エスカルゴの、意外と脆い部分が出るかも……?
エスカルゴSide
娘達がお空相手に苦戦していた頃、俺は地霊殿の門外でさとりと弾幕ごっこをしていた。俺は相殺以外にはスペル、非スペルを使わず、出来るだけ回避に専念する。相殺も、たまにしか行わない。
相殺ばかりしていては、さとりに手伝ってもらう意味が薄れてしまうからだ。
カルゴ「ほらほら、ドンと来い!」
さとり「そうですか。それではお言葉に甘えて。想起『セラギネラ9』」
左前、右前から斜め方向にクロスするような流れで黄色とオレンジの弾幕を発射するさとり。
ゑっ、それ美鈴の…!
さとり「さすがに、格闘術までは再現出来ませんので、せめて弾幕だけでも」
カルゴ「これ苦手だって思ってんのか?俺…」
さとり「正確には、弾幕と格闘術のミックスが、ですがね。巧みに織り交ぜてくるようですね」
カルゴ「うぅー……」
やっぱ、織り交ぜる系が苦手なんだ…。
さとり「ええ、そのようですね。それだけはこの数年間克服出来ていません。克服したと思ったらまた別なのが苦手になるという感じですね。以前よりも弾幕ごっこの相手が増えたからでしょう」
カルゴ「でも、それも克服していけば…」
さとり「少なくとも、苦手に足を掬われる事は無くなるでしょうね」
なるほどね。でもアレだな…格闘と混ざってないなら、簡単に避けられるな。
なぜならこのスペルは、弾幕の隙間が広く、更に規則性があるからだ。これなら不規則的な弾幕の方がまだ避けにくく、苦手だと感じるだろう。
さとり「ふむ…それもそうですね。では、次は…何にしましょうか…」
弾幕の発射を中断し、腕を組んで考え込む。
カルゴ「そんな迷うほど苦手スペルあるのか?」
さとり「いえ、あと3人分程なのですが、再現が出来るかどうかで悩んでいるのです」
再現出来るかどうか…?
さとりんはなんでも出来る訳じゃ無いのか?
さとり「ほぼ全てのスペルを再現出来ますが、その者の能力や特徴等が強く関わっているスペルなんかは、上手く再現出来ません。特に…娘さん達のような…ね」
娘さん達のような…って、まさか…!
カルゴ「…つまり俺の苦手って……」
さとり「巫月さんと弦月姫さん及び、鈴仙さんと咲夜さんのスペルですね。最近特に、弾幕ごっこの機会が増えたのでしょう?それによって、苦手意識が芽生え始めた様ですね」
カルゴ「───ッ!!」
よりによってあの4人のだと…!?
時間停止からの急加速ナイフ、幻覚からの本物の雷…波長を乱される鈴仙の攻撃…か。なるほど、言われて気付いたが…確かに苦手だなぁ…!
最近弾幕ごっこの機会が増えたというのは、今日の腕試しの為にほかならない。強敵との戦いの為に準備を整えておくのは、至極当然のことだ。
ほぼ毎日、行く先々で稽古をつけた。
それでも、お空ほどの相手には勝てないと思う。
信じてない訳じゃない。4人とお空の力の差は、それほど開いていると思う。しかし、この戦いを通じて己の弱点を発見出来ればいいな、と思っている。
さとり「向こうがスペルを使えば使うほど、あなたは慣れることが出来ます。しかしそれ以上に、彼女達の方が成長をした…その結果です」
くぁ〜っ、まさか娘のスペルまで苦手だと感じるようになったとか…マジか…!
カルゴ「それ以外には何か苦手なのあるかな?」
さとり「いえ。美鈴さん、巫月さん、鈴仙さん、弦月姫さん、咲夜さんの5人のだけですね。弦月姫さんはまだオリジナルのスペルを持っていないので、実質4人分ですが」
えええ…よりによってそれだけとか…。でもさ、逆に言えば、他の苦手は潰したってことになるんじゃねーか?結構頑張ってきたもんな…。
何たって7年だぜ?よく飽きずに続けられたな。
さとり「ええ、その通りです。ですからあとは、私ではなく本人達との修練をオススメします」
カルゴ「そっか…今までありがとうな、さとり。おかげで、昔よりも強くなれたよ」
さとり「いえ、そんな…。でも……」
カルゴ「?」
さとり「特訓やお空の稽古以外でも…またここに遊びに来て下さいね?」
カルゴ「!」
こちらに歩み寄って、若干上目遣い(そう見えるだけ)で俺を見上げるさとり。思わず、クセで頭を撫でようとしてしまうが、その手を引っ込める。
さとり「クスッ…少しなら良いですよ?」
カルゴ「い、いや、やめとくよ。…イヤだろ?」
さとり「イヤならイヤって言いますよ。だから…良いですよ…///」
顔を赤らめながら、若干うつむく…いや、撫でて欲しそうに頭を差し出す。
カルゴ「じゃ…お言葉に甘えて…」
ややくせっ毛のさとりの頭に手を伸ばす。
ピョンピョンと跳ねているアホ毛を上から圧するようにふんわりと撫でる。束になっている毛が、手のひらをくすぐる。
さとり「(暖かい……気持ちいい……♪)」
カルゴ「…?」
さとりん…ニヤけてる?…見間違えか?
頬が緩んで、口角が上がってる様な気がする…。
さとり「やけに、撫でるのに手慣れてますね///」
撫でられたままで口を開く。声が上ずっているように聞こえるが、恐らく気のせいだろう。
カルゴ「んー…いつも娘達を撫でてるし、人間の頃は弟を撫でてたからかな。多分ね」
さとり「それなら…納得…です……///」
カルゴ「…ん?ちょっと熱くなったか?」
さとり「いえ、そんな事無いです…。(何でそんなことには気付くんですかこの人は…///)」
カルゴ「そか」
うーん…ふわふわしてて気持ちいいなぁ。
俺の周りには、さとりん以外にくせっ毛の女子が居ないからなぁ…長い付き合いでも新鮮に思えるね。撫でるのは今日が初めてだが。
…そろそろ巫月達の方も決着ついたかな?
さとり「そうですね、そろそろ行きまs」
分身「お〜い!」
2人「!?」
自分の声が聞こえてきたので、慌てて手を離す。
誰かと見れば、俺よりも軽い調子で、見張りを任せたはずの分身が走ってきた。
分身「巫月ちゃん達、お空ちゃんに勝ったぜ!?顔面にぶっとい雷ぶつけてよ、一発K.O.だ!」
俺らの前に来るなり、嬉々とした様子で早口で喋る分身。ホントに落ち着きが無い。
カルゴ「マジか!?行こうぜさとり!」
さとり「は、はい…」
奥の部屋へと向かう際、分身から詳しく聞いた。最初はかなり苦戦していた事、多少衝突した事。俺の予想とは違って、穹の能力を利用してクールダウンしたのではなく、霊愛が弾幕結界でお空の攻撃を相殺して巫月に繋げた事、穹が弾幕を逸らしてサポートした事など。
カルゴ「おーい皆〜!」
巫月「あっ、エスカルゴ来た!私達、お空さんに勝ったよー!」
部屋に着くなり、ひしと抱きついてくる巫月。
それを見て妹達も集まってくる。
カルゴ「聞いたぞ〜!霊愛、穹、弦月姫も、よく頑張った!!」
霊愛「力使い切っちゃったけど…頑張ったわ!」
弦月姫「あまり役に立てませんでした…」
穹「そこそこ頑張りました!」
カルゴ「自信を持て、弦月姫!頑張って練習したあの技で、お空を驚かさたんだろう?それでもう十分だ、よくやった!」
弦月姫「ありがと…ございます…///」
キュッと抱きつき、俺を見上げてはにかむような笑顔を見せる。
カルゴ「帰ったら、ちゃあんと話を聞かせて貰うぞー!さーて、俺もお空と戦おうかなー!」
四姉妹「!?」
鈴仙「ちょちょ、ちょっと待ってよ…お空、まだノビてるわよ?」
部屋を覗くと、広い部屋の真ん中辺りでノビてるお空を発見した。首や頭などが痺れているのか、ピクピクと痙攣している。
カルゴ「ありゃ、気付かなかった…。それじゃ、薬だけ置いて帰りますかね。ほい、さとり」
ポケットから少し大きめの紙袋を取り出し、さとりにポンと預ける。思いがけない行動に、さとりは目を丸くする。
さとり「これは…?」
カルゴ「永琳先生特製の、体力回復薬と痺れ直し薬だよ。万が一のために作って貰ってたんだ」
さとり「このサイズ、どう見てもポケットに入りませんよね?どうやってポケットから…?」
袋は、縦の長さは20cmほど。対してこのポケットは、10cmほどしかない。そんな疑問が出るのも当然だろう。
カルゴ「このポケット、弦月姫の能力で中の空間を拡張してあるんだよ。なっ♪」
弦月姫「はいっ!」
咲夜さんは、紅魔館の中を広くしている。なんの空間を広げてるかが違うだけで、やっている事は同じだ。ズボンによってポケットのサイズが違うので、小さいものにだけ能力を使用してもらっている。
つまり、この能力を利用すれば、四次元ポケットも実現可能に……ゲフンゲフン。
さとり「なんと…すごい能力ですね…」
弦月姫「お母様に言われるまで、気付かなかったんですけれどね」
それから、さとりや鈴仙、目覚めたお空も交え、食事をしながら先程の戦いについてアレコレ議論した。その中でも特に俺の興味を引いたのは、「穹が巫月の雷を加速させた」事についてだ。
カルゴ「雷の力は随分使ってっけどよ、雷を加速させるなんて聞いた事ねぇぞ?そんなの、風じゃ出来ねーべよ?」
穹「うーん……でも確かに加速したんですよ?」
巫月「うんうん!私も見たもん!ギュゥゥゥゥンって速くなるとこ!」
カルゴ「暴風でも、雷より速い風は吹かないぜ。いくら天狗の力でもよ。だからそれ、穹の能力だと思うんだが」
いくら光速では無いとはいえ、雷は雷。風より速いのは明確だ。なので俺は、この怪現象を、穹の能力だと仮定した。
穹「私の…能力…?」
さとり「ふむ、2つ目の能力ですか。確か、巫月さんも2つ持ちなんですよね?」
巫月「うん、そうだよ!『幻覚を見せる程度の能力』と、『雷を操る程度の能力』!」
やはりこれは、ハーフの奇跡なのだろうか…?
穹「私は、『風を操る程度の能力』ですが……」
カルゴ「仮に能力だとするなら…そうだなぁ…。『加速させる程度の能力』…的な感じかな?」
穹「なんだかかっこいいですねぇ!よーし、私、決めました!明日からは父上の戦闘訓練を受けます!そして、使いこなせるよう頑張ります!」
カルゴ「ああ!」
まだ確定じゃないんだけど…ま、やる気になってくれたんならそれでいっか。仮定の域を脱しないにしても、試す価値は大いにあるし。
鈴仙「あー……ちょっといい?やる気になってるとこ悪いんだけど…仕事場の日は今日よ。だからそれは、周期的に見ると、5日後になるってこと忘れないで…ね?(あぁぁ言っちゃった…心の狭い女だって思われたかな…)」
カルゴ「そっか、すっかり忘れてた。サンキュー鈴仙、言われなくっちゃ明日から始めてたわ」
穹「あぁ…本来は今日が仕事場にお泊まりの日でしたね。私も忘れていました」
鈴仙「えへへ…良かった…。(思われてないよね?まさか…ね…)」
さとり「大丈夫ですよ、鈴仙さん。エスカルゴさんはそんな事、一切考えてませんよ」
鈴仙「!…良かった…」
カルゴ「あん?俺がどうしたって?」
鈴仙「ううん、こっちの話!なんでもないの!」
手をバタバタさせ、なんでもないを連呼する。
どこからどう見ても、なんでもないわけないのだが…。
カルゴ「…?」
まぁいっか。女同士の話だし、男の俺が突っ込むことでもないだろう。
食事のあとは再び2手に別れ、娘達がさとりと、俺がお空と対戦する話にまとまった。
なんか違うなぁ……。
なんだろうこの違和感。なんともいえない。