※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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恐怖から生まれしバケモノの暴走

霊愛「えーと…人参、玉ねぎ、大根っと…。野菜ばっかとか重いなぁ…その都度買えばいいのに」

 

文句を言いながら買い物をしている霊愛。

ちょうど鈴奈庵の前を通り過ぎた時、ふと2人の男たちが出てきた。

 

里人1「じゃーね小鈴ちゃん。次の巻がきたら、また借りてくよ」

 

小鈴「はーい、よろしくでーす!」

 

男たちは普通の人間だ。なにかの本を、鈴奈庵に返却した所らしかった。“次の巻”という言葉から察するに、連載ものを借りていたらしい。

 

里人2「それにしてもアレ、怖かったなぁ…」

 

里人1「ああ…もしあんなのが居たら…うっ…。太陽の畑の妖怪より怖いんじゃないか…?ほら、たまに買い物に来るだろう?」

 

里人2「俺はあんまり変わらないと思うなぁ…。でもまぁ、怖かった分面白かったよな!さすが、流行ってるだけはあるよ!」

 

里人1「そうだな!2巻まだかな〜!」

 

霊愛「……」

 

流行ってる……怖い……か。

まぁた新しい妖怪が生まれなきゃいいけどな…。

 

 

 

だがしかし、さすがは博麗の娘────。

その“勘”は外れること無く、幻想郷を揺るがす、大きな事件が起きてしまうのだった…。

結論からいえば、「誰も悪くない」。

悪いのは、思いから生まれてしまう“妖怪”…。

いや、思いの元凶、“人の心”なのだ────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後─────妖怪の山。

 

その日の私は…私はいつも通り、山の哨戒任務についていた。だがあの日は、鳥も少なく、どこかいつもとは違う空気が流れていた。

そして、悲劇は始まった。

 

チルノ「うわぁぁぁぁぁ!!みんな逃げろー!!山に逃げ込めー!!!」

 

妖精達「うわぁぁぁぁ!!きゃああああ!!」

 

哨戒天狗「おい、うるさいぞ妖精共!勝手に山に入ってはならん!!」

 

悲鳴ばかり上げやがって、うるさいガキ共め…!

殺した所ですぐに湧くから困るんだよこいつは!

ていうか何だよ、山は遊び場じゃないぞ!

 

チルノ「入らせてよ!逃げなきゃ!あたいたち、だいだらぼっちから逃げてるんだよ!」

 

哨戒天狗「はあ?だいだらぼっちって…あの?」

 

チルノ「あたいたちの友達が何人も食われた!!早く逃げなきゃ全員死んじゃうよ!!」

 

伝説の巨大妖怪が妖精を食う?

ハン、嘘も休み休み言いやがれ。

 

哨戒天狗「全く、何を言ってん……」

 

ズシン、ズシン、ズシン…

 

氷精の背後から、確かにだいだらぼっちが此方に向かって走ってきていた。伝説に違わぬ、巨大な肉体。私と目が合うと、嬉しそうに口を開けた。その瞬間、言い知れぬ恐怖が私を襲う。

本能的に、「食われる」と察した。

 

チルノ「き、来た!ダメだ、もう入るからね!」

 

本来ならここで妖精と逃げるべきだった。

だが、それは職務放棄を意味する。妖怪の山ではそんなことは認められない。交戦し、適わぬならお上へと報告、それが我々天狗の仕事である。

 

哨戒天狗「な、なんだあの巨大なバケモノは…!ええい仕方ない!ここは私に任せ、お前らはすぐここから離れろ!!」

 

チルノ「ありがと!お前良い奴だな!」

 

哨戒天狗「余計なお世話だ!!」

 

鞘を抜き払い、剣を構える。目の前に迫ってくる巨大妖怪は、走りながらも体勢を低くして、私を掴もうと手を伸ばしてくる。

 

哨戒天狗「伝説だか何だか知らないが、汚らしい手を出すな下郎め!!」

 

私はだいだらぼっちの左手を切り刻む。

なんて事は無い、ただの肉だ。しかし次の瞬間、私の体に、とんでもない圧力がかかる。

 

哨戒天狗「ぐっ……!?」

 

こ、こいつ…右手で私を鷲掴みに…!?

 

するとだいだらぼっちは私を持ち上げ、口の中に放り込んだ。

 

哨戒天狗「うあああああああああ!?!?」

 

バケモノの口の中。我々と同じように舌があり、ヌルヌルと滑る。まだ、口は開いている。今なら飛んで脱出ができる。私は翼を広げ、口の中から脱出しようとする。

だが頭が前歯を抜けた瞬間、私の視界は揺れ、瞬きする間もなく、地面へ強く叩き付けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒビキ「…で、下っ端の雑魚は勿論、俺らと同じ白狼天狗、鴉天狗のヤツらも…だいだらぼっちに食われ、惨殺されたそうだ…」

 

カルゴ「何だと…鴉天狗までもか…?」

 

俺は、妖怪の山で起こった惨劇を、ヒビキと将輝から、霊夢と霊愛と3人で聞いていた。

伝説の巨大妖怪のだいだらぼっちが、妖怪の山で暴れ、大量殺戮を繰り広げた、ということだ。

事件は昨日起こり、現在も調査中とのこと。

 

将輝「俺と先輩は、いつも通り天魔様の屋敷にて稽古をしていたので…出動が、遅れたのです…。俺たちが現場に到着した時には、沢山の血溜まりとバラバラの欠片だけがあるばかりでした…」

 

ヒビキ「椛も楓も、その他の白狼天狗も…その、だいだらぼっちに恐れを為して…今じゃ寿共々、引きこもりになってる。昔からの仲間が目の前で殺され、食われたんだからな…精神的に不安定になっても…仕方ないだろう」

 

確かに、そうなってしまうのはわかる。

引きこもるというのは安全な場所なのだろうから詳しい場所は尋ねないでおく。

 

カルゴ「だいだらぼっちはどうなった?」

 

ヒビキ「たまたま通りかかった文さんが思い切り遠くに吹き飛ばしてくれたって聞いている。今はそのだいだらぼっちがどこにいるかわからない」

 

カルゴ「そっか、文が…」

 

昨日は風がなかったから、血の匂いが俺の居る所まで流れてこなかった。だから、俺もその惨劇に気付くことが出来なかったのだ。

 

霊夢「なら…見つけ次第殺すしかないかしらね。あれ、でも妖怪同士の殺し合いなら博麗の巫女は不介入の方がいいのかな。人間には危害が及んでないし…。まぁ、調べてみるから、私が動くかはそのあとで決めるわね。でもきっと、エスカルゴなら動いてくれるでしょ」

 

カルゴ「勿論だ。妖怪の山にそんなヤツが居たんじゃ、文、穹、早苗、樹里愛、諏訪子が危ない。いや、このみんなは大丈夫だろうが、他のヤツが危ないからな、俺も色々調べてみるよ」

 

ヒビキ「頼む、兄貴。俺たち直属の部下たちも、今回ばかりは総動員で事に当たらなきゃいけないほどの大事件だ。…あまり報告には来れないが、許してくれ」

 

カルゴ「報告は別にいい。別ルートで捜査する、これでいいだろ。報告の時間が勿体無い」

 

将輝「…お心遣い、感謝します」

 

最後に「お互いに気を付けて捜査していこう」と言い残し、ヒビキと将輝は天魔の元へ戻った。

天狗大量虐殺事件…何だか長引きそうな事件だ。

 

霊夢「どう思う?あの話…」

 

カルゴ「どうって…伝説の巨大妖怪の暴走かな、としか言えないな。…現時点では」

 

霊夢「私も同意見。何だか、嫌な予感がする…」

 

霊愛「私も…。だいだらぼっちってことは人型?だとしたら嫌だなぁ…まるで巨人みたい」

 

カルゴ「巨人……」

 

まさか…ね。あいつらは妖怪じゃないし、存在はしないから、幻想入りするっていうこともない。

 

霊愛「そういえば、最近里で、ホラー系の漫画が流行ってるんだよ。この前買い物行った時に里の人が言ってたの聞いた」

 

霊夢「ホラー系の?イヤねぇ、また新しい妖怪が生まれるかもしれないじゃない」

 

カルゴ「なんで新しい妖怪が生まれるんだよ?」

 

霊夢「妖怪って、元は人々の恐怖心から生まれるってのが主流だったんだけど…この幻想郷じゃあそのシステムも未だに健在でね。面倒臭い事に、人々がそれを怖がれば怖がるほど…妖怪として、生まれやすくなる。噂が本当になるって感じよ。ところでその漫画はどんなホラー系なの?」

 

霊愛「そこまではわかんないよ。でも、鈴奈庵で貸し出ししてるみたいだよ」

 

霊夢「また小鈴ちゃんかぁ…。今回は妖魔本じゃなくて普通の漫画だから始末に負えないわね…。今回の件と関係ありそう?」

 

霊愛「十中八九」

 

霊夢「え〜……はあ…」

 

大きなため息をついた霊夢はしばらくこれからの行動を考え込む。俺も霊愛も、それを見るばかりでは無く、一緒にどうするかを考える。

3人で頭を抱えるが、霊夢が「とりあえず、」と前置きして、これからすべき事を話し出した。

 

霊夢「じゃ、私は鈴奈庵に行くから、霊愛は里で聞き込み、エスカルゴは文からだいだらぼっちについての話を聞いてきなさい」

 

霊カル「了解」

 

それぞれ、スキマで霊夢を鈴奈庵に、霊愛を里の入口に運び、俺は文の捜索にとりかかる。

当然と言うべきか、仕事場はもぬけの殻だ。

ここで、俺は「まてよ?」と思う。

山側としても、今回の事件に関しての、文の持つ情報を欲しいと思うはず。とすれば文は……。

 

 

 

文「あれはだいだらぼっちなどではありません。あれはただのバケモノ…妖怪を食い殺す事だけを考えた、動く肉塊です」

 

天魔「ふむ…動く肉塊のぅ…。聞けば奴は、切り刻んでも瞬時に回復したそうじゃないか。そして慌てふためく内に食われたとな。お前がたまたま通りかからなければ、さらに大きな被害を出していたであろうな。よくやったぞ、射命丸たちよ」

 

文「ははーっ」

 

穹「い、いえ、私なんて…加速させてより遠くに飛ばしただけですので…」

 

文「素直に頭下げるんですよ穹ァァァァ!!」

 

穹「は、はい!」

 

天魔「カッカッカッカ、そう固くならんでも良いじゃろ。ワシとお主らの仲ではないか」

 

文「あ、あはは〜…」

 

 

 

やっぱ天魔のとこに居たか。

話聞きに行こうとしたが、丁度聴けてよかった。

じゃ、鈴奈庵行って霊夢と合流しよう。

 

カルゴ「よっ、来たぜ小鈴」

 

小鈴「あっ、どもども!」

 

霊夢「どうしたの?あんたは文から話を……」

 

カルゴ「もう聞いたから合流しようって思って。小鈴からも話聞きたいし」

 

小鈴「…と言っても、通り一遍の事は霊夢さんに話しましたが…」

 

霊夢「簡潔に話すわ。最近里で流行ってるのは、外から流れ着いた漫画、《進撃の巨人》の1巻。ストーリーとしては…」

 

カルゴ「いや、それはわかるよ。…俺も人間の時それ読んでたから」

 

霊夢「そう?…それで、この《巨人》が、天狗を殺した犯人だと思うのよね」

 

カルゴ「人々が巨人に恐怖したから…か?」

 

霊夢「多分そうなるわね。そうじゃなきゃ漫画の登場人物が来るはずがないわ」

 

カルゴ「ふむ。流れ着いたのはその1冊だけ?」

 

霊夢「そうなんだけど、外来本は珍しいからね、沢山刷って大量に貸し出ししてるのよね。すぐに2巻目も幻想入りするでしょうね」

 

カルゴ「これ以上その本が来るのはまずいな…。物語が進むにつれて色んなの出てくるから…」

 

小鈴「あ、あの…」

 

レイカル「ん?」

 

小鈴「2、3、4は見掛けないんですけど、5巻と6巻だけは1巻と一緒に落ちてたので、一緒に刷って広めちゃったんですけど…」

 

霊夢「えー…。でも、6巻なら物語的に考えて、あんまり進まないわよね?」

 

小鈴「えっと…多分…」

 

カルゴ「6巻ならまだ良いか。…それ以上は拾うだけにして、絶対に広めないで欲しい」

 

小鈴「わかりました。残念ですが私だけのものにしておきます!」

 

霊夢「うん、それでお願いね」

 

カルゴ「……」

 

やれやれ、わかってんのかねぇこの娘は…。

…あれ?女型の巨人が出てくるのって…何巻だ?

 

その時、血相を変えて、霊愛が鈴奈庵に飛び込んできた。こんなに焦るなんて霊愛らしくない。

 

霊愛「お母さん!!」

 

霊夢「どうしたの?」

 

霊愛「なんかわかんないんだけど、向こうから、煙あげながら大きな人型のバケモノが来てるよ!この里に真っ直ぐ向かってきてる!!」

 

カルゴ「はぁ!?」

 

霊夢「小鈴ちゃんはここで大人しくしててね!!霊愛、行くわよ!」

 

霊愛「うん!」

 

鈴奈庵から飛び出した俺たちの目に入ったのは、遠くから立ち上る蒸気。間欠泉のと似ているが、そうではなかった。少し高度を上げ、煙の根元を見ると、その煙の正体がわかった。

皮膚の無い、とんでもない大きさの巨人が、里へ向かって歩いてきているのだ。

 

霊夢「ちょっとちょっとちょっと……!何なのよあの大きさは…!」

 

カルゴ「《超大型巨人》だ…!」

 

中に人間は居るのか!?

それとも《無垢の巨人》で、見た目だけか…?

超大型巨人が巨人化能力者によるものってのは、確か6巻以降だった…はずだ。て事はあの巨人は無垢の巨人で合ってる。

なら…駆逐するのも容易い。

被害が出る前になんとかアイツを殺さなきゃ…!

 

霊夢「退治するわよ!」

 

霊愛「うん!」

 

超大型巨人へ向かって飛ぼうとする2人だが、俺は巫女服を引っ張ってそれを止める。

 

霊夢「止めないで、早くしないと───」

 

カルゴ「弾幕は通じない。巨人に通じるのは刃。…俺がやるよ。2人は鈴奈庵であの漫画読んで、他の倒し方を考えててくれ」

 

霊夢「やってみなきゃわかんないでしょ!」

 

カルゴ「後頭部より下のうなじにかけての縦1m

幅10cm。ここを抉らないと巨人は死なないよ。

頭を吹っ飛ばそうが何しようが、即再生だ」

 

霊夢「そんな…」

 

カルゴ「飛び道具は蒸気で逸らされる。…多分、弾幕は効果薄いと思う。とりあえずは俺がやって見るから、2人は里全体を覆う結界を張ってて。最悪の場合、他の巨人も来るから…」

 

霊夢「わかったわ!なら早くぶっ倒してきて!」

 

カルゴ「おう!」

 

スキマを作った俺は、超大型巨人の背後に移動。意図的に蒸気を発しているわけではないからか、そこまで熱くはない。それでも常人には耐えられない熱だと思う。

 

神綺《カルちゃん、危ないことはやめて!何なら私がやるから!》

 

カルゴ《母さんはいいよ。俺がやって、弾幕とか通じるか見なきゃダメだ》

 

神綺《危ないと思ったらすぐに逃げなさいよ!》

 

カルゴ《…わかってんよ》

 

ったく…相変わらず心配性だな…。

でも大丈夫、絶対に俺は死なないから。

 

カルゴ「…試させてもらうぜ、超大型巨人」

 

まずはうなじへの妖力弾の発射。

当たってはいるが、対象は特に反応を見せない。

真っ直ぐに里を目指している。

もしやこいつは、《奇行種》なのかもしれない。

妖怪の山より人間の里の方が近くて、人口も密集している。その可能性は無きにしも非ずだ。

ならば次だ。

妖力弾が効かなければ電力弾だ。

 

カルゴ「雷雨『村時雨』!!」

 

雨のように降り注ぐ雷。蒸気越しに見ても、肉は抉れているが傷は浅い。駆逐には至らなかった。

 

カルゴ「やっぱ武器か…。雷武器『雷刀』!!」

 

両手に刀を出した俺は、うなじに突撃し、兵長のように回転しながら、うなじの肉を削ぎ落とす。やはり、中には誰も居なかった。

そして、うなじの肉を削がれた超大型巨人は膝を折り、その場に座り込むような体勢で死んだ。

 

カルゴ「やった!討伐数1!…とか言ってられる状況じゃねぇなこりゃ…」

 

 

 

カルゴ「倒してきた。何か対策は見つかった?」

 

鈴奈庵に戻るなり、対策を見つけようと本を読み耽る3人に問い掛けるが、答えはノーだった。

 

カルゴ「…ちょっと、天魔の所に行ってくるよ。あと、にとりたち河童のとこと…小傘の工房も」

 

霊夢「いいけど…なんで?」

 

カルゴ「巨人を駆逐する為の道具を…ね♪」

 

パチッと軽くウインクした俺は、天魔の屋敷へとスキマを繋ぎ、その中に飛び込んだ。

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