※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

238 / 1140
幻想郷防衛作戦・準備

紫「さて、今度こそ簡単に、作戦を説明するわ。ヒビキくんも参加する?」

 

ヒビキ「喜んで」

 

藍「!?」

 

紫さんは軽い調子でヒビキに参加を持ちかけて、ヒビキはそれを快諾、藍さんは驚きの表情を浮かべる。

 

カルゴ「へぇ…意外だな。お前なら『ひぃ!?』とか言ってビビるかと思ったんだが」

 

ヒビキ「だってよ、中国や北朝鮮と戦うなんて、最高に楽しそうじゃねぇか?」

 

カルゴ「禿同」

 

藍「(コイツら戦闘狂か?)」

 

紫「…じゃあ、ヒビキくんもよく聞いて頂戴ね。繰り返しになるけれど、時間が無いから」

 

兄弟「はい!!」

 

それから、紫さんが計画した『幻想郷防衛作戦』を聞き、改めて任務の過酷さを実感した。だがそれ以上に、その2国と戦えることに喜びを感じていた。

自分達が人間だった頃に散々ミサイルを発射してきた北朝鮮と、大気汚染物質を垂れ流す中国。

任務を通じて、国を代表して『お礼参り』する。

 

ヒビキ「へへへっ…俺のお礼参りは、1000倍返しだぜ?楽しみに待ってやがれ…!」

 

紫「あくまでも国の上層部の者だけよ。一般市民には手を出しちゃダメ」

 

ヒビキ「わかってますって」

 

上層部をすげ変えれば、国家も変わるだろう…。というのは紫さんの言葉。

 

紫「あと、2人にこれを渡しておくわ」

 

そう言って、スキマ空間から2つの陰陽玉を取り出した紫さん。大きさは、直径3cmほどだ。

俺達はそれを1つずつ受け取り、手で転がしたり透かしてみたりする。至って普通の陰陽玉だ。

 

カルゴ「これは?」

 

紫「遠隔通信機能を備えてるわ。トランシーバーと言ったらわかりやすいわね。試してみて」

 

聞くや否や、それを即座に試すヒビキ。地獄耳の俺でも聞こえないほどの小声で、陰陽玉に何か呟いている。

 

ヒビキ『おう、聞こえるかクソ兄貴』

 

カルゴ『おう、聞こえてるぜクソガキ』

 

目には目を、歯には歯を。

つまり、クソにはクソを、だ。(謎理論)

 

ヒビキ「へーっ、すげぇ!」

 

紫「これで、互いの安否を確認しながら戦って」

 

兄弟「了解!」

 

俺とヒビキは、それを内ポケットに仕舞う。

作戦では、俺が北朝鮮を潰して、ヒビキが中国を潰すという手筈だ。国土が広い中国を俺が担当したかったのだが、軍事力においては僅かに北朝鮮が上回っているので、俺にそちらを頼むとか。

より危険な方を先に潰すのはごく当たり前だ。

 

紫「それと、この御札ね」

 

懐から6枚の御札を取り出し、3枚ずつ渡す。

霊夢の御札と似たようなデザインで、“八雲”と書かれている。文字の色は、赤、黄、紫の3色だ。

 

紫「それには私の力が込められているわ。もし、エスカルゴが赤の御札を使用すればヒビキくんの元へ行けるし、ヒビキくんが使用すればエスカルゴの元へ行けるわ。(即席で作ったんだけど)」

 

カルゴ「つまり…もう片方へワープすると」

 

紫「ワープとは少し違って、もう片方へと繋がるスキマが開くの」

 

つまり、スキマが開く先の座標を、空間に設定したのではなく個人に設定したということだ。

 

カルゴ「なるほど。黄の御札は…?」

 

紫「それは、赤の御札を使用した位置に戻る為の御札よ。赤のとセットね」

 

もしヒビキが、赤を使用して俺の所に…北朝鮮に来て、中国へ戻る時にわざわざ飛ぶ手間が省けるって訳か。そりゃ便利だ。

 

ヒビキ「紫のはなんです?」

 

紫「紫のは、幻想郷に帰ってくるための御札よ。作戦が成功したら、それを使ってすぐに帰ってきなさい。中国と北朝鮮のトップ、2番目…その他官僚たちを消せば、この戦争はきっと終わるわ。上の者が居なくなったら、戦争どころじゃ無くなるものねぇ」

 

口元に開いた扇子を当て、ちょっぴり黒い笑みを浮かべる。言ってる事の残虐さと見た目の優雅さのギャップからか、背すじがブルリと震えた。

 

紫「でも、それだけでこの戦争が簡単に終わるとも思えなくてね。だって、もしも奴らが、トップより利益…戦争を継続したらどうなると思う?」

 

カルゴ「…幻想郷時間で2日…外の時間で8日は外に行けない訳ですから、その間に原爆とか落とされたりしたら…幻想郷が……」

 

紫「それなのよ。上層部の殺害って言ってもね、さっき言った通り、皆殺しにしちゃダメなのよ。政治などで混乱が発生し、人民が多い中国なんかは特に、未曾有の大パニックに陥るでしょうね。それはあまり望ましくないわ…」

 

上層部皆殺し→国を纏める者がおらず、混乱に。

上層部を残す→国を纏める者が現れ、戦争継続の可能性アリ。

 

前者は幻想郷に被害は無いが、後味が悪い。

後者は、幻想郷に被害が出る恐れがある。

二者択一を迫られるが、どちらを選んでも悪い結果に転んでしまいそうで、俺と紫さん、藍さん、ヒビキすらも頭を抱える。

 

カルゴ「1人だけ、上の立場の者を残すというのはどうですかね?1人だけなら、国は纏められたとしても戦争の継続は出来ないのでは?」

 

ヒビキと藍さんはハッとした様に顔を上げるが。

 

紫「もし独断で戦争を継続したら?」

 

紫さんの冷たい一言で部屋に再び沈黙が訪れる。

「しないと思います」と言いたいが、確かにその可能性も無きにしも非ず、だ。あくまでも可能性の話ではあるが、僅かでも可能性がある以上は、見過ごす訳にはいかない。

 

カルゴ「…ん?今回の任務は、あくまでも戦争を終わらせる事が目的なんですよね?」

 

紫「その為に上層部の者を消すのでしょう?」

 

カルゴ「それなら、上層部の者は残したままで、軍用品のみを消せば、戦争なんて継続出来ないのではないですか?」

 

一同「!!!」

 

俺の言葉に、3人は目を丸くする。まるで、誰かを殺すことしか頭に無かったかのような反応だ。

 

紫「それよ!それなら、それぞれの国は纏まったままで戦争を終わらせられるわ!!アメリカとはいえども、武器を持たぬ国を潰すなんてことは、流石にしないものね!」

 

閉じた扇子をビシッとこちらに向ける。

その顔は、先程までとは打って変わって、明るいものとなっていた。

 

カルゴ「ええ。少なくとも俺はそう考えます」

 

藍「なるほど…戦争の道具を消すのか。しかし、ただで破壊することは無理だろう。北朝鮮などはかなり厳重な警備だと聞くぞ」

 

カルゴ「見つかったり襲われたりしたら、その者だけを口封じする…とかはどうですかね?被害は最小限に抑えられると思いますが」

 

藍「うむ」

 

紫「どちらにせよ、多少なりとも血は流れるわ。ヒビキくん、人を傷付ける…いいえ、殺す覚悟はあるかしら?」

 

ヒビキ「ええ、勿論。こちとら、筋金入りの裏番ですからね、今さら人を傷付けることには何とも思いませんよ」

 

紫「(何も思わないのは少し異常だけど…。)そう、頼もしいわ」

 

ほんの少しだけ表情を曇らせた紫さんだったが、大丈夫だと判断したのか、小さく頷いた。

 

カルゴ「お前、裏番だったのか。俺は表だぞ」

 

藍「(コイツら……ふ、不良なのか…!?)」

 

ヒビキ「表もいいが、裏の方が恐れられるんだ。ま、表より出しゃばって喧嘩してたけど」

 

カルゴ「なるほどな〜」

 

中1のクセに、立派に不良やってたんだな。

俺なんて中2からだぞ?派手にやり始めたのは。

いや、派手といってもそんな頻繁にやった訳じゃ無いんだけどね?

 

紫「ほらほら、無駄話しない。そうと決まったらすぐに行くわよ!」

 

兄弟「えええええ!?」

 

き、急にかよ!?

そんな大事、何ですぐに!?時間無いからって!

 

紫「分かってるだろうけど、時間が無いからね。ヒビキくん、天魔には藍から伝えてもらうわ」

 

ヒビキ「っ…了解…」

 

下唇を噛み締め、苦虫を噛み潰した様な顔になるヒビキ。椛たちの事を考えているのは明白だ。

やはり、こういう時は自分で言いたいだろう。

 

紫「エスカルゴ。みんなには、同じく藍から…」

 

カルゴ「ダメです…俺が言わなきゃ。約束したんですよ、霊夢と。『あんたが危険な所行く時は私も一緒に行くのよ!』って。でも、この結界を維持する役目がある霊夢を、外に連れてく訳にはいかない…と思います。だからせめて、説明だけでも俺が…」

 

紫「そんな事を言ってる場合じゃないでしょう?時間が無いのよ」

 

カルゴ「それでも、約束は約束です…。守らせて下さい…お願いします……」

 

紫「間に合わなかったらどうするの?」

 

確かにそうだ。間に合わなかったら幻想郷が滅ぶかもしれないのだ。たった1人の女性と交わした口約束と、どちらが大事なのかは明白だ。

諦めるしかないのか…と悩んでいた時、藍さんが口を開く。

 

藍「私が連れていきます」

 

紫「藍!?」

 

藍「紫様は、こうなるのも見越して私に力を授けて下さったのではないですか?御自身は、6枚の御札と陰陽玉に力を使ってしまうから…。時間にしても、説明する程度の時間は残されているのでしょう?だから紫様は、リミットを匂わせながらもしっかりした説明を行った。……違いますか?」

 

紫「はぁ…少しは空気読みなさいよね…」

 

藍「すみません…」

 

おいおいおい…おっかないなこの人は。

 

カルゴ「約束くらい守らせて下さいよ紫さん…」

 

紫「ふふっ…あなたが霊夢との約束を覚えているかを試しただけよ。この分なら大丈夫ね。でも、すぐに帰ってきてね」

 

カルゴ「わかりました。藍さん、お願いします」

 

藍「ああ」

 

小さく頷いてスキマを開いた。

この先には、霊夢が暮らす博麗神社が…。

 

藍「手短に頼む」

 

カルゴ「わかってますって。行ってきます」

 

軽く頭を下げて、隙間に飛び込んだ。

目を開けるとそこは、賽銭箱の前だった。

 

カルゴ「霊夢ー、居るかー!」

 

賽銭を入れず、縁側から普通に内部に入る。

本当なら戦勝祈願でもしたいところだが、時間があまり残されていない。

 

霊夢「んー?お賽銭はー?」

 

お茶を啜りながらこちらを振り向く霊夢。

 

霊愛「お賽銭はー?」

 

そして、霊夢の言葉を復唱する霊愛。

なんとも可愛い。だがそこには、ここにはいないハズの2人の姿があった。

 

巫月「あっ、エスカルゴ!!」

 

てゐ「邪魔してるウサ〜」

 

カルゴ「巫月と…てゐ?なんでここに?」

 

今日は博麗神社の日だから…あ、そうか。

会いに来てくれたのか。

でもごめんな…これからちょっと…。

 

巫月「会いに来たに決まってるじゃん!えい!」

 

足を伸ばして座るというリラックスした体勢から素早く飛び起き、俺に抱きつく巫月。

 

でゐ「私はただの保護者ウサよ〜。鈴仙は診療所の方を手伝ってるウサ」

 

カルゴ「そうか…」

 

巫月を抱き締め、撫で回しながら呟く。

どうせなら、全員に直接言いたいんだけどな…。そうもいかない、か…。

 

カルゴ「霊夢、霊愛、巫月、てゐ。真面目な話がある、聞いてくれ」

 

四人の顔を見渡しながらそう宣言。

眉をひそめたり、真剣な顔付きになったり、ボーッとしていたり…バラバラだ。

 

カルゴ「外の世界で、大規模な戦争が起こった。このままじゃ幻想郷も危ういかもしれないんだ。だから俺とヒビキで、その脅威を排除してくる。つまり、これから数日間、幻想郷を留守にする。やる事は、敵国の戦争道具の破壊工作だけだからすぐに帰ってこれる」

 

霊夢「ちょっと、急に何言ってんの?戦争?破壊工作?もう少しわかりやすく説明してくれる?」

 

カルゴ「…ごめん、時間が無いんだ。出来るだけすぐに帰ってくる、待っててくれ」

 

言うべきことは言ったので、巫月を引き剥がし、襖に手をかける。名残惜しいような気もするが、早く終わらせねばならない。

 

霊愛「お外いーなー」

 

巫月「ついて行ってもいーい?」

 

外の世界に興味津々の霊愛と巫月。

可愛くオネダリされても、これだけは譲れない。

 

カルゴ「ダメだ。遊びに行くような場所じゃ無いんだ。あと…霊夢、ごめんな。前に交わした約束守ってやれなくて…」

 

霊夢「うん…まぁ、仕方ないわよ。あの時とは、状況が違ってるんだから。娘もいるし。どうせ、万が一に備えてなきゃいけないんでしょ?」

 

カルゴ「…うん」

 

霊夢「あなたなら、“万が一”にならないって信じてるわ。…だから…頑張ってよね…?外の人間なんかに負けたら、絶対に許さないんだから」

 

カルゴ「ああ、わかってる。気を付けてくるよ」

 

霊夢「うん」

 

ニコッと優しく微笑み、頷いてくれた霊夢。

巫月は少ししょんぼりしており、霊愛は諦めたように煎餅にかじりついた。ノリが歯に挟まったのか、顔をしかめながら爪楊枝を使用する。

ホントに母親に似てきたなと感じる今日この頃。

 

カルゴ「あぁそうだ。お参りの代わりにさ、てゐの能力でちょっぴり幸運にしてくれないか?てゐが良ければ…だけど」

 

てゐ「『人間を幸運にする程度の能力』だから、妖怪のお前は無理ウサねw」

 

カルゴ「あれま。それなら仕方ないな。…あれ?他人に幸運を与えることが出来るとも聞いたことあるぞ、鈴仙から」

 

てゐ「チッ、あの兎…」

 

全員に聞こえそうなほど大きな音で舌打ちする。

あの兎…と言っても自分も兎なのだが。

 

カルゴ「やっぱいいや。自分の力で頑張る。いってきます」

 

霊夢「しっかりね」

 

霊愛「お土産おねがーい」

 

巫月「早く帰ってきてよね!」

 

皆の声を背中に聞きながら、縁側に出る。スキマは勿論、開いている。それへ向かおうとすると、服の裾を誰かに引っ張られて引き止められる。

振り向くと、そこにはてゐが居た。

 

カルゴ「どした?」

 

てゐ「やっぱやってやるから、耳貸して目を瞑れウサ。ちゃんと目瞑らなきゃダメウサよ?」

 

ちょっぴりモジモジしながらグイグイ引っ張る。

俺とてゐの身長差は約43cm、ヒソヒソ話するには俺がしゃがむしかない。

 

カルゴ「…?わかった」

 

膝を折り、てゐに左耳を貸す。

ロリ兎のてゐとほとんど同じ目線になる。

 

てゐ「…えっと…頑張って来い…ウサ…///」チュッ

 

カルゴ「!?」

 

い、今の…頬で感じた柔らかくて温かい感触ってまさか……まさか?

 

てゐ「幸運を念じておいたから、多分お前は殺されないウサ。だから、さっさとソレを終わらせて帰ってこいウサ。あんまり女を待たせるものじゃ無いウサよ〜?クックックッ…」

 

カルゴ「おう…サンキュ。というか今…お前…」

 

てゐ「勘違いすんなウサ。幸運念じただけウサ。なんで私がお前なんかにアレしなきゃダメウサ?お前なんかタダのイジる対象ウサよ?」

 

お前なんかって連呼すんな…(泣)

 

カルゴ「はいはい、わかったウサー。じゃ、いってくるウサね〜」

 

てゐ「気を付けろウサ。あと真似するなウサ」

 

巫月「頑張ってー!」

 

カルゴ「おうよ」

 

てゐと巫月に見送られながら、スキマに入る。それを抜けると、あの応接室のような部屋に出た。

3人とも正座をして、神妙な面持ちだ。

 

カルゴ「ただ今戻りました」

 

紫「ほら、やっぱり1、2分じゃダメじゃない」

 

カルゴ「ですね…。でも、納得はしてくれたようなのでよかったです」

 

紫「それなら、行かせた甲斐もあったかしらね。…それじゃ、今度こそお願いね。外へ繋げるわ、気を引き締めなさい!」

 

兄弟「はい!」

 

待ってろよ北朝鮮!

この俺様が、(軍用品を)ぶっ潰してやるぜ!!




まとめ
紫さんは御札等に力を使ってしまった。しかし、そうなるのも読んでいた(?)紫さんは、前もって藍さんに力を与えていたとか何とか。
外へ繋げる際は、紫さんと藍さんが力を合わせて開くらしい。
(前もって2人連れていくと決めていたら、直前に御札等で力を消費しなかったのにね)

作戦を「上層部の者の殺害」→「軍用品の破壊」に変更。殺害だけが戦争じゃないのさ( -ω- `)フッ

赤…片割れの方へ移動出来るスキマが開く。
黄…赤を使用した位置に戻るスキマが開く。赤を使用せずにこれを使おうとしても、使えない。
紫…幻想郷へ戻れるスキマが開く。どこに開くかはアトランダム……かも?


さぁ、てゐは一体何なんでしょうかね。
本当に念じただけか、照れ隠しなのか…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。