早苗「ふぅ〜、美味しかったですね〜!次はどこ行きますか?」
カルゴ「そーだな…」
注文したババロアを完食して、代金を払って店を出る俺たち。店の中でもイチャついてしまったからか、店の中でもかなり注目を浴びてしまった。イチャついたといっても、「あーん」したりされただけなのだが。東風谷早苗という人物のブランドを、改めて思い知らされた。
早苗「お団子はもう神社で食べましたし…ドーナツはありませんし…う〜ん……お煎餅というのはちょっと…」
カルゴ「時間はタップリある、色々行こうぜ」
早苗「ですね!」
カルゴ「…ん?」
そんな会話をしつつ甘味処巡りを進めていくが、なんの前触れもなく、唐突に辺りが暗くなった。見上げると、黒っぽい雲が広範囲に広がっていた。
カルゴ「うわ、天気悪くなってきた」
あれ…洗濯物取り込んだっけか?やべ、めっちゃ不安になってきた…濡れたらどーしよ。
穹に乾かしてもらうか。
早苗「…!多分これですよこれ!謎現象の!」
カルゴ「あぁ、これが…」
フツーの雲にしか見えないぞ。急に現れたように見えるのだって、今上空で吹いてる風が強くて流されてきたってだけかもしれないし。
そう仮定するも、その黒い雲が人里上空から動かない事に気付き、眉をひそめる。仮定した通り、今上空で吹いてる風が強いのなら、もう移動していてもおかしくない。だがこの雲は停滞している。
風が止んだのだろうか。いや、それは違う。
黒雲が及んでいない範囲…人里の外を見てみると、普段通り風に流されている白い雲があった。
それから察するに、この黒雲は自然物では無い。
カルゴ「…で?現れただけ?」
早苗「おかしいですねぇ…ゴロゴロ音も鳴き声も聞こえませんが…」
早苗の声に答えるように、ゴロゴロ音が聞こえてきた。里人達はビクリと身体を震わせて、へそを守ろうと腹を押さえて屋内に引っ込む。
へそを取られると本気で考えているようだ。
早苗「聞こえましたよ!」
カルゴ「ふーん…。自然の…では無さそうだな」
早苗「上空で止まってますし、そう判断するのが妥当でしょうね。さぁエスカルゴさん、あの雲を壊してきて下さい!」
カルゴ「だが断る」
早苗「ええ!?なんでですか!?」
カルゴ「妖怪?の本体も見えないしさ、あれほど大きな雲を壊すのは難しいんだよ。いや、出来ることは出来るが、この里まで壊す事になる」
逃げられないように雲を壊すには一気に壊す必要があるだろう。人里を覆う程度の雲だから、少なくとも数キロはあるわけで…。それだけ大きなものを一撃で壊すのだ、地上にも何らかの被害が出てしまう。
早苗「微調整とか…」
カルゴ「ぶっつけ本番では無理」
早苗の提案を、清々しいまでにスパッと切り捨てる。理由は勿論、「出来る気がしないから」だ。
早苗「むぅ〜……破壊する力で破壊するのは?」
カルゴ「雲を破壊したらさ、どうなる?考えても見なよ。…霧散するだけだぜ?」
雲は主に水蒸気と氷の粒で出来ているのだ、そんなものを破壊したところで霧散するだけなのは、火を見るより明らかだ。
早苗「一度はやってみなきゃ分からないじゃないですか、やってみましょう!」
カルゴ「…例えば俺が今、早苗を破壊する」
早苗「え」
カルゴ「でも、肉片や血は残る。破壊ったって、なんでも出来るわけじゃないんだ。ゼロには出来ないんだよ。もし雲を破壊して、霧散して…それに乗じて逃げられたら?堂々巡りだろう?」
早苗「うーん…そうですねぇ…」
だんだん大きくなっていく雷鳴。いつの間にか、見渡せる範囲には人間は居なくなっていて、俺と早苗の2人だけになっていた。
皆、恐れを成して引っ込んだようだ。
まさか、全員が居なくなるとは思わなかった…。
早苗「もし私が、人里全域を守れると言ったら、あの雲振り払ってくれますか?能力覚醒の方ではなくて、微調整出来ないと言っていた方で…」
カルゴ「…あぁ、いいよ。里さえガード出来りゃすぐにでもやるさ。でも、早苗ってそんな大きな結界張れたっけ?霊夢でも結構キツいが」
早苗「ふっふっふ…元からある霊力と後から得た神力を合わせれば、この程度の範囲、何でもないですよっ!」
ヒュー…さっすが神様、予想を超えるね…。そう自信満々に言えるってことは、試した事があるから言ってるんだよな。なら、俺も早苗を信じて任せるとしますかね…。
カルゴ「とびきり強いのを頼む。瞬間的に、凄いエネルギー放出するから」
早苗「わかりました!」
バサッと翼を広げ、里から飛び立ち、黒雲に近付いていく。高度が上がるにつれ、気温がグングンさがってくる。雲のせいで暗くなっているのも相まって、更に肌寒くなっている。
でも…あんだけの雲を一撃で吹っ飛ばすのは俺もキツいぞ…。積乱雲は、最高部から最低部までの高さは1万m…10キロを超えることもあるんだ。
最高のあの技を使用しても、16キロ……あ、結構余裕あるじゃん。いやいや、自然の雲なら何とかなるだろうけど、妖怪の出す雲を普通の雲として見てはいけない。
つまり…えーと…油断せずに力を奮えって事だ。
カルゴ「流石に…突っ込むのはヤダな…」
ゴロゴロうるさい雲の下。真下から頭上に広がる黒雲を見上げる。あと500mも飛べば雷雲に突っ込めるが、生憎そんな勇気はない。
内側から破壊したら、球形状に霧散する。けど、下側から破壊すれば、霧散するのは上部だけに抑えられる…と思うんだよね。
……なーんて、最もらしい理由つけてみたり?
地上を見下ろすと、早苗の結界が里全域を覆っているのが確認出来た。俺も早苗も、準備は整っている。
因みに、俺が結界を張らなかった理由としては、「そんなに広く張れないから」というのがある。過去には、トンデモなく巨大な結界を張ったが、あれは霊夢の手助けあってこそだ。早苗は、霊力強化の御札など持ち歩いていないとか。どこでも取り出せる霊夢は、御札をサラシに挟んでPADの代わりにしているのだろうか。
あの巫女服にはポケットなんて多分無いし、そもそも霊夢は御札を懐から出している。
あの巫女服に内ポケットがあるのだろうか?否、構造的にそんなものは無いと考えるのが自然では無いだろうか。
結論。サラシに挟んでいる御札を取り出してる説が濃厚だと思われる。
カルゴ「…ははっ、こんな事考えてるなんて知られたら、スゲェ怒られそーだな…。雷爆符『ゼタサンダー』!!」
俺の持つ雷エネルギーを10割、爆散させる。とてつもない風圧が黒雲を襲い、吹き飛ばす。小さくバラけた黒雲はやがて消えていき、里の外と同じ快晴の空が顔を覗かせた。しかしそれと同時に、黒雲の中心があったと思われる場所から、巨大な鳥が姿を現した。
巨鳥「キェェェェェェェェェェアァァァァァァァァァァァ!!!!」
カルゴ「うわっ、デカッ!?」
翼を広げたその大きさ、目測でおよそ7m。
それでバサバサと羽ばたくたびに、両翼に電気が溜まっていく。
カルゴ「なーんか…すげー電圧感じるんだが…。気の所為じゃねぇよな?」
雷を操る俺は、電圧計や電流計の様な機能も備えているため、おおよそは測れる。数値化して測る訳ではなく、「〇〇に被害を与えるレベル」などという、大雑把なものだ。
諏訪子《数値化出来ないの?》
カルゴ《数値化出来ないのかって言われても…。俺の頭はコンピューターじゃないんですからね?そんな事出来る訳ないじゃないですか、どんだけ計算とかすればいいのやら…。こればかりは克服出来ないだろうし、する気も無いです》
諏訪子《確かに、それは克服出来そうに無いね。(頭の)構造の問題だもんね…》
カルゴ《そーですよ》
そんな会話をしている内にも、巨鳥はその場で羽ばたき続け、電気をチャージしていた。ふとそちらに目を向けると、睨みつけられた様に感じた。
カルゴ「…?睨んでんのか?」
巨鳥「キェェェアアァァァァッッ!!!」
くちばしを大きく開けて、甲高い奇声を上げると同時に雷を放ってくる巨鳥。あまりに突然な事で反応が出来ず、それをまともに喰らってしまう。
しかし俺には、電気系統の攻撃は通じないので、平気な顔をしている。ついでにそれを吸収して、先程0にした力を充電してしまった。
カルゴ「危ねー。へぇ、お前…雷使えるんだ?」
じゃああの黒い雲は雷雲だったのか。古い絵でも雷様が乗ってる雲は黒いって相場が決まってるし…きっと、そういう事なんだろう。
カルゴ「つーことはお前…サンダーバードか?」
巨鳥「……」バッサバッサ
諏訪子《雷雲の中に住んで、自在に雷を落とせるっていうアレ?》
カルゴ《恐らく。しかしそれは日本でのイメージなので、コイツも日本寄りなんでしょうね》
神話の方では、雷雲の中に住むって話は聞いたことねぇからな。アメリカとか、向こうの方の神話だったかな。宗教の神話じゃなくって、民族間に伝わる系の神話。
諏訪子《えっ、そっちの神話も知ってるの?》
カルゴ《北欧神話やギリシャ神話、ローマ神話…こんな感じの、比較的ポピュラーなヤツですよ。今俺が言ったのは、昔、とあるサイトで見たやつですけどね》
諏訪子《いやいやいやいやいや……》
北欧神話で言う雷神はトールだったか。ギリシャ神話だとゼウスで、ローマ神話だと…ユピテル…又の名をジュピター。雷神はみんな、最高神っぽいんだ。古代より雷は神と関連付けられて考えられてきたからな、そこが関係してるんだろう。
日本の神話はよく分からないけどね。
…って、また思考が別な方に逸れてるし…。
どうも俺は、別な方に気が向くとそっちばかりを考えちまうんだよなー。昔からだけど。
カルゴ「気に入った。お前、俺のペットになれ」
巨鳥「!?」
早苗《本気ですか!?》
カルゴ《俺はいつでも本気だぜ?》
早苗《でも、危険じゃないですか?攻撃とか…》
危険だろうな…。その証拠に、この鳥…俺に攻撃しようと羽ばたいて電気溜めてやがる。
すげぇ風圧だ…文の次くらいに強い風だ。
カルゴ《里の保護、頼むぜ。危険かもだから》
早苗《わかりました、気を付けてください!》
カルゴ《ああ》
守るべきものが守られてると、気にせず力を振るえてイイな。サンキュー、早苗。
こいつを完全に服従させて、ペットにしてやる。
カルゴ「よし、勝負だぜ。俺が勝ったら、お前は俺のペットだ。良いな?」
巨鳥「キェェェェ!!!」
カルゴ「…何言ってんのかわかんねぇが、戦うって事だな。いいぜ、来いよ」
巨鳥「キェァァァェェェェァァァッッ!!!」
叫ぶと同時に雷を放ってくる。今度はそれをわざと受けることはせず、能力で逸らす。
カルゴ「ほらほら、そんなもんか?」
同系統の攻撃は効かないとわかっている俺は、別系統の力に切り替えようと集中する。切り替えが完了し、次はこの巨鳥と同じくチャージを開始。出来るだけ、素早く決着をつけるために。
早苗は「霊力と神力を合わせて」って言ってた。この結界は、どちらか一方が欠けても維持が出来ないんだろう。でも早苗の霊力は霊夢より劣る。人里全域を覆っているこの結界は、そう長くは保てないはずだ。
カルゴ「さぁ、戦りますか…!」
サンダーバード (Thunderbird) は、カナダ西海岸部やアメリカに先住するインディアン部族の間に伝わる神鳥。
姿は大きな鷲で、羽の色は雷のようであり、大きさは5m弱。雷の精霊で、自由自在に雷を落とすことができ、獲物も雷で仕留める。
複数の部族の神話に渡って存在しているが、雷と関連する巨大鳥である共通点以外には部族ごとに異なる。
↑Wikipediaより引用。
彼が言った「とあるサイト」とはWikipedia?w
それにしても、雷関係は最高神とか面白いな…。
調べれば調べるほど、雷ってのがどれ程凄いのかよくわかってくる。
なお、バラモン教のインドラも雷関係で最高神。
インドラとは、デーヴァ神族に属する、雷霆神、天候神、軍神、英雄神。
エスカルゴ、インドラに近くない?
子供や女が多いという意味ではゼウスに近い。