本来はスグに発病するもんでも無いですが、そこは読んでいただければほんの少しは納得行くと思います。
こじつけに近いですが…。
痛い…。うっ、腹が…!
せっかく寝てたのにまた目が覚めてしまった。
というか腹が痛い。
トイレトイレトイレトイレ!!
ダメだ何も出ない…腹痛い…。
とりあえず部屋戻ろう…。
「うう…」
なんて痛みだ…胃腸が千切れたのか?
そんな訳無いよな…。
ダメだ、椅子に座ってられない…。
床にうずくまるしか…。
ズキッ
「ううううう…」
「んん…なによエスカルゴ…」
やべ、レミリア起こしちまった…。
「な、何でもな…うぐぐ…」
「ど、どうしたの?」
「な、何でもな…っ」
「床にうずくまって呻いてるくせに何でもない訳無いでしょう!正直に言いなさい!」
「…腹…痛い…」
「…は?それならトイレにでも行けば良いじゃない」
「全然………………………………」
痛みが酷くなってきた。
口だけパクパク動かしてる…?声出てない?
やば…ホントに声出てない…目が霞む…。
バタン…
…ん?ん、目が覚めた。腹痛は…治ってる。
なんだここ…?天井しか見えないけど…どこか和風な感じだ…。
「…はぁ…」
「!!エスカルゴさんが目覚めました!!」
トタタタタ…バタンッ
聞き慣れない声だな…誰だ?
声のした方を見ようとした途端、声の主は部屋を出て行ってしまったようだ。
「────。────?」
「───────!」
話し声のようなものが聞こえる。
別な部屋で話してるからか、会話が聞き取れない。
ススッ
今度は何だ?
扉?いや違うな、ふすまを開けた音に近い。
「おはようございます、エスカルゴさん」
チラッ
「えっ…?」
あれ、えっと…この人って…永琳?
起き上がろうとしたが手で制止された。
「エスカルゴさんの手術を担当しました、八意永琳と申します。以後お見知り置きを」
マジで永琳なの?というか…え、手術??
「ご、ご丁寧にありがとうございます…。えっと、吸血鬼のエスカルゴ・スカーレットです。あの、永琳さん、ここは…?」
スカーレット付けて名乗るの初めてかな?
「ここは我々の住まい兼診療所の永遠亭です」
えっ…なんで俺が永遠亭に?
「2日前の夜、台車に乗せられ紅魔館の方々に運ばれてきたエスカルゴさんは、すぐ緊急手術を受けました」
…この時点でもうわけわからん。
「もう少し遅ければ今頃は土の下でした」
…つまり死んでた、と。
「あの、俺の身体に一体何があったんです?」
「簡単に言ってしまえばガンです」
は?
「…え?ガン?俺がですか?」
「ええ。あなたは胃ガンでした。全身に転移する前に胃、念の為に腸も丸ごと摘出しましたが」
え?下腹部はほぼ空っぽ?
俺よく生きてるな…。
「…なんか腹痛いなと思ったら胃ガンだったんですね…。でも、なんで急に?」
「…摘出した胃腸の中を見てみたら、その原因がわかりました」
「なんですか?」
「『食べ合わせ』…ってご存知ですか?」
「…聞いたことは」
「正確には、合食禁(がっしょくきん)、または食合禁(しょくごうきん)ですが…。数あるその組み合わせの中に、発ガン性物質を生み出す組み合わせがあるのはご存知ですか?」
えっ、初耳なんだけど。
「いえ、知らなかったです」
「でしょうね。知ってたらあの組み合わせは無いですもの」
「うう…何の組み合わせがダメだったんですか?」
「秋刀魚とキュウリ…いえ、秋刀魚と漬物です。覚えていませんか?」
…?そんなん食べたっけか?
あっ!ミスティアのとこで秋刀魚、おじさんから貰ったキュウリの漬物を同じ日に食べた!それも、あまり時間を置かずに!
「…覚えてます。その組み合わせが発ガン性物質を生み出す…と?」
「そうです。秋刀魚は焼いたヤツですよね?」
「はい」
「秋刀魚を焼くとタンパク質が変化し、『ジメチルアミン』という物質が出来ます。そして、漬物は野菜に含まれる硝酸塩が発酵の過程で『亜硝酸塩』に変化します。この『ジメチルアミン』と『亜硝酸塩』が融合すると『ニトロソアミン』という発ガン性物質が生成されてしまいます」
急に化学っぽい話…。
元々化学を専攻してたから何ともないけど。
「なるほど…」
「簡単に言ってしまえば、
『ジメチルアミン+亜硝酸塩=ニトロソアミン』ってところですね」
「ふむ…。それで発ガン性物質が出来て体内に取り込んでしまった…と。なるほど、ガンになった経緯はわかりました。ですが、まだ腑に落ちない所があります」
「なんですか?」
「ガンの進行…なんでそんなに早かったんです?普通もっともっと時間かかりますよね?いくら俺が若いからと言っても半日も経たずに発病というのは変じゃないですか?」
「そうですねぇ…あなたは理解が早いようだから、問題形式にしてみます」
えぇ…なんでぇ…。まぁいいけど…。
「わかりました。なんですか?」
「あなたの胃腸は丸ごと摘出した…と言いましたよね?」
「はい」
「ですが、あなたの胃腸はもう元通りです。それは何故でしょうか?洗浄して戻した訳ではありませんよ」
「も、元通り!?もう!?」
「ええ。流石に、丸ごと再生するには多少は時間がかかったようですけどね。……あっ」
「…?」
「いえ、なんでも」
ちょっと焦ってた。キーワードは…「再生」か?
再生…?胃腸の再生とガンの進行になんの関係が?
あっ!
「わかりました」
「早いですね。なんですか?」
「2日で丸ごと再生したってことは、俺の再生力…つまり、細胞分裂が凄く早いわけで…。細胞分裂が早いってことはすなわちガン細胞が増えるのも早い…って事ですか?」
「その通りです。早い上に完璧な回答ですね」
「えへへ、ありがとうございます。元の世界で理系ばっかやってたからですね!」
「元の世界…?あなた、他の世界から来たんですか?」
「そうですけど…。あれ?もしかしてここって文々。新聞取ってませんか?」
「文々。新聞ならうちも取ってますよ?毎朝読んでますし」
「俺、射命丸文さんから2回取材受けたことあって、2回とも新聞になりましたが…」
「えっ?……………あぁ、そういうことか」
「??」
「てゐ?そこに居るのはわかってるのよ。お仕置きされたくなければ出て来なさい」
えっ、てゐ居たの?
「………」
「返事なさい」
「…何のことウサ〜?通りかかっただけウサ〜」
ふすまの向こうから声が聞こえる。可愛らしい声だ。
というか、マジで居たのか。全く気付かなかった。
「いいから、いらっしゃい?」
「………」
ススーッ
ふすまが開く。
「因幡てゐ、ここに参上っ!!よろしく!」
「うるさい」
バシッ
カルテのようなもので頭を叩いた。
「イテッ」
「それであなた…いくつか新聞くすねてない?」
「……知らないウサ〜(棒)」
「毎朝新聞取りに行くのはあなたでしょう?新聞読むのは私だけ、取りに行くのはあなた。あなたしかいないのよ?」
「ごめんなさいウサ」
観念したようだ。
「それで、くすねた新聞はどこに?」
「とっといてあるウサ」
なんでやねん…。
「持ってきなさい」
「わかったウサ」
トテテテ…
部屋を飛び出し、新聞を取りに行くてゐ。
と思ったらすぐ帰ってきた。
「取ってきたウサ〜。コレとコレウサ」
「2部だけ?」
コクッコクッ
頷くてゐ。
「…まぁいいわ。…どれどれ…」
新聞を読み始める永琳。
「なるほど…薬を服用して…。そしてこの前スカーレット家入りですって?」
もう読み終わったのか?早いな。
「そうです。えへへ…」
「フランちゃんと付き合って…さぞお熱いんでしょうねぇ、ウフフフ…」
「今は色々あってレミリアとも付き合ってますが…」
「えっ?それって…二又?」
「え、ええ…。レミリアも俺のこと好きになってくれたみたいで…レミリアがそれをフランに言ったら喧嘩になって…。なんとかそれを鎮め、話し合った結果そうなりました」
「…あなたモテるのね…」
「たまたまです(キッパリ」
「そ、そう…。じゃ、前置きが長くなりすぎたけど、そろそろ始めましょう」
ま、前置きだったのね…。って、何を始めるの?
「診察よ」
「あ、はい」
「脈拍……喉……うん、正常ね」
「ふぅ…」
「最後は…これよ」
ニヤッとしながらカルテを見せてくる。
嫌な予感がするなぁ…。
それを見ると……「胃カメラ」と書かれている。
「あの……胃カメラですか?」
「そうよ?胃ガンだったんだから胃カメラ検査はやるでしょう?」
「……はい…」
「どこから入れようかしら?」
「…口からで」
「良いのね?」
「…早く済むなら」
「あなたが動かなければすぐ終わるわ」
「はい」
「ウドンゲ、胃カメラの機械を」
「はいっ!」
隣の部屋から聞こえて来たのは…さっきの声だ。
じゃあ俺が目覚めた時に最初に聞いた声は…。
ガラガラ…
「よいしょっと…」
薄紫色のサラサラロングヘアー、うさ耳、ミニスカの美少女が、キャスター付きのそこそこ大きめな機械を持ってきた。やはり鈴仙だったか。
「エスカルゴさん、初めまして!鈴仙・優曇華院・イナバです!鈴仙とお呼び下さい!」
輝く様な笑顔を見せて自己紹介する鈴仙。
めっちゃ可愛いなぁ…。
「どうも、エスカルゴ・スカーレットです。エスカルゴと呼んで下さい」
「はいっ!よろしくお願いします!」
「じゃ、ウドンゲ、後はよろしくね」
「はい、任せて下さい!」
「あぁ、1つ言い忘れてたわ」
…?
「2日かかったっていうのは、再生だけじゃなくて意識取り戻すまで、ね。再生だけなら手術後数分で完治したでしょう」
「えっ!?」
「吸血鬼の再生力は凄いのよ。ではお大事に」
「は、はーい…」
吸血鬼すげー…。
「胃カメラやりますよー。口開けて〜」
「あ゙ー……」
「わっ、凄い牙ですね…」
「ほーれふは?(そーですか?)」
「ええ。じゃ、カメラ入れまーす、喋らないで下さーい」
あんな細いものなのか?タコ糸かよ。
昔テレビで見た胃カメラはもっと太かったが。
だから、よく芸人が苦しんでたものだ。
幻想郷ならではの物なのだろうか。そうだろうな。
「……………」
「凄く綺麗ですねー。…私の胃もこれくらい綺麗なのかな〜」
こんな感じでたまに何か言ってくれるから、検査に対しては緊張しなくて済む。…別な意味では緊張してるのだが。
「終わりでーす、カメラ抜きますのでもう少し我慢して下さいね〜」
何ともなかったな。
「はい、カメラ抜けました!お疲れ様でした!」
「ありがとうございました」
「いえ!」
入れる時も抜く時も見てたのだが、タコ糸のように細いものが勝手にウネウネ動くのは少し気持ちが悪いな。まぁ、そのおかげで食道や臓器の壁に触れずに検査出来たのだから文句は言わない。
鈴仙は俺の検査結果が書かれているカルテを見ている。
「至って健康…ですね」
「そうですか?じゃあ、今日には退院できますかね?」
「うーんと、そこはお師匠様に聞いてみないとわかりませんね…」
「そうですか…」
「それにしても遅いな…(ボソッ」
「何が遅いんです?」
「あ、いえ…。エスカルゴさんに面会したいという方が…」
「面会…?」
「レミリアさんとフランさんなんですが…」
「フランとレミリア!?」
「は、はい…。さっき、エスカルゴさんが目覚めたことを連絡したら『すぐに向かう』って言ってたのに、なんか遅いなと感じて…」
さっきなにか話してたのってそれ?
だとしたら確かに遅いかも。
いや、俺は気絶してたからわからないだけで、紅魔館と永遠亭はかなり離れてるのかもしれない。
…なんとなく眠くなってきた…。
「なんか…眠くなっちゃいました」
「では、ゆっくりお休み下さい」
「はい…。検査…ありがと…ございました…」
疲れからか、タップリ寝たはずなのにまた眠ってしまった。
はぁ…やっと出せたぜ永遠亭メンバー…。