具体的な数字としては、0.02という所ですかね。
もちろん、両目合わせてです。
太陽がほぼほぼ沈んだ夕方。
辺りは闇に包まれ、視界不良となってきた。
吸血鬼の血を引く霊愛は、そんなことはものともせずに、文の仕事場に向かってただ飛び続ける。
彼女は山に入る際、哨戒中の天狗に見つかった。
しかし、咎められることは全く無かった。
母親が偉大な博麗の巫女だからか?
それは違う。
父親が、天魔を下した超大物だからだ。
天魔という、絶対的な強さを持つ君主を下した者として、父親の名は山中に轟いている。
そしてその波は、娘や彼女等、皆に届いている。
彼の恩恵を感じた霊愛は、改めて父親の偉大さに気付かされた。
霊愛「(お父さん…何処にいるの…?)」
仕事場の、ほんのり橙色の明かりが見えてきた。
もう少しだ。
霊愛は、飛行にも霊力を消費し、加速する。
明かりがグングン迫ってくる。
だがその時、背後から、とんでもない猛スピードで強大な妖力が接近してくるのを感じた。
霊愛「誰っ!?」
振り返り、お祓い棒と御札を構える。
まだ通り過ぎてはいない。
もうすぐだ。もうすぐで目の前にやってくる。
るみゃ「あら、霊愛…。どうしたの?」
やってきたソレは、霊愛の前まで来るとオーラのようなものを消し、目の前の少女の名を呼んだ。
霊愛「あんた…誰?」
目の前の、幻想郷では見たことの無い謎の妖怪に警戒心を強める。しかし、どこかで見たことあるような風貌だ。見たことあるような服を着てて、見たことあるようなオーラを纏っている。
るみゃ「誰って…傷つくわね、あなたが赤ん坊の頃から一緒に遊んでたのに。…ルーミアよ、ルーミア。封印を解いて、本来の姿に戻ったの」
霊愛「あぁ、ルーミア…」
謎の妖怪だと思っていたのが、今より幼い頃から一緒に遊んでいたルーミアだとわかると、不思議と警戒心は勝手に解けてしまった。
霊愛「なんで私の後を追ってきたの?」
るみゃ「別に、あなたの後は追ってないわ。この先に、私の求める人がいるの…。私に力を与えてくれた、特別な人がね」
霊愛「へぇ…そうなんだ。ちなみに、誰?」
るみゃ「そうねぇ…強いて言うなら、あなたが今探している人…かしら?」
霊愛「え?今私が探してるのはお父さ…」
るみゃ「じゃ、また後でね☆」
途中まで言いかけると、パチンとウインクをし、再び闇のオーラを纏って、今まさに霊愛が向かおうとしていた仕事場へと向かっていった───。
霊愛がルーミアと対峙している頃、母の霊夢は、ようやく紅魔館に到着していた。
しかし、紅魔館に来たにしては、活気が無いし、門に2人も立っていることに違和感を覚えた。
それに、門の前の地面が、何かが爆発したように抉られている。それが更に、何かしらの事件性を感じさせられた。
霊夢「ちょっと咲夜、これはなんなの?」
咲夜「あぁ、誰かと思えば…。今度は霊夢?何の用かしら?」
霊夢「エスカルゴについて、よ。もうとっくに夜だって言うのに、神社に来ないし…何かあったんじゃ無いかって思ってね」
咲夜「…エスカルゴさんには会ってないの?」
霊夢「七夕以来会ってないわ。何かあったの?」
それを聞くと、元々暗かった顔が更に暗くなる。
会話には参加していない美鈴もだ。
それは、彼に何かがあったことを表していた。
顔を合わせた美鈴と咲夜さんは、意を決した様に重々しく口を開いた。
咲夜「エスカルゴさんが…人間に戻ったの…」
霊夢「人間に…ねぇ…」
咲夜「随分と驚かないのね。エスカルゴさんの為に人間を辞めたあなたなら、なにか騒いだりするかと思ったんだけど」
霊夢「魔理沙から、アイツにそっくりな、人間の男と会ったって聞いてね。それを聞いた時から、なんとなく察してたわ。心の準備も出来てるし」
咲夜「そう…」
霊夢「それで、地面が抉れてるこれは何なの?」
咲夜「確か、ルーミアがやったのよ、それ。エスカルゴさんを探しに、山の方角へ向かったわ」
霊夢「ルーミアが……って、えぇ?エスカルゴを探しに?何でよ?」
咲夜「なんか、同じ力同士は惹かれ合う…なんて言ってたわ。人間のエスカルゴさんには、能力なんて無いのにね」
霊夢「?なんで能力が無いってわかるの?」
咲夜「昨日の朝…人間のエスカルゴさんと戦ったのよ。その時はエスカルゴさんだと思わなくて、危うく殺しそうになった…。でも、私たちに殺されそうになっても、ただ逃げただけだった。だから、能力が無いんだろうって…」
霊夢「殺しそうになった?はぁ?何言ってんの?あんたもアイツと愛し合った仲じゃないの?」
咲夜「…黒目で、あまりにもあの人に酷似してたから、あの時の妖怪の…不知火 麗葉かと…」
同じことを考えている美鈴も、地を見つめ、ただただ黙りこくる。霊夢は、そんな2人を、冷たい目で黙って見ていた。やがて、憎しみが篭った声で一言、軽蔑するように吐き捨てた。
霊夢「…あんたら、いっぺん死ねば?」
それだけを言った霊夢は、2人を振り返る事すらせずに妖怪の山の方へ飛び立った。
後には、俯く2人だけが残った。
咲夜「…返す言葉も無いわね…」
美鈴「…はい…」
??「あの…」
思わず泣きそうになる2人だが、追い打ちをかけるようにもう1人の客がやってきた。
咲夜「はい、何でしょう?…あら、妖夢」
そこに居たのは、幽人の庭師、魂魄 妖夢だった。
こんな夜になんの用だろうか。
妖夢「今、エスカルゴ居る?もし良ければ、明日修行手伝って欲しいなって伝えたいんだけど…」
咲夜「(またあの人絡みか…。今日は散々ね…。)いいえ、居ないわ。…行方不明なの」
妖夢「行方不明!?どういう事よ!?」
血相を変えて詰め寄る妖夢。それを見て言葉選びを間違えたなと後悔した咲夜さん。
しかし、もう止まらない。ワケを話さなければ、妖夢は止まってくれない。彼女の手が、腰の剣にかけられているのを見て、それを確信した。
仕方ないと割り切った咲夜さんは、時系列順に、1から10まで、説明した。永遠亭のメンバーから聞いた話も交えてだ。だが、話を進めるうちに、妖夢の顔から表情が消えていった。
話し終えてから随分な間があったが、言いたい事が出来た妖夢は、重々しく口を開いた。
妖夢「サイッテー…」
咲夜「え?」
妖夢「何よそれ…。信じてあげなかったの…?」
咲夜「あなたも話には聞いているでしょうけど、数年前に、幻想郷では目の色以外全てを模倣する妖怪が現れた。私たちが疑うのも仕方な…」
妖夢「仕方なくない!」
2人「!!」
妖夢「それ、エスカルゴ自身が一番混乱してたんじゃないの?何が何だか分からなくて混乱してる自分を、落ち着かせて欲しかったんじゃないの?なのに、話を聞かずに殺そうとするなんて…!」
咲夜「私はただ、過去にエスカルゴさんが倒した敵が復活した可能性を考慮しただけで…」
妖夢「それよ!咲夜あなた、エスカルゴのこと、全っ然信用してないじゃん!!」
咲夜「そんな事ないわよ!」
妖夢「エスカルゴを信用してたら、過去に倒した敵が復活した可能性なんて、全く考えないんじゃないの!?復活を疑うってことは、エスカルゴの手腕を疑ってるってことじゃん!違う!?」
咲夜「っ…そんな…こと………」
妖夢「…きっと、エスカルゴの精神的ダメージは計り知れない…。私は半分人間だからわかる…。人間の心って、強いようで脆いもの…」
咲夜「私も一応元人間なんだけど…」
妖夢「昔から悪魔に仕えてる人間はまともな人間じゃない。自分を普通の人間だとは思わない方が良いと思うわ。…特に、能力持ちの人は、能力を持たない普通の人間のことを全く理解出来ない」
咲夜「……」
妖夢「…エスカルゴが消えてから2日目。戻ってこないって事は…妖怪に喰われてるか、どこかに身を隠しているか。何にせよ、あなた達紅魔館の皆と永遠亭の皆の事は深く恨んでるでしょうね。…ここのお嬢様達はどこに行ったの?」
咲夜「…わからない…探すと言って飛び出して…今朝からずっと…」
妖夢「…私もエスカルゴの事探そ…」
そう呟き、クルリと門に背を向ける。
一旦は飛び立ちかけるが、もう一度振り向く。
妖夢「エスカルゴがあんた達皆を許すまで、私もあんた達のこと許さないから!もし、次アイツを傷付けたら…私が殺してやる…!」
腰に佩いている剣に手をかけ、ギロリと強く睨みつけ、今度こそ飛び立った。
霊愛、ルーミア、霊夢が向かった、妖怪の山へ。
カルゴ「ふぅ…ご馳走様でした…。さとりって、料理も上手いんだね」
紅魔館や仕事場の手前でそんな話がなされているとは露知らず、俺たちは、文の仕事場で夕飯を摂っていた。今回料理を作ったのは、さとりだ。
文と穹は新聞の仕上げをしている。
わざわざ時間をとるために、数日分の新聞を作っておくのだそう。
さとり「いえ、そんな…。慣れですよ、慣れ」
カルゴ「そうなんだ」
その時、執筆中の文が声を上げる。
文「あやややや!皆さん、警戒して下さい!誰か来ますよ!」
それを聞き、俺もさとりも穹も身構える。
人間の俺は、ごく狭い範囲の妖気しか感じ取れないので、俺にはまだ感じ取れないが。
さとり「本当だ…何かとんでもない妖気が迫ってきますね」
さとりはもう感じ取ったようだ。
文はおそらく、風を読んだのだろう。
彼女の能力、《風を操る程度の能力》で。
そして、轟音と共に、仕事場の扉が吹き飛んだ。
ドゴォンッ!!
4人「!?」
音は玄関から来た…と瞬時に把握したが、俺達が玄関へ行く事は無かった。その侵入者が、玄関へ向かう俺達の前に立ちはだかったからだ。
初めて見る金髪ロングの美女の妖怪。
俺には何故か、即座にルーミアだと判断出来た。
るみゃ「やっと見つけた…」
文「なんですかあなたは!」
団扇を構え、風を集め、吹き飛ばす準備を整える文。戦闘は苦手な文だが、能力はかなり強力だ。
さとり「この妖怪…まさか…」
カルゴ「ルーミア…?」
俺の呟きに、さとりはコクッと頷く。
文「そ、そんなまさか…ルーミアさんといえば、可愛らしい女の子じゃないですか…」
るみゃ「…封印を解いたのよ。エスカルゴのこと探すためにね」
文「!?」
カルゴ「俺を探すため?…いやその前に、なんでここがわかったんだ…?」
ルーミアならば…無邪気なルーミアなら、警戒の必要は無い。俺はそう判断した。
封印を解いたとて、暴走している様子はない。
キチンと己を制御出来ていると見える。
るみゃ「あなたがくれた闇の力が教えてくれた。ここに居るよって…。人間になって、能力も無くなったみたいだけど…心の闇は今までより深く、大きく、何倍も強くなってる…。闇の質はその人特有だから…それで、位置がわかったの…」
俺があげた闇の力…………そういう事か。
カルゴ「…そうなのか。でも、なんで俺のことを探したんだ?」
るみゃ「紅魔館の奴らに、何かされたんでしょ?だからこうして身を隠してる…。違う?」
カルゴ「……そうだね。合ってるよ、それで」
るみゃ「もしあなたが望むのなら…復讐手伝ってあげる。あなたの闇の力が強くなったのは嬉しいけど、人間になったあなたは食べられない上に、心が傷付くのはダメ…許せない…」
そう言って、肩をワナワナと震わせるルーミア。
一方俺は、俺のために怒ってくれているのか、とルーミアに感謝の気持ちを抱いた。
さとり「…これほど強力な妖気をダダ漏れにしながら己を保てるとは…。あなたもかなりの逸脱者ですね、ルーミア」
るみゃ「あなたは…エスカルゴの敵?味方?」
敵と答えたら即座に殺す。そう言わんばかりに、彼女の足元にジンワリとした闇が広がる。
さとり「ここにいる者は皆エスカルゴさんの味方ですよ。安心して下さい」
ルーミアの目を真っ直ぐに見つめ、さとりは言葉を返す。それが本当だと信じたルーミアは、足元に広げた闇を消す。
るみゃ「そう…ただの人間になっても味方がいるなんて、流石ね、エスカルゴ」
カルゴ「ふふっ…そうだな。有難いよ、本当に」
るみゃ「…そうそう。今からあと1人、あなたの味方がここに来るわよ」
4人「えっ?」
その時、懐かしい声が俺の耳に入ってきた。
霊愛「うわ、何これ、玄関が吹っ飛んでるし…。文さーん、入るわよー」
この声…霊愛?
なんでこんな夜にこんな所来てるんだよ?
霊夢関係で、申し訳ないという気持ちが湧いてきて、顔を合わせたくないと感じた俺は、再度文の後ろに隠れる。
霊愛「こんばんはー…お父さん居る?」
るみゃ「また会ったわね」
霊愛「ルーミア?なんでここに…」
るみゃ「さっき言ったでしょ?私の探してる人はあなたの探している人だって」
霊愛「見つけたの?」
るみゃ「文の後ろに、ね」
その言葉を聞き、霊愛の目が大きくなる。
霊愛「そこに居るの?お父さん」
カルゴ「……」
さとり「『俺のために人であることを捨てた霊夢に、今回の事件は知られたくない。申し訳ない。だから頼む。今はそっとしてくれ』…だそうです」
霊愛「…じゃあ、魔理沙の言ってたあの話は本当だったんだ…。大丈夫だよお父さん。お母さん、もう知ってるよ。お父さんが人間に戻っちゃったってこと。神社に来ないから心配してるよ」
さとり「『嘘だ。心配してるんじゃない。怒ってるんだよ。私が人間を辞めたのに、何勝手に人に戻ってるんだ、責任取れって…』」
霊愛「違う!お母さんは怒ってなんかないよ!!お願い、顔を見せて!居るんでしょ!?」
さとり「…エスカルゴさん。霊夢と霊愛になら、大丈夫だと思いますよ。私たちのように、きっと味方になってくれますから…ね?…疑いたくなる気持ちもわかります。責任感じてるんですよね。ですが、まずは、疑う事より信ずる事が大事だと思います。そう疑心暗鬼になるのも、今回の事があっては仕方ありませんが…」
さとりが言うなら…。
意を決した俺は、文の背中から離れ霊愛と対面。
カルゴ「霊愛…」
霊愛「お父さんっ…」
弱々しい微笑む俺を見て何を感じたのか、優しく俺の腰に抱きついた霊愛。
霊愛「私とお母さんも、お父さんの味方だよ…。何があっても、離れたりしないから…」
カルゴ「…ありがとう…」
俺も霊愛を抱きしめ、頭を撫でる。
吸血鬼と人間のハーフでありながら、人間の血を強く引いている娘。仮に吸血鬼に戻れなくとも、霊夢と霊愛と俺で、誰よりも、人間らしい生活が望めるかもしれない────…。
るみゃ「大丈夫よ。もし裏切ったら、私が天罰を下してあげるから」
霊愛「あははっ、ルーミアったらコワーイ♪」
カルゴ「ははっ…」
俺と霊愛とルーミアの会話を、包み込むような優しい感情で見守っていた文。しかし、またも風を感じたらしく、開いている窓を見る。
文「待って下さい、もう1人、誰か来ます」
カルゴ「え?…霊愛、誰か来るのか?」
霊愛「ううん、わかんない」
るみゃ「私も知らないわ。もしかしたら霊夢?」
霊愛「お母さんは永遠亭と紅魔館に行ったよ」
じゃあ誰が…という疑問は、その直後に晴れた。
ルーミアによって吹き飛ばされた玄関から、1人の女が入ってきた。そいつは、今まさに、俺達の話題に出ていた博麗の巫女その人だった。
霊夢「エスカルゴ居る!?」
部屋に入るなりそう叫ぶ霊夢。
霊愛を抱き上げていた俺と、バチッと目が合う。
目が合った霊夢は、ポトリとお祓い棒を落とす。
霊夢「あ…あんた…」
カルゴ「……」
やはり気まずい。
耐えられなくなった俺は、そっと視線を外す。
すると霊夢は、下唇を噛みながら、ツカツカと歩み寄ってきた。
霊夢「ねぇ」
俺の目の前まで来て立ち止まり、少々怒気を孕んだような声を出す霊夢。
カルゴ「…はい」
霊夢「人間に戻ったって、本当だったのね」
カルゴ「……」
霊夢「こっち向きなさい」
カルゴ「……」
バチンッ…
前を向くと同時に、頬に走る衝撃。
何が起こったのかよく分からないまま、頬に熱さを感じ、バランスを崩して床に倒れる。
霊愛「ちょっ…お母さん!」
霊夢「黙りなさい」
部屋に、何とも息苦しい空気が充満する。
カルゴ「…やっぱり…怒ってるよな…」
霊夢「ええ、怒ってる」
カルゴ「…だよな…俺なんかと関係を持ったばかりに…霊夢の人生を狂わせた…」
霊夢「そうじゃない」
カルゴ「え…?」
霊夢「何で神社に来ないの?何で黙ってたの?」
カルゴ「……俺のせいで、霊夢が人間を辞めて、人生が狂った…。なのに、人間に戻ったなんて…言えるわけが無い…!」
霊夢「あんた、馬鹿なの?」
カルゴ「…ああ、とんだ大馬鹿野郎だ」
霊夢「私が、その程度のことで動揺するとでも?それをあんたのせいにするとでも?」
カルゴ「……」
霊夢「立ちなさい」
命令口調の霊夢には逆らえず、ヨロヨロと立ち上がる。また殴られる…そう思った時、俺の身体を、柔らかいなにかで包まれた。
カルゴ「…え…」
霊夢「……」
俺は、抱き締められていた。
今の今まで怒っていた霊夢によって。
霊夢「私は、人間に戻ったことについてあんたを責めたりなんかしないわ…。それくらいのことを受け入れられないほど、私は器の小さい女じゃない…」
カルゴ「……」
霊夢「話は聞いたわ。…辛かったでしょ…?寂しかったでしょ…?急に人間に戻ったと思ったら、彼女達に襲われたんだもの…」
俺を抱き締める霊夢の腕に力が籠る。
霊夢「大丈夫…私は、何があってもあんたの味方だから。何があっても、私だけはあんたについて行くから…。私には何でも打ち明けて…?」
カルゴ「…ごめんなさい…っ」
涙を堪え、霊夢を抱きしめる。
もう1人、人間の自分でも受け入れてくれる人がいた。それだけで、とても嬉しい。
しばしの沈黙の後、文が口を開いた。
文「いや〜…焦りましたよ霊夢さん…」
霊夢「何がよ」
抱擁を解き、文に向き直る。
文「近寄るなり平手打ちですから、この人もエスカルゴさんの敵なのか、と思いました」
霊夢「馬鹿ね。…私は、人間になろうと吸血鬼になろうと、コイツについていくって決めたのよ。それに、信じる事を忘れたら、生物としてもう、終わりも同然よ」
文「ですよねー」
姉妹「ホッ…」
霊夢が味方だと知り、文、穹、霊愛はホッと胸をなで下ろす。味方だと分かっていたさとりだけは終始黙っていたが。
るみゃ「ふふっ…よかった、霊夢も味方で」
霊夢「そういえば、さり気なく混ざってるけど、あんた誰よ。かなり邪悪な妖気だけど」
封印を解いたルーミアを初めて見る霊夢は、ルーミアに警戒心を向ける。しかし、それに怯む様子もなく、自己紹介を始めた。
るみゃ「封印解いたルーミアよ。この姿であなたに会うのは初めてよね」
霊夢「へ?ルーミアってあの…ちびっ子?」
るみゃ「そう、そのルーミア。頭見て。リボンを着けてないでしょう?あれは、私の闇の力を封じるための封印だったの。エスカルゴを見つける為には力の解放が不可欠だから、封印を解いたのよ」
霊夢「なんでエスカルゴを探すのよ?」
るみゃ「私に力をくれた恩人だから…かしらね。エスカルゴは、困ってる時いつも助けてくれた。急に襲っても、全く怒ることなく私を受け入れてくれた。だから、今度は私がエスカルゴを助けるのよ。エスカルゴを苦しめたヤツら…。紅魔館のアイツらは許さない」
霊夢「…そう。でも、もし暴走したら再封印するわよ?その覚悟はある?もしも無理なら、暴走と同時に滅するしか無くなるわ」
るみゃ「あの姿の方が好きだし、別にいいわよ。解決したのなら、すぐに戻してくれてもいいわ」
ルーミアは、自分の姿に執着心が無いらしい。
あくまでも、幼女の自分の方がいいと思っている様だ。
霊夢「わかったわ。とりあえず、頭の片隅にでも入れておく。忘れてたら教えてちょうだい」
るみゃ「了解したわ」
自分のことを封印しろという謎発言。
霊夢はそれを快諾した。
文「ところで霊夢さん、夕飯食べました?」
唐突に出た呑気な質問。
この質問に、みんなの視線が霊夢か文に向く。
霊夢「食べる訳ないでしょうよ、料理係…ゲフンゲフン、エスカルゴが居ないんだから」
カルゴ「お前今、俺のこと料理係って…」
霊夢「うっさい!あんたの味方なんだから、感謝しなさいよね!」
カルゴ「ああ、わかってる」
文「では、夕飯にしましょうか!私と穹とさとりさん、エスカルゴさんは食べましたからね、霊愛ちゃんと霊夢さん、ルーミアさんは、今のうちに食べておきましょう!いつ紅魔館との戦が始まるか、わかりませんからね!」
そう言ってテキパキと、余ったおかず、ご飯をよそって配る文。俺と穹もそれを手伝う。
霊愛「弦月姫と戦うのかな…ま、勝てるけどさ」
席につきながら、妹との衝突を憂う霊愛。
穹「私もサポートしますよ!」
文「数百年ぶりに、まともな戦闘をしそうです。準備はしっかり整えておかないと…。(彼女達は、私は戦闘が苦手だと思い込んでいるので、そこを挫けば、楽に攻略出来るでしょう。私は、戦闘が苦手なのでは無く、あまり好きでは無いだけ…。風神の力、思い知るといいです)」
るみゃ「あれくらいの実力なら、全員殺すことも出来るわ。それほど、エスカルゴの闇は強い」
さとり「紅魔館との衝突は、もはや避けられないでしょうね。目には目を、歯には歯を。彼女らに眠るトラウマ、心が砕けそうになるまで掘り返します。それが、最高の仕返しでしょう」
本当に大丈夫なのか?
本当に戦闘は避けられないのか?
どうにかして戦闘を避けられないか。
アレコレ思案するが、自分に余裕が無いからか、全く手立てが思い浮かばない。
仕方ないと割り切り、彼女らに委ねる事にした。
??「…穹と霊愛が揃ってる…。好機…!」