路地からスキマを繋いだ俺は、白玉楼の門前まで一息に移動した。急に気温が変わり、汗に濡れた身体が一気に冷やされて、汗が引いていった。
辺りには無数の幽霊たちがいる。
近くを通ると、とても冷たくて気持ちがいい。
妖夢「ただ今戻りました」
カルゴ「お邪魔しま……ッ!?」
例によって、まずは幽々子さんに挨拶に行く。
しかしそこには、あまりの暑さに服をはだけて、横になっている幽々子さんの姿があった。
帽子も脱ぎ、中途半端に胸元を広げて、首を下に向けた扇風機の風を一心に浴びている。脱ぎ掛けというのはとんでもない色気を感じさせられる。ましてや、幽々子さんはかなり胸が大きい。
というか、スカート(?)の中が見えそうである。
はっきり言って、目のやり場に困る。
幽々子「あら、いらっしゃ〜い…。ゆっくりしていってね〜…」
横になりながら、まったりとした口調であいさつしてくれる幽々子さん。今日は普段より暑いし、グデーッとなるのも仕方ない。
カルゴ「は、はいっ!」
ヤバいヤバい、落ち着け俺!いくら幽々子さんがエロくても、ここで興奮してはオシマイだぞ…!
深呼吸しなきゃ…ヒッヒッフー、ヒッヒッフー…って、それはラマーズ法!
妖夢「失礼します。あっち行こ」
カルゴ「お、おう」
またまた妖夢に手を引かれ、買ったものを冷蔵庫に入れるためにキッチンに来た。ホワイトデーの時にはよくお世話になっている。
妖夢「ふぅ。とりあえず、こんなものね。何味のアイス食べる?」
カルゴ「ソーダかな」
妖夢「じゃあ私も。外見ながら食べよ?」
カルゴ「イイけど、日陰がいいな」
妖夢「もちろん」
俺はソーダ味のアイスとラムネを1本ずつ、妖夢はソーダ味のアイス1本を持って、この前も来た縁側にやってきた。この前は無かったはずの風鈴が、チリンチリンと涼しげな音を奏でている。
妖夢「やっぱり涼しいね、ここ」
カルゴ「そうだね」
キュポン、と蓋を開け、ラムネに口をつける。
少し温く、冷蔵庫で冷やせばよかったな、と今更ながらに後悔する。よくよく見てみれば、アイスも溶けかけている。
妖夢「早く食べなきゃ溶けちゃうね」
カルゴ「そうだね。スキマで来たから大丈夫だと思ったんだが…。ラムネも温くなってやがる」
妖夢「あちゃ〜…」
溶けかけたアイスは、シャリシャリとしたシャーベット状になっていて、口に入れると同時に液体になってしまう。そのおかげで、俺も妖夢もすぐ食べ終わってしまった。
正直言って、食べた気がしない。
妖夢「一口飲ませて」
一言そう言って、俺の手元からラムネを奪って、グイッと一口煽る。やはり、あまり美味しくないのか、眉間に深めのシワを作る。
カルゴ「あのー…間接キスなんだけど…」
妖夢「別にそんなの気にしてないし。エスカルゴは気にするの?」
カルゴ「気にする…かな…」
妖夢「とか言って、霊夢なら大丈夫なんでしょ?私じゃダメなの…?」
瞳をウルウルとさせ、上目遣いになる妖夢。彼女が言っている意味がよく分からず、内心焦る。
カルゴ「別に、ダメって事は無いけどさ…。緊張するっつーか…照れるかな」
妖夢「照れる?ふふっ、案外カワイイね」
カルゴ「んなっ…」
女子の言う「カワイイ」は相変わらず分からん。
カワイイよりもカッコイイが嬉しいんだがな…。
白い雲を見つめ、大きな溜め息をついた。
すると、妖夢が俺の肩をトントンと叩く。
カルゴ「ん?」
妖夢「ねぇ、私の部屋に来ない?前に、早苗さんから外の遊び道具をいくつかもらったの。それで遊ばない?」
カルゴ「…おう、やろう」
早苗から貰った外のオモチャ?
ふーん…早苗と妖夢って、物をあげたりする程度の交流あったんだ。宴会でも、この2人の絡みはほぼ見ないから、会ったら挨拶する程度の関係かと思ってたぞ。
妖夢に手を引かれて彼女の部屋に行く。こうして彼女の部屋に行くのは今が初めてだ。ここ数年で交流がより深まり、心を許してくれた証だろう。
妖夢「ここだよ」
カルゴ「ほほー…」
以前さとりから「女性が男性を部屋に入れるのは少なからず好意があるという事なので、たまには自分から襲ってみては如何ですか?きっと許してもらえるでしょう」…と言われたが、斬られたくないからやめておこう。
俺は妖夢の事が好きだ。
しかしそれは、恋愛的にでは無く友達としてだ。
今妖夢が俺を部屋に誘ってくれたのも、友達を家に招くような感覚なのだろう。
もしかしたら妖夢は、俺に対して、友達としての好意を抱いてくれているのかもしれない。
だとしたら、嬉しい限りだ。
無いと思うが、もしも妖夢から告白されたら……きっと、喜んで受け入れるだろう。
もう、迷わない。なるようになるさ。
なにせ、フラン以降に付き合い始めた女子は皆、俺に彼女がいるのをわかっていて告白してきたのだから。…とはいえ、妖夢が俺に対して恋愛感情を抱いている何て事は無いだろう。余計なことは考えないのが吉だ。
カルゴ「“和”って感じだな」
部屋の入口から中を見渡し、感心の溜め息を漏らす。どの部屋もそうだが、畳のいい匂いがする。
妖夢「そりゃー和造りだもん。さ、入って」
妖夢の部屋は、早苗の部屋のように、和風建築の中に女子らしい部屋があるというワケではなく、素朴で簡素な造りの、ごく普通の和室だった。
ちなみに鈴仙の部屋は、和造りだが女の子らしいという、ハイブリッド型だ。誰の部屋も、とても個性的だ。霊夢の場合は、神社そのものが彼女の部屋のようなものだろう。魔理沙はお部屋というより汚部屋だ。
カルゴ「失礼しまーす…」
敷居を踏まぬよう、用心して部屋に入る。
小さい和室。座布団や、マイ急須?などがある。座布団にも急須にも桜の花びらの模様が象られていて、とても可愛らしい。
妖夢「あれ、どこやったっけ…あの紙のやつ…」
俺が部屋の中をキョロキョロしている一方で、妖夢は押し入れや引き出しなどを探し回っている。
紙のやつ…というのは、もしかしたらトランプの事だろうか。探すのを手伝いたいが、女子の部屋をイジるのは気が引ける。聞いてみよう。
カルゴ「探すの手伝うか?」
妖夢「お願い!」
意外にも、二つ返事でOKしてくれた。それからテーブルの下や戸棚などを探し始めたが、一向に見つからない。
しばらく2人で探し続け、俺はあるものを発見。積み上げられた座布団の間に、紙のような薄い物が挟まっていたのだ。
カルゴ「おっ、これじゃね?」
妖夢「えっ?…あぁっ、ダメ!!」
妖夢が止めるが、時すでに遅し。
俺は既にその物体を取り出していた。それを見た俺は、思わず叫びそうになるほど驚いたので、慌てて口を塞ぐ。
妖夢「あぁあ…見られた…」
ヘナヘナと座り込む妖夢。俺が見つけた紙媒体…それは、外の世界ではありふれている、18禁の本だった。表紙を見るに、月刊雑誌の様だが、お色気要素が強い。
カルゴ「驚いた…まさか妖夢がこんなの持ってたとは。…香霖堂で買ったの?」
俺の問いに、気まずそうに目を逸らす。
風雨に晒されたかの様に、紙の端々がボロボロになっていて、かなり湿気ていることから、霖之助が拾ってきてそれを妖夢が購入したと推理した。
おそらく当たっているのだろう。
そもそも外の世界の本は大図書館と香霖堂くらいしか無かったはずだ。特に、こんなジャンルは。
カルゴ「こーゆーのに興味あるんだ?」
妖夢「……///」
顔を赤くして黙り込む。
それは、興味があることを暗示していた。
カルゴ「ふーん…」
縮こまる妖夢を見、俺はニヤリとほくそ笑んだ。
次回、もしかしたら…。
確定じゃありませんが、多分アレが入るかも。