ハチャメチャだった選考会の次の次の日。
俺たち10人は、博麗神社の境内に集合していた。
それは勿論、裏山にすぐ向かえる様にする為だ。
メンバーは、レミリア、フラン、俺、霊夢、文、咲夜さん、魔理沙、巫月、霊愛、穹だ。
神社には霊麗しか居残らないのだが、俺の分身を置いておくので、特に心配は無い。
霊愛と霊夢と違い、霊麗は分身をこき使うような事はしないのだ。
カルゴ「準備は出来てるな?」
子供達「おー!」
旅行出発前あるあるのセリフにも、元気に、且つ可愛らしく答える子供たち。大人たちはそれを、目を細めて眺めている。
魔理沙「出発はいいが、裏山にある洞窟とやらの場所がわからん。探しながら行くのは、ちと面倒臭くないか?」
カルゴ「それなら大丈夫。昨晩、俺と霊夢で洞窟の場所の下見はしてきた」
パチッとウインクして親指を立てる。
洞窟自体は、博麗神社から歩いて15分程の、割と近場にあった。もし飛んでしまうと、洞窟は木々に隠れて見つからなくなるので、歩くしかない。飛んで接近することは可能だが、木々が邪魔で、着陸ができないのだ。
魔理沙「なら安心だな!」
レミィ「探しながら行った方が冒険っぽくて良いと思ったんだけど…その方が楽でいっか」
カルゴ「探したいなら自分で探していいぜ?」
フラン「そーそー♪」
レミィ「い、嫌よ!私も皆と行くのっ!」
フンッ、と顔を背け、頬を膨らませる。
いつもの癖で膨らませた頬へ手を伸ばそうとするが、霊夢に腕をつねられたので自重する。
巫月「質問!しつもーん!」
ピョンピョンと兎らしく飛び跳ねながら挙手する巫月。時に子供らしく、時に大人らしく…性格を使い分けているかのようにコロコロ変わる彼女の性格は、きっと鈴仙譲りだろう。
カルゴ「んぉ?なんだ、巫月」
巫月「博麗神社って、幻想郷と外の世界の境界にあるんじゃないの?」
カルゴ「? そうだよ?」
巫月「神社の表側が幻想郷なんだからさ、裏って外の世界になっちゃうんじゃない?」
君のようなカンのいいガキは嫌いだよ…なんて、巫月には言わないけど。えーと、なんて言えば?
カルゴ「んーと…境界にはなってるんだけどさ、そういう事じゃないんだよなー…。ずっとずっと進んでも、幻想郷からは出られない構造だ」
巫月「?? それおかしくない?」
カルゴ「どこかの誰かさんが、そういう説明的に面倒臭い構造にしてくれてるんだな。限られてるはずの狭い空間に、終わりの無いような空間…を見せてくる…的な感じかな?」
俺の説明に、さらに首を傾げる巫月。
魔理沙「今のエスカルゴの説明に補足するとな。神社からずっと真っ直ぐ進んで遠くに行っても、しばらく行くと、同じ景色が続くだけなんだぜ。しかも、戻ろうとしたら一瞬で戻れるんだ」
巫月「えっ…遠くなのに一瞬で戻れる?物理的におかしくない?」
魔理沙「まぁそうなんだが…」
カルゴ「物理法則を無視出来るのが、俺らの持つ《能力》…だろ?巫月」
巫月「うーん…そうなんだけど…ま、いっか…。また今度けーね先生と考察しよ…」ボソッ
カルゴ「物理法則が役に立たないのが幻想郷だ、あまり深く考えるのはやめとけよな?」
巫月「はぁーい」
そして、俺たちは神社から出発する。
山といえ、麓から全部が全部木々に覆われているという訳では無いので、途中まではみんなで列を作って飛び、俺と霊夢で先導する。
文が皆のスカートの中を撮っている事には、目を瞑ることにした。写真をもらおうとはしてない。決して娘達をそういう目で見ている訳では無い。見たいとも思わない。見るなら霊夢の(ry
カルゴ「皆、ここで降りるぜ。ここから少し歩くから、ちゃんとついてこいよなー」
一同「はーい」
霊夢「はぐれても知らないからね」
一同「は、はーい…」
魔理沙「おー、怖い怖い」
文「
俺と霊夢で僅かに開拓した、草木に囲まれている道無き道を10人で進んでいく。しばらく歩くと、足元にスゥッと冷たい空気が触れた。
洞窟から流れ出てきた空気だ。洞窟は近い。何故だかは知らないが、洞窟手前は少し涼しいのだ。きっと、洞窟の中も涼しいのだろう。
木々に覆われて日光も当たらないし、洞窟自体も日光が当たらないので、当然といえば当然だ。
霊夢「見えた。あれよ」
歩みを止めた霊夢が、岩肌にあいている小さめの洞窟を指さして、後ろのみんなに示す。
魔理沙「お、オバケでも出そうだなぁ…あは…」
霊夢「怖いなら引き返してもいいのよ?」
魔理沙「ばっ、馬鹿言え!怖いなんて言ってないだろ!?行くぞ!」
霊夢「そーね、行きましょ」
カルゴ「んだな」
ここより先に進むのは、俺も霊夢も初めてだ。
魔界がどういう所かはわからないが、地底よりもヤバい妖怪がウヨウヨといる、という話なので、用心しなければいけない。
魔理沙と霊夢と俺が先頭になり、洞窟に入る。
読み通り、洞窟の中はヒンヤリしていて気持ちがいい。霊愛に至っては「ここ避暑地にしよっと」だなんて言っている始末だ。子供だけでここまで来るのは危険なので、後で霊夢と結界を張っておこうと思う。
霊夢「あの話、覚えているわよね?」ボソッ
カルゴ「あの話?」
霊夢「10体の件」
カルゴ「あぁ、覚えてる。けど、戦闘にならない可能性も…あるんじゃないかな?」
霊夢「紫の読みはほぼ100%の確率で当たるわ。
恐らく戦闘になるでしょう。勝てるけどね」
カルゴ「……まぁ、気を付け…ん?」
霊夢「どしたの?」
カルゴ「あそこ…誰かいる」
洞窟の中をしばらく進むと、そこには見慣れない女子が1人、ポツンと壁に寄り掛かっていた。
ピンクのショートヘアーで、左側頭部にはサイドテールがあり、白い袖無しのシャツの上に、赤いワンピース?を纏っている。
幻想郷にこんな女子が居ただろうかと、俺や霊夢は顔を合わせて首を傾げる。
俺より幻想郷歴が長い霊夢、果ては魔理沙さえも見たことが無いと言う。文でさえも。
霊夢「ちょっとあんたー!そんなところで一体、何やってんのー?そっちは魔界よー?」
少女に呼び掛ける声が、洞窟内で反響する。少女と俺たちの間は、およそ20m、もう少し接近して直接起こしてもいいと思うのだが。
??「ふにゃ……?ふわぁぁ…」
目を擦ったり、あくびをしている様子を見るに、どうやらこの子は洞窟内で眠っていたらしい。
地面はゴツゴツしているというのに、よくバランスを保っていられるものだ、と内心で感心する。
??「お兄さんたち、どうしてここへ?この先は魔界、危険だよ」
カルゴ「おうよ。その魔界に用があるんだ」
??「! 久しぶりのお仕事だ…!」
狭い洞窟の真ん中に立ち、何やら身構える少女。
眠そうな顔をしていたが、「お仕事だ」と言ってからは一変、キリッとした顔付きになっている。
霊夢「仕事って何よ?」
??「…私はサラ。この洞窟の先にある魔界への扉を守護する者よ!」
レミィ「要するに、門番ってワケね。美鈴よりも有能…かしら?」
カルゴ「寝てたからそんな変わんねぇだろ」
サラ「うるさいうるさい!この先へは行かせないからねっ!えぇぇいっ!」
カルゴ「霊符『二重結界』」
サラの発射してきた弾幕を、剣を突き刺して出現させた結界でガードする。しかしそれによって、マズイことがわかってしまった。
カルゴ「霊夢、これ少しマズいぞ」
なんて軽い調子で話してはいるが、本当にこれはマズい状況だ。何がまずいかというと、まず結界にヒビが入っている。そして、もう1つ。
霊夢「殺気が出てるわね…。あの本で見た通り、向こうの奴らは殺す気で来るのね」
魔理沙「じゃ、じゃあ……スペルカードルールが適用されない…って事なのか?」
適用されないというか、そもそもそのルール自体知ってなさそうな気がするのは俺だけでは無いと思う。知っていたら、ここまでカチッと“殺し”の方に頭が切り替わらないと思う。
少しは躊躇するはずだ。
俺は、場合によっては躊躇しないが。
残忍?違うね。妖怪としての本能だ。というか、殺し合いとは生物として当たり前の事だと思う。
霊夢「月でもそうだったでしょ?あの時は魔理沙が機転を利かせて、依姫に提案してくれたけど、今回はそんな余裕が無いわね。問答無用で殺しにきてる。どうにかして押し切らなきゃ」
この言葉に、自らの認識の甘さを痛感したのか、ギリッと下唇を噛み締める魔理沙。場合によっては、この旅行も見直しだろう。
カルゴ「相手を無力化するのは俺に任せな」
霊夢「…そうね。ここはお願いするわ」
カルゴ「その代わり、新しい結界を頼むぜ」
霊夢「わかってるわ」
俺が前に出て、霊夢が結界を張った事を確認し、結界を解除して飛び出す。
殺意に塗れた弾幕が、俺の体を掠める。
どうやらサラは、スカートの端を持ってクルクルと回りながら弾幕を発射しているらしい。
しかし、そんな様子に見惚れている間は無い。
狭い洞窟内での戦闘は初めてなので、門番であるサラより圧倒的に不利なのは間違いない。
ここは、すぐに決着をつけなければならない。
カルゴ「『エスカルゴ・スパーク』!!!」
サラ「ッ!?」
両手をファイナ○フラッシュを発射する時の様な形にして、手のひらから2本のレーザーを発射。
洞窟が崩れないように、威力を抑えて、貫通力に優れている透過レーザーにした。
魔理沙のマスパではこんな芸当はできまい。
しかし、透過レーザーなだけあって、弾幕を掻き消す訳では無いので、回避も忘れてはいけない。
カルゴ「ふぃ〜…。終わったで」
気絶したサラを壁に寄り掛からせて寝かせ、列をなす皆の元へと戻った。
一応、霊夢の結界のおかげで無傷らしい。
霊夢「結構苦戦した?」
カルゴ「狭いからな。こんな狭いとこじゃ戦った試しがねぇよ…」
霊夢「そ。…どうする?行く?」
後ろのみんなに呼び掛ける霊夢。
見ると、みんなの表情は、決して明るいものでは無かった。先程の殺気を、痛いほど感じているのだろう。特に子供達は、こんな殺気を浴びるのは人生初に違いない。
カルゴ「俺は…行こう。初めての世界だし、体験してて損は無いだろう」
魔理沙「うむむ……私は行くぜ!襲ってくるなら返り討ちにしてやる!」
レミィ「この程度の殺気、痛くも痒くもないわ。むしろ心地いいわ。行くに決まってるでしょ」
咲夜「お嬢様についていきます」
フラン「もちろん行くわよ?」
文「もっちろん、行きますよ!記録は私の仕事!スクープは逃せません!」
巫月「身の守り方は教わってるし…大丈夫かな。私より、霊愛と穹はどう?」
霊愛「少しビビったけど…大丈夫でしょ」
穹「あはは…さすが姉上です…。わかりました、私も行きます!」
本当、強い子に育ったな。
口に出した途端、顔が明るくなりやがった。
カルゴ「もう引き返しはしない。わかったな?」
子供達「はいっ!」
カルゴ「よし。…行くか」
子供達に背を向け、再び歩き出す。
サラの前を通り過ぎる時に気付いたが、どうやらこの子は裸足らしかった。ずっとこんな洞窟の中に居て、痛くないのだろうか。
しばらく行くと、洞窟の奥に辿り着いた。
そこには禍々しい扉があり、いかにもな雰囲気を醸し出していた。大きな石で出来たような重そうな扉で、赤い文字で縁どりがされている。
もっとも、文字なのか記号なのか文様なのかは、誰もわからなかったが。
魔理沙「これ…だよな?入口ってのは…」
霊夢「そうね。先々代の手記によると洞窟の奥に扉があるって書いてあったし。エスカルゴ、早く開けなさいよ」
カルゴ「へいへい…」
と、扉に手を掛けて開けようとした次の瞬間。
なんと、扉がひとりでに開き、向こうから1人の少女が出てきた。
カルゴ「うわあっ!?」
???「キャッ!?」
俺もその少女も尻もちをついてしまう。
少女は、薄紫の服、首周りには濃い紫のリボン、服と同じ色の帽子をかぶっていて、茶色のカバンを持っている。パッと見、旅行者だ。
服についてはなんの服だかわからない。俺は服については無知なのでそこは勘弁してもらいたい。
霊夢「何よあんた?魔界の奴?」
???「そ、そうですけど…」
霊夢「何でバッグなんか持って魔界から出るの?幻想郷で何かやらかすつもり?」
???「やらかすなんてとんでもない!私はただ旅行に行こうと…」
霊夢「あら、旅行?私たちと一緒ね。でも…」
???「でも?」
霊夢「ついでだからあなたも倒していくわ!霊符『夢想封印』!!」
全員「!?」
いきなりスペルカードを発動させた霊夢。
俺や魔理沙が止める隙すら無くて、ましてやこの少女は、あまりの急襲に反応すらできず被弾し、気絶してしまった。
カルゴ「お、お前なぁ…!急に何やってんだよ、問題起こすつもりか!?」
霊夢「これで、私もあんたも残り9体ね。さぁ、魔界に入るわよ〜」
魔理沙「おっと、私が一番だぜ!」
カルゴ「あ、おい……あーあ、全く…。フラン、レミリア、先行ってて良いよ」
レミィ「わかったわ」
フラン「早く来てよねー」
気絶してしまった少女を、サラと同じように壁に寄りかからせて眠らせ、バッグと帽子もそばに置いておく。
皆が居なくなり静まり返った洞窟の中で、なにか光るものが落ちていた。それを拾うと、どうやらこの少女の身分証明書らしい。
カルゴ「魔界人……ルイズ、か。なんかすまん」
バッグのチャックを開けてその中に身分証明書をそっと入れておく。旅行に身分証明書を持参するとは、幻想郷には1人も居ないほどの、かなりの常識人らしい。だからこそ、余計に申し訳ない。
カルゴ「さて、俺も行きますかね」
チャックなんて幻想郷では見たことが無い。
もしかしたら魔界は、幻想郷よりも進んだ文化があるのかもしれない。それが良い物か悪い物か…非常に楽しみである。
改めて魔界が楽しみになった俺は、魔界への扉に喜び勇んで飛び込んでいった。
確か、怪綺談の異変の原因は「民間の旅行会社」だったはず。でも茨歌仙や鈴奈庵を読む限りでは幻想郷に「会社」を作るまでの文化は無いように見えました。
なので、文化的差異としては、
外>魔>天>幻=冥=地
というイメージで書いていきます。
※あくまでも個人のイメージです。
文化が発展すれば文明も発展するというこじつけ気味の解釈で、チャックはあることにしました。
※ルイズの画像見ててバッグがチャック式なのか開閉式なのか判断つかなかったので…。