気が付いたら俺は、海へ一直線に落下していた。死んで復活したのか、瀕死なのかもわからない。痛覚すらも麻痺しているようだ。恐らくそれは、アドレナリンがドバドバ出ているせいだろうが。
カルゴ「……ゆーて…このまんま落ちっかよ…」
あまり力が入らない翼に力を込め、自由落下運動から逃れ、グライダーの様に滑らかに滑空する。本当なら高度を上げたいのだが、羽ばたける程の力が残されていないので、せめて落下だけは、と思い、滑空を続ける。
滑空中に、アメリカから来たと思われるあの黒いミサイルの存在を思い出し、キョロキョロと辺りを見渡すが、何処にも無い。
少しずつ近付いてきた北朝鮮の大地に目をやる。爆発跡やクレーターなどの類は、何処にも見当たらなかった。
それはつまり、ミサイルの破壊に成功したという事を意味していた。
カルゴ「よっしゃ…成功したか…!」
その時、遠隔通信機から弟の声が聞こえてきた。相変わらず、気が抜けるような軽い声だ。
ヒビキ『よっ。ミサイル爆破成功か、流石だな。爆音、こっちまで聞こえてきたぜ』
カルゴ『まぁな。お前の方はどーなんだよ?』
ヒビキ『あぁ、俺か?第一要塞を無事鎮圧ぅ〜。すげーだろ?はははっ』
カルゴ『第一要塞?お前、中国語読めんのか?』
ヒビキ『いや、フィーリングだぜ。何となくさ、第一っぽい字だったんだよ』
あー、もしかしてあの文字かな?
“第”を簡略化したような、旧字体みたいなやつ。
カルゴ『なるほど、お前らしい。だが、第一って事は他にもあるって考えていいよな?』
ヒビキ『そこなんだよ…。まぁ、広大な中国だ、1つなワケがないってわかってたよ。兄貴は?』
カルゴ『こっちはまだ滑空中。ミサイル爆破して疲れちった…身体が重い』
ヒビキ『そんなにちんたらしてっと、俺の手柄が増えるばかりだぜぇ?』
カルゴ『んじゃお前ミサイル壊せんのかよ』
ヒビキ『ム〜リ〜』
カルゴ『なら黙ってそっちやれ。俺もそろそろ、北朝鮮のヤツらと殺り合ってくる』
ヒビキ『おう、じゃーなー』
カルゴ『おうよー』
すぐ行けるか…?
いや、無理だ…もう少し休まないと。
ほんとさ、この疲れはおかしい。多分、ミサイル壊した時に死ななかったんだな。もし死んだら、疲れとかはリセットされるから。
てゐのキス…オマジナイのおかげか?
暴走後の疲れはヒデェ…今すぐ寝転がりたい。
でもそれは、全てが終わってからにしよう。
今は任務に集中だ。
酷く疲弊している身体に鞭打って、ミサイルを見つける前に発見した、弾道ミサイル発射場を探し始める。数分後、荒野の中に再び、発射場を発見した。テレビでよく見ていたので、間違い無いと判断した。
カルゴ「やっぱ、生で見ると違うねぇ…。さて、壊すかね…覚悟しろよ?」
発射には、発射台が必要不可欠。ミサイル本体を壊さずとも、台だけを壊せばいい。しかし、太い鉄骨を組み合わせたような台なので、復旧はすぐに可能かもしれない。それだけが唯一の不安だ。
諏訪子《うーん…両方壊せば確実じゃない?》
神奈子《しかし、万が一核が積まれていたら…》
早苗《ですね、壊しましょう》
迷っていると、神様たちも意見を出してくれた。神奈子様の言う通り、核を積載している可能性もあるが、やはり両方壊すのが確実だろう。
カルゴ《神奈子様。もし核が積まれてたら、被爆するのは奴らです。俺は被爆しないので、そこは大丈夫ですよ》
神奈子《なぜ被爆しないと言える?》
カルゴ《空中から破壊し、すぐにズラかるので》
神奈子《ククッ……なるほどな。しかし奴らは、移動式発射台も所有しているのだろう?それらの破壊もせねば、意味が無いのではないか?》
カルゴ《あれらが置かれているのは、切り立った崖の下や、山肌が見えている所など、相場が決まっています。ですから、自然を巡ってそれらを破壊していけば、今回の任務は終了です》
神奈子《ふむ…せいぜい、油断はするなよ》
カルゴ《勿論です》
上空から見てもわかるくらい、警備は厳重だ。
武装した兵士達が、あちらこちらで発射台周辺を警護している。
どうやって破壊しよう?…あ、ミサイルもう装填されてるやんけ。発射する気満々か?なンだよ、どっちみち両方破壊すんのかよ。大丈夫かなぁ…俺も被爆しねぇように気を付けなきゃ。暑いからマスク外したいけど、念の為にまだ着けておくか。
ミサイルは装填されてるから…デケェ雷を一発、ドカンと落とせばいっか。それで、すぐ爆発してくれれば幸いだ。
カルゴ「禁弾『降り注ぐ厄雷』!!」
上空約300m地点で、スペルを発動させる。
エネルギーを解き放ち、それをチャージ、無数の槍へと形を変えさせ、降らせる準備をする。
肉体は疲れてても、エネルギーは十分にある…!
これを、ミサイルに集中的に降らせ、爆発させてやるぜ、北朝鮮よォ…!
カルゴ「降り注げッ!!」
合図を送ると、ゲリラ豪雨のように集中的に降り注いでいく。それらは、足場や発射台を尽く破壊していく。カァン、キィン、と金属の音が聞こえてくる。しかし、何故かミサイルは爆発しない。
カルゴ「…あり?おっかしーな…ミサイルが爆発しないぞ?カツカツ弾かれちまったかな?」
尖っているものに尖っているものをぶつけたら、そりゃ弾かれるよねって…。なら、溶かそうか。
右手と左手を平行に構え、それぞれプラスとマイナスの電気を発生させる。アーク溶接の要領で、火花を発生させて、火球を生み出す。ジワジワとサイズを大きくしていき、元○玉のように頭上に構える。今回のこれは、普段使用している、小型サイズの火球などでは無い。もっと巨大な…本気で何かを溶かす時用の火球だ。
カルゴ「融解『地上の人工太陽』!!」
スペルの名前は、お空の「地獄の人工太陽」から取ったのは誰が聞いてもわかるだろうな。
だってさ、熱くて丸くて太陽みたいじゃん?
これ、何度あるんだろう?測定した事がないから詳しい事はわからないけどさ、太陽の表面温度は越えてるよね、確実に。これを、あのミサイルにぶつけたらどうなるでしょーな♪
その、答えは……!
カルゴ「そぉら、消えてなくなれッ!!」
バチバチと火花を発しながら、巨大な火球を地上に叩きつける。目測ではあるが、恐らく、2013年にロシアのチェリャビンスク州に落ちた隕石より大きい。
そんな火球が突然降ってきたのだ。
兵士たちの動揺は、半端では無い。
兵士「
兵士「
兵士「
慌てふためく、ミサイルを警護していた兵士達。ミサイルの先端部に、とうとう火球が触れた。
ジュワァァァァァッ
火花を散らし、白い蒸気を上げながらミサイルが溶け始めた。もう夜なので、オレンジ色の火花がよく目立つ。
兵士「
兵士「
俺はそんな様子を、遥か上空から腕組みしながら見下ろし、この発射台が使い物にならなくなったのを確認し、その場をあとにした。
さーて、山間部でも行きますかね。
移動式発射台は、山間部に誘致されてるのが結構あるしね。戦車みたいな形してるんだよな?
なら、わかりやすいことこの上ないね。それに、その戦車すらもぶっ壊すつもりだしね。
つーかこれ…今日中に帰れねぇだろ…。
咲夜Side
私が魔理沙とアリスを連れてきて、およそ4時間が経過した。お嬢様の指示で2人を図書館へ通してからは、娘と夕飯の準備等をしていた。しかしそれも、手馴れた作業なのですぐに終わり、手持ち無沙汰となってしまった。
そろそろ夕食の時間なのだけど…お嬢様方は一体何をやっているのかしら…。魔法使い3人が一堂に会するなんて、私が知っている中では魔理沙が本物の魔法使いになった時以来かしらね。
夕食が遅くなってはお身体に悪影響を及ぼすし…呼びに行こうかな…?
そう決めた私は、地下の図書館へと向かう。扉の前まで来た時、扉の向こうから複数人の話し声が聞こえてきた。
レミィ「やったわ!魔法陣完成よ!」
魔理沙「ぐっは〜、疲れたぜ〜!」
アリス「これまでに無いほどの重労働だったわ…」
パチェ「…むきゅ〜…」
小悪魔「パチュリー様ぁ〜!お気を確かに〜!」
パチェ「うるさい…」
小悪魔「はうっ!?」
何だろう…何をやっているの…?
念の為に2人の分も作っておいたけれど、食べて帰るパターンかしらね?魔理沙あたりは、ここで食べて行くと思うけれど。
おっと、いけない。呼びかけなきゃ。
やる事を思い出した私は、扉をノックする。
他の部屋の扉とは違い、重くて分厚い扉だ。
咲夜「失礼します。お夕食の準備が整いました」
図書館へ入ると、とても大きな魔法陣が図書館の床に描かれていた。直径4mはありそうだ。
レミィ「あぁ、来たわね咲夜。今呼びに行こうと思っていたところよ!」
咲夜「はぁ…。この魔法陣は一体何ですか?」
レミィ「エスカルゴの元へワープする魔法陣よ」
咲夜「えっ……」
エスカルゴさんは今、外の世界に居るんじゃ…。仮にこれを使ったとして、無事戻ってこれるの?
レミィ「アリスと魔理沙が手伝ってくれなければこんな早く完成出来なかったわ!2人共、本当にありがとう!」
魔法陣と聞いて訝しむ私をよそに、2人にお礼を伝えるお嬢様。素直に魔法陣の完成を喜んでいるように見える。
魔理沙「へへっ、礼なんてよせよ、お前らしくもない。私はただ、外の世界に興味があるだけだ」
アリス「私は、魔理沙がやると言うから手伝っただけだけどね。でも、パチュリーの知識無しには完成し得なかったし、一番感謝すべきはパチュリーよ」
レミィ「そうね!ありがとう、パチェ!」
パチェ「…どーいたしまして…。発動は魔理沙に任せたわ、あとは好きにして…私は寝るから…」
レミィ「ゆっくり休んでちょうだい!」
ノソノソと机へ戻るパチュリー様、それを支える小悪魔、2人を見送るお嬢様。その顔は、子供らしい無邪気な笑顔を浮かべていた。
アリス「じゃあ、私はこれで失礼するわ。かなり力を消費して、疲れちゃったし」
レミィ「そう…。魔理沙はどうする?夕飯ここで食べてく?咲夜の事だし、あなたの分も作ってあると思うけれど。ねぇ?」
咲夜「はい」
魔理沙「おお!そんじゃ、お言葉に甘えるぜ!」
お嬢様と魔理沙と私でアリスを玄関まで見送り、妹様も交えて食事を始めた。魔法陣はというと、夕飯のあとに外へ行くメンバーを決めて、魔法を発動させる話にまとまった────。
エスカルゴSide
腹減った…。
グルグルと響く腹をさする。
お昼ご飯も食べていなければ、夕飯の時間はとっくに過ぎている。腹も減るだろう。時間的には、夕飯というより夜食だろうか。とにかく、今すぐ何かを食べたい。腹に溜まる何かを。
カルゴ「『
数年前にレミリアから教えて貰った、超音波で周辺を探る方法を実践。ここから東に9mあたりにイノシシ一匹、北に15m…イノシシ親子か。
ひと狩りいこうぜ!
東に進もうと翼を広げたその時。
遠隔通信機からヒビキの声が聞こえてきた。
ヒビキ『腹減ったぜ兄貴ぃ〜……』
カルゴ『今から焼肉する。お前も食うか?』
ヒビキ『マジか!行くぜ!』
直後、俺の目の前にスキマが開いた。
紫さんから貰った赤の御札を使用したとみえる。
ヒビキ「よっ!…あれ?肉は?」
カルゴ「今から捕まえる。まて、もう一度場所を特定する」
ヒビキ「?」
話をしている間に移動している可能性を考慮し、もう一度反響定位を行う。ほぼ移動していない。
ヒビキ「へー…蝙蝠みてぇだな」
カルゴ「ま、吸血鬼だし?」
ヒビキ「すげぇなぁ…」
カルゴ「ほら、ちんたらすんな。いくぞ」
ヒビキ「おう!」
イノシシ一匹との軽い戦闘の末、頭蓋を砕くかかと落としをキメ、その日の夕飯とした。