平日でも2、3話更新したいです。
それと、今回の長編から、第3章としました。
255話から、「第3章:ココロのキズ」です。
永遠亭のメンバーが方々に散る直前、俺たちは、玄関前でこれからについて話し合っていた。
文「次は紅魔館…ですね。大丈夫ですか?」
カルゴ「ダメ…。少し休みたい…」
文「…わかりました、紅魔館はまた後にしましょう。今のだけでかなりお疲れでしょうしね」
さとり「どこか休める場所は…」
文「あっ、私の仕事場で休みましょう!その方がエスカルゴさんも楽に出来るでしょうし!」
カルゴ「そうだね…」
さとり「…!待って下さい」
文「どうかしましたか?」
さとり「今、範囲を全開にして、永遠亭内の人物全員の心を読んでみたんですが…」
文「凄っ!」
さとり「薬を作る方法を思いついたようですよ。完成も時間の問題かと思われます」
マジか……戻れるなら戻りたいよ…吸血鬼に…。でも…永琳と顔を合わせるのは…まだ無理、時間が必要だよ…。
文「そっ、その方法って!?」
さとり「残念ながら、そこまでは…。能力のこの使い方は慣れてませんし、まだ数秒しかもたないので、これくらいしか読めませんでした…すみません…」
文「いえいえ!いやはや、凄いですね!こんなに広い建物の中の人全員分読むなんて!」
さとり「エスカルゴさんに比べたらまだまだ…。では、行きましょう」
文「はいっ!」
その頃の博麗神社では、霊夢と霊愛が出掛ける準備を始めていた。いや、出掛ける準備というより戦闘の準備と言った方が正しいだろう。
御札を多数準備し、お祓い棒を強化する。
魔理沙「おいおい、どーしたんだよ霊夢?急に、身支度し始めやがって」
霊夢「胸騒ぎがするって言ったでしょ。永遠亭に行ってみるわ。その後は紅魔館に。霊愛は、妖怪の山にある文の仕事場に行きなさい。夜になる前に帰ってきなさいね」
霊愛「はい!」
魔理沙「妖怪の山は危険だぜ?霊愛に行かせても大丈夫なのか?」
霊愛がまだ子供で、力の配分が苦手だと言うことを知っている魔理沙は、霊愛の心配をする。
危険度は、妖怪の山>紅魔館>永遠亭の順だというのに、より危険な方に娘を行かせることに疑問を感じたのだった。
霊夢「霊愛は私とエスカルゴの娘、大丈夫よ。魔理沙はどうするの?」
魔理沙「帰る」
霊夢「そう、またね。行くわよ霊愛!」
霊愛「はい!」
縁側で魔理沙が見送る中、霊夢は紅魔館へ、霊愛は妖怪の山へ向けて、飛び立った。
太陽は半分以上が沈んでおり、もうすぐ夜だ。
諏訪子「うーん…」
早苗「んー…」
その頃守矢神社では、かなりの頻度で脳内通信をしている二柱が頭を抱えていた。
神奈子「どうした、2人共。さっきから煩いぞ。黙って考えられないのか」
早苗「だって〜…」
諏訪子「昨日?の朝からさ、エスカルゴとお話が出来なくなってるんだよね」
神奈子「ただ無視しているだけじゃ?」
早苗「いえ…何故か、思考も読めないんです…。シャットアウトされている感じで…」
神奈子「何っ?」
2人からそれを聞いた神奈子様は、自分も脳内で話しかけてみる。しかし、返事が無いばかりか、確かに思考も読めなくなっている。
神奈子「何なんだこれは…」
諏訪子「エスカルゴに何かあったね」
神奈子「アイツが殺された…いや、不老不死か。眠っているとか?」
諏訪子「かもしれないけど…昨日の朝から今までずっと寝てるの?それは考えにくいよね」
神奈子「うーむ…もう夕方…いや、夜だぞ、どうなってる?そういえば、あいつから話しかけられないのもおかしな話だな」
諏訪子「…ちょっと、山の周り探してくる」
早苗「(諏訪子様自ら!?)私も探してきます!」
神奈子「(なんだこの流れは…。)仕方ない、私も行こう。私とて、ヤツが心配だからな」
モヤモヤが頂点に達した神々は、自ら動き出し、連絡がつかない彼の捜索に取り掛かった。
ただの人間に戻っているとも知らずに。
咲夜「(あの男の人がエスカルゴさん本人?まさかそんなことが…。あくまでも可能性だけど、月の賢者たちは、何か確信している様子だった。私達は、数年前に現れた、不知火 麗葉かもしれないと思った。けど、そいつは過去にエスカルゴさんが滅した。だからそいつでは無いと言いたいんだろうけど…人間に戻ったなんてこと、信じられる訳が無い。
いや、私は、吸血鬼のあの人に心惹かれたのではなく、あの人の人柄に心惹かれた。人間になろうとも、嫌いになんてならないし、なりたくない。でも私は…あの人を殺しかけた…。そんな私が、あの人を愛する資格なんてある訳が無い…)」
咲夜さんは、玄関に寄りかかりながら、永遠亭のメンバーから聞いた言葉を思い返して、自分でもあれこれ考えていた。しかしそれは、あの時門で聞き耳を立てていた美鈴も同じだった。
美鈴「(咲夜さん…考え込んでますね…。まさか、あの人がエスカルゴさんだったなんて…と考えているんでしょうかね…。あの時、殴り殺さなくてよかった…。しかしこれで、エスカルゴさんから恨みを買ってしまいました…。もう、以前の様には話せませんね…。もっと、しっかり話を聞いてあげれば良かったです…。お嬢様、妹様、弦月姫ちゃん…お早いお帰りを…!)」
主たちの帰還を願い、空を見上げる。
すると、真っ暗になりかけている空から、どこからとも無く1人の幼女が現れた。金髪のショートヘアで、頭には赤いリボンを付けている。
宵闇の妖怪、ルーミアだ。
るみゃ「わはー♪」
いつもの様に両腕を広げ、ニコニコと笑いながら漂っていたらしく、わはーの声と共に美鈴の前に降り立った。
美鈴「おや、あなたは…。ルーミアさんではないですか。こんばんは、どうしましたか?」
先程の暗い感情を押し隠して、目線をルーミアに合わせて丁寧語で話しかける。美鈴は基本的に、誰にでも丁寧語で話す。
るみゃ「こんばんはー。お腹が空いたから、エスカルゴのこと食べたいなって思って。エスカルゴいる?」
突然の来客。その相手が行方不明のその人だった事で、再び美鈴の心に暗い感情が戻ってきた。
美鈴「いえ…。今、行方不明でして…。お嬢様方が幻想郷中を捜索している所なのです」
るみゃ「行方…不明?エスカルゴが?あなた達、エスカルゴに何かしたの?」
美鈴「………否定出来ないのが心苦しいです…。私達は取り返しのつかない事をしてしまった…」
るみゃ「そー…なのかー…」
美鈴の懺悔に、事情を何も知らないルーミアまで表情が曇る。広げていた両腕も、ダランと力無く下げている。
美鈴「…あっ、なんか暗くなっちゃいましたね!大丈夫です、きっとすぐに見つかりますよ!そうしたら、エスカルゴさんに伝えておきますね!」
無理に明るい顔を作る美鈴だが、無理をしているのは、誰が見てもわかるほどに明白だった。
るみゃ「ねぇ」
美鈴「はい?」
るみゃ「私の頭のリボン、取ってくれる?」
そう言って、頭を差し出すルーミア。
声色が普段と違って真面目そのものなのが、どことなく不気味だ。
美鈴「へ?わ、わかりました…」
ルーミアの頭に手を伸ばす。
美鈴は知らなかった。知る由もなかった。
このリボンが、ルーミアの中の“闇”を抑える為の封印だということは。結び目を解こうと、美鈴の指がルーミアの頭でソワソワと忙しなく動く。そしてついに、シュルシュルとリボンを解いてしまった。
ドンッ!!
美鈴の目の前で、ルーミアが爆発した。
正確には、ルーミアの持つ“闇”のエネルギーが。
美鈴「キャッ!?」
美鈴はその衝撃で門に叩きつけられ、背中と後頭部を強打するが、流石そこは拳法家、痛みに耐え目の前で起こった爆発の正体を確かめるべく目を凝らす。
咲夜「何!?」
門で爆発があったことで、運良く玄関に居た咲夜さんは門へ駆け寄る。土煙がもうもうと立ち込めており、状況がよく分からない。
美鈴「ハッ!!」
美鈴が拳を振るう。誰かを殴る為ではなく、拳圧で目の前に広がる土煙を晴らす為に。
そして、彼女の思惑通りに煙が晴れた。
そこでは、驚くべき現象が起こっていた。
2人の目の前には、金髪のロングヘアーを夜風になびかせる美女の姿があった。服装は、ルーミアのそれと全く同じで、黒いロングスカートを着用している。
美鈴「え…あ、あなたは…」
るみゃ「宵闇の妖怪、ルーミアよ」
2人「!?」
目の前で起こった謎現象に驚きが隠せず、ただ、間抜けのように口をポカンと開ける。
るみゃ「何をそんなに驚いているの?これが私の本当の姿よ」
美鈴「そ、そんな…じゃ、子どもの姿は…」
るみゃ「仮の姿って所かしらね。自分で言うのもアレだけどさ、あっちの方が無邪気で可愛くて、気に入ってるの。この姿だと、戦闘に特化してるだけで、これといって魅力なんてものは無いし」
咲夜「戦闘に…特化してる…?」
美鈴「うっ…ルーミアさんの気が…高まる…!」
美鈴がそう言って顔を引き攣らせるのと同時に、ルーミアがモヤモヤとした闇を纏い始める。
るみゃ「…エスカルゴがくれた闇の力…。ずっと貯めてたけど、今が使い時ね。待ってて…何処にいても、すぐに見つけてあげるからね…。同じ力同士は、強く惹かれ合うものだから……!」
星が輝く空を見上げ、そう呟いたかと思うと、闇のオーラを纏いながら、ゴォッと飛び立った。
その方角は、妖怪の山だ。
あまりに突然の事で、美鈴も咲夜さんも、眺める事しか出来なかった。
霊夢「ちょっとー!?誰も居ないのー!?」
ルーミアが妖怪の山へ飛び立った頃、霊夢は永遠亭の扉を叩いていた。しかし、返事は無い。
犯罪になりかねないので、窓を割ったり、障子を破いて強引に入るなんてことは出来ない。
それ位のことは、霊夢はよく分かっていた。
霊夢「くっ…揃って外食でもしてるのかしら…?なら、紅魔館に行こうかしら…」
輝夜「ちょっと待って!」
玄関前から飛び立とうとした霊夢の事を、いち早く帰ってきた輝夜が呼び止めた。その声に気付いた霊夢は、後ろを振り返る。
霊夢「あんた…ここの姫だっけ」
輝夜「そうよ。それで、何の用?…まぁ、聞かなくてもわかるけどね」
霊夢「エスカルゴが何処にいるか探してるのよ。でも、なんでここに誰もいないの?」
輝夜「……彼がどうなったのか、まだ可能性の話だけど、驚かないで聞いてほしいわ」
そう前置きして話そうとするが、輝夜が次に口を開くのと同時に霊夢が発言した。
霊夢「人間に戻った、でしょ?」
輝夜「え……えぇ、そうよ。なんで?」
霊夢「魔理沙がね、エスカルゴにそっくりな人間の男と会って、その男がエスカルゴを名乗って、そんな主旨の話をしたらしいの。魔理沙は、成りすましだろって言ってたけど…エスカルゴの姿が見えないし、多分本当の話だと思うのよね」
輝夜「…そうね。今ここに誰も居ないのは、永琳とイナバたちが、彼を元に戻すために奔走してるからなんだと思うわ。永琳のことだし、薬を作る方法を思いついたのでしょう」
霊夢「どこに行ったの?」
輝夜「途中から永琳達と別行動だったから、どこに行ったのかはわからないわ。ごめんなさいね」
霊夢「オッケー、ありがと。…薬を作る…って、吸血鬼になるための薬って解釈で合ってる?」
輝夜「それの他にある?」
霊夢「…なるほど、行き先が何となくわかった。あとは博麗の勘に従うだけね。…どっちにしろ、紅魔館には行かなきゃか…」
ボソッと呟き、今度こそ玄関前から飛び立った。
後には、輝夜だけがポツンと残った。
輝夜「一応、妹紅の誤解は解いておいたけれど…どのくらい私の話信じてくれたかしら…。一刻も早く、誤解は解いてしまいたいものね…。あと、次彼に会ったら、イナバたちと永琳には頭を下げさせなきゃね」
そう1人ごちると、誰も居なくて真っ暗な永遠亭に入り、料理ゲームで覚えた調理法で、滅茶苦茶な料理を作り上げた。