カルゴ「次はお前だ…!」
標的を定めた俺は、その相手に歩いて接近する。
その相手は現在、妖夢と戦っている。
妖夢には申し訳無いが、この獲物は俺の獲物だ。
妖夢「畜趣剣『無為無策の冥罰』!」
鈴仙「んぐっ…!」
見たところ、だいぶ妖夢が押しているらしい。
妖夢は剣だし、リーチで言えば鈴仙の方が有利なはずだが…そこは、「さすがは妖夢だ」の一言に尽きる。
妖夢「これでキメる!六道剣………」
カルゴ「待って」
切りかかろうとする妖夢の手に、スキマを介して俺の手を重ね、制止する。それに妖夢と鈴仙は、ビクリと身体を震わせる。スキマを解除して尚も歩みを進めると、妖夢は困惑した表情でこちらを見る。
妖夢「ど、どうして────…」
カルゴ「…ごめん。鈴仙と巫月、咲夜さんは俺の獲物だ。他のみんなを頼む」
すると、呆れたように大きな溜め息をつく妖夢。
妖夢「しょうがないなぁ…。わかったよ。じゃ、霊夢とあの医者倒してくるね」
カルゴ「悪いな。……さて」
妖夢に軽く手を振り、鈴仙に正面から向き合う。
怯えているのか、若干腰が引けていて、カチカチと歯が鳴っている。可愛らしいウサ耳もグニャッと折れ曲がっている。
鈴仙「あ……あ……」
カルゴ「…どうした?」
鈴仙「怒っ…てる、よね…?」
何だ、そんなことか。
カルゴ「……ああ、怒ってる」
鈴仙「ごめん、なさい…」
カルゴ「嫌だね。あん時、たまたま妖怪が俺を食わなかったからこうして生きてるけど、あん時に食われてたら今頃俺はあの世だぜ?」
鈴仙「ごめんなさい…ごめんなさい…」
カルゴ「だァかァらァ!謝罪なんか求めてねぇんだよ!行動で示せっての!さっき言ったろが!」
じれったくなった俺は、言葉を荒らげ、戦闘開始を促すが、鈴仙は未だに構えを取らない。
鈴仙「うぅっ…出来ないよ…」
カルゴ「は?」
鈴仙「やっぱり…あなたとは戦えない…大好き…だから…。だから許して……」
肩を震わせ、涙を零して泣き出す鈴仙。
これでは俺が悪者みたいだ。…現に、永琳と戦いながらこちらをチラ見する霊夢が、ニタ〜ッ…と笑っている。ああ、後でイジるつもりだろう。
カルゴ「俺だってお前らのことは大好きだよ」
鈴仙「え…?」
カルゴ「大好きだからこそ、命に関わるよーな事も本気の弾幕ごっこだけで許してやろーとしてんだよ、それがまだわかんねーのかよ!何度も言わせんなバァカ!」
鈴仙「戦わなきゃ許してくれない…?」
カルゴ「許さない。それこそ、殺すほど恨むぞ。本気でこい。思いをぶつけてみろ。その上を行く思いの強さで、俺が勝ってみせる」
鈴仙「…わかった…本気で、いくね…」
と、構えをとった鈴仙。ようやくその気になってくれたようで、俺は内心でニヤリと笑う。
カルゴ「ああ。恋人同士、本気でやり合おう」
鈴仙「うん。……狂夢『
カルゴ「うっ…!?」
まるで網目のように、俺を避けて座薬型の弾幕が発射され、自由が効かなくなる。実はこのスペル初見だ。10年来の付き合いで、一度も見たことが無い。そもそも、鈴仙とはあまり、弾幕ごっこをしないのだ。
だが、それだけだ。
自由を封じただけで、特に追撃は無い。
弾の速さは尋常じゃないが当たらなければ意味が無い。すると、弾が途切れて、抜け出せるようになった。スペルの効果時間が終わったのか。
カルゴ「どうしたァ、そんなもんか!」
鈴仙「まだよ!私の想いはこんなモノじゃない!もっと強いわ!狂符『
カルゴ「っ!?」
四角のスキマを作るように弾幕を発射する。
しかしそれは時としてズレ、その間は被弾しなくなるが、ズレが直って幻覚からリアルに戻ると、被弾するようになる。
視覚をいじられているようだ。
…酔いそうになる。
カルゴ「頭が痛てぇ…自分の攻撃を喰らえッ!」
被弾しながら、ゴリ押しで自身の目の前にスキマを開く。弾幕は吸い込まれるようにそのスキマに入る。そのスキマの向こう側は、鈴仙の背中だ。
鈴仙「ゔぅっ…!」
カルゴ「次は俺の番だぜ、鈴仙!制裁『裏切り者には針万本の罰を』!!」
鈴仙の弾幕の間を縫うように、黒い針のような、鋭い弾幕が鈴仙へ向かう。小さいがためにかなり避けづらく、闇のスペルにしては弾速が速いので我ながらよく出来たスペルだと思う。
そして鈴仙は次々に被弾し、針が所々に刺さる。
鈴仙「くっ…足がっ……」
カルゴ「悪夢『魔王の子守唄』!!」
今度は、フラついて上手く動けないでいる鈴仙に催眠効果のある光を見せる。紅い妖気と黄色の電が合わさり、光を見たものの理性を奪う。
さらに、問いかけることで真価を発する。
カルゴ「鈴仙。お前のトラウマはなんだい?」
すると、目に光を失った鈴仙が口を開く。
鈴仙「エスカルゴに…怒られたこと…」
弾幕じゃないんかい。
カルゴ「話にならんな、解除」
鈴仙「…!(あれ…何してたんだっけ)」
カルゴ「次は…隠心『包み隠される本音』!!」
俺は普段、本音はいつも口に出している。
それでもやはり、言えない事は少なからずある。
俺だってそれくらいの分別はついているからな。
因みに、この弾幕を受けた藍さんは、喰らった後こう言った。「ちょっと橙に甘えてくるか」と。
弾幕を通じて、俺の中にある「言いたい」という気持ちが、藍さんにも伝わったんだろう。
つまり藍さんは、橙に甘えたいと思いつつも言えなかったんだろう。そりゃそんな事言えるかってモノだがな。
カルゴ「さぁさぁ、本音をさらけ出せ!!」
更に力を込め、密度を濃くする。
兎らしくピョンピョンと跳ねて避けて、後退し、たまに接近してくる。動きがトリッキーで、結構読みにくいものである。
ならば、当たるように出口を塞ごう。
鈴仙「うっ…!?」
空を飛べぬように、絨毯のような平面状に、鈴仙の頭上を覆い、左右を塞ぐ。弾幕の壁だ。勿論、鈴仙1人が避けられるような隙間はあるが。
鈴仙「ちょっと、キツ、い…きゃうっ!」
カルゴ「っしゃ、ヒットォ!!」
このスペルは、スペルの終了後に自白効果を発揮するので、本音を聞く為に、スペルを強制終了。それから、鈴仙の声に耳を傾ける。
チャンスは一度。聞き逃せない。
鈴仙「エスカルゴ…大好き…」
カルゴ「ヘッ……」
なんで俺の事ばっかなんだよ鈴仙は……。
はぁ…しゃーないなぁ。鈴仙の気待ちに免じて、この勝負、終わらせてやるよ。
もちろん…俺の勝利で、な。
カルゴ「ったくよぉ…。たまには、まともな本音聞かせろよな…」
未だ、少しだけボーッとしている鈴仙をギュッと抱きしめ、次にスペルを発動する。
カルゴ「雷鎧『サンダーアーマー』」
鈴仙「ひぐっ…イタタッ、いつの間に…」
正気に戻ったらしい鈴仙は、俺が鈴仙を抱きしめている事に驚きを隠せないようだ。
カルゴ「鈴仙、愛してるよ」
鈴仙「私も……♪」
鈴仙は、俺の背中に手を伸ばした所で気絶した。
鎧を解除して、彼女の頬を撫でる。
カルゴ「ごめん、ちょっと出力調整ミスったな」
ちょっぴり焦げてしまった服を見る。
これくらいなら洗濯すれば元通りだろうか…。
服の心配をしながら、鈴仙をスキマに落として、こっそり敷いておいた布団に寝かせた。
辺りを見渡すと、妖夢と霊夢が永琳を相手に苦戦している様子が見て取れた。
ルーミアは、美鈴と格闘勝負を。
穹と霊愛は、巫月と勝負しているらしい。
パチュリーはと言うと、魔理沙と手を組んで文と戦っているらしい。素早く動き回る文に魔理沙達は苦戦していると見える。
あと、ここに居るはずで姿が見えず、俺がまだ、倒していないのは─────。
咲夜「エスカルゴさん」
カルゴ「…咲夜さん…」
そう、咲夜さんだ。
咲夜「やはり、お優しいんですね」
そう言って優しく微笑んだ咲夜さん。
いつも通り、柔らかく、心が温まる様な笑顔だ。
カルゴ「何がですか?」
咲夜「先程、鈴仙をスキマで落とす所を、上から覗いていたんです」
マジか、気付かなかったぞ。
やっぱり気配消すの上手いなぁ…。
咲夜「まさか、布団に送っていたとは思いませんでした。もしや、お嬢様や妹様、弦月姫も…?」
カルゴ「…ええ、まぁ。今頃、ベッドでスヤスヤ寝ている頃でしょう。いつもよりも強めの電気を流しましたから、少なくとも夜までは寝てます」
咲夜「そうですか…。お怒りになられている、と思ったら…根はいつもとお変わりありませんね」
カルゴ「恋人や娘に、本気で手を出すと?」
咲夜「平気な顔で武器を降らせていたので…」
カルゴ「それは、アイツらの強さを信用しているからですよ。あれくらいで死ぬ事はないってね」
咲夜「……やはり私は、まだ心からあなたを信用していた訳では無かったようです…申し訳ございませんでした」
乱戦の中、いつもやるように深々と頭を下げる。
その姿は、本気で反省している様で、俺の心に、なにか響くものがあった。
咲夜「ここからは私も本気でいかせて頂きます。そして、以前のような関係に…!」
決意を込めたような強い瞳で、ナイフを構える。
カルゴ「勝負です、咲夜さん!暗黒装備『純粋なる闇の帝王』!!」
闇を溢れ出させ、それを鎧型に構成。
言ってしまえば、『勇者の纏い』の色違いだが。
しかし装備しているものは、接近戦向けの爪。
なぜこれを選んだかと言うと、ナイフという接近戦向けの武器を使用する相手に合わせるためだ。
そして互いに地面を蹴って接近、すれ違いざまに爪を、咲夜さんはナイフを振るう。
ガキィンと金属音を立てて火花を散らし、着地。
俺のスピードについてくるとは、流石咲夜さん…やっぱすげぇよ、この人は。
カルゴ「時間、止めなくていいんですか?」
咲夜「どうせ効きませんしね」
カルゴ「それもそうです、ねっ!」
咲夜「はぁぁっ!!」
いつものように会話しながらも、俺たちは再び、ぶつかっていった。
霊夢「はぁっ…はぁっ……チッ、体力が…」
妖夢「はぁ…はぁ…もう、避けられない…」
その頃、紅白巫女と幽人剣士は、自由を奪う様なやりにくい弾幕を放つ、月の賢者と戦いを繰り広げていた。戦況は五分と五分、互いに一歩も引かない戦いだった。
永琳「そろそろ、私も疲れてきたわね…。わざと負けちゃおうかしら?」
霊夢「させないわよぉ、そんな事…!」
重くなってきた足を、自らの霊力で強化し、再び立ち上がる。
永琳「そう?…それにしてもあなた、前に異変を解決に来た時より腕落ちてるんじゃないかしら。この程度で息を切らすなんて」
霊夢「なんですってぇぇ…!?妖夢、この年増を全力で叩き潰すわよ!!」
妖夢「えっ…う、うん!」
霊夢「私を怒らせた事、夢の中で後悔する事ね!この一撃で、次こそキメてやるんだから!!」
永琳「それは楽しみね。秘薬『仙香玉兎』!!」
全方向にレーザーを発射、さらに大きな弾幕すらも織り交ぜてくる。どうやら永琳は、動きを封じる系のスペルを多用するらしい。
でも、体力的にも霊力的にも、そろそろ限界。
あまりにも、永琳に時間を食いすぎた。
霊夢「霊符『夢想封印』!!」
妖夢「六道剣『一念無量劫』!!」
霊夢の弾幕が永琳の弾幕、レーザーを打ち破り、そこから生まれた道に、妖夢が突撃する。
珍しく焦った永琳は、妖夢の素早い動きに対応が出来ず、そのまま打ち倒された。
永琳「っ…やる、じゃない…の……」
最後に無理矢理な笑顔を作り、地面に倒れた。
それを見て勝利を確認した霊夢は、ホッと息をついて、妖夢は楼観剣を鞘に収める。
ふと彼を見てみると、丁度咲夜を倒した所らしくスキマを閉じたところだった。相手が近くにいないことから、既に倒した後だと仮定した。
霊夢「エスカルゴー、永琳倒したわよー」
カルゴ「スゲ!」
すると、スキマを使ってそばに来る。
気絶した永琳を、ニヤけながら見下ろす。
妖夢「トドメは私が刺したのよ」
カルゴ「マジか!!」
霊夢「私の助けがあったからでしょ。ほらエスカルゴ、はやくスキマで落としちゃいなさいよ」
カルゴ「だな。…永琳は輝夜の部屋でいっかな。仲良く寝て下さいね、永琳せんせ♪」
永琳の下に、輝夜の上へ繋がるスキマを開くと、輝夜の「ぐはぁっ!」という声が聞こえてきたが恐らく気のせいだろう。
霊夢「じゃあ私は、少し休んで霊力回復させたらルーミアのとこ行くから」
妖夢「じゃあ私は…文さんのとこ行くね」
そう言って、霊夢は戦場から少し離れ、妖夢は、文の方へ駆けて行った。永琳を永遠亭へと送ったスキマを閉じて、改めて戦場を見渡す。
穹&霊愛vs巫月の戦いは巫月に軍杯が上がって、魔法使いたちと文の戦いは未だ続き、ルーミアと美鈴の戦いもまだ続いていた。
気絶した穹と霊愛をスキマで文の仕事場の布団に送り、巫月と向き合う。
巫月「エスカルゴ…勝負よ!もし私が勝ったら、また一緒にお菓子食べに出かけるのよ!」
フッ…相変わらずだな、巫月。
カルゴ「イイだろう、全力で来い!!」
巫月「言われなくてもっ!!」
今度は、長女と父親の戦いが勃発した。
今回の結果
自陣脱落者:穹、霊愛
敵陣脱落者:鈴仙、咲夜さん、永琳
6(5)vs5になりましたな。
エスカルゴ、妖夢、文、ルーミア、霊夢、(さとり)
巫月、魔理沙、パチュリー、美鈴、アリス
さて、最後には誰が残っているのか…。