しばらく滑空を続けた俺は、北朝鮮の上空およそ500mあたりを旋回飛行している。地名が何一つわからないので、ここは北朝鮮のどこなのか、がうまく説明出来ないのが現状だ。
カルゴ「まぁいいや…発射場探そ」
北朝鮮がミサイルの発射に使用していたあの土地は確かに自然の中だった。しかも、比較的茶色が多い土地だ。テレビで頻繁に放映されてたというのもあって、しっかりと記憶に残されている。
北朝鮮は、決して広いとは言えない。荒野の様な土地は、上空からなら一目瞭然だろう。
そう判断した俺は、もう少し高度を上げて北朝鮮を見渡す。アタリはすぐについた。
カルゴ「見つけた……!」
ニタリと口元を歪め、高度を落とす。
目的の発射場まではもう、すぐそこだ。
だがその時、遠くから妙な音が聞こえてきた。
ゴオオオオオ…
カルゴ「まさ…か…」
ゾッと嫌な予感がして振り向く。そこで驚くべきものを目にした。なんと、黒い円柱状の物体が、北朝鮮目掛けて飛んで来ているのだ。
なぜ「北朝鮮目掛けて」と判断したかというと、段々と高度を落としてきているからだ。このままのペースで落ちたなら、北朝鮮に着弾するだろうことは明白だ。
カルゴ「戦争中なの忘れてたぜ…!」
冷や汗を流して、このミサイルをどうしようかと考えていると、内ポケットに入れてある遠隔通信機からヒビキの焦ったような声が聞こえてきた。
ヒビキ『おい兄貴!何かミサイル来てねぇか!?あれってこっちに来るのか!?それともそっちに行くのか!?アメリカ、ガチ過ぎじゃね!?』
カルゴ『弾道、落下角度から計算すると、これは北朝鮮に来る。そっちは大丈夫だ』
アメリカがガチで来てるのかはわからない。でもガチなら原爆・水爆を使用すると思う。
ヒビキ『へへっ、そーかよ!流石、高専で物理もやってただけあるな!』
カルゴ『いいからそっちに集中しろ!』
ヒビキ『おうよ!』
さて…どうやって対処するんだ、これ…!!
こうして考えているあいだにも、ミサイルは轟音を立てて接近してきている。吸血鬼、白狼天狗の視力だからこそ遠くまで見えるのであって、人間ならまだ目視は不可能な距離にある。しかし弾道ミサイルの速度は、マッハ15を越えると言われている。今は遠くにあったとしても、やはり時間は残されていない。
カルゴ「クッ、ソ…どーしよ…?」
迷っている理由は主に2つ。
まず1つ目は、暴走して『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を目覚めさせ、飛んでくる弾道ミサイルを『きゅっとしてドカーン』するのが良いのか…という事だ。とはいえ、もしあれが核を積んでいたら、核が飛散してしまうのだ。
2つ目は、このミサイルをスルーし、アメリカに潰させるか、だ。しかしこの手は、何の罪もない人民が大勢、命を落とす可能性がある。
核では無い事に賭けるか、無視するか…。
大勢の命がかかった、まさに究極の選択だ。
牢や結界で囲って破壊する…という手も考えた。
しかし、マッハ15のミサイルを囲もうとした所で即貫通してしまうだけだろう。それに、逸らそうとしても、速すぎて逸らせないと考えていい。
カルゴ「あーもうッ!どーすりゃいいんだ!?」
ボリボリと頭を掻きむしって迷いを口にする。
そうこうしているうちに、ミサイルは眼前に迫ってきている。遠くから破壊しようとしても、余りロングレンジとなると、《目》を手に移せない。
破壊も無理、逸らすも無理、見過ごすのも無理…選択肢なんて、あって無いようなものだぜ…。
こうなったらいっその事、核じゃない事に賭けて破壊するしか…!
カルゴ《諏訪子様、どうすればいいですかね?》
俺の考えている事は、神にはダダ漏れ。紫さんは今回のこれを水面下で片付けたいようだが、脳内交信が可能な神にはダダ漏れなのだ。
だから俺は、意見を求めようと話しかけた。
諏訪子《え゙っ、私!?そ、そうだなぁ〜…》
カルゴ《神奈子様、早苗も。何か良いアイディア無いですかね?賭けるしか無くないですか?》
神奈子《しかし…安全策は無いものか…》
早苗《運を天に任せ、破壊しましょうか》
神奈子《待て待て待て待て…》
神ですらも困惑する、究極の選択。
諏訪子様と神奈子様が迷う中、答えを出した。
カルゴ《早苗、サンキュ。核じゃない事に賭けてみるよ。見ててくれ》
早苗《…責任は取りませんよ?》
カルゴ《ハンッ、早苗のはただの判断材料だぜ?判断を下したのはこの俺だ、責任も俺にあるよ。だからまぁ…祈っててくれよ》
早苗《はいっ!勿論です!》
諏訪子《頑張れーっ!》
神奈子《身の危険を感じたら素直に身を引けよ》
カルゴ《ありがとうございます》
早苗が祈っててくれている。諏訪子様が応援してくれている。神奈子様が心配してくれてる。
これだけで勇気が出てくる。
カルゴ「紅眼『吸血鬼の本質』!雷鎧『サンダーアーマー』最大出力!!」
普段のバチバチ音とは違い、更に電力が強まったような音が鎧から発せられる。防備はこれで十分だ。というか、これが最大限の防備だが。
しかしこれでは、ミサイルが迫ってきた際に腰が引けてしまうので、理性の手網を今一度、手放すことにした。
カルゴ「暴走『オーバードライブ』」
超強力な鎧を纏いながら肉体のみを暴走させる。
これに慣れていないと、「あれ?俺、今何してんだ?」という状態になるが、俺はもう狂気すらも手懐けたので、向かうところ敵無しだ。…幽香さん以外は。
カルゴ「ヴオ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!(ミサイルぶっ壊すぜェェエエ!!)」
一気にスーパーハイテンションとなった俺は、飛来するミサイルを破壊すべく、自分からミサイルへ突っ込んでいく。
肉体が暴走すると、思考も軽く狂気に侵されるが特に問題は無い。解除さえしなければ肉体にガタは来ないので、大丈夫なはずだ。
大空の下では、どれほど遠くにあろうともミサイルが良く見えるのが素晴らしいな。吸血鬼も白狼天狗も、視力はマジやばいからね。
視力、1145141919810くらいあるんじゃないか?
なんて冗談、言ってる場合じゃねぇよな。けど、あと数10秒で俺とぶつかるはずだ。
俺の記憶が正しければ、マッハ1は340.29m/s。
これを15倍したものがミサイルの速度、マッハ15だという事は、マッハ15=5104.35m/sになる。
1秒で5.1キロも飛ぶんだ、おかしいだろう。
でもあのミサイルがマッハ15という保証はない。あくまでも一般的な弾道ミサイルの速度から算出した、仮定に過ぎない。
実際はもっと、速いのかもしれない。
カルゴ「…」
核か否かってゆー、超巨大なリスクもあるのに…どうしてコレ破壊しようとしてんだ、俺は…。
カルゴ「クククッ…リスク上等ォ!!迎エ撃ッテヤルヨ、アメリカ!!雷装備『翼竜ノ舞』!!」
いやもういい!神の後押しもあるんだから、何も考えねぇでこのミサイルぶっ壊してやるんだ!!
壊すと決めた俺は、巨大な翼を出して猛スピードでミサイルへ突っ込んでいった。
ヒビキSide
俺は今、兄貴と別れたあの地点からさらに高度を落として、広大な国土を上から見下ろしていた。
そしてついに、要塞らしき建物を1つ発見した。
ここに来る直前に八雲様が言ってた、「自然の中の立派な建物」ってぇのは、多分アレだろうな。
確かに警備はすげぇ。入り込むのは容易じゃねぇってのがパッと見でもわかる。でも北朝鮮の方がすごい警備らしいから、兄貴はこれより更に大変なんだろう。
ヒビキ「いっちょカマしてきますかねぇ…!」
指をボキボキと鳴らして、その要塞へ強襲をかけようと向かいかける。
しかし、野生の勘と言うべきか、何か悪い予感がして、ふと背後(アメリカの方角)を見る。特に、何も見えない。それでも不安な俺は、その方角へ向けて、白狼天狗の能力を発動させる。
ヒビキ「『千里眼』!」
んー…特に異常無し……いや、待て。何だアレ。
千里眼でもギリギリ見えるだけの距離に、黒くて槍のように尖ったものが見えた。それが徐々に、こちらに向かってきている。
1000里は約3940Km。つまり、千里眼でギリギリだということは、今あの物体はそれくらいの距離に存在しているという事だ。
そして俺は、あの物体に見覚えがある。
ヒビキ「おいおい待てやコラ…あれってよぉ…」
円筒形のそれの正体を掴んだ俺は、八雲様から賜った遠隔通信機に大声で呼びかける。
ヒビキ『おい兄貴!何かミサイル来てねぇか!?あれってこっちに来るのか!?それともそっちに行くのか!?アメリカ、ガチ過ぎじゃね!?』
カルゴ『弾道、落下角度から計算すると、これは北朝鮮に来る。そっちは大丈夫だ』
この口振りから察するに、兄貴ももうミサイルに気が付いてたんだな…流石だぜ。
ヒビキ『へへっ、そーかよ!流石、高専で物理もやってただけあるな!』
カルゴ『いいからそっちに集中しろ!』
ヒビキ『おうよ!』
そっちに行くってんなら、ミサイルは兄貴に任せようか。俺はこの要塞を襲うだけだ!
ミサイルから意識を外し、地上に降り立つ。
裏門に降り立ったつもりなのだが、警備は手薄な事は無かった。姿を隠す術を持たない俺は、難なく見つかってしまった。
警備「
警備「
警備「
ヒビキ「げげっ…」
囲まれちまったかー…あんま無闇に殺すのも夢見が悪いしなぁ…気絶させればいっか。
警備「
警備「
警備「
うーん、わからんなぁ…。
ヒビキ「
ぎゃあああ!!恥ずかしい恥ずかしい〜!!
なーにが、ニーハオシェイシェイだよ馬鹿野郎!
1人で頭を抱えていると、突然警備の1人が空を指さして大声を上げた。
警備「
ヒビキ「?……あ」
何を言っているのかはわからないが、空を指さしているので振り向いたところ、先程千里眼で確認したミサイルが降ってきていた。
警備「
これは好機だぜ!
俺の兄貴がミサイルの相手をするとも知らずに、無駄話したのがアダとなったな馬鹿野郎共!!
ヒビキ「余所見すんなオルァ!!」
警備達「!?」
みんなが空を見ている中で、俺は警備員達に視線を戻して、太刀を放り投げて殴り掛かる。
白狼天狗の素早さに反応出来なかった人間達は、アバラを数本折りながら壁に叩きつけられる。
それだけで気絶したようで、誰一人起き上がる事は無かった。
へぇ…種族によってここまで力に差があるとは。もしかして、俺が兄貴に勝てないのもそれのせいなのか…?勝てるようになりてぇなぁ…。
さーて、んな事考えてねぇで、中行きますかね。
ここまで武装した警備員がいるんだから、ここが軍に関する要塞なのはもはや間違い無いだろう。政治の意味で重要な建物ならば都市部にあるはずだし、武装した警備員なんて居ないだろうしな。
ヒビキ「斬ッ!!」
拾った太刀を真上から振り下ろし、衝撃波で扉を吹っ飛ばす。中では、武装した警備員達が驚いている様子が見て取れた。
思い出すぜ…他校に殴り込みに行った時の事…。急に襲ってきた俺達を見て、あんな顔してたな。あの時は、奴らが集まるまで待っててやったが、今回はそうもいかねぇよな。命懸けだし。
ヒビキ「一気にやるか…!妖撃『妖気の刃』!」
屋外から屋内に向けて弾幕を発射し、一網打尽にする。
ヒビキ「さァて…片付けますかね!!」
太刀を肩に担ぎ、悠々と要塞に入って行った。
エスカルゴSide
カルゴ「ガルァァァァァァッ!!!」
いける!このミサイル、ぶっ壊せる!!
俺のスピードとパワーと…ミサイルのスピードとパワーを合わせりゃあ、俺の身が滅びるかわりにミサイルも壊せるだろうな。
先程までと比べるとミサイルは目の前に見える。
衝突まであと、10秒もない。
雲を切り、空気を切り、空を切って進む。
雲の中の氷塊や水滴が目に入り、生温かい液体が流れ始めるが、そんなのには構わずただただ真っ直ぐに突き進む。
カルゴ「ア゙ア゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙!!」
ゴオオオオオオオオオオオ……
グングンと迫ってくるミサイル。
衝突まで残り3秒…あるか無いか。
その直後、音速を遥かに超える速度で空を駆ける2つの物体は、空中で正面衝突をし、超新星爆発の如く、大爆発を起こした。
Google翻訳合ってるのか?