A.「エスカ」だと「リスカ」っぽくてヤダ。
??「コラー!待てー!」
??「私のお団子返せー!!」
???「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
俺は、2人の女に追いかけられていた。
故意じゃない、過失なんだ。ずっと棚の上にほっぽってあったから、ついつい食っちゃったんだ。
けどそれを話した所で、アイツらが許してくれるわけがない。さっさと逃げなければ………。
どこか、身を隠せる場所に…!
???「おっ、森発見!」
逃げおおせるために、胞子が立ち込める、何とも健康状態が悪くなりそうな森に、なんの躊躇いも無く入っていった────。
カルゴ「おーっす、にとりー!」
注文品の受け取り日の今日、俺はにとりの仕事場へそれを受け取りに来ていた。仕事場に入ると、ゴーグルを着けて何かを制作中のにとりがいた。
にとり「やぁやぁ、来たね!相変わらず、時間にぴったりだねぇ!」
カルゴ「へへっ、まーな!…つーか、またそんな格好して…。恥ずかしくないのか…?」
にとりは、黒いスク水のような下着のような、よく分からない格好をしている。つまるところ、肌の露出がとんでもなく多いわけだ。
にとり「だってさー、今日もすごく暑いじゃん?エスカルゴだって汗かいてるじゃん」
カルゴ「ま、まぁな…気持ちはわかるが…。俺、男だぞ?男が見てるのにそんな格好って…その…あんま良くない?ってゆーのかな…なんつーか、もう少しその〜…羞恥心?を持ってほしいなーと思うんだよな、うん…」
にとりの首にかけられているヒモ付きの鍵が、胸に挟まるような形で、彼女の隠れ巨乳を強調している。普段はあまり分からないが、脱ぐと結構…あるのだ。
にとり「ははーん…。もしかして、私の身体見て興奮したな?」
と、ニンマリする。
カルゴ「するかッ!!!」
にとり「ちぇー、残念だなー。興奮したら笑ってやろうと思ってたのに。そっか、エスカルゴって貧乳好きだっけ」
カルゴ「どこから来たんだその設定」
にとり「あれっ、違うの?1番の彼女だっていうフランちゃんが貧乳だから、てっきりそうなのかと思ってたけど。というか妖怪の山ではそういう設定になってるよ?エスカルゴのキャラは」
カルゴ「えー……」
とんだデマ情報だなぁ…。
カルゴ「というか、なんでみんな俺の好みとかに興味あるんだよ。意味わからないぞ恥ずかしい」
にとり「決まってるじゃん、みんなエスカルゴを狙ってるからだよ」
カルゴ「はぁ!?」
俺を狙う…って、どゆこと!?
にとり「何年か前の紅魔館再建の時や、私に会いに玄武の沢に来た時とかにさ、ほかの河童たち、エスカルゴの事見たじゃん?」
カルゴ「あ、あぁ…」
7、8年前だったかな…?
にとり「それで、『あの人カッコイイ』ってさ、エスカルゴに惚れた子、何人もいるんだよ〜?」
カルゴ「えぇ…」
にとり「あと、何年か前に白狼天狗とぶつかった時も、あれからエスカルゴに目をつけた白狼天狗の女子、結構居るんだからね?よっ、モテ男♪」
カルゴ「マジか…」
全く知らない相手から惚れられるってのはなんて言うか…なんとも言えない気持ちになるな。
つーか天狗って、同種族の者としか恋仲になるの禁止だったよな?文の時は…そりゃーもう、クソみたいに大変だった。
にとり「感謝してよねー?私が河童の仲間に口聞いて、エスカルゴに思いを伝えようとしてる子を止めてるんだから」
カルゴ「そうなのか…ありがとう」
うわー…。俺の知らねー所で、色々めんどくせー事になってんだな…やっぱにとりには感謝だぜ。
にとり「でも、中には大変な子も居るんだよー?自分のモノにならないなら尻子玉抜いて殺すって感じの子とか」
カルゴ「怖っ!!」
にとり「まっ、紅魔館のメイドに痛い目に遭わされて懲りたみたいだけどね」
カルゴ「ほっ…」
…え゙っ、紅魔館まで行ったのかよ。
いや、今はそれどころじゃない、早くしなきゃ。
カルゴ「そーだ、あれもらいに来たんだった」
にとり「あっ、すっかり忘れてた。えーと…エスカルゴのは…はいっ、これ!」
ゴソゴソと傍らのリュックから取り出したのは、真っ黒な布…もとい、薄いコートのような物だ。若干震える手を伸ばし、それを受け取る。
カルゴ「これが光学迷彩スーツ…」
にとり「それ纏ってボタンになってるスイッチを押せば、誰からも見えなくなるよ〜。あ、解除も同じ方法ね」
カルゴ「ふむ…。ちょっと着てみる」
にとり「うんうん!」
剣を下ろし、バサッとコートを纏う。
通気性がバツグンらしく、見た目ほど暑くない。
カルゴ「…あり?ボタンになってるスイッチって何処にあるんだ?見当たらないが…」
にとり「右ポケットの入口のとこだよ!」
カルゴ「右ポケ…あっ、これね」
何でここにつけたんだ。
黒に黒のボタンなので、あまり目立たない。
ボタンを押し込むと、カチッという感触が指に伝わってきた。
にとり「おー、消えたー!」
カルゴ「マジ?自分じゃわからないぞ」
にとり「鏡見て、ほら!」
何処から出したのか、鏡をこちらに向ける。
しかし残念なことに…。
カルゴ「ごめん、吸血鬼は鏡に映らないんだ」
にとり「ううん、これは私が作ったヤツ!吸血鬼でも幽霊でも映せる鏡だよ!」
カルゴ「マジか」
鏡を覗き込む。何も映っていない。見えるのは、俺の背後の景色だけだ。ペンチやレンチ、ハンマーなどの工具がズラリとならんでいる。
にとりってマジですげぇな。
外のテクノロジーなんてとうに越えてんじゃん。
にとり「全く見えないけど、今何処にいるの?」
カルゴ「さっきと同じくにとりの目の前」
それを聞くと、本当に目の前にいるのかを確かめるためか、鏡をその場に置き、恐る恐る手を伸ばしてきた。手を伸ばす意図を読んだ俺は、その手にタッチする。
パァンとイイ音が仕事場に響いた。
にとり「おぉー!ほんとに居る!」
カルゴ「こりゃ凄い。ありがとうな!」
光学迷彩を解除して、にとりに頭を下げる。
にとり「いえいえ〜!さ、お代金ちょーだい!」
カルゴ「ほいほい。…50枚あるはずだ」
財布から、ミニミニ金庫から引っ張り出してきた諭吉さんを50人動員する。思っていたより厚い。
にとり「わお、一括とはすごいなぁ!分割払いでいいって言ったのに」
受け取ったお札を数え終え、ポケットに無造作にねじ込んで、感嘆の声を漏らすにとり。落としてしまわないかが心配だ。
カルゴ「俺って意外と忘れっぽいからさ。一括の方がいいんだよ」
にとり「なるほどねー。(そんな感じしないけど。約束とかそういうのは絶対忘れないじゃん)」
カルゴ「それじゃ、そろそろ行くわ」
にとり「はーい、またいつでも来てねー!」
カルゴ「おうよ〜」
急がなきゃ…!
剣を光学迷彩スーツの上から
にとりSide
にとり「あ…しまったなぁ…。ローターとバイブの用途を聞くの忘れてた…」
私は、半年くらい前に、エスカルゴから謎の製品の制作を依頼された。1つは、棒状で震える物。棒状なら何でもいい、みたいな事言ってたから、とりあえずきゅうり型にしておいた。もう1つは丸いものがコードでモーターと繋がっているっていう、何に使うのかよくわからない物。催眠術?
どちらも、震える強さは0を含めて5段階。
用途がわからないから試すことも出来なかったんだけど、「強さが変えられたらそれでいい」って言っていたような気がする。
「今度会ったら聞こう」と、半年以上はズルズル伸ばしている。コードの方…ローターは、何個もお願いされたから、予備も数個作ってある。
にとり「ほんと、何に使うんだろ、コレ…」
スイッチを入れ、ウィンウィンと震えるバイブをボーッと眺めてみる。特に用途は思いつかない。
そんな事をしていると、急に扉を叩く音が聞こえてきた。それと、女の声も聞こえてきた。
??「にとりー、居るー?」
誰だっけこの声…とりあえず入れようかな。
にとり「居るよー、入ってきていーよー」
武器を構えつつ、その訪ねてきた人物を仕事場に招き入れる。入ってきたのは、幻想郷では知らない者は居ない、博麗の巫女だった。
にとり「霊夢じゃん、どーしたの?」
ここしばらく会ってないから声忘れてた…。
最後に会ったのって、お花見の時の宴会かなぁ?
霊夢「エスカルゴ居ない?」
にとり「え…さっきまで居たけど、どうして?」
霊夢「あのバカね、私と霊愛のお団子を全部食べやがったのよ…!妖気がここで途切れてるから、この中に居ると思うんだけど…奥入っても良い?良いわよね?」
にとり「ちょちょちょ…」
急にガサ入れしてくる霊夢のことを止める。その背後…仕事場の入口には、幼い娘が顔を覗かせている。
霊夢「ここで途切れてるってことはここに居るんでしょ。匿ってないで出しなさい」
にとり「居ない居ない!さっき帰ったってば!」
腕をがっしり掴み、侵入を拒む。
この先には、河童仲間ですら知りえない、私だけの秘密の技術もある。霊夢を媒介に伝わっては、これまで隠していた意味が無い。
霊夢「じゃあなんでここに来たの?なんで妖気が途切れてるの?」
にとり「今日は、エスカルゴの注文品の受け渡し日だったんだ。だからそれを取りに来たんだよ。妖気が途切れてるのは、入口から飛び立ったからじゃないかな?」
霊夢「ふむ…なるほど、一理あるわね。ところでアイツは何を注文したの?」
にとり「それは言えないね!私達には、顧客情報守秘義務があるんでね!」
霊夢「何よそれ。とりあえず、あいつは今ここに居ないのね?」
にとり「うん、居ない。天地神明に誓っていい」
霊夢「紫並に胡散臭いわ…。ま、いいわ。霊愛、行くわよ。もう1回、魔法の森に戻ったかもしれない。探してみましょ」
霊愛「はーい」
そういえば、なんで光学迷彩スーツを…?
エスカルゴSide
カルゴ「霊夢達が来るまでに、どーにかして団子弁償せな…!それにしても、光学迷彩スーツ高ぇな…それだけ、河童の技術が詰まってるって事なんだろうが…。クソッ、残金0円だぜ…」
仕事場を出た俺は、魔法の森の中に居た。
ここなら霊夢達が追ってくることも無いと思う。
カルゴ「こんな早く出番が来るとはなぁ…」
俺が光学迷彩スーツを欲したのは、他でもない。
てゐとイタズラを計画したからだ。まさかこんなすぐに出番が来るとは思わなかったが…。
霊夢「くぉらエスカルゴー!!出てきなさーーーい!!!」
カルゴ「っやべぇっ!?」
声の聞こえてきた方を見ると、霊夢と霊愛の姿を発見した。何故か、胞子が効かないらしい。
それを見、弓に弾かれたように飛び出し、魔法の森近くにある建物に逃げ込んだ────。