門兵「エスカルゴ様!ご無沙汰しております!」
カルゴ「やぁ。天魔様は居るかな。少し、緊急の用事があるんだが」
門兵「それはもしや、
カルゴ「そうそれ。だから早く通してくれ」
門兵「わかりました!」
早口で軽く会話した俺は、門兵に案内されて屋敷の中を早歩きで移動する。すると、話を終えた、文と穹が向こうからやってきた。
文「あややっ?どうしました?」
カルゴ「巨大妖怪について、対策や結論が出た。だから、まずは被害を被った山に報告をね」
文「なるほど!あの、私たちは…」
カルゴ「仕事場に引きこもってて欲しい。ただしまた現れたら交戦せずに逃げるか、飛ばすだけに止めてくれ」
文「わかりました!」
すれ違いざまに指示を出し、天魔のいる部屋へ、真っ直ぐに向かい、軽く一礼し入室する。
天魔「やぁやぁ、久しいのぅ。どうした?」
カルゴ「件のだいだらぼっちについての結論と、対策が出ましたので、被害を被った山へ、まずは報告に上がりました」
正座して早速話を切り出すと途端に顔が暗くなる天魔。部下を多く失った者としては、当然の反応だろう。ヒビキから聞いただけだと、100人以上は死なせてしまったそうだ。
天魔「…うむ、助かる」
カルゴ「まず、あの妖怪は、だいだらぼっちではありません。人間の恐怖心より生まれし、巨人と呼ばれる特殊生物にございます」
天魔「巨人…。確かに、人間が巨大化したような姿だと聞いている。…して、その巨人とやらは、倒せるのか?切っても瞬時に再生した、と報告を受けているのだが」
カルゴ「奴らには、弱点があります。後頭部より下のうなじにかけて縦1m幅10cmでございます。ここを切除すると奴らは死にます」
天魔「うなじだと?これまた厄介な…」
カルゴ「空を飛べる我々ならばすぐ倒せましょうが、動きが恐ろしく素早い個体も、これから出てくる可能性があります。つきましては、これより河童と、とある鍛治職人達に、巨人殺しの道具の製作を依頼します」
天魔「うむ、それが良いだろう。河童の技術は、素晴らしいものがある。鍛冶職人…もしや、あの多々良小傘かの?」
カルゴ「はい。…つきましては、天魔様に2つ、お願いがありまして…」
天魔「ん?何じゃ、言うてみぃ」
カルゴ「巨人討伐に、私だけでは足りない恐れがあります。弟のヒビキと、同僚の将輝を、人手に加えたいと存じます」
天魔「うむ、わかった。あの2人ならば安心して任せられそうじゃ。もう1つは?」
カルゴ「…製作にあたりまして…資金が圧倒的に不足しておりまして……」
天魔「そんな事か。それ位はワシが出そう。山の平和…ひいては、山の者の仇討ちの為だからな。後で部下に行かせると言っておいてくれ」
カルゴ「承知しました。…感謝致します」
天魔「仇を…取ってくれ。この通りだ」
軽くではあるが、頭を下げた天魔。思ったより、思い詰めているらしい。
カルゴ「お任せを。…失礼致します」
その場にスキマを開き、にとりの工房へ直行。
彼女はいつも通り、何かの道具を製作していた。
カルゴ「ようにとり」
にとり「うわぁっ!?」
後ろから声をかけるとビクリと肩を震わせ、鋏をカチャンと落としてしまうにとり。いつもの如くスク水のような作業着のような、よく分からない格好をしている。
にとり「どしたの?エスカルゴが勝手に入ってくるなんて、らしくないね」
カルゴ「ごめん、ちょっと急いでて…。山の事件についてはもう知ってる?」
にとり「あぁ、知ってるよ。なんでも、だいだらぼっちが暴走してるんだってね」
説明している時間がおしい。
もう、だいだらぼっちで説明してしまおう。
カルゴ「…うん。それで、だいだらぼっちの弱点が判明したから、退治するための道具をにとりに作って欲しいんだ」
にとり「道具作るのはいいけど、だいだらぼっちへの対策がわかんなきゃ作りようが無いよ?」
カルゴ「それも含めて仕組みはこの書物に書いてある。金は天魔様が払ってくれるからさ、製作を依頼したい」
鈴奈庵からくすねて来た、《進撃の巨人》の1巻を手渡す。《立体機動装置》の仕組みについてのページに栞を挟んである。
にとり「漫画…って、天魔様がぁ!?おおおお、こりゃー凄く儲けられそうな予感がするぞー!」
カルゴ「金は天魔様が保証してくれる。だから、この立体機動装置ってのを作って欲しい。でも、ガスじゃ無くていい。アンカーを射出して、巻き取って、刃の付け替えが可能な道具を頼む」
にとり「刃…柔らかい方が切りやすいんだねぇ。でも刃とかは専門外なんだよなー。手探り作業になるかもしれない」
カルゴ「それについては大丈夫。…えーと…」
人里の外れにある、とある工房にスキマを開き、中に居る1人の女性をスキマで呼び込む。
小傘「うわぁっ!な、なになに!?何これ!?」
スキマから落ちてきた小傘は、当然ながら、慌てふためく。そして俺は今度は小傘に説明をする。
小傘「ふーむ、しなる軟鋼かぁ〜…。しかも使い捨てタイプ…。うん、軟鋼なら腐るほどあるよ!正直、鍛冶にはあんまり使わないからね、軟鋼は持て余してるんだよ!」
カルゴ「おお、マジか!」
小傘「しかもお金は天魔様から貰えるって?断るわけが無いでしょうよ、こんなオイシイ仕事!」
山のトップからの報酬とあって、自分の知名度も上がると考えているのだろう。小傘は嬉しそうにピョコピョコ飛び上がって喜んでいる。
カルゴ「じゃあ…小傘と河童たちの共同作業…、よろしく頼む。数としては、3つでいいよ」
小傘「アイアイサー!」
にとり「まっかせといて!」
小傘「じゃ、工房に送ってね♪」
カルゴ「お、おう」
カルゴ「ちかれた〜……」
やる事を終えた俺は、鈴奈庵に戻る。まだ霊夢と霊愛と小鈴は漫画を読んでいた。
霊夢「あら、随分早かったわね。もう天魔と河童と小傘のところに行ってきたの?」
カルゴ「うん。立体機動装置は、3つだけ作って貰うことにしたよ。俺とヒビキと将輝の3人だ。霊夢と霊愛は里の警備の方に力を入れて欲しい。あと、霊麗も」
霊夢「脇役ってのが気に入らないけど…。まぁ…今回ばかりは仕方ないわね。刃物なんかは、私にとっては専門外だし」
霊愛「そだねー…」
カルゴ「刃と機械の形が合えば、完成と言っても過言じゃないから、とりあえず明日には完成するって言ってた」
霊夢「早っ!さすが河童ねぇ」
カルゴ「小傘も、普段使わない割に軟鋼の扱いは手馴れてる様子だった。早ければ、今夜には完成するんじゃないかな。とりあえず、文が飛ばした巨人、他にも現れてないか捜索する」
霊夢「気を付けなさいよね」
カルゴ「わかってる。…小鈴、マジで気を付けてくれよ?」
小鈴「わかってますって!」
この日は、特に巨人が現れるでもなくて、一応は平和な時間を過ごすことが出来た。俺たちは里を囲う塀に沿って結界を張り、その日は神社に戻り夜を迎えた。