レミリア達が来ないので、彼女も来ないようだ。
いや、“来ない”ではなく、“来れない”らしい。
仕事と娯楽では、咲夜さんは当然仕事を優先するので、そちらを取った。
カルゴ「俺と巫月達と鈴仙と文、合計7人だな。さ、出発だ!」
一同「おぉーっ!!」
みんな一様に、子供の様に元気に拳を振り上げ、地底の入口目指して飛び始める。先導は俺だ。
巫月「地底行くの何年ぶりかな〜♪」
早く行きたいな、と地底へ行けることへの喜びを口にする巫月。
弦月姫「お姉様、地底へ行かれたことがあるのですか?」
巫月「あるよー。エスカルゴがみんなでどこかに行くからさ、こっそりついて行ったの」
弦月姫「えぇ…。(お姉様らしいけど…)」
懐かしい話してるじゃないか。
あれは確か…俺が幻想入りして3年目の年かな?
お空の暴走を止めようと地底に行って、帰ろうとしたら勇儀さんに遊んでもらってたんだっけ。
あまりにも無邪気に笑ってたから、叱る気失せたんだよなぁ…。やばい、スゲー懐かしいな。
カルゴ「6、7年くらい前だな」
弦月姫「という事は、お姉様が1歳か0歳の時にって事ですか…」
巫月「懐かしいなぁ〜♪」
そんな昔のことも覚えてるんだな〜。
俺のは兎も角、巫月の記憶力もすごいらしい。
霊愛「でもさー、お母さんが言ってたけど、地底って暑いんでしょ?暑いのはヤダなー」
楽しみだと言っていたのにも関わらず、文句を垂れる霊愛。霊夢が余計な事を吹き込んだらしい。
カルゴ「大丈夫大丈夫。地底の暑さに慣れたら、この地上が涼しく感じられるぜ?」
霊愛「…!それならいいや!」
物は言いようだな。
でも、嘘じゃないよな。暑い日にサウナ入って、そこから出たら涼しく感じるのと同じなのさ。
暑いのに身体が慣れちまうんだよな。
これだから、慣れって怖いんだ。
文「地底の街並みとやらも、楽しみですねぇ!」
一行の周りを忙しなく飛び回りながら、パシャパシャと写真を撮る文。容量などが気になる。
カルゴ「…全くの勘だけどさ。地底に着いたら、文が真っ先に行方不明になると思う」
文「むぅ…酷い勘ですねぇ…。何故私が行方不明なんかになると思うんです?」
鈴仙「あっ…(察し)」
カルゴ「自分の胸に聞いてご覧?きっと、答えが浮かんでくるはずだ」
文「何なんですかそれぇ〜!><」
それからも、みんなでたわいもない話をしながら飛び続け、ようやく地底の入口が見えてきた。
カルゴ「さぁ、ここを抜ければいよいよ地底だ。危ねぇ妖怪とか居るからな、ちゃあんと気ィ引き締めていくぜ!」
四姉妹「おーっ!」
地底入りするにあたっての注意事項を再確認すると、良い返事が帰ってきた。この子達なら、少しくらい強い妖怪と当たっても打ち勝つ事が出来るだろう。
鈴仙「なんかドキドキするわねぇ…」
文「早く行きましょう、早く!(((o(*゚▽゚*)o)))」
鈴仙は、緊張したように胸を抑え、文はカメラを構えて早く行こうと騒ぐ。
カルゴ「よーし、レッツゴー♪」
先陣を切って穴に飛び込み、皆を誘導する。
わかっていた事だが、穴の中を進む毎に暑くなってきている。
霊愛「あつ〜い…」
カルゴ「我慢!」
巫月「前来た時より暑いかも…?」
カルゴ「今は夏だから!」
弦月姫「動くのがダルくなってきました…」
カルゴ「弦月姫!?」
穹「うーん…まぁまぁ暑いですね。火山の中の方が暑いですが」
カルゴ「危ねぇよ!」
暑さに対し、みな自分の思いを漏らすが、俺はそれぞれにツッコミを入れていく。俺自身も多少は暑さにやられているので、いつもよりツッコミのキレが無い。
鈴仙「確かに暑いけど、夏本番の方が暑いかも」
文「そうですねぇ……。初夏ですらこうなんですから、夏本番は絶対に来てはいけませんね」
四姉妹もそうだが、鈴仙も文も、顔に玉のような汗が流れている。風邪を引かないよう、汗の始末はしっかりしなくては。
カルゴ「とーうちゃーく!」
いち早く着地した俺は、グ○コのポーズのように両手を上げる。俺が着地したので、それに倣って他のみんなも着地する。
巫月「う〜ん、この暑い空気、久しぶり〜♪」
霊愛「暑っ…」
穹「ふぉぉ…ここが地底…!すごい、こんなにも広いとは……!」
弦月姫「うぅ…暑いです…」
巫月は懐かしみを感じており、霊愛は早くもゲッソリした様子になり、穹は地底の広さに目を丸くし、弦月姫はメイド服をパタパタとする。
周りに妖怪等が居ないとはいえ、もう少し羞恥心を感じて欲しいものだが…。
鈴仙「すごっ……ここが地底…。(うー、嫌な感じするなぁ…。地底にはヤバい妖怪がウジャウジャ居るっていうお師匠様の話は本当だったんだ…)」
文「あやややややややややややややややや!!!エスカルゴさん、少し写真撮ってきますねっ!!また後で、地霊殿にて合流しましょうっ!!!」
地底の街並み、風景にアテられた文は、超早口でそういった直後、猛スピードで飛び去った。
カルゴ「……言ったろ?真っ先に行方不明になるって。文が何処に行ったのか、もうわからんわ」
あまりにも予想通り過ぎる文の行動に、つい特大の溜息が漏れてしまった。
鈴仙「あはは…ホントあの人はいつも通りね…」
これには流石の鈴仙も、苦笑いしかない。
穹「母上……はぁ……」
娘までもが溜息をつく始末だ。
カルゴ「さ、気を取り直してっと!行きますか、地霊殿へ!」
一同「おーっ!」
再び飛ぼうとしたが、初めて地底に来るメンツが「ゆっくり行って景色を見たい」という事を言ってきたので、それもそうだなと思い直し、歩いて地霊殿へ向かう事にした。
しばらく歩いていると、反対方向から金髪でショートボブ、緑目の女性が歩いてきた。
地殻の下の嫉妬心こと、水橋パルスィだ。
カルゴ「よっ、パルスィ。久しぶり」
スルーするのもあまり良くないかなと思い、軽い調子で挨拶する。
パル「あなたは………えっと………」
だがそんな俺の様子に反して、眉をひそめて首を傾げるパルスィ。宴会にはあまり来ないし、直接会うのは数年ぶりなので、忘れているのだろう。
…と思った時、ようやっと返事が返ってきた。
パル「……あぁ、ビリビリマンね」
カルゴ「うぉい!?ビリビリマンって何よ!?」
パル「あなたの攻撃はどれもビリビリするから。…エスカルゴ…だったかしら?」
カルゴ「そうそうエスカルゴ!やっと思い出してくれたか〜」
もしかして、地底に居るやつで俺のことちゃんと覚えてくれてるのって、さとり、勇儀さん、お空とお燐だけじゃね?…お空はダメかもな…。
実は、霊夢が仙人となった時、俺と霊夢でお空にかけた封印が解けたという事件が発生した。
地底の気温は暴走時と同じくらいに高まり、耐えかねたさとりは再び俺に助けを求めた。
その時は、霊夢が帰ってきたことで完全にお祝いムードだったため、俺1人で地底へ出張し、力が制御出来ないで居るお空に稽古をつけた。
……という過去があるので、さとりとお空、お燐との交流は段々と深まっていった。
それでもお空は中々俺の事を覚えてはくれない。
もはや諦めているが。
パル「…子供?」
俺の後ろの方へ視線を移し、尋ねてくる。
カルゴ「おうよ、子供だ。4人」
パル「子供……妬ましい…」
カルゴ「あはは……」
子供欲しいならエ○チしなよ、とは言えない。
パル「家族連れ…妬ましい…。ワイワイガヤガヤやって、楽しそうで…妬ましい…」
段々と、パルスィの様子がおかしくなってきた。
いや、この様子は前にも見たことがある。
恐らくこれは─────。
パルスィ「妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい!妬ましいぃぃぃぃ!!」
妬ましいを連呼しながら突然弾幕を発射してくるパルスィ。何となく懐かしい流れだ。
カルゴ「みんな避けろっ!」
突然発射された弾幕にも冷静に対応し、パルスィが発射する弾幕を回避していく。
カルゴ「おいおい、落ち着けってパルスィ!」
パル「うるさいうるさいうるさい!!家族連れで地底に来るなんて、妬ましいにも程があるわッ!舌切雀『大きな葛籠と小さな葛籠』!!」
分身したパルスィは、それぞれ大きな弾幕と小さな弾幕を発射してくる。ホントに、こういう織り交ぜてくる系スペルは好かない。
さっさと撃退しようと、パルスィへ掌を向ける。
カルゴ「『エスカルゴ・スパーク』」
右手の掌から、真っ黄色の極太光線が発射され、分身と本物諸共吹き飛ばす。
後には、地面に突っ伏しているしているパルスィだけが残った。
パル「妬ましい…。私を楽々吹っ飛ばせる…その強さが…妬ましい…!」
地面をガリガリと引っ掻きながら、未だに妬ましいを連呼する。動きたくても動けないらしい。
カルゴ「手加減したから、いつもよりも貫通力に優れてたはずだ。どうだ、痺れたろ?」
パル「えぇ…ホンットに痺れるわよね、あなたの攻撃は…。妬ましい………はぁ…」
大きな溜息をつき、やっぱ襲わなきゃよかった…とでも言いたげに苦笑を浮かべるパルスィ。
カルゴ「立てる?手ェ貸すか?」
パル「立とうとしてないし、別に必要としてないわよ妬ましい」
Σ>─(´・ω・`)→グサッ
カルゴ「そんじゃ、通らせてもらうぞ」
パル「さっさと行って、妬ましい…」
カルゴ「はいはい。行こうぜ、皆」
そんなパルスィをそのままに、再び地霊殿を目指して歩き始めた。しばらくして、鈴仙が口を開いた。
鈴仙「ね、なんで手からビーム出たの?あれって魔法陣持たなきゃダメなんじゃなかった?」
目からビームみたいに言うなぁ…。
カルゴ「魔法陣を手に貼ってたんだよ。ポケットから出すのも手間だろう?戦いは、そういう一瞬でも命取りになるからな、そうする事にしたんだよ」
鈴仙「え…でもさ、手は普通にグーパー出来てたわよね?いつも持ってたんだから、一応硬度はあるんじゃないの?」
カルゴ「紙に書いた絵は、クシャクシャに出来るだろ?でも、ガラスに書いた絵はクシャクシャに出来ないだろ?つまりそういう事だ」
鈴仙「どういうこと…?」
カルゴ「何に貼り付けるかによるってことだよ。いつも持ってるやつと同じだけど、貼り付けると性質が変わるんだ。魔法使いが使う魔法陣とはその本質が違うから、俺のは結構都合良いんだぜ」
地面や結界に貼ったら、色が同化して、魔法陣が見えなくなるという使い方もある。
そう、過去にもこれを応用した技は使っていた。
鈴仙「???……なるほど…?」
絶対理解してねぇな…。
また後で、わかりやすく説明してやるかな。
それからまたしばらく歩いて、ようやく遠目に地霊殿が見えてきた。
カルゴ「見えるか?あのデッカイのが地霊殿だ」
巫月「おぉー!ここまで来るのは初めて!」
霊愛「あぢ〜〜〜………」
穹「おぉ!おぉー!すごいですねぇ!」
弦月姫「もう…そろそろ、ですね…」
鈴仙「(さとりってあんな大きいとこに住んでるんだ…寂しくないのかな…)」
巫月は目を輝かせ、霊愛はゲンナリした様子で、穹は周辺の景色や建物を写真に撮り始め、弦月姫は霊愛以上に暑さにやられているようだ。
カルゴ「このまま、何事も無く辿り着けれb」
??「おお、エスカルゴじゃないかっ!」
カルゴ「っ!」ビクゥッ
突然上から聞こえてきた、ドスの効いた女性の声に飛び上がって驚く。
この声には、よーーーく聞き覚えがある。
宴会の度に「勝負しよう」と持ちかけてくる…。
勇儀「やぁ!」
盃を持ち上げながら軽く挨拶する勇儀さん。
カルゴ「勇儀さん…」
どうやら、屋根の上で酒を飲んでいたらしい。
高さ的には、大体3階建ての建物くらいだ。
全く、よくもまぁあんな所で飲めるね。
酔ったりしないのかよ?…鬼だから大丈夫か。
勇儀「待ってろ、今行くから!…そォいっ!」
すると、盃をその場に置いて、豪快に飛び降りてきた。
カルゴ「うわわっ!?」
飛ばないの!?
着地した瞬間、ズズンと地が震えた。
足はなんともないのか心配になるが、勇儀さんの様子を見るに、多分大丈夫なのだろう。
勇儀「ハッハッハ!どうしたんだこんな所で!」
カルゴ「地霊殿に行こうとしてまして。勇儀さんこそ、あんな所で飲んでて大丈夫なんですか?」
勇儀「平気平気!仮に落ちたとしても、凹むのは私じゃなくて大地の方さ!」
カルゴ「あは…は…」
言われてみれば確かに…。
勇儀「地霊殿へ行くのって、急ぎの用事かい?」
カルゴ「いえ、特には」
と答えてから、やってしまったと思い直した。
何故いつもの流れと同じだと察せなかったのか、自分を呪う。
勇儀「ほう…なら、一度戦ってもらえないか?」
カルゴ「……」
あーあ…やっぱりそう来たか…。
でも、鬼って嘘を嫌うし、これで良かったかな。
カルゴ「イイですよ。でも、これから戦う予定があるので、いつものようにはいきませんが…それでもよろしいでしょうか?」
勇儀「はははっ、大丈夫だよ!暇潰しが出来ればそれでいいからさ!……だが、わざと負けるのは許さないぞ」
カルゴ「もちろんですよ。負けるなんて、彼女にフラれることくらい嫌いですから」
勇儀「まっ、エスカルゴがそんな奴じゃないのはわかってるがな!(瀕死でも幽香に立ち向かう位、負けるのが嫌いらしいしな)」
カルゴ「ありがとうございます。皆、危ないから離れてくれ。50m位離れて欲しいな。穹、写真はダメだぞ」
穹「はーい…」
不満そうに返事をする穹。
勇儀「おいおい…。50mってのはいくらなんでも大袈裟じゃ無いか?」
カルゴ「勇儀さんほどの実力者の相手をするんですから、娘たちを確実に守るにはこれくらいが良いんですよ。拳圧だけで俺を吹き飛ばした位なんですから」
勇儀「そ、そうか…。(褒められた…のかな?ま、そういう事にしとくか)」
カルゴ「それに………」
視線は勇儀さんに固定したまま、左の尻ポケットに手を突っ込み、ジャラジャラと音を立てながらナニカを取り出す。
勇儀「それに?(…何をしようとしている?)」
カルゴ「俺の攻撃は、速さも音も火力も、一級品ですから」
ニヤリと笑い、ポケットから手を抜く。
その指には、1cm四方に切られている金属片が、1つ挟まれている。
勇儀「ハンッ!そんなカケラ如きで、私の火力を越えられると思うなよっ!!」
地を蹴り、殴り飛ばそうと肉薄する勇儀さん。
カルゴ「凶砲『
左手に持っていた金属片を空中へ弾き上げ、エネルギーを纏った指でデコピンする。
ズガァァァァァァァァッ!!
勇儀「…っ!?」
胸の前で腕をクロスし、超電磁砲を直に喰らう。
しかし、大して傷にはならず、ほんの数10メートル、後方へ吹っ飛んだだけだった。
勇儀「イテテテ……穴空くと思ったぞ!」
ニヤニヤと笑いながら、肌が赤くなっている腕をさする。血は出ておらず、少し腫れた程度だ。
いや、なんでそれで済むの?
いくら何でも、火傷とかアザとかにはなっててもおかしくない威力なんだけど。手加減したから、骨折ってレベルまではいかなくても…血は出てもおかしくないんだよ??
怖いわー、鬼怖いわー。
勇儀「(ただのカケラであの威力だと?レー何とかって言ったっけ。エスカルゴのヤツめ、また力を上げたんだな…。全く、いつまで成長し続けるんだアイツは。…だからこそ、倒し甲斐があるというものだがな!)」
カルゴ「流石勇儀さんですね…。結構力込めたんですけど…」
勇儀「怪我こそ無いが、衝撃はかなりのものだったぞ。もっと力出しなよ。それを全て打ち破り、今度こそ私が勝つ!」
カルゴ「では…第2波、いきます」
素早く金属片を取り出し、構える。
今度のは2cm四方…威力、射程は先程の4倍程。
どのタイミングでやろう?
そもそも、こんな威力をぶつけていいのか?
さすがの勇儀さんも危ないんじゃないか?
いや、勇儀さんなら大丈夫か…違う、その油断が悪い結果を招くんだよ、いい加減に覚えろ!
勇儀「…と言って、はいどうぞってやらせる訳が無いだ、ろッ!」
カルゴ「!」
俺がゴチャゴチャ考えている内に、一息のうちに距離を詰める勇儀さん。反応速度が早い俺でも、構えを解いて回避行動を取るには少しばかり時間が足りなかった。
だから、そのままの体勢で金属片を弾き………。
カルゴ「凶砲『超電────…」
勇儀「させるかァァァッ!!!」
詠唱途中で、彼女の拳が俺の胴体にめり込む。
ミシミシと嫌な音が響き、先程の勇儀さんよりも遥か後方へ吹き飛ばされる。
吹き飛ばされている時、目を見開いて驚いている娘達が視界を掠め、彼女らの存在を思い出した。
そして、絶対負けたくないという思いがより一層高まった。
カルゴ「ゲホッ…ゲホゲホッ……」
着地後は素早く体勢を立て直し、口腔に溜まった血を吐き出す。再生が済んだ腹を撫でて、前方に居るはずの勇儀さんを見る。だが、先程居た場所には既に居なかった。
カルゴ「──!」
その時、背後から、ブオッと風圧を感じた。
あと数瞬もしないうちに、今度は背中を殴られるだろうと予感する。しかし俺は、次の動作を頭で考える前に、身体が勝手に動いて────。
カルゴ「『エスカルゴ・スパーク』」
勇儀「ッ!?」
今度は俺の背中から、黄色く光り輝く極太光線が発射され、自分にとって全く予想外な攻撃が来た勇儀さんはそれをモロに喰らう。
カルゴ「ふぅ…危ない危ない。まさか、後ろから来るとは思いませんでしたよ勇儀さん…」
勇儀「それなら、何で防げるんだよ…。(くそっ、左腕が痺れた…力が入らない!)」
カルゴ「俺、全身に魔法陣貼り付けてるので、あとは詠唱だけなんです」
詠唱さえすれば、ルールには違反しないし。
そもそもこれは、非スペカだけどね。
魔法陣を作り出す過程でスペルを使用するだけ。
勇儀「なっ……!」
カルゴ「服やズボンなどは勿論のこと、指先にもありますよ、ミニサイズのが」
勇儀「!?!?」
驚きのあまりに口をパクパクさせる勇儀さん。
全身に魔法陣があると聞いて、平静を保てる者は中々居ないだろう。
カルゴ「そろそろ、決着をつけましょう」
勇儀「…はっ!そ、そうだな!」
カルゴ「いざ!!」
勇儀「勝負ッ!!」
…それから約数10分後、文字通りの死闘の末に、周囲は瓦礫の山と成り果て、これ以上の勝負は地下空間が危ういと判断し、勝負は引き分けとなった。
2発目の超電磁砲のシーン、結構迷いました。
案1、金属片を弾き、発射前に正面から殴る
案2、金属片を弾いて無事発射するも、金属片の落下中に背後に回り込んで背後から殴る
勇儀さんは真っ直ぐなイメージなので、1かなと思ってましたが、馬鹿正直に正面から行くかな?
と更に迷って、馬鹿正直なくらい真っ直ぐな方が勇儀さんらしい、と判断して、1にしました。