※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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現状打破の策①

カルゴ「ごちそうさまでした!」

 

涙が枯れるまで泣き続けた俺は、文特製のお粥を完食して、笑顔になれるほどの元気を取り戻していた。

 

文「お粗末さまでした!穹、皿洗いお願い!」

 

穹「はぁ〜い…」

 

カルゴ「あれ…穹に任せるのか?まさか、いつもそーやってるんじゃないだろうなぁ〜?」

 

文「や、やだなぁ〜、そんなわけ、無いじゃないですか〜。交代ですよ、交代!」

 

カルゴ「ふーん…」

 

さて…これからどうしようかな…。

 

俺がこれからについて悩み始めると、それを察した文は重々しく口を開いた。

 

文「あの…。どうして人間に戻ったのかはわからないんですよね?」

 

カルゴ「わからない…」

 

文「永遠亭に行ったと言っていましたが、あの人はどんな反応をしたんですか?医者の…」

 

カルゴ「『そんな夢物語、信じる方がどうかしてる』…みたいな事言ってた…」

 

永琳の言葉が頭の中で再生され、傷を抉られる。

物理的な傷ではなく、精神的な傷だ。

 

文「自分自身が夢物語みたいな存在のクセして、何言ってんですかねぇあの年増は…!」

 

カルゴ「…!」

 

珍しく、文が怒っている。

いや、表情も声のトーンも変わってなく、怒っているとは思えない。けれども、彼女から漏れ出る妖気が、何となく怒気を感じさせる。

 

カルゴ「エスカルゴ本人だって証明ができれば、話を聞いてもらえると思うんだ。話すらも聞いてもらえなかったから…」

 

文「自分が自分だと証明するのって、簡単なようで意外と難しいものですね…」

 

カルゴ「…うん…」

 

絶対に嘘をつかず、それを周囲も知っている人物に協力を仰ぎたいが、そんな人物は勇儀さんしか知らない。地底まで、人間の俺が行けるか?

否、行けるわけがない。

吸血鬼の身体でも幾度と無く死んだというのに、人間では死亡は確実だ。まず、勇儀さんが俺の話を信用してくれるかどうかが問題だ。

嘘だと思われたら、容赦なく殴りかかってくる。そして、俺の身体はバラバラに砕かれるだろう。

 

カルゴ「…誰に言えばいいかな…」

 

文「うーん…私の新聞では信憑性に欠けますし…霊夢さんに話すわけには…いきませんよね…?」

 

言わずとも察してくれるあたり、さすがである。

 

カルゴ「うん…」

 

文「あ、八雲紫さんに頼ってはどうでしょう!」

 

カルゴ「紫さん…多分ダメだ。あの人にだけは、頼っちゃダメだ。信じてくれなかったら、それこそ殺される」

 

文「守矢神社の神様達とか…早苗さんとか!」

 

カルゴ「どうやって行く?文と一緒に行った所で見つかったらオワリだ」

 

頭の中で呼びかけても、反応が無かった。

吸血鬼の力が失われたと同時に、諏訪子様と神奈子様、早苗の加護も切れたんだと思う。

 

文「ヒビキさんなら、人間の頃のエスカルゴさんをよく知ってる訳ですし、大丈夫だと……」

 

カルゴ「どうやって天魔様直属の部下の宿舎まで行く?これも、道中で見つかったら……」

 

文「ですよね…。言ったあとに気付きましたよ…とほほ…」

 

2人で頭を悩ませていると、皿洗いを終えた穹が朗報を持ってくる。

 

穹「絶対に嘘をつかない人で、それを周囲の人も知っている人物なら、私知ってます!」

 

文「ほんとにぃ〜?」

 

カルゴ「誰だ!?教えてくれ!!」

 

文はジト目になるが、俺は僅かな可能性に賭け、身を乗り出して穹の言葉を促す。

 

穹「地霊殿にお住まいの古明地さとりさんです!あの人なら、心を読んで、その人が嘘をついているか否かは即座にわかりますし、周りの人だってさとりさんが嘘をつくとは思ってないはずです!さとりさんに頼っては如何でしょうか!」

 

カルゴ「さとりか…。良いとは思うが…地底だ」

 

穹「あうぅ…」

 

地底に行くには、俺と穹、文では心もとない。

いや、文1人なら大丈夫だろう。

空も飛べないのなら俺が足でまといだ。

だがその時、文が大きな声を上げた。

 

文「それだ──────!!」

 

カルゴ「うぉう!?ど、どした!」

 

文「行きましょう、地底!それで、さとりさんに協力してもらい、みんなに真実だと認めてもらいましょう!」

 

俺の手を取り、真っ直ぐに目を見て意見を述べる文だが、俺はその目を逸らし、首を横に振る。

 

カルゴ「ダメだよ…もし戦闘になったら…俺は、足でまといだ。文や穹なら大丈夫だろうけど…。光学迷彩スーツも、1人や2人しか纏えない…。それに、匂いとかでバレたら…」

 

文「戦闘になんてなりません!」

 

カルゴ「え…?」

 

文「私は…いえ、穹は幻想郷最速、そして私は、幻想郷で2番目の速さです。戦闘云々の前に、妖怪共の目に留まりませんよ♪」

 

カルゴ「!」

 

そうか…戦わないで通過すればいいのか。

それも、姿を隠さずに堂々と。

 

文「まだ午後3時前…か。今すぐ行きましょう、さとりさんの元へ!」

 

布団で座ったままの俺へ、手を差し伸べる。

文は行く気満々のようだ。

 

穹「はい!さ、父上も!」

 

穹も、文の様に手を差し伸べる。

文より一回りも二回りも小さい手だ。

 

カルゴ「…ああ!頼む、俺を運んでくれ!」

 

2人「はいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輝夜「おはよ〜、え〜り〜ん…ふわぁ…」

 

その頃永遠亭では、重そうな厚い着物を着た輝夜が、ショボショボとしている目を擦りながら居間に現れた。居間では、仕事の無い永琳と鈴仙が、おやつに煎餅を食べていた。

 

永琳「おはよう輝夜。とっくにおやつの時間よ、また徹夜でゲームしてたのね?」

 

輝夜「ううん、違うわ。変な事があったからね、それについて考えてたら…徹夜しちゃってね…。ふあぁぁ…」

 

考え事をしていた。およそ輝夜らしくない発言の後、追加で欠伸をする。

 

鈴仙「変な事って何ですか?」

 

輝夜「んーとねぇ…いつだったかしら…昨日?の朝方くらいに、私の能力が発動したのね」

 

永琳「輝夜の能力というと…《永遠と須臾を操る程度の能力》ね?」

 

輝夜「厳密には、その内の永遠の方がね。幻想郷の何処かで、永遠を司る誰かの存在が消えたわ」

 

鈴仙「???」

 

輝夜の発言に、鈴仙は首を傾げる。

対して、永琳は少し考えた後、こう発言する。

 

永琳「永遠を司る?それって能力のこと?蓬莱人という体質のこと?」

 

輝夜「そんな能力者は聞いたこと無いし、恐らく後者の方ね。蓬莱人の誰かよ」

 

永琳「でも、私と輝夜と妹紅しか居ないでしょ、妹紅の存在が消えたって言うの?」

 

輝夜「妹紅なら、今朝、竹林で竹を切ってるのをこの目で確認したわ」

 

永琳「じゃあ、永遠を操る能力者が?」

 

あくまでもその考えに固執する永琳に、輝夜は、少し大きめの溜め息をついた。

 

輝夜「案外鈍感なのね」

 

永琳「誰がよ…。私?ウドンゲ?」

 

鈴仙「へっ!?私ですか!?」

 

ここまで言っても察せないのね、と言いたいが、それをグッと堪え、最大のヒントをやる。

 

輝夜「……そういえば昨日の夜、来るはずだった誰かさんが来なかったわね?どうしてかしら?」

 

鈴仙「誰かさん…あぁ、確かに…。エスカルゴ、来ませんでしたね…。巫月も寂しがってました」

 

永琳「普通に、忘れてたんじゃないの?彼、ああ見えて結構忙しいらしいし」

 

鈴仙「…ですかね…」

 

俯く鈴仙の耳は、シナシナとしている。

答えに辿り着いたにも関わらずに、大して関心を寄せない2人に若干のイラつきを覚える輝夜。

 

輝夜「じゃ・な・く・て!彼の存在が消えたって言ってるのよ!来なかったのも、存在が消えたのなら辻褄が合うでしょ!」

 

永琳「朝方でしょう?輝夜が寝ぼけてて、エスカルゴが来るのを忘れた…。ほら、辻褄が合った」

 

輝夜「〜〜〜〜〜〜〜!!もういいわ、ちょっと出掛けてくる!!」

 

イラつきが頂点に達した輝夜は、ドスドスと床を鳴らしながら玄関へ向かう。

 

永琳「どこに?」

 

輝夜の背中を見送りながら、行き先を尋ねる。

 

輝夜「紅魔館!あの日彼は、紅魔館に泊まるはずだったし、もし存在が消えたのなら、紅魔館でも何かしら話題になってるはずだわ!」

 

永琳「紅魔館なら私も行くわ。心配だし」

 

輝夜「勝手にしなさい!」

 

輝夜の後を追って居間を出た永琳のさらに後を追い、鈴仙も居間を飛び出す。

 

鈴仙「なんで姫様がそこまで?まさか、姫様までエスカルゴのこと…」

 

永琳「いいえ、違うわ。輝夜は自分の能力に自信を持っているから、その感覚が本当だったと証明したいのよ」

 

鈴仙「なるほど…」

 

玄関でもたついている輝夜に追いついた2人は、輝夜の手助けをし、永琳と鈴仙と輝夜は同時に、紅魔館向けて飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「…って事があってさー。ホント、笑えるよな〜。エスカルゴは里でも有名で、女に囲まれてるからな、真似をしたくなる気持ちもわからんではないが…」

 

その頃の博麗神社では、前日出会った人間の男について、魔理沙が霊夢と霊愛に話をしていた。

 

霊愛「おとーさんにそっくりな人間かー…見た事無いけどなー…」

 

宙を見上げて、人里で見かけた人間達の顔を思い出した霊愛は、多少の疑念を抱きつつ茶を啜る。

 

霊夢「……」

 

魔理沙「どうしたよ霊夢、浮かない顔だな?」

 

霊夢「なんか、胸騒ぎがするのよね」

 

魔理沙「なんで?」

 

霊夢「いつもこの時間帯になれば、エスカルゴは神社に来るハズなの。今日はここに来る日だし。なのに来ないから…魔理沙の話に出てきた男ってもしかして、本当にエスカルゴだったんじゃないかなって…思ってね」

 

魔理沙「どーせ忙しいんだろ?アイツ、色んな所飛び回ってるし。夜になれば、『悪い、○○○○で遅くなった!』…とか言って、ひょっこり出てくるさ」

 

地味な声真似をし、自らの予想を話す。

心配をしている様子は皆無だ。

 

霊夢「………そう、かもね」

 

霊愛「(お母さん…?)」

 

なおも暗い顔の母親を見、霊愛はだんだん、霊夢の言っていることは本当なのかもしれないな、と思い始めた─────。

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