そこから先は簡単だった。
残り2人となった魔法使い達を、俺と文で屠り、薙ぎ倒し、圧倒的勝利を収めた。
細かく言うなら、喘息の発作が現れたパチュリーを庇いながら戦っていた魔理沙に、俺と文の複合スペルをお見舞いし、意識を刈り取った。
発作が出ているとわかっていたから、パチュリーには手を出していない。呪文の詠唱すらも、彼女には重荷だったのだ。
回復待ちだった霊夢は、これでは不完全燃焼だと頬を膨らませていたが、その頬をいじくり回した事で、何とか落ち着いてくれた。
気絶した魔理沙を魔理沙宅へ戻し、パチュリーの事も紅魔館、もとい図書館直通のスキマを作り、帰させた。
元々、復讐がメインで始めたこの戦い。
戦っていくうちに、その目的は少しずつ変質していき、いつの間にか、ただ純粋に、弾幕ごっこを楽しんでいた。
やはり最終的には、そこに行きつくらしい。
俺達らしいな、と思いながら、俺と文、それから霊夢は、文の仕事場へと戻っていった。
今回戦った皆には、「戦ってくれてありがとう」という旨を伝えるために、分身を飛ばした。
なんだかんだ言いつつも、最終的にはお互いに、本気の勝負を楽しんでいたからだ。
(ルーミアの話を聞く限りでは、少なくとも妹紅は楽しんでなさそうだが。)
更に、俺はこれからどうするのかという事だが、もうしばらく文の仕事場と博麗神社で過ごす事に決めた。それは、この戦いに勝った景品、言わばご褒美ということらしい。
文曰く、「私達が勝ったんですから、もう少しはエスカルゴさんを好きにして良いですよねぇ?」との事だ。もちろんこれには、霊夢も大賛成だ。「さすが文ね、わかってるぅ♪」と、若干キャラが崩壊していた。
俺の意見はガン無視という、いつも通りの流れ。
だがまぁ、しばらくはそれでもいいと思う。
仕事場と神社の二箇所という事で、6日間つまり3日ずつ、1日置きに過ごすことになった。
それ以降は、以前までと同じく紅魔館や永遠亭も混ぜての忙しい生活に戻る。
当然その旨も、彼女らに伝えるよう言ってある。
「逆らったら退治してやる」の脅しと共に。
その晩
俺たちだけで小さい宴会を開いたその夜。非常に明るい空気が、彼女の仕事場を包んでいた。
酔っ払った文と霊夢の相手は、本当に疲れる。
さとりの方は絡まれる俺を見てニヤけているし、ルーミアは、あわよくば混ざろうとしてきた。
まともなのは霊愛と穹だけらしい。
その2人も、今はもうぐっすり眠っている。
妖夢は、幽々子さんの夕飯とかの準備で、早々に冥界へ帰った。もちろん俺のスキマで。それと、明日買い物をするとかで、荷物持ちを頼まれた。
そして、片付けも終わり、寝る準備が整った。
るみゃ「はぁ〜ぁ、疲れた。ねぇ霊夢、そろそろ封印してもいいのよ?もう霊力戻ったでしょ?」
霊夢「…アンタだけよ?自分から封印してなんて言うやつは」
るみゃ「この前も言ったけど、あっちの姿の方が気に入ってるのよ。ほら、このリボンに封印の念込めて、結んでちょうだい。それで終わるから」
そう言って、ポケットから赤地に白い線のある、元々つけていたリボンを取り出した。
霊夢「…良いのね?」
リボンを受け取り、最終確認をする。
しかしルーミアの答えは決まっている。
るみゃ「何度も言わせないで。食べるわよ?」
霊夢「はいはい、わかったわ」
さとり(『子供の姿の方が自然に甘えられるし』…ですか。やっぱりこの人も、エスカルゴさんに惹かれる者の1人…。まぁこの人の場合は、恋愛としてではなく食材として、大好きな様ですが。とはいえ、ほんの少しは恋愛にも興味がおありのようで…ふふふっ、面白そうですね♪)
それから、霊夢はリボンに何やら念を込め始め、それをルーミアの髪に結びつけた。
霊夢「─────…」
るみゃ「っ…!」
少しだけ苦しそうに顔を歪めたが、眩いばかりの光に包まれ、霊夢共々姿が見えなくなった。次の瞬間には、元の幼女のルーミアがそこにいた。
カルゴ「よっ、ルーミア」
るみゃ「…わはー♪」
満面の笑みで、口をパカッと開けるルーミアは、本当に純粋な子供に見える。しかし幼女⇔大人と変わる際、記憶は失わないそう。
それならば、幼女のルーミアが封印の事を知っていたのもうなずける。だから、今の「わはー」はわざとという事になる。
…可愛いから、敢えて追求はしないが。
カルゴ「今夜はどこで寝る?それかもう帰る?」
るみゃ「んー……ねぇ文。最後に、今日もここでお泊まりしていい?」
文「どうぞどうぞ!」
るみゃ「ありがとっ!それじゃあ、今日は布団で寝るね。おやすみなさ〜い」
さっさと布団に入りスヤスヤと眠ってしまった。
様々な者と戦ったので、彼女も疲れたのだろう。
キャラが変わっていることについては、俺たちもスルーしている。ツッコンだら負けだ。
文「さて。コチラはコチラで、話し合いですね」
カルゴ「何を話し合うんだ?」
霊夢「決まってるでしょ。私と文、どっちがあんたと一緒に寝るかって話し合いよ。それまでは、あんたも寝ちゃダメね」
カルゴ「ええええ…」
相変わらず横暴である。
そこで俺は、無謀にも1つの提案をする。
カルゴ「昨日みたいに3人で寝るのは…」
2人「イ・ヤ(・で・す)!」
カルゴ「なんでさ…」
文「霊夢さんの足がホンットに邪魔なんですよ。エスカルゴさんを跨いで、私の方に伸びてくるんです。まぁ、片時もエスカルゴさんから離れたくないというキモチだけは認めてあげますが」
身体が重いと思ったら…お前が犯人か!
霊夢「そーゆー文だって!あんたね、寝言が凄くうっさいのよ!なんで寝てる時まで『あやや〜』言ってんのよ、こっちはそれが気になって全ッ然寝れないんだから!足だってわざとだし!」
文「わざと!?足癖の悪い巫女ですねぇ…」
霊夢「うっさいから黙らせてやったのよ!実際、足乗せたら黙ったし!」
と、俺を挟んで言い合いを始めた2人。
その声を、遠くなりつつある意識の中で聞く。
数時間かけてようやく回復させた電力を、まさかこんなところで使う羽目になるとは、夢にも思わなかった。
カルゴ「『分身』」
言い合いになっている2人をよそ目に、こっそり分身を作成して俺がいた位置に立たせる。俺は、身を低くして布団に潜り込む。言い合いに夢中になってくれているので助かった。
はぁ…これでやっと休める…。
とりあえず明日はここ、その次は神社、と交互に過ごすのはイイけど…今は静かにしてほしい…。
2人に聞こえないような、小さな溜め息をつく。
すると、俺の右腕に、ムニュッと暖かい感触が。
カルゴ「ん…?」
るみゃ「えへへ…♪」
カルゴ「────ッ!?」
驚きのあまり、思わず叫び声を出してしまいそうになるものの、開かれる口を手で塞いだことで、難を逃れた。そして潜り込んできたルーミアに、布団の中で小声で話しかける。
カルゴ「おまっ、なんでここに…ていうかさっき寝てなかったか!?」
るみゃ「フリだよフリ。ねっ、私と一緒に寝よ?あの2人は放っておいてさ♪」
腕を絡ませ、スリスリと頬ずりする。
子供っぽいこんな行為に、俺の理性はガリガリと脆く削り取られていき、彼女の申し出を許可してしまった。
るみゃ「ありがと♪」
カルゴ「…イイから、さっさと寝るぞ…///」
るみゃ「あれ?ちょっと顔赤い?」
カルゴ「うっせ、ルーミアがくっ付いてくるから暑いんだよっ!添い寝してやっから、俺もお前もさっさと寝る、いいな!」
るみゃ「はーい」
耳元で聞く、幼女の囁き。
まるで添い寝ボイスのように、脳が痺れるような感覚に陥っていく。それはさながら、催眠の術をかけられたかのように、頭がボーッとしてくる。
体感時間、およそ5分。
疲れていても、女2人の言い合いの中では、流石の俺も、眠れないでいた。イライラしかけてきたその時、ルーミアが話しかけてきた。
るみゃ「……ねぇ、まだ起きてる?」
カルゴ「起きてる」
るみゃ「良かったぁ…。明日、エスカルゴのこと食べさせて。いや変な意味じゃなくて、ご飯って意味でね」
カルゴ「しゃーないな…。腕で良いよな?」
るみゃ「うん、今私が抱えてる右腕食べたい!」
変わらず、ポソポソッと耳元で囁く。そのたびに心臓が高鳴るが、落ち着けと己に言い聞かせる。
普段一緒に寝ない女子と寝るのは、慣れていないせいでどうしても緊張してしまう。
カルゴ「はいはい。わかったから早く寝ような。今日はもう疲れた…」
るみゃ「…ねぇ」
カルゴ「今度はなんだ…」
るみゃ「こうして一緒に寝るの、久しぶりだね」
カルゴ「……」
前に一緒に寝たことがあったか?と一瞬だけ混乱したが、すぐに思い出すことが出来た。
確か、およそ8、9年ほど前に、鈴仙とルーミアと俺の3人で寝たことがあった。
その後は、ルーミアと一緒に鈴仙を永遠亭まで送り届けて、紅魔館前でルーミアと鬼ごっこをして解散したと記憶している。
何かの宴会で集まって、映姫様の説教を受けた時の事だったはずだ。さとりともこの時に初めて、挨拶だけしたんだったな。
カルゴ「懐かしいな」
るみゃ「今の間は何よ」
少し不機嫌になり、腕をもっと強く抱える。
手の甲が、服越しとはいえルーミアの秘部へ触れそうになる。色々とまずいので、心を無にしようと深呼吸する。
カルゴ「いや…なにぶん昔の事だからな、記憶の片隅にいってたんだ。大丈夫、覚えてるよ」
るみゃ「じゃあ、その時は私とエスカルゴと誰で寝てたか言えるよね?」
カルゴ「鈴仙」
るみゃ「不正解」
カルゴ「えっ。誰だっけ?」
るみゃ「兎肉!」
これには苦笑いしか出ない。
彼女らしいと言えば彼女らしいのだが。
るみゃ「エスカルゴは不正解だから、腕は今食べちゃいまーす♪」
言うなり、突然牙を突き立てるルーミア。
痛みに我慢することは適わず、呻き声が漏れた。
バリバリと骨を砕く音、ブチブチと筋繊維を切る音までも聞こえてくる。布団には、赤黒い血液が広がっていく。声が漏れて、2人に気付かれるがそんな事はお構い無しに、麻酔をかけた。
俺の麻酔は超即効性、痛みは瞬時に消えた。
そして、ルーミアが幸せそうな顔で俺の腕を食べていると、バッと布団が捲られた。
そこには、紅白巫女と新聞記者がいた。
霊夢「なんか変な音が…キャアアアッ!!何やってんのよあんたら!!」
カルゴ「腕食われてる」
るみゃ「腕食べてる」
霊夢の問いに真顔で答える俺たち。
文「布団がぁぁああああやややややややや!!」
赤くて大きなシミが広がった布団を見て文は頭を抱え、叫ぶ。
霊夢「そーじゃなくて、なんでルーミアがそこに居るのよっ!まさかあんた、眠ってたルーミアを連れ込んだのね!?」
カルゴ「ごごご、誤解だよ!?ルーミアが潜って来たんだよ!?」
霊夢「どーなのよルーミア!?」
るみゃ「んー?エスカルゴが私の布団に潜ってきたから食べちゃった」
腕をクチャクチャと食べながら嘘をつく。
全く、恩を仇で返すとはこの事だ。
カルゴ「オイィィィイイ!?」
霊夢「お前ェェェェェェ!!」
霊夢は俺に馬乗りになって襟首を掴み、ガクガクと揺さぶる。ルーミアはその間も腕を食べ続け、食べ終わって満腹になると、血塗れの布団で眠りについた。
それから、怒り狂った霊夢と文からはこっぴどく叱られ、結局、俺が悪いということになった。
布団の洗濯をやらされて、文たちに引っ張られて布団に入った頃にはもう太陽が登ってきていた。
今回で3章終了です。
次回は…って、もう作中で予告したか。