霊夢「ほらほら、もっといくわよ!歯ァ食いしばりなさい!!」
カルゴ「はい!!」
スキマに入って数分。
霊夢は相変わらず、スパルタだ。
俺の修行法は少し変わっている。霊夢の霊力弾を敢えてこの身で受け止め、己の中にある力と同調させ、呼び覚ます。呼び覚ましたら、妖力と切り替えるよう集中する。その間も、霊力弾を受け続ける。霊夢ではなく早苗なら、痛みが少ないように手加減してくれるだろうが、さすがそこは霊夢。
普段使うような、痛みのある弾幕だ。
怪我してもすぐに治るだろうという、ある意味で信頼の表れなのだろうか…。
カルゴ「はぁっ…はぁっ……出来た…!」
半月ほど経過し、霊力への遷移が可能になった。
それでも、霊力は以前よりもまだまだ足りない。
霊夢「結界作ってみなさい」
カルゴ「霊符『二重結界』!」
霊夢と俺の間に二重の結界を作る。霊夢はそれをまじまじと眺め、触り、お祓い棒でつつく。
そして────…。
霊夢「フンッ!」
カルゴ「!?」
霊夢が掛け声と共に結界を殴ると、結界は事も無げに破壊されてしまった。かなり脆いようだ。
霊夢「前よりも純粋な霊力を感じたわ。なんか、霊愛の霊力に近い気がする。…なんでだろ?」
カルゴ「さぁ…」
霊夢「でもこれじゃ、1歳の霊愛よりも弱いわ。早く続きやるわよ。時間は有限なんだから」
カルゴ「うっす」
1歳ってのは大袈裟だが、そんだけ今の俺は弱いってことだな。クソッ、絶対元の力取り戻すぞ。
さらに半月後。
霊力弾を発射できるようになるまで力が増した。
密度はまだ薄く、夢想封印は到底できない。
霊夢「霊符『夢想妙珠』!」
霊夢がスペルカードを発動。普通の霊力弾よりも高密度で七色の弾幕が、俺を襲う。
それを避け、殴り、霊力弾で相殺する。全ての弾の対処を終えた俺を見て、霊夢が口を開く。
霊夢「これくらいなら出来るんじゃない?」
カルゴ「え…まだ出来ないよ、密度薄いし…」
霊夢「これは夢想封印の下位互換だし、薄くてもいいのよ。大丈夫。今のあなたなら、これくらいすぐに出来るわ。私はそう信じてる」
カルゴ「…わかった、やってみる」
信じてると言われては、やらずには居られない。
信頼に答えるために、俺は集中する。
カルゴ「雷極『夢想妙珠・迅雷』!」
白と黄色の二色の弾幕が発射された。
霊夢の言う通り、俺の力は夢想妙珠一発分ほどに高まっていた。自分で分からないのに、どうして霊夢にはわかったのだろうか…。
霊夢「ね?出来たでしょ?」
カルゴ「おうっ!やったぜ!」
霊夢「でも、私と力を合わせるにはまだまだね。ほら、次よ次っ!」
カルゴ「はい!」
1年後。
霊夢との複合スペルを復習。うまく力を合わせることに成功した。霊力もかなり増えた。
大体は、霊愛≦早苗<俺<霊夢という並びだ。
だが、強さで言えば、霊夢にはまだ届かない。
ここで、ようやく全盛期の力量に届いたが、まだスキマからは出ず、修行を続けることにした。
残り半年。時間はいくらあっても足りやしない。
紫「2人共。1年半経ったわ、出てらっしゃい」
時間切れを告げるために、紫さんがスキマ空間を開けた。俺はそのまま出ようとするが、霊夢が、1つの提案をする。
霊夢「紫。腕試しに付き合ってくれない?」
紫「私が?…どうして?」
霊夢「雷や他の力もそうだけど、コイツ、前より強くなってるのよ。腕試しには紫ほどの大妖怪が良いかなぁって思うんだけど…どう?付き合ってくれない?」
紫さんを大妖怪と褒めた上で、変わらず腕試しを申し込む。俺と紫さんが戦っているさまを見たいらしい。しばらく霊夢の目を見つめて考え込む紫さんだったが、フッと口元に笑みを浮かべ、口を開いた。
紫「ふーん…良いわよ。でも、霊夢とエスカルゴの2人でかかってらっしゃい。それで、ようやく互角になるでしょう」
霊夢「後悔しても知らないわよ!やりましょう、エスカルゴ!」
カルゴ「お、おう!」
開いていたスキマを閉じる紫さん。
閉ざされたスキマ空間には、再び闇が戻る。
紫さんは普段愛用している傘を構え、俺と霊夢も身構える。俺はもう霊力に切り替えてある。いつでも戦闘を開始できる状態だ。
霊夢「いくわよ紫っ!夢符『封魔陣』!」
先陣を切ったのは霊夢。
蛇のように連なった御札を何列も発射し、紫さんの動きを制限する。あまり大きく動けない中で、さらに追い討ちの弾幕も発射する。
それを器用に潜り抜けていく紫さんではあるが、暑さのためか、あまり機敏には動けないらしい。
霊夢「もう決めなさい、エスカルゴ!」
カルゴ「よし!雷極『夢想妙珠・迅雷』!!」
霊夢「バカ、それじゃないでしょ!」
夢想封印ではなく夢想妙珠を使った俺に、霊夢は声を荒らげる。
カルゴ「紫さんだって疲れてるっぽいじゃんか!これで決めてやらァ!!」
紫「……」ニィッ
すると紫さんは、広げた傘を前面に出し、弾幕を掻き消し始める。幽香さんの傘と同じく、弾幕も受け止められるとはイミワカラン。
紫「…スペルカード発動」
霊夢「ッ!?来るわよ!」
カルゴ「お、おう!」
クソッ、決められなかった!!
紫「結界『光と闇の網目』」
名前の通り、網目のような光を出す。
青と赤の大量のレーザーでこちらの動きを制限し大きな弾幕と小さな弾幕までも発射してくる。
動ける範囲が狭いだけに、避けるのは難しい。
しかも、レーザーの発射源が眩しい。
何をどうしたらこんなに眩しくなるのだろうか。
霊夢「ああ、もう!エスカルゴが一発でキメないからよ!!長引いちゃったじゃない!」
カルゴ「ご、ごめん!」
申し訳ない…!
素直に大技使っておけばこんな事には…!
紫「あらあら、仲間割れ?」
霊夢「そんな訳ないでしょ!」
紫「魍魎『二重黒死蝶』」
幽々子さんの様に、蝶をイメージしたような弾幕が飛んでくる。しかし、それよりも格段にいやらしい弾幕なのは、紫さんの性格を反映しているからだろうか。
霊夢「エスカルゴ、相殺お願い!」
カルゴ「わかった!雷神『荒れ狂う霹靂神』!」
大量の雷を放ち、紫さんの弾幕を掻き消す。
流石の紫さんも素早い雷には反応出来ないのか、服の端にカスリ始める。直撃させたいが、傘が邪魔でそれが出来ないのがもどかしい。
紫「ふふっ、相殺は彼任せ?」
霊夢「そうよ!エスカルゴの方が、私より相殺に向いてるからね!」
カルゴ「へへっ…照れるぜ…」
しかしスペルの効果時間はまだ終わっておらず、俺のスペルが終わってからも紫さんのスペルは続いた。そこで俺は、次のスペルを発動させた。
カルゴ「変化『各種武防具十変化』!!」
これは、遊びで作ったスペルだ。
ルーレットの様に、毎回ランダムの武器、防具が現れる。アタリは刀などで、ハズレは針だ。
今回は盾が出た。いつもなら舌打ちをするところだが、今回に限りアタリだろう。
俺も霊夢も、巨大な盾での防御に徹する。
そしてスペルの効果時間が終わり、次は俺が攻めようとした瞬間、またもや紫さんがスペルを発動させた。
紫「廃線『ぶらり廃駅下車の旅』」
スキマを開き、運転手の居ない、古ぼけた電車を走らせてくる紫さん。その勢いは、とても馬鹿にできない勢いで、もしもぶつかったら、打ち身で死んでしまうのではないだろうかと思われるほどの速度を出していた。
霊夢「危な…」
カルゴ「霊夢、俺の後ろに!『雷斧』!!」
霊夢の手を引いて投げるように背後に移動させ、出現させていた盾を斧に変化させる。ルーレットの意味が無いだろと思う人もいるだろうが、ルーレットは所詮遊びなのだから、必要に応じて変化させるに決まっている。
カルゴ「『雷撃一振』!!」
斧を一段と大きくして攻撃力を高め、突っ込んでくる電車へ振りかぶり、一刀両断する。
メキメキ、バキバキ、ギャリギャリと様々な音がスキマ空間内に響く。非常に耳障りだ。
紫「まぁ、避けないなんて」
扇子をかざし、目を丸くする。
これを避けたところで、またスキマでぶつけてくるのは明白なので、壊した方が確実なのだ。
スペルを強制的に終了させる。
カルゴ「今だ霊夢、やれ!」
霊夢「2人で、よ!ちゃんと合わせなさいよ!」
マジか、複合スペルですかっ!
よっしゃ、今度こそキメてやるぜ!!
カルゴ「もちろん!行くぜ!」
レイカル「仙鬼愛『封殺夢雷』!!」
封印効果のある結界を紫さんの周りに張り巡らして、彼女の妖力を制限する。
「人鬼愛」は、霊夢が人間だったからだ。仙人になったあの時から、「仙鬼愛」に改名した。前者の名前は、俺と霊愛の複合スペルへと引き継いでいる。
紫「っ…結界が、破れない…!」
結界の中で弾幕を発射する紫さんだが、妖力が抑えられているので弾幕の攻撃力はほとんどゼロに等しい。妖力が無ければスキマも開けない。
されるがままになるしかない。
紫「もう…出れないんじゃ、仕方ないわねぇ…。今日のところは、負けておいてあげるわ」
この日…俺と霊夢は、幻想郷にその名を轟かせる大妖怪、八雲紫さんを初めて倒した。