神々の説教を受け、再度加護を賜り、2人と身体を重ねた俺は、お昼になろうとする頃に博麗神社に到着した。やはり、性行為の後には力が入らずスキマは作れないらしい。
カルゴ「ういっす。来たぜ霊夢」
例によって、玄関からではなく縁側から入る。
最初は、玄関から入らなくていいのかと困惑していたが、もうすっかり慣れたものだ。
霊夢「あら、もう来たの?お昼食べる?」
台所から霊夢の声が飛んでくる。
霊愛は、俺の目の前でグデッと伸びている。
カルゴ「食べる。準備手伝うよ」
霊夢「じゃ、残りの素麺茹でて」
手伝うと言った直後、満面の笑みで霊夢が登場。
今日のお昼は素麺らしい。夏らしくて良い。
カルゴ「オッケ。残りの準備は俺やっとくから、ゆっくりしてていいよ」
霊夢「言われなくても〜」
霊愛と共に寝転がる。この母娘はホントに、予想以上にそっくりになった。母親と長い時間を過ごさせると、母親似になるらしい。そりゃそうか。
俺は台所へ向かい、暑い中で素麺を茹で、準備を終わらせた。麺つゆや薬味も忘れていない。
やはり、素麺の薬味にはネギが一番だと思う。
冷たい麺つゆに漬けられたネギがシャキシャキと音を立てて崩れるのは、食べていても音を聞いていても小気味よい。
カルゴ「お待たせ」
霊夢「相変わらず手際が良いのね」
ノソノソと起き上がり、席に着く母娘。
そのモーションも、双子の様にピッタリ同じだ。
カルゴ「麺を茹でながらネギ切っただけさ。これくらいの並行作業、誰だって出来る」
霊夢「私は出来ないわ。麺が柔らかくなりすぎないか心配だもの」
確かにそれはあるかも…。
カルゴ「そっか。とりあえず、食べよーぜ」
霊夢「そうね。いただきます」
父娘「いただきます」
霊夢と霊愛は、妖夢について特に何も聞いて来なかった。それについて何とも思っていないのか、俺から直接聞きたいのか…恐らく、後者だろう。
カルゴ「霊夢、ちょっといいかな」
霊夢「…?」
皿洗いを終え、境内の掃除をしている霊夢を屋根の上に呼び、話をすることにした。
妖夢について…それと、もう1つ。
霊夢「何よ」
俺達は並んで、屋根に座る。
2人きりになりたい時はここに来るのがいい。
カルゴ「新聞…見た?」
霊夢「見たわ。…どこまでいったの?まさかとは思うけど、ヤッてないわよね?」
カルゴ「…ヤッた」
霊夢「はぁ?なんでそんなすぐに?」
当然の疑問か…。
魔が差してキスしてそこから…とは言えない。
とは言え、妖夢のせいには出来ない。
霊夢「まさか、ムラムラしてたからとか言わないでしょうね?」
霊夢の勘は健在である。
一発で当てられた俺は、ピクリと肩を震わせ反応してしまう。隠し事はやはり苦手だ…。
カルゴ「…そのまさか…です…」
霊夢「はぁ…信じらんない。それで女襲うとか」
返す言葉も無い。霊夢の言うことはもっともだ。
もし過去に戻れたら…ただ普通に遊んで、いつの日か妖夢からキスされて彼女の思いに気付いて…という、健全な付き合いがしたい。
カルゴ「ごめんなさい…」
目を見て謝るが、次に霊夢から出た言葉は、またもや俺を驚かせるものだった。
霊夢「ムラムラしてるんなら、私にぶつけなさいよね」
カルゴ「え…?」
霊夢「『え?』って…。私はあんたの女よ?彼のお願い聞くくらい造作もないわ。ましてや、もう子供まで作ってるんだし…ね」
そう言って、ニッと笑ってみせる霊夢。
いたずらっぽく見えるが、非常に可愛らしい。
カルゴ「…ありがとう、霊夢。あと…」
霊夢「早速シたい…って?」
カルゴ「ううん、違うんだ。それとは別件でさ、お願いがあるって言うか…」
霊夢「?」
あまり霊夢にお願いをしない俺だが、こればかりは仕方ない。そして、霊夢に「もう一度、霊力の修行をつけてくれ」とお願いした。
複数の神と交信出来た事で、霊力がある事も証明出来たのだ、という事も含め、全て話した。しかし、話し終えた時の霊夢の表情は、非常に暗いものだった。
霊夢「…霊力、鍛え直しなのね…」
カルゴ「そうみたいなんだ…。今の俺は、剣無しでは結界1つ作れやしない…」
霊夢「結構頑張ったのにね」
いつも修行に付き合ってくれた霊夢は、呆れたように苦笑いする。世話を焼かせるなとでも考えているのだろうか…。
カルゴ「いや、ダメなら良いんだ。俺の事だし、俺が解決するのが筋ってモンだし…。霊夢が俺を手伝っても、霊夢にはメリットなんて無いし…」
霊夢「そう後ろ向きにならないで。それに、ダメなんて言ってないわ。損得勘定で考えてる訳じゃない…とも言えないけど…」
カルゴ「やっぱ…手伝っても得しないじゃん…。1人でやるよ。無理言って悪かったな」
そう言って屋根から飛び立とうとするが、霊夢はそんな俺の手を掴んだ。
霊夢「あんたの修行の手伝いは、私にとって得になるわ。あんたは強くなれるし、Win-Winよ」
カルゴ「一体どんな得があるって言うんだよ?」
変わらず屋根に座る霊夢を見下ろしながら、彼女にとっての得を尋ねてみる。すると霊夢は手を離し、モジモジと指を絡める。
霊夢「……その…あんたと、お揃いじゃない…。霊力…がさ。それに、霊力が無きゃ複合スペルが使えなくなるじゃない…。そんなのイヤよ。折角お揃いが増えたのにさ…。取り戻せるものなら、取り戻したいのよ」
カルゴ「霊夢…」
霊夢「だから、手伝わせて」
お揃いを取り戻すため、か。
やばい、めっちゃ可愛いぞ…。
霊夢ってこんなに女の子っぽかったっけか?
カルゴ「ありがとう、霊夢…。手伝ってくれ」
霊夢「もちろんよ。……でも、何年分もの修行を一気に取り戻すのは無理ね。地道にやっていきましょう。…あの時みたいに、ね♪」
カルゴ「ああ」
パチンとウインクをし、隣に座れと合図してくるので、そこに腰を下ろした。日光がまともに当たって頭が熱くなり、日陰に行きたくなるが、景色を眺める霊夢を見ると、そうも言えなくなってしまう。
霊夢「あっ、そうだ。1つだけ方法あったわ」
カルゴ「え?」
霊夢「ちょっと待って。アイツ呼ぶから」
カルゴ「アイツ…?」
目を閉じ、何か念じ始めた霊夢。
するとすぐに、ソイツは現れた。
紫「ちょっと霊夢!いたずらに結界を緩めないでちょうだい!!」
突然現れた紫さんは、閉じた扇子を手に打ち付けながら怒りを露わにする。
霊夢「こうでもしなきゃ、私の呼び掛けには全く答えないでしょーに」
なるほど、霊夢の考えがようやく読めた。
つまりこの前のように、スキマ空間に入って修行しようというわけだ。
紫「だったら、『結界緩めるわよ』とか、脅せばいいじゃない!実行するバカがどこにいるの!」
霊夢「嫌よめんどくさい。てことで、スキマ空間貸してくれる?2人で修行したいから」
紫「なんでそんな投げやりなのよ…。ていうか、アレすごく疲れるからやりたくないんだけど」
霊夢「はぁ…。エスカルゴ、何か言ってやってよこの年増スキマ妖怪に」
紫「まぁ、酷い言い草」
えぇ…なんと言えばいいのやら…。
何か紫さんを頷かせる方法は無いかな?
カルゴ「…先日、10年分修行させてくれるって言ってましたよね?」
紫「言ったわね」
カルゴ「しかしあの時俺は、8年半で出てきました」
紫「Σ(=ω=;)ギクッ」
カルゴ「残り1年半、お願いします」
霊夢「そっか、その手があったわね」
紫「チッ……これも、貸し1つだかr」
霊夢「貸し作らせないわよ?これは前回の続き、貸しなら前回作ったもの。今回は無償でお願い」
紫「…しょうがないわねぇ…。1年半だからね」
溜め息をつき、屋根の上にスキマを開く。
中に見える景色は、目玉やら何やらが蠢く、居心地の悪そうな景色だ。しかし、背に腹は代えられない。
霊夢「行きましょ」
カルゴ「おう」
霊夢に手を引かれた俺は、スキマに飛び込んだ。
これからの修行は、今までよりキツいものになりそうだ、と俺の鈍い勘が告げている。
それを感じてもなお、霊夢と一緒ならそれを乗り越えられるだろうと、俺は思った。