魔界から帰還して数日が経った。神綺母さんとの付き合いは…まぁまぁ良好だ。
ただ1つ、難があるとすれば…。
神綺《カルちゃん、そんなにエッチなことばかりして身体は大丈夫なの!?少しは身体休ませて、まったりしないと……》
カルゴ《大丈夫だっつーの!連日で何回もヤッてねぇんだからさァ!!そんなに息子の身体が心配なら、頼むから行為中は静かにしててくれよ!?寸止めが1番身体に悪いんだからさぁ!!》
神綺《うう…それは分かるけど心配で…》
こんな感じで、とても心配性なのだ。俺の本当の母さんとは全く方向性が逆だ。…だけど、こんな母さんもイイなって思っている。なんか可愛い。
アワアワしている様子が、瞼に浮かぶ。そして、夢子がそれを窘める姿さえも見える気がする。
早苗《あのですね!今は、私とエスカルゴさんがシてるんです、邪魔しないで下さいっ!》
神綺《うぅ…ごめんね早苗ちゃん…》
と、神様のうちの誰かに怒られて、一旦は交信を断つのがいつもの流れである。
早苗「全く、神綺さんは相変わらずですね…」
行為の後、早苗はため息混じりに愚痴る。
ドライヤーの風でなびく長髪を見て、何処と無く色気を感じてしまう。
カルゴ「はは…。まぁ、悪い人じゃないからさ、あんまそういうこと言わないであげて」
早苗「悪い人じゃないって…本気で思ってます?技術者に人間を妖怪に変える薬を作らせ、ロクな実験もせずに人間界に流したあの人が?」
この発言から察するところ、早苗は神綺に対してあまり良い印象は無いらしい。それは、神奈子様や諏訪子様も同じらしいが。
カルゴ「自分の作った世界の人口が減ってたら…それくらいの暴挙に出るのも仕方ないんじゃないかな。魔界のことを思っての行動だ。純粋な善意からなんだよ。だから仕方ない」
早苗「全く、相変わらず甘い人ですね。そういう甘いところは神綺さんに似てるんですかね?」
カルゴ「さぁな。薬の製作を発案してくれたって意味では俺にとって親だし…似てても不思議ではないような気もするな」
早苗「いや不思議でしょ…」
そんな会話をしていたその時。
脱衣所の扉が開き、幼い娘、樹里愛が顔を出す。手には1枚の紙を持っている。
樹里愛「あれれ?まだお昼なのに、もうお風呂に入ってたの?早くない?」
カルゴ「暑くて汗かいたからな。その紙は?」
樹里愛「さっきね、里で小傘さんから貰ったの!なんかね、久しぶりにライブ?やるんだって!」
カルゴ「ライブ?へー…鳥獣伎楽…」
早苗「あぁ、雑音、騒音って有名な?神奈子様が頭抱えてらしたけど…」
2人だけのパンクユニット、
メンバーはミスティア・ローレライ、幽谷響子。
どうしてこの2人が出会って、パンクユニットを組むに至ったのかはよくわからない。
その音楽は「騒音としか思えないノイズだらけの爆音、メッセージ性の高い歌詞と音程を無視したシャウト系の音楽だ」と文から聞いている。
つまりは、音楽を流しながら叫んでいるだけだ。
人の寝静まった夜中に度々ゲリラライブを行っていて、若い妖精や妖怪になかなか人気があるとか聞いた事がある。
だが最近は、全く活動していなかった。
響子が白蓮から「騒音被害の苦情が」と説教され解散したという噂だったのだが…これを見る限りでは、どうもそうではないらしい。
里で小傘が…。
小傘が人間相手にこれを配るとは考えられない。恐らく、樹里愛が俺と早苗の娘だと知っていての行動だろう。
樹里愛「行きたい!」
早苗「だーめ。夜中でしょ?子供は寝る時間よ」
カルゴ「そうだな」
樹里愛「初めてだから行きたい!また活動休止になるかもしれないじゃん!」
カルゴ「まぁそうだけど…。アイツらは妖怪だ、いつかまた復活するだろ?」
樹里愛「行ーきーたーいー!!」
ドタドタと足を踏み鳴らす樹里愛。
いつもは大人しい樹里愛がここまで騒ぐことは、あまり無い。たまには甘やかしもいいだろうか。
カルゴ「良いけど、ママに連れてってもらえ」
早苗「ええ!?何でですかぁ!?」
カルゴ「期日は5日後、その日は博麗神社の日。霊夢が許してくれると思うか?」
早苗「あ〜…。はぁ、分かりました…私が樹里愛を連れていきます…。その代わり、神奈子様達への説得はお願いしますね?」
カルゴ「了解した」
……という話をした、次の日。
俺は、紅魔館でも同じような話を聞いた。
弦月姫「お父様!あ、あの…これ!」
カルゴ「ん?」
屋根で昼寝をしていると、そばに弦月姫が現れ、俺にビラを手渡してきた。そのビラは、守矢神社でも見た、あのビラだった。
カルゴ「どこでこのビラを?」
弦月姫「昨日、お母様と買い物をしていた時に、小傘さんから渡されたのです!そ、その……私とお母様と行きませんか!?」
カルゴ「うーん…ちょっと…難しいな…。なぁ、これを配る時の小傘さ、どんな感じだった?その後の行動とかさ」
弦月姫「その後は…確か、博麗神社に行くと…。配る時と言っても、至って普通でしたよ?まぁ、渡す相手を選んではいたようですが」
カルゴ「ふむ…。て事は、霊夢たちもこのビラを見てるってことか。怠惰な霊夢だから、行くとは言わなそうだな…。…行けないかもしれない…」
弦月姫「そうですか…残念です…」
カルゴ「開催日が神社の日だからな…ごめんな」
弦月姫「仕方ないです…霊夢さんですから…」
霊夢だからと言えばだいたい通じるこの風潮…。
やはり霊夢は恐怖の対象なのだろうか。
カルゴ「…後でお母様に頼んでみる?レミリアやフランも、こんなのは初めてだろうし……ライブだけなら行けると思うんだが」
弦月姫「…はい!でも…もし来れたら、霊夢さんだけではなく…私とも一緒に…居て下さいますか…?///」
嗚呼…なんと可愛いのだ我が娘よ……。
カルゴ「…そうだな!もし行けたら居てやる!」
そして、博麗神社。
俺が神社に向かうと、娘2人と霊夢が、縁側にて仁王立ちをしていた。そっくり3人が並んで同じ格好をしているのは、実にシュールな絵面だ。
カルゴ「ど、どうした3人共…」
霊麗「
霊愛「一昨日、小傘が来てビラを置いてったの。何か、会場に向かうライブ客を脅かしていいっていう、よくわかんない事言われて手伝わされてるみたい。でも、脅かされるってわかってれば怖くないし…ライブには興味あるし…連れてってよ」
霊夢「うるさいトコロに行くのはゴメンだから、あんたが子供たちを連れてって。わかった?」
カルゴ「あ、あれ…霊夢?良いのか?俺がそばに居なくても…」
霊夢「? どうせ寝る時は一緒でしょ?」
カルゴ「そうだけど…」
霊愛(なんで子供の前で言えるのかなぁ…)
カルゴ「ごめん、霊夢。実は明明後日に、予定が入っちゃってさ。どうしても外せない用事が…」
霊夢「あー?……なら魔理沙に頼むか…。ねぇ、魔理沙に頼んできてよ」
カルゴ「はいはい…」
そしてスキマを開き魔理沙宅へとワープ。今回は急ぎなので、いつも紫さんがやっているように、部屋の中へ直接スキマを繋いだ。
カルゴ「よっ」
魔理沙「うわぁぁっ!?何だ急に!?」
俺の姿を見るなり、椅子から転げ落ちてしまった魔理沙は、俺に抗議の声を浴びせる。
カルゴ「ごめんごめん。…あのさ、ちょっとだけ頼まれてくれない?」
魔理沙「はぁ…?」
カルゴ「明明後日、鳥獣伎楽のライブがあるんだけど、生憎その日は用事があるから、代わりに、魔理沙が霊愛達の面倒見てくれないか?」
魔理沙「いやいやいやいや!なんで私なんだ!?そこは親の霊夢だろ!?」
カルゴ「いやまぁ、そうなんだけど…」
それからしばらく、俺と魔理沙は立ったままで、アレコレ話をして、結果的には、「霊夢が行くなら私も行く」という結論に至った。それを聞いた霊夢は、やはり明るい表情ではなく…。
霊夢「うるっさいのよね〜、あのライブ…。ま、魔理沙が来るなら我慢しましょうか…」
カルゴ「んじゃ、霊愛たちは頼んだぞ」
霊夢「ええ、頼まれたわ」
…で、次の日の永遠亭、文の仕事場で、またまた同じような会話をして…とうとう、ライブの日が来たらしい。残念ながら俺には関係ないのだが。
カルゴ「そんじゃ、出掛けてくる」
霊愛「お父さんホントに出掛けんの?噂だけど、もうライブ見れないかもって聞くよ?」
カルゴ「あぁ…。外せない用だから仕方ないよ。復活を気長に待つさ。俺もアイツらも妖怪だし」
霊麗「どこ行くの?」
カルゴ「フン…子供にはまだ早いぜ。じゃ」
軽く手を振って、俺は神社から飛び立つ。一緒にライブに行けなくて心底残念だ。俺は俺の用事を済ませなければ。
霊愛「…行ったよ。追う?」
霊麗「そだね!ライブまでまだ3時間あるし!」
そう言って父を追おうとする娘2人の肩を掴み、尾行を阻止する霊夢。意外な行動に、娘たちは、揃って霊夢を見る。
霊夢「やめなさい、2人とも。無理に秘密を暴く必要は無いわ。誰にだって、秘密の1つや2つはあるモンでしょ」
霊愛「そりゃあ…そーだけど…。お母さんに最もらしいこと言われるとなんかムカつくね」
霊麗「ねー」
霊夢「あんたたちねぇ…!」
その時、博麗神社の境内が眩いばかりの光に覆われた。夜の暗闇で光るその謎の光は、数秒が経ち収まるなり、中から1人の女性が出てきた。
魔理沙「よっす!」
霊夢「『よっす!』じゃないでしょ!?転送魔法使わないで普通に飛んできなさい!眩しいったらありゃしないわよ!」
魔理沙「はははっ、すまんすまん。…あれ、エスカルゴのヤツは?」
霊夢「ついさっき出掛けて行ったわ」
縁側、境内、屋内をキョロキョロと見回す魔理沙に、お茶を飲みながらボソリと伝える。
魔理沙「チッ、入れ違いかよ。追いかけてどこに行くのか見てやろうとしたのに」
霊愛「気になるよね〜」
霊麗「ね〜」
霊夢「どーせ夜遊びでしょ?他の女んとこにでも行ってるんでしょ」
魔理沙「アイツが…霊夢を差し置いてか?それはちょっと考えにくいなぁ…。よし、霊愛、霊麗!ライブまではまだ時間があるから、エスカルゴを探して真っ直ぐライブ行こうぜ!」
霊夢「はぁ…」
霊愛「そうだね」
霊麗「やったっ!お母さんも行こーよ!」
霊夢「ライブ会場で合流する」
魔理沙「ちゃんと来いよな〜!」
霊愛(絶対来ないパターンだ…)
カルゴ「……こんばんはー。ミスティア、響子、居るー?」
みすち「居ますよ〜、こんばんは♪」
響子「こんばんはーっ!」
俺は、客たちよりひと足早くライブ会場へ行き、鳥獣伎楽のメンバーと顔合わせをする。2人共、幻想郷ではあまり見ない、黒塗りのテカテカした服を着ていて、色が薄いグラサンをつけている。カッコ可愛いというやつだろう。
カルゴ「なぁ、マジで俺も出るのか…?緊張で…うっ、頭と腹が…」
そう、俺が今日ここに来たのはライブを聞くためでは無い。ライブに出るためだ。心臓が、口から飛び出そうになるほどに酷く緊張している。
練習も何も無しで突然ライブに出てと言われて、正気を保てるヤツなんて、存在するのだろうか。炎火なら、緊張してもなんとかやり遂げられそうだが、緊張に弱い俺では………。
みすち「大丈夫ですって♪」
響子「いつもより多いかもしれないけど大丈夫!ノリと勢いでゴリ押そー!」
カルゴ「いつも…より多い…」
みすち「私が見込んだんですよ?エスカルゴさんなら、きっとライブを成功に導いてくれます♪」
カルゴ「んな大袈裟な…。俺に出来るのは手拍子ピアノカラオケだぞ?」
みすち「とか言ってぇ、話を持ちかけた時は嬉しそうにしてたじゃないですかぁ♪ このこのー♪」
ツンツンと肘でつついてくるミスティア。
テンションが上がっているからか、結構キャラがブレているような気がする。いつもチルノたちと組んでいる時には見られない一面だが、こういう一面もまた、イイなと思う。
響子「まさか、みすちーとエスカルゴさんが面識あるなんて知らなかったよー!」
みすち「それはこっちのセリフだよ?響子こそ、なんでエスカルゴさんと面識あるの?」
響子「えっとねー、確かねー…。説教受けてゲッソリしてたエスカルゴさんの話し相手してたの!多分その時が初めましてだよね!」
カルゴ「そうだね。あの時はほんと助かったよ」
響子「えっへん!」
みすち「説教?エスカルゴさんが?」
カルゴ「白蓮からのね…。あなたは煩悩がどーのって説教されて…燃え尽きて縁側でボーッとしてたら、響子がガンガン話しかけてきてくれてさ。いつの間にか元気出てきたんだよな。だいたい、5年くらい前かな。その後に早苗とアレだし」
響子「懐かし〜な〜!」
みすち「そうだったんですね。それじゃあ、そろそろリハ始めましょう♪ 勿論、音は小さめで♪」
響子「だねだね!」
カルゴ「おうよっ!」
この時の俺は、まだ知らなかった。
まさかこのライブで、あんな事が起こるなんて。
ミスティア↔響子(タメ)
ミスティア→エスカルゴ(丁寧語)
エスカルゴ→ミスティア(タメ)
響子↔エスカルゴ(タメ)
響子に話しかけられたら、めっちゃ元気になると思うんだよな。