現在俺は、霊夢、霊愛、霊麗と共に、鈴奈庵へと向かっている。
カルゴ「…で、占い中に何かが出てきて、本人は気絶して…出てきた何かは逃亡中ってか。魔理沙から逃れるなんて、そりゃ長引くとも思うよな」
霊夢の話を聞くところ、大体の流れはこうだ。
魔理沙が鈴奈庵を訪れ、最近里で流行りの小鈴の占いをしてもらっていた。すると小鈴の背後から黒い影のようなものが現れ逃亡。魔理沙が追うも姿を見失い、転送魔法で霊夢に助けを要請。
現在魔理沙は、再度転送魔法で鈴奈庵へと戻り、気絶した小鈴の介護をしているとか。
しかもこれまで、霊愛や霊夢が何度も注意をしてきてのこの展開だ。
目覚めたら、霊夢からキツい説教があるだろう。
霊夢「てか、あんたと小鈴ちゃんって何か繋がりあったっけ?あの時会ったきりじゃない?」
カルゴ「買い物ついでに少し立ち読みするのさ。最初の方はビビられまくりだったけどな」
霊夢「そりゃーそうでしょ、妖怪だもの。って、買い物ついでに立ち読み?…ふーん……真っ直ぐ帰ってきて無かったんだ?」
カルゴ「数分だよ、数分。俺、速読だから、雑誌とかならすぐ読み終わるからさ」
そう言い訳すると、霊夢は「あっそ。速読とかはどうでもいいから早く帰ってきてよバカ」とだけ返してくれた。
全く、ベタベタな嫁で嬉しい。最高だ。
カルゴ「霊夢が吸血鬼になった時もさ、そりゃあ説明がスゲェ大変だったよな〜。ケケケッ」
霊夢「あー…あのあとしばらくは、小鈴ちゃんに避けられてたものねぇ…。メンタルに効いたわ」
結婚して数週間が経つ頃、小鈴が神社に訪れた。
その時に、普段は翼を巫女服の中に隠して、目は充血だ、などと言って小鈴を誤魔化していたのが一気にバレた。
その後は何とか霊夢と魔理沙で説明して、何とか納得してもらった。霊夢の紹介で俺とも会った。
その時は「私が認めた」と霊夢が言っても、疑心暗鬼な様子だったが、買い物のついでに鈴奈庵に寄るたびに、少しずつだが、俺にも慣れてくれたようだった。
今ではもう、バレる前と何ら変わらない、良好な関係に戻っている。
カルゴ「霊夢、どんだけ信用されてんだよ…」
霊夢「まぁねぇ…人徳があるかr」
カルゴ「ねぇな」
霊愛「無いね」
霊麗「無いよね」
ピッタリ揃った意見に、俺は思わず苦笑する。
娘達までそう言うとは俺も予想していなかった。
霊夢「ちょっと…あんた達ィ…?」
霊愛「…じゃ、私は西の方行くね。黒いヤツね、見つけ次第殺すから」
霊麗「わ、私は東の方を…」
霊夢が怒気を漏れ出させると、それを察した霊愛と霊麗はそそくさと散らばり、空には俺と霊夢の2人だけが残った。
霊夢「ったく、あの子たちは…。母親を尊敬とかしないわけ?」
カルゴ「してるから、ちゃんと修行してくれるんだろ。あれくらい笑ってスルーしようぜ、霊夢」
霊夢「ふ…ふんっ…///」
カルゴ「話を戻すぞ。占いに使った本の方はまだ鈴奈庵にあるんだよな?」
霊夢「そうよ。魔理沙が見張ってるわ」
カルゴ「なら安心、だな。じゃあ、俺は北に行くから、霊夢は南を頼むぜ」
霊夢「了解。…余計な温情なんか要らないわよ、見つけ次第殺しなさいよ」
カルゴ「わかってんよ」
道中、もっと詳しい経緯を聞いた。
里の人間が妖怪になるのは一番の大罪らしい。
「魔理沙や霊夢はどうなんだよ?咲夜さんも」と尋ねた所、「私は博麗神社、魔理沙は魔法の森、あのメイドは紅魔館に住んでいる。
理屈は通っている。
霊夢は、何も間違っていない。
間違っているのは、この罪を犯した男…易者だ。
だが、俺は知っている。
易者が不憫な形で殺されたのを。
まぁ、当然の報いなのだが個人的に少し可哀想に思えてしまうのだ。
どうにかして易者を助けたい…のだが、きっと、妖怪退治において非力な俺には、彼を助けるなどという事は出来ないのだろう。
そして、
カルゴ「よう小鈴」
鈴奈庵に到着した俺は、いつもの様に暖簾を潜り屋内に入る。しかしそこには、机に突っ伏して、布団を掛けられて寝ている小鈴が。
側には付き添いの魔理沙が居た。
魔理沙「あいにくだが小鈴はまだ気絶してるぜ」
カルゴ「そうか。魔理沙、占いに使ってたっつー易書、ちょっと見せてくれ」
魔理沙「おう。…どうだ、普通の本だろ?」
カルゴ「だな。妖気も何も感じられないよコレ。ちょっと借りてくよ」
魔理沙から本を受け取ったまま背を向け、出口へ足を運ぶ。当然だが、魔理沙も黙ってはいない。
魔理沙「別に構わんが霊夢が来るまでに返せよ?多分それ、捨てると思うぜ?」
カルゴ「ああ、
本を小脇に抱えた俺は、人気の無い場所へ移動。
人差し指と親指でOKサインの形にして、極小のスキマを作り、霊夢を見る。
このように小さくした理由は、霊夢は周囲の目にとても敏感なので、少しでも気配を消すためだ。
そして霊夢の目の前には易者が居た。
予想通り、易者と話をしているところだった。
霊夢「人間を捨てるために自ら怨霊になる手段を選んだと。人間ってどうしてこうも回りくどい事するのかしらね」
易者「嫉妬の心をコントロールすれば、怨霊にはならん。…知ってたかい?占い師は、感情を操る職業なんだよ」
そう言って霊夢に背を向けて歩き出す易者だが。
霊夢「何処に行くつもり!?」
御札を右手に構え、左手にお祓い棒を構えた霊夢は、声を荒らげて易者を呼び止める。
すると、易者は指を「チッチッ」と動かしながらこう言い放つ。
易者「あんたは無用な殺生はしないだろう?俺は里を離れて暮らす。里の人間に外を与えるつもりは無い。別にあの小娘も傷つけてなんかいない。彼奴は俺を見て、驚きのあまり気絶しただけだ」
そして、霊夢に、爪の伸びた指を突きつけ…。
易者「だから
その話を黙って聞いていた霊夢だが、そっと目を瞑り、右手に構えていた御札を、易者の胸に貼り付ける。
易者「なっ…!?俺の話を聞いていたのか!?」
貼られた御札は帯のように伸びて易者を雁字搦めに締め付け、動きを封じる。
霊夢「残念ね。私は無用な殺生もする。…まぁ、妖怪巫女という点は、反論しないわ。…でも…」
言葉を切り、お祓い棒を高々と構える。
来た。超有名なあのシーンだ。
霊夢「私以外の妖怪は問答無用で退治する、人間の味方の妖怪巫女よ」
そう言い放ちながらお祓い棒を振り下ろし、易者を頭から真っ二つに切り裂く。
言葉が多少違うのは、本人が妖怪になっていたりする誤差だろう。何れにしても、俺が読んでいた通りに、易者は滅されてしまうらしい。
易者「ば、馬鹿な……お前はいつも、一緒にいるあの吸血鬼らを退治していないじゃないか……!それなのに……!!」
消えかけている易者は、途切れ途切れに抗議。
しかし霊夢は、冷静にこう返す。
霊夢「勉強不足だったわね。…幻想郷では、里の人間が妖怪になることが一番の大罪なのよ。私の仕事は、それを監視すること」
そう言い終えるのと同時に、易者は消滅した。
霊夢は、易者が居た場所を見つめながら、呟く。
霊夢「私以外の妖怪、か…。何とも自己中ね…。小鈴ちゃんも妖怪にならない様、ウザがられてもしつこく注意していかなきゃね…」
そして、コツンと小石を蹴飛ばす。
どこか寂しげな様子だ。
霊夢「たまには…見つけられなかったフリをして見逃してあげてもいいと思うけど……紫が許してくれなさそうよねぇ……はあぁ…」
問答無用と言いながらも、霊夢にも少しは慈悲の心があるらしい。人間から妖怪になったという、数少ない例なので、霊夢としてもなにか思う所があったのだろう。
霊夢「…さて。霊愛と霊麗探して、鈴奈庵戻ろ。案外早く片付いて良かったわ」
最後にそう呟き、太陽が沈んで夕闇に包まれ始めていた里の空へと飛び立った。
それを見送り、俺は極小スキマを閉じて、今度は大きなスキマを開く。
カルゴ「…それじゃあ、宜しく頼むよ」
???「はいっ!」
カルゴ「ただい…あれ、もう帰ってきてたのか」
鈴奈庵へ戻ると、目覚めた小鈴と魔理沙、霊夢、霊愛、霊麗の全員が鈴奈庵の中に集まっていて、机を囲んでいた。
どうやら、結構遅れたらしい。
霊夢「遅い。その本返しなさい、処分するから」
カルゴ「俺にも出来るのかな、
霊夢「さーてね。あ、燃やすのはあんたの能力で良いわよね。燃やして」
カルゴ「へいへい」
能力で火を起こし、皆の見ている目の前で燃やし尽くす。威力を上げた炎は、灰すらも残さずに、易書を完全に消滅させた。
これにて、この騒動は一件落着だ。
カルゴ「…じゃあ、紅魔館行ってるよ。あの話、進めとくからな」
魔理沙「おう!」
霊夢「はいはい」
鈴奈庵から出た俺は、
そして、再度大きなスキマを開く。
カルゴ「おいで、易者」
すると、スキマから易者がノソノソと出てくる。
姿かたちはそのままの易者だ。
易者「はぁ…。全く、予想が外れたよ…」
カルゴ「これからは里の外で暮らすんだ、妖怪に襲われることも当然、覚悟してるんだろうな?」
ボリボリ頭を搔く易者に覚悟のほどを尋ねる。
すると、グッと親指を立て、ニッと笑う。
易者「ああ。便利な器も貰ったが、無茶はしない程度に生きていくことにする。ありがとう」
カルゴ「別に…。霊夢とのやり取りを遠くで見ていて、お前の言ってることもわかるな、と思っただけだ。大罪に手を貸してるんだ、裏切らないでくれよ?」
さっきの霊夢の呟きからして、何度も頼み込めば許してくれそうな気がするが…多分ダメだろう。
易者「もちろん心得ている。
カルゴ「能力は特に無いが、元気でやってけよ。なんかあったら言え、友人価格で助けてやる」
易者「金取るのか…(汗)」
カルゴ「…ていうのは冗談だ。じゃーな」
易者「ああ…!本当にありがとう…!」
カルゴ「イイってことよ」
スキマを開き、紅魔館へと向かおうとするが。
易者「待て。まだ名前を聞いていなかった。命の恩人の名は、死ぬまで覚えておきたい」
そう言われ、足を止めた。霊のなのに“命の恩人”
と言うとは思っていなかった。
幽霊ジョークとは、まさにこの事だろう。
カルゴ「俺の名は、エスカルゴ・スカーレット。よーく覚えておくんだな」
易者「エスカルゴ…。ありがとう…!」
再び、ほぼ90°に腰を折り、頭を下げる。
人間の俺の姿でこんな格好をされると、なんともむず痒いものがある。
カルゴ「元気でな」
易者「ああ…!」
背を向け、今度こそ紅魔館へと帰って行った。
俺を見届けたあと、易者はこっそりと里を出て、どこへともなく放浪を始めた。
カルゴ「ただいま」
メイド「おかえりなさいませ!」
今度こそ俺は紅魔館へ帰った。
まず向かった先は、いつもの大図書館だ。
レミィ「あー、来たー…遅くない?もう夜よ?」
フラン「眠いぃ…」
カルゴ「ごめんごめん…。小悪魔は居るか?」
フラン「小悪魔なら確か…」
パチェ「部屋に居るわ」
カルゴ「あざす」
フラン「あ〜、また小悪魔とエッチするのね〜?私も混ざりたい〜」
机に突っ伏していたフランは、モゾモゾと身体を動かして、立ち上がろうとするが、俺はそれを、手で制止する。
カルゴ「違うよ、喋るだけだ。また今度な」
フラン「え〜…でもぉ〜…」
そんなフランをなだめ、腰が抜けているであろう小悪魔の元へ向かう。許可を取り部屋に入ると、まだベッドで寝転がっていた。
小悪魔「あ、エスカルゴさん〜…。すみません、まだ腰がガクガクで、エッチ出来ないです〜…。動けませんが、私のおま○○で良ければお好きにお使い下さい〜…」
カルゴ「いや、そうじゃなくて。さっきのお礼を言いに来たんだよ」
全く、フランといい小悪魔といい…なぜ、そうもエロい方に考えてしまうのだろうか。
小悪魔「お礼なんてそんな…。お礼ならば先程、濃厚なのを頂きましたから…」
カルゴ「ちゃんとした礼を言ってなかったろう?だからその…ありがとな」
小悪魔「いえいえ…うふふ…♪」
実は、先程鈴奈庵にて燃やした易書は、小悪魔が創造魔法で創造した偽造書である。それは勿論、不憫な殺され方をした易者を助ける為だ。
数十分前─────人里のハズレ
カルゴ「…それじゃあ、宜しく頼むよ」
小悪魔「はいっ!」
スキマで図書館から呼んだ小悪魔に易書を渡し、複製を頼んだ。創造自体は、一瞬で可能だ。
しかしこの復活作業に苦戦したのはこのあとだ。
小悪魔「エスカルゴさん、魔力の気配を消すのはもう少し時間が掛かりそうです…」
カルゴ「頑張ってくれ。できるだけ早くな」
小悪魔「頑張ります…!」
そう、易者の易書からは、魔力の類の力は、一切感じられなかったのだ。だが、小悪魔の創造する本からは、微弱だが小悪魔の魔力を感じられる。時間をかけて、何とか魔力の気配をゼロにした。
小悪魔「できましたー!」
カルゴ「よし。じゃあ次、小悪魔には本物の易書で占ってもらう」
小悪魔「えっ…ですがこれ、どこの誰の占術だか分からないのに勝手に使用して良いんですか?」
カルゴ「良いんだ。責任は俺が取るよ」
小悪魔「分かりましたっ!」
易者の復活には「誰が書いたか分からない事」が前提条件だったはず。だから、俺には復活させる事が出来ないのだ。
そしてもう1つ。
カルゴ「悪夢『魔王の子守唄』」
電力と妖力を混ぜ、禍々しい光を小悪魔に見せ、洗脳を開始する。
小悪魔「…………」
カルゴ「Repeat after me, OK?」
小悪魔「…オーケー…」
カルゴ「《この易書は私が書き、この占術は私が秘密裏に開発した術》」
小悪魔「《この易書は私が書き、この占術は私が秘密裏に開発した術》」
カルゴ「Excellent!…相手は…そうだな…」
スキマを開いて、夜遊び中だったらしいチルノ、大妖精、リグル、ミスティア、ルーミアの5人をその場に呼び出した。
⑨「うわっ!?な、なんだこれ、ワープした!」
リグル「えっ、えっ…どういう事!?」
大妖精「あっ、エスカルゴさん。こんばんは」
みすちー「…?」
るみゃ「……」クスッ
カルゴ「遊んでる途中で呼び出してすまないな。凄くよく当たる占いを見つけたからさ、ぜひともみんなに試してもらいたいと思ってな」
⑨「そうなの!?やるやる!」
大妖精「私も少しだけ…」
みすちー「商売について占ってもらいましょ♪」
そして、洗脳された小悪魔がちょうど5人を占い終えたその時。
易者「ふふふふふ…」
小悪魔の背後から、計画通り、易者が復活した。
⑨「ぎょえー!?なんだコイツ!?」
カルゴ「みんな逃げろ!!」
大きなスキマで、チルノたちを元いた場所に送り返し、小悪魔の洗脳を解除する。
小悪魔「ふぇ…?きゃっ、何ですかこの人!?」
カルゴ「大丈夫だ小悪魔、コイツは無害だ」
小悪魔「えぇ〜……」
小悪魔を背中側に誘導して、易者と正面から向き合う。案外背が高い。俺とあまり変わらない。
カルゴ「…2度目の復活はどんな気分だ?易者」
易者「お前…前に里で見かけた事があるぞ。あの巫女の連れだろう?俺を復活させて、一体、何を考えている?まさかまた巫女の元へ…」
カルゴ「何も考えてねぇよ。お前の殺され方が、少し不憫に思えてよ。俺の独断で復活させてやる事にしたんだ」
すると、目玉の無い眼孔が、これでもかと大きく見開かれた。かなりの衝撃を受けたらしい。
易者「そう、か……。感謝する。それじゃ…」
カルゴ「待てよ」
復活のルーツを知って、早々に立ち去ろうとする易者を呼び止める。すると、首を傾げながら振り返る。
易者「なんだ?」
カルゴ「実はな、お前が霊夢に滅されたところ、俺の嫁が偶然写真に収めててよ。その嫁は、新聞記者をやっててな。明日の朝にはお前のその姿はこの幻想郷中に広まる事になる」
易者「参った…それでは復活した意味が無いな。また探し出されて滅されるだけか」
勿論、文が写真に撮っていたというのは、全くの嘘である。だが、こんな目立つ風貌では、幻想郷中を飛び回る魔理沙や、俺とデート中の霊夢に、見つかってしまう可能性があるのだ。
その事を危惧しての嘘だ。
カルゴ「そういう事だ。そこで、俺から1つ提案する。それにノれ」
易者「まず案を聞かせてくれ」
もっともな意見に小さく頷き、話し始める。
カルゴ「俺が、お前の取り憑く器を用意してやるから、お前はそれに取り憑いて生きろ。もちろんだが、この案にノるかはお前に任せるさ。お前、一応霊だろ?憑依くらい、造作も無いよな?」
易者「なるほど…見た目の姿を変えるわけだな。だが、あの巫女なら気配で察せるだろう」
カルゴ「気配なんて、巫女に近付かなければいいだけの話だろう?近付く予定でもあるのか?」
易者「無い。……頼む。器をくれ。この通りだ」
初めて会ったばかりの俺に、深々と頭を下げる。やはりコイツは、決して悪いヤツでは無い。
方法が悪かっただけで、中身は全然普通なのだ。
カルゴ「わかったよ」
そして俺は、全力で練った分身を作成。
見た目は、人間の俺だ。しかし、目の色は変えてある。黒だと不知火麗葉か、もしくは人間の俺と間違えられる可能性があるので、茶色にした。
完成を知らせると、易者はそれに憑依した。
易者「凄い…。力が強くないか、この器…」
カルゴ「それと、仕上げだ」
妖力を分身に流し込み、自然放電を無くすように表面をコーティングした。これで、壊れるまで、半永久的に形を保てるようになった。
カルゴ「あと、ふとした拍子に抜け出ないよう、お前と器の結び付きを強くしておきたいが……。別に大丈夫か?」
易者「いや、頼む。憑依なんて初めてだからな、何があるのかわからない」
カルゴ「OK」
次いで、霊力に遷移して、易者と器の結び付きを強め、少しの事では抜け出さぬようにした。
器が壊れるまで、易者が出ることは無い。
易者「凄い…抜け出せなくなったぞ…」
カルゴ「よし、少しの間この中に入っててくれ。とりあえず、この騒動を終わらせてくるよ」
易者のそばにスキマを広げると、それを怪しんだ目でまじまじと見つめたあと、俺に問う。
易者「なんだ、これ。何も見えん」
カルゴ「
易者「…わかった。大人しく従おう」
易者は大人しくスキマに入った。
このスキマは、俺のズボンのポケットの四次元の空間と繋がっているので、外の会話をポケットの中の易者に聞かせ、騒動の結末を知らせておこうと思ったのだ。
小悪魔「…あの…」
カルゴ「あぁ…ごめんな、ビックリしただろ?」
小悪魔「いえ、それより…」
カルゴ「?」
小悪魔「私、今日はかなり頑張りましたよね♪」
自分で言うなど珍しいが、確かに今日は、かなり頑張ってもらったので、素直に頷く。
いずれ、お礼をしなければなるまい。
小悪魔「なので……御褒美、下さい♪」
カルゴ「じゃ、紅魔館に帰ったらたっぷり…」
小悪魔「今すぐここで欲しいんです♪」
ピッタリと俺に抱きつき、誘うように囁く。
腰に回される手の優しい手付きと、熱いその吐息に、少しずつだが興奮してくる。
カルゴ「今すぐここで…って、野外なんだが」
小悪魔「野外プレイ…してみたいです♡」
カルゴ「今じゃなきゃダメか…?割と急いでるんだけどな…」
小悪魔「お願いします…♡」
目を輝かせる小悪魔の前に、少したじろぐ。
しかし小悪魔は、引く気はサラサラない様子で、言葉を続ける。
小悪魔「1回でイイので…ここで私と…♡」
スカートを持ち上げる。彼女の白いパンツから、透明な液体が漏れているのが確認出来た。
パンツから漏れるほどとは、恐ろしい性欲だ。
カルゴ「…1回だけだからな」
小悪魔「はい♡」
易者に聞かれぬよう、ポケットの入口を別な土地に繋ぎ、そのまま、里のハズレにある大きな木の下で行為を始めた。鈴奈庵に行くのが遅れた理由としては、主にこっちが原因だろう。
行為を終え、小悪魔を図書館へ先に帰しておき、俺は鈴奈庵へと向かった。
本物は俺のスキマにて永久封印され、鈴奈庵にて偽造書を燃やし、あとは前述の通りの流れだ。
カルゴ「今回は小悪魔に助けられたな…」
両脇でスカーレット姉妹が眠ってる中で、ボソッと1人で呟く。しかし、やはり罪悪感がある。
幻想郷の禁忌に触れているのだから。
カルゴ「チッ……ビビりだな、俺は……」
覚悟を決めた俺は、深夜の博麗神社へとスキマを繋ぎ、まだ起きていた霊夢に、真実を打ち明けることにした。
予想していた通り、霊夢の目はとても冷たいものだった。睨まれただけでも心臓が凍り付きそうなほどの、とても言葉では言い表せないレベルの、冷徹な目だ。
それに本気でビビった俺は何度も土下座をする。
霊夢「…ふーん…私に黙ってそんな事してたの。へぇ〜……」
バレたらバレたでこれより酷い結末が待っていただろう。そう思っていたから、この告白の結果、どうなっても結末を受け入れるつもりだった。
しかし、次に霊夢から出た言葉は、俺の予想とは大きく違う言葉だった。
霊夢「…そういう馬鹿正直なところ、大好きよ」
カルゴ「え……」
意外な言葉に、土下座を止めて顔を上げる。
そこには、普段より温かい笑みを浮かべた霊夢がいた。先程の冷たい目は、もう無い。
霊夢「私も人間から妖怪になったからかしらね、アイツの言いたいことも、少しはわかるのよね。だけど、幻想郷にはそういうルールがあるから、ああするしか無かったのよ…。アイツは、人間に害を与えようとしてない。だけどそれは、私や、あんたもそうなのよね。だから余計に…ね」
カルゴ「うん…」
すると、俺と霊夢の横に、スキマが開いた。
それを見た俺と霊夢はビクリと身体を震わせる。
紫「呆れたわ、霊夢…。そんな理由で、大罪を犯した者を許して、見逃すなんて」
霊夢「……」
禁忌だとわかっている霊夢はもちろんの事、俺も俯き、黙り込む。
禁忌を犯せばどうなるのか知ったものでは無い。
カルゴ「禁忌という事を知りながら…その禁忌を犯してしまい、申し訳ございません。処罰は、俺1人で受けます。霊夢と易者はどうか…見逃して下さい…お願いします…」
そうお願いし、畳に額を擦り付ける。
すると、頭にパシッと軽い衝撃が走る。
どうやら扇子で叩かれたらしい。
紫「顔を上げなさい」
カルゴ「……」
黙って顔を上げる。紫さんの表情は、相変わらず真面目そのものの顔付きだった。
だがしかし、次の紫さんの言葉は、先程の霊夢の言葉よりも俺を驚かせた。
紫「仕方ないわ。3人とも、許してあげます」
カルゴ「なっ…本当ですか?」
こんな簡単に、紫さんが禁忌を犯した事を許してくれるとは思えない。なにか裏があるはずだ。
霊夢「何か怪しいわ。何を考えているの?」
紫「…まず、易者が復活した事を知っているのは私と霊夢とエスカルゴ、そして易者本人だけよ。広まらなければ良いだけだからね」
霊夢「……本当にそれだけ?まだ何か企んでいるわよね?」
どこまでも警戒を継続する霊夢は、言葉厳しく、紫さんへの追求を続ける。
紫「里の人間が妖怪になることは、別に禁忌では無いわよ。それが、彼を許す本当の理由よ」
霊夢「えっ?でも、大罪って…」
紫「大罪と禁忌は違うわよ?…ふふっ…いつから同じ意味だと錯覚していたのかしら?」
霊夢「〜〜〜〜〜〜!!」
嘲笑うような紫さんの笑みに、霊夢は羞恥と憤怒から顔を赤く染め上げる。
紫「確かに彼は大罪を犯したわ。そこに間違いは無い。だけどね、霊夢。
レイカル「────ッ!!」
紫「明日から彼には、毎日一体ずつ、下級妖怪の刺客を送るわ。10日…つまり、10体倒し切ったら彼の罪を許す事にします。…どうかしら?」
カルゴ「器、大丈夫かな…」
紫「あなたが全力で練った器なら、壊れる心配は無いと考えていいわ。もちろん、あなた達が彼を助けてはダメよ、わかった?」
霊夢「わかってるわ」
カルゴ「もちろんです」
紫「2人への罪は…そうね…。今度行く魔界で、妖怪達を、彼と同じく10体ずつ倒してきなさい。それで許してあげるわ」
霊夢「余裕ね」
カルゴ「わかりました。……寛大なお心遣いに、感謝致します…」
畳に手を付き、再度深々と土下座する。もちろん霊夢は、そんな事はしない。
紫「じゃあ、今度の旅行、頑張ってね」
カルゴ「はい…!」
スキマが消えたことを察知し、頭をあげる。
すると、霊夢がゆっくりと口を開いた。
霊夢「“罪は償えるもの”…か。何だか、久しぶりに教訓を得たわね…」
カルゴ「ははは…。それじゃ、そろそろ紅魔館に戻るな。また明日な」
霊夢「待って。チューしてないでしょ、いちいち忘れないでよ馬鹿」
カルゴ「ごめんごめん。……っ…」
霊夢「…はい、おやすみ。私はもう寝るわね」
カルゴ「あぁ、おやすみ」
隠し事が無くなって、心がスッキリとした俺は、予知夢を見ることもなく、気持ちよく眠ることが出来た────。
まさかの易者ハッピーエンド。
原作の中でも霊夢は「大罪」と言っているので、「罪は償える」という解釈を交えました。
丸腰の易者はどう妖怪を倒すのか。
そこはお察し、肉弾戦です。
「力が強くないか、この器…」の言葉通りです。
全力で電力を練り上げ、妖力でコーティングしたあげく、霊力まで使ったのです。
普通のレベルの白狼天狗とも、殴り合いだけでもまともに戦えるほどの強さです。
分身の人格はどこに行ったのか、と?
……君のような感のいいガキは嫌いだよ。
エスカルゴと諏訪子、早苗達のように、頭の中で会話出来る、という仕組みになっております。
エスカルゴの中で得た生きるための知恵や、戦うための知恵を易者に授けてくれる事でしょう。