美鈴を紅魔館へ送り返そうとしたその時。
バキィッという鈍い音が、戦場に響いた。
るみゃ「グッ……!」
カルゴ「ルーミア!?」
鈍い音の正体…それは、ルーミアが美鈴の蹴りを喰らった音だった。
るみゃ「美鈴、起きてた…!」
背筋をバネのように使ってひょいと起き上がり、スタッと華麗に着地する。
美鈴「危ないですねぇ…。まさか私を食べようとしていたとは」
拳法の構えを取り、こちらに睨みを効かせる。
構えもそうだが、一切の隙がない。
果たしてどう攻めたものか…。
るみゃ「チッ、許可なんて取ってないでさっさと食べてれば良かった…。まぁいいわ。もう一度、眠らせてあげ…るっ!!」
闇の弾幕を発射するルーミアだが、美鈴はその弾を、気で強化した拳で破壊していく。素早くも無駄が無いその動きには、見惚れてしまいそうだ。
そして美鈴は、ルーミアの発言に対して、訂正を述べる。
美鈴「もう一度も何も、気絶してたフリなんですけどね!いつ油断してくれるのかと思ってましたが…ずっと私を見下ろしてるから、冷や冷やモンでしたよ!まさか食べられそうになってたとは!」
るみゃ「なっ…起きてたの!?」
美鈴「武芸百般!『擬態』です!」
るみゃ「くっ…私としたことが…。(まずい、もうスペル1枚分のパワーすら残ってない…。妹紅に無駄遣いし過ぎたわね…)」
美鈴「おやおや、密度が薄くなってきましたね!そろそろ終わりにしましょうっ!」
ニヤリと笑うと、地を蹴ってルーミアに接近。
急に近くなったルーミアは美鈴に対応しきれず、美鈴の連撃をまともに食らってしまう。
美鈴「猛き紅魔の龍の力、思い知れッ!!あたたたたたたたたたたたたたたたた………」
吸血鬼の目を以てしても追い切れないほどの拳。
一撃一撃は鬼よりも遥かに劣るものの、連続性でそのパワーを補っている。ルーミアは、闇を出してそれを防備する間もなく、ただ殴られるままになっている。
美鈴「たたたたたたたたたた……ほわたァ!!」
一瞬の間を置き、強い一撃をルーミアに叩き込む美鈴。メリメリと拳が腹にめり込み、ルーミアは後方に数十m吹っ飛ばされた。
るみゃ「ぐはぁ……うっ、く…ぐぅぅ…」
腹を押さえ、苦痛に顔を歪める。
そんなルーミアを見下ろしながら美鈴が近づく。
美鈴「おや、まだ起きているとは。てっきりもう気絶してしまったかと」
と、ボキボキ指を鳴らす。
るみゃ「ええ…もう………負けたわ…ふふふ…」
最後に笑い、ドシャッと崩れ落ちた。
彼女の口から流れ出る赤い血が、美鈴の拳の強さを物語っていた。もし人間の頃にこれをまともに食らっていたとしたら…間違いなく即死だろう。あの時に上手く避けられて、良かったと思う。
カルゴ「…お疲れ様…、ルーミア…」
彼女の口元の血を指で拭い、スキマで仕事場へと送り返した。これで、こちらの陣営は俺、妖夢、文、霊夢。向こうは、パチュリー、美鈴、魔理沙の3人だ。
美鈴「…次は、エスカルゴさんが相手ですね」
カルゴ「ああ。ゼッテー負けねぇ…。ルーミアの仇討ちだぜ!」
指についた血をぺろりと舐める。
美鈴「私もです!…先程のあなたの“叫び”、心に響きました!全力で行きます!」
カルゴ「…ああ!」
美鈴「はぁッ!!」
後方に土を飛ばしながら、拳を構えて突撃してくる美鈴。やばい、速い。避ける間が無────。
美鈴「ほわちゃァっ!!」
カルゴ「ぐぉぇっ…」
メキメキと嫌な音が、俺の胴体から漏れる。
人間の時に食らったあの拳よりも遥かに速くて、強い。 受け身を取る間もなく飛ばされる。
恐らく、肋骨が数本逝った。
吸血鬼の強靭な肉体ですらこれほどのダメージを受けるのだ、流石と言わざるを得ない。
魔理沙「彗星『ブレイジングスター』!!」
妖夢「きゃああああっ!!」
突然の悲鳴。湧き上がる土煙。
声の主は高々と吹き飛ばされて、魔理沙の猛攻に耐え切れず、意識を失ってしまう。
カルゴ「妖夢っ───」
美鈴「余所見してる場合です、かぁっ!」
カルゴ「っ!!」
妖夢の元に駆け寄ろうとすると、美鈴はその隙を見逃さなかった。目を外した瞬間に、美鈴の足が俺の顔に伸びた。
カルゴ「ぐっ……!!」
横を向いていたために、足が鼻に直撃する。その衝撃で、鼻や首の骨がミシッと軋んだ。危うく意識が飛かけるが、舌を噛み切って耐える。
クッソ…やっぱ俺、格闘ダメだ…!
俺らしくダーティな手でやるか!
カルゴ「『影分身』!!」
美鈴は続けざまに向かってくるが、それを知りつつも残りの闇の力を全て込め、影分身を生成。
完成と同時に、影には平面化させ、美鈴の攻撃を避けさせた。その代わりに俺は、美鈴のパンチを受けることになってしまった。
カルゴ「ぐふぅっ……」
美鈴「おや、あの時の黒い妖怪さんはどこに…」
カルゴ「影、『同化』!!」
血を吐きながらも影分身に指示を飛ばし、平面化した影分身は美鈴の影に入り込ませ、本人の影と同化させた。対する美鈴は、俺への攻撃を忘れてキョトンとしている。
美鈴「影、とは…?」
同化させた。ここからが、影分身の本領発揮だ。
影分身をフル活用出来れば、誰にでも勝てる。
…多分。
カルゴ「『影縫い』!!」
その瞬間、美鈴の表情が強ばる。
自分の身体が操られているからだ。
スクワットしたり、手を合わせてみたり、チャイナドレスを捲ってみたりと好き放題する。
美鈴「ちょ、身体が勝手に!?何ですかこれ!」
カルゴ「『影縫い』。影分身を美鈴の影と同化、操作している。影は本人から離れられないから、影さえイジれば本人もイジれるってことだ。同化させないと出来ない技術だがね」
美鈴「あわわわわ、両手が勝手に…!」
影分身に操られた美鈴は、両手を上げる。
構えが取れないせいで、胴体がガラ空きだ。
これでは拳を放ち放題である。
カルゴ「安心しな、一撃で終わらせてやるッ!!『雷神拳』!!」
美鈴「ひぇぇぇぇ……」
カルゴ「ルーミアのぉぉ…カタキだァァァ!!」
渾身の力を込めたパンチは、衝撃波で影分身をも破壊しながら、美鈴の肢体を高々と舞い上がらせて、この戦いに終わりを告げた。
残る敵は、魔理沙とパチュリーだけ────。
今回の結果
自陣脱落者:ルーミア
敵陣脱落者:妖夢、美鈴
残り(自陣):エスカルゴ、霊夢、文
残り(敵陣):パチュリー、魔理沙