※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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散歩

霊夢「じゃ、留守番ヨロシク」

 

霊愛「はぁ〜い、いってらっしゃ〜い」

 

カルゴ「不審者には気を付けろよ」

 

霊愛「わざわざこんなとこ来ないでしょ」

 

カルゴ「それもそうか。…行くか」

 

霊夢「そうね」

 

霊愛を神社に留守番させて、俺と霊夢は手を取り合って神社から飛び立つ。

朝ご飯を食べ終えた俺は、霊夢と霊愛に、1つの提案をした。「折角天気が良いんだから、散歩にでも行かないか?」…と。意外にも霊夢は乗り気だったのだが、霊愛が駄々をこねた。「暑いから外に出たくない」と。

尤もだが、せっかく天気が良いんだからと何度か言ったが、まるで聞く耳を持たなかった。

仕方ないので、霊愛を留守番させることにして、俺達はアテもなく出かけることにした。

新婚旅行のような感じで、少しワクワクする。

 

霊夢「〜♪」

 

まったり飛んでいるだけでも楽しいのか、霊夢は鼻歌を歌っている。どこに行くのか、それとも、このまま飛び続けるのかはわからないが、楽しいなら何でもいいかな、と思い始めた。そして、俺自身が気付かないうちに歌を歌い始めていた。

 

 

 

霊夢「…ね、あそこ行かない?」

 

霊夢が指さした先は、沢山のひまわりが咲いてる花畑だった。ひまわりというだけでも嫌な予感がするが、他でもない妻の提案なので、黙って頷きその場に着地した。花畑の間には遊歩道の様な道があり、花々を見ながらそこを歩く事にした。

 

霊夢「綺麗よね、ひまわり」

 

カルゴ「そうだな。しかも、デカい」

 

何をどうしたらこうなるのか全くわからないが、このひまわりは、とにかく背が高い。俺の身長を少し超えている事から、2mほどだと思われる。

 

霊夢「…ねぇ。さっきあんた歌ってた歌、私達にすごくピッタリね」

 

カルゴ「そうか?どこら辺が?」

 

霊夢「どこら辺っていうか…ほぼ全部?」

 

カルゴ「ほう」

 

俺らにピッタリなトコあったっけ?

 

そもそも、何曲も歌った(はずだ)から、どの歌のことを言っているのかがよく分からない。

チラリと霊夢を見ると、歌詞を思い出そうとしているのか、微妙に考え込んでいる様子だった。

 

霊夢「思い出したわ」

 

カルゴ「おっ」

 

どんな歌詞?と霊夢に尋ねてみる。

霊夢が自分たちにピッタリと思う歌詞とは、一体どういう歌詞なのだろうか。

 

霊夢「『信じてね 私を』…ってトコとかね。凄く断片的だけどね」

 

カルゴ「ほんと断片的だな…」

 

霊夢「『止まらない 衝動 愛情』とか…『方法 順序 ホント どーでもいいの』とかさ。私たちというより、私にぴったりね。あなたと居れるなら結婚より先に子作りでも良いって思ってたもの。実際その通りになったわね。…いや、私から襲ったんだけど」

 

カルゴ「へへ…なんか照れるな…」

 

霊夢「例えお腹が痛くなっても、頭痛がしても、吐き気がしても…あなたの為だもの、私だって、根性出して頑張ったわ。本来は、もう少し老けてから出産するべきらしいんだけどね。10代で出産なんて、普通の人間には無理でしょうね!」

 

胸を逸らしてドヤる。

10代にして出産を経験した霊夢からしたら、もう怖いものなんて無さそうだ。

 

カルゴ「やっぱり10代だったんだな…」

 

あの時の俺は…17歳くらいかな?

日本の法律だと、結婚はダメで、車の免許すらも取れないという年齢だ。なのに、2人目の子供を作っていたなんて…。

いや、確か18歳くらいだったかな?

 

霊夢「…ま、話は逸れたけどね。こんな感じで、共感する部分がいっぱいあったわ」

 

カルゴ「なるほどね」

 

霊夢、今日はやけにお喋りだな…。深夜でもないのに深夜テンションなのか?デレてるだけかな。それでも、すごく嬉しいことには変わり無いが。

 

霊夢「でも、違うなって思うところもあるの」

 

カルゴ「へー。どこら辺?」

 

霊夢「……あんたの理想を否定するようで悪いんだけど…怒らないで聞いてくれる?」

 

カルゴ「大丈夫だよ。思ってること言って?」

 

霊夢「うん…。『みんなで ハッピーに なろうよ 受け止めてくれる?』っていう所なんだけどね」

 

カルゴ「あー…確かに理想だな。でもなんで?」

 

霊夢「だって私…隙あらばあんたを奪おうとしてるんだから。他のヤツらからね。今までずっと、隠してた事だけどね」

 

カルゴ「!?」

 

霊夢本人は「今まで隠してた」…などと言うが、今までにもそういう様子は見て取れた。

例えば、およそ8年前の白狼天狗との戦いの時。

駄々をこねるフランを突然のキスで黙らせた時の事だが、観客たちのところへ戻ったフランの頬を引っ張っていたりと、嫉妬する様子があった。

霊夢にもそれなりの独占欲があるのは数年前から察していた。喧嘩する訳でも無かったから黙って見守っていただけだった。

思えば、なぜ彼女たちで喧嘩せずに平和を保てているのかが未だによくわからない。

考えれば考えるほど不思議に思うが、これはもう考えてもわからないと割り切るしかないだろう。

彼女たちにしか分からないことも、きっとある。

 

霊夢「…怒った?」

 

機嫌を伺うように、心配そうに俺の顔を覗き込む霊夢。もちろん、怒ってなんかいない。

 

カルゴ「いやいや、怒らないよ。むしろ、霊夢が俺を独占しようとしてるなんて…嬉しいな」

 

霊夢「自分の言ってることわかってるの?理想の反対を言ってるのよ?」

 

カルゴ「いや。理想は確かに『みんなで平和に』だけど、霊夢がそう思ってくれてることが、ただ嬉しくて。嬉しいから怒りもしないね」

 

霊夢「…『たった 一人の ターゲット それは そう君です

そばで 永遠に そうやって 笑っていて』」

 

カルゴ「おぉ…上手いな」

 

1回聞いたくらいでコピれるかよ普通…。

霊夢とデートに行きたいなぁ…外の世界に。

 

霊夢「この部分なんて、まんま私じゃないの」

 

カルゴ「ターゲットってのは俺か」

 

霊夢「それ以外にいるかしら?」

 

カルゴ「いたら困る」

 

霊夢「心配しなくても、男なんてあんたしか見えてないから大丈夫よ」

 

カルゴ「サンキュ…♪」

 

霊夢のストレートな物言いに押されてばかりだ。

けど、最高に可愛いし、可愛いし、可愛いから、許すしかない。いや、ほんとに可愛い。

 

霊夢「『ねぇただの トモダチじゃ 苦しいよ いつだって

ぴったり くっついて いたいの』…ねぇ、ぴったりくっついても良い?」

 

カルゴ「お、おう…暑くてもいいんなら…」

 

霊夢「ありがと♪」

 

すると、繋いでいた手を離し、腕を絡めてきた。

密着度が増し、汗でペタペタするが、そんなのはもはやどうでもいい。こんな所誰かに見られたら霊夢はどうなるのだろうか。いや、誰も来ないからこそ、今回のデートにはこの場を選んだのかもしれない。

ここは、風見幽香さんの管理するお花畑。

人間はもちろん、妖怪すらも近付かないのだ。

来るのは、馬鹿…怖いもの知らずな妖精だけだ。

だから、見られる可能性があるとするなら、妖精か幽香さんの2択なのだ。

妖精が近くにいるならば、遊ぶ音や笑い声などが聞こえてくるので、少なくとも妖精たちは近くに居ない。

霊夢も、それがわかっているからこそ、ここまで野外でデレているのだろう。

 

霊夢「あっつ…」

 

カルゴ「暑いなぁ…」

 

日傘を差せばこんな事は無いのだろうが、生憎、日傘なんてものは持ち合わせていない。紅魔館にはあるが、スキマで取り寄せると泥棒になる。

我慢するしかないだろう。

 

霊夢「『どんなときでも 君の全て 守りたい』ってあるけど…私のことは、あなたが守ってくれるんでしょ?」

 

カルゴ「ああ、もちろん」

 

俺が霊夢を守る?

霊夢の方が俺より強いのになぁ…。

いや、単なる強弱の問題じゃないってことか。

もちろん守るよ。それこそ、命にかえてもな。

今度紅魔館に行ったら、また不老不死になろう。自爆技が使えないからね。

 

霊夢「『大好きって 何万回も 伝えるから』…って言うけど、回数じゃなくて気持ちよ。気持ち篭ってなきゃ言う意味が無いもの。ね?」

 

カルゴ「うん」

 

上手い…霊夢とデュエットしたいなぁ…。

多分カラオケで満点取れるぞこれは。

 

霊夢「だから私は、気持ち込めて、何回も何回も大好きって言うわ♪」

 

カルゴ「俺もだ♪」

 

霊夢、スゲェ可愛い…。

 

霊夢「この歌の歌い手さんは、お姫様なのね」

 

カルゴ「え?」

 

霊夢「だって歌詞に『待ってるだけのお姫様じゃいられない』って入ってるじゃない」

 

カルゴ「ああ、そういうことか。そだね」

 

姫…王女の心情を歌ったものだし…そうなるな。

なるほど、霊夢は読み取る力もすごいのな。

 

霊夢「…私は、あなたの“特別な存在”になれてるかしら?歌詞にも『いつの日か君の特別な存在にどうか なれますように』ってあったけど…」

 

カルゴ「なれてるよ。誰よりも特別だよ、霊夢」

 

霊夢「嬉しい…♪」

 

より強めに腕を抱えてくる霊夢。

2つの丸いものに挟まれるが、そんなことは全く気にならない。ただただ、隣の存在が愛しい。

これが、幸せと呼ばれるものなのだろうか。

フワフワしたような気持ちでそんなことを考えていると、突然、近くに強大な妖気を感知した。

禍々しいのではなく、ただひたすら強大な妖気。

 

霊夢「なんて妖気…今まで感じた事ない…!」

 

カルゴ「俺もだ…。天魔や勇儀さんよりもやばい妖気…誰だ?」

 

しかしこの妖気には覚えがある。

宴会の度に戦いを挑んで、その度にコテンパンにされるというあの人だ。

 

霊夢「…この妖気の質は…」

 

カルゴ「幽香さんだろうな」

 

俺の言葉に小さく頷く。そしてUターンし、来た道を戻り始める。次第に足が早まる。

幽香さんが早歩き程度の速さでこっちに向かって来ているのだ。見つかったら面倒な事になる。

俺達の足が早まるのは、仕方のないことだ。

すると、幽香さんの速度が早まった。

走ってきているのか、はたまた─────。

 

幽香「あらあら…。気付いてるのにわざとスルーするなんて、酷いわねぇ」

 

そんな言葉が空から降ってきた。

太陽に背を向けていた俺達の目の前の地面には、大きな影が映っていた。確か、幽香さんには翼が無かったハズだが…何故か、目の前に映る影には翼がある。

 

霊夢「…仕方ないわね、観念しましょ」

 

カルゴ「…おう」

 

渋々立ち止まり、振り返る。

もちろん、腕は解いているし、手も繋いでない。

人前では繋がないのが、霊夢との暗黙の了解だ。

意外と照れやすい霊夢らしい。

 

幽香「ふふ…」

 

霊夢「あんた…幽香…なの?」

 

幽香「ええ、そうよ」

 

霊夢が驚いたのも無理は無い。

目の前にいる幽香さんは、ショートヘアではなくロングヘアで、傘はいつも通りだが、服装が若干違う。スカートでは無く、チェックのズボンだ。色合いは普段と同じなのだが…普段とは全く以て雰囲気が異なる。

一番目を引くのは、その背中から伸びる、植物の芽のような若々しい緑色の翼だ。

 

霊夢「その髪と翼、どうしたの?」

 

幽香「これ?ふふっ、私の溢れる妖力が翼や髪の形を取ったのよ」

 

霊夢「普段より強い力を感じるのはどうして?」

 

幽香「私の大好きな花たちが満開だからかしら?今日と、これから数日間はこのままで過ごすしか無いわ。ああ、今すぐ誰かと戦いたいわ♪」

 

戦闘狂な一面を持つ幽香さん。力が高まっている今はその力を振るいたいと考えているのだろう。

 

霊夢「…私たちはお出かけ中だからまた今度ね」

 

幽香「エスカルゴ?次会ったら倒すって花見の時言ってなかった?」

 

げっ……言ったなぁそんなコト…。

まずいぞこの流れ…霊夢、助け

 

霊夢「お出かけ中だから今度って言ったでしょ」

 

ナイスッ!!!

霊夢が言ってくれたんなら幽香さんも聞いて…

 

幽香「あなたには何も言ってないわよ。ダンマリこいてる隣の男に言ってるの」

 

はい、聞いてくれませんでしたー。

俺が言うしかないか、仕方ない。

まぁ、他人に頼るものでもないからね…。

 

カルゴ「…また次回、お願い出来ますか?」

 

幽香「…残念ねぇ…。約束守らない奴は殺すしか無いわね、バイバイ」

 

無表情で傘をこちらに向け、レーザー発射の準備を始める。徐々に、先端には光が溜まっていく。

幽香さんが口角を釣り上げる。

 

カルゴ「危ねぇ!」

 

霊夢「キャッ!」

 

カルゴ「霊符『二重結界』!!」

 

それが発射の合図だと受け取った俺は、とっさに霊夢を真横に突き飛ばし、前方に結界を張った。その直後、轟音と共にレーザーが発射される。

 

カルゴ「うぎぎ…!」

 

刀に込めた力を使い切らん勢いで力を放出するが妖力が増した幽香さんに通じるはずもなく、結界には蜘蛛の巣状のヒビが広がってくる。

こうなったら受け止めるしかない。覚悟を決めた俺は、ポケットから魔法陣を取り出す。

 

カルゴ「『エスカルゴ・スパーク』!!!」

 

自分が張った結界をも貫き、幽香さんのレーザーと正面からぶつかり合う。凄まじい風圧でひまわりの花びらが空に舞うが、そんな事にはお構い無しに…続けたかったが、他でもない幽香さんがレーザーの発射を中断した。俺の放つレーザーは傘にあたって砕ける。これ以上は力の無駄遣いだと思い、俺もレーザーの発射を中断する。

幽香さんを見ると、どうやら、花びらを見ながら肩を落としているようだ。

 

幽香「あぁ…私のひまわりたち…」

 

ヤバいことをしでかした…のかもしれない。

いや、レーザーを受け止めただけだから、元はと言えば発射してきた幽香さんが悪いのだ。それの原因を作ったのは俺なのだが……。

 

幽香「これは…復讐しないといけないわね」

 

カルゴ「ひッ…」

 

見る者を恐怖の底に突き落とすような、最恐とも思える笑顔を浮かべる幽香さん。

本気でまずいことをしでかした。

 

幽香「覚悟してね♡」

 

まるで、語尾にハートマークなどがついてそうな口調なのに、全然可愛くない。恐怖のあまりに、顔が引きつって笑ってしまいそうだ。

しかし、これは好機とも言えよう。

わざわざ宴会の場で決着をつけることもない。

 

カルゴ「お相手…お願いします…!」

 

幽香「今度こそ倒せるといいわねぇ♪」

 

霊夢「ちょっ、無謀よ!普段の幽香すら倒せないのに、なにも、力を増してる今挑む理由が……」

 

カルゴ「止めないでくれ、霊夢。相手が弱い状態で倒すより、強い時に倒す方がずっと価値のある勝利だ。…大丈夫、霊夢との修行の成果、見せてやんよ♪」

 

霊夢の次の言葉を待つ。

幽香さんも、霊夢の反応に興味があるのか、攻撃は仕掛けてこなかった。長い沈黙の末、霊夢は、ようやく口を開いた。

 

霊夢「…わかったわよ…全く…。でも、今度こそ負けるんじゃないわよ。もしも負けたら、絶対に許さないから」

 

カルゴ「ああ!今度こそ勝つ!」

 

幽香「うふふふっ…せいぜい、今までよりも私を楽しませてちょうだいね♪」

 

霊夢からの許可も取り、俺は妖力から霊力に切り替えて戦闘態勢に入り、幽香さんも再び傘を構え戦闘態勢に入った。

これから行うのは、スペルカード戦と殺し合いのほぼ中間…。擬似殺し合いのようなものだろう。

本気で力を振るえることを考えたら、なぜか緊張してきた。悪い意味ではなく良い意味で。

何だかんだ言って、楽しみなのだ。

何度も自分を打ち負かした強敵との戦いが。

俺がMなのではない。戦いが楽しいのだ。

 

幽香「さぁ、いくわよ……」

 

幽香さんが、雲がまばらにしかない空に、一筋のレーザーを発射する。

それを合図に、俺は幽香さんに向かっていった。

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