穹「ふふ〜んふ〜ん♪夏は夏でも、朝だけは結構気持ちいい空気ですねぇ〜♪」
朝もやに包まれる幻想郷。今日も私は、無縁塚へ向かって飛んでます。無縁塚には、外の物が度々流れ着いているのです。香霖堂の森近霖之助さんとも、たまにですが鉢合わせることがあります。拾い物を商品にしてるそうですが………。
まだ母上は寝てますし朝ご飯もまだなのですが、この朝の散歩だけは欠かせないですね。
はてさて、今日は何を見つけられるのでしょう?
穹「今日は特に収穫無しですか…残念ですねぇ。せっかく早起きしたんですが…………あれ?」
地面に残る、巨大な足跡を見つけた私。そして、瞬時にこの足跡の主を特定。これは、間違いなく先日のだいだらぼっちのモノに違いありません。こんな巨大な妖怪は見た事も聞いた事も無いのでもう確定でしょう。
ズシンズシンズシンズシンズシン…
穹「ん?」
重い音と、小さな地響きを感じた私は、地面から顔を上げ辺りを見回す。もやで隠れているので、吸血鬼の目を以てしても何も見えません。
しかし次の瞬間、もやがフラリと揺れ動き、その向こうからだいだらぼっちが“複数”現れました。
穹「あわわわわ!?こんな朝にだいだらぼっちの大群ですかぁぁぁ!?」
私の持つ団扇は子供用ですが、《風を操る程度の能力》と併用すれば母上と大差ない暴風を起こすことが可能です。しかし……パッと見20体は居るので、これは逃げる方が…いえ、助けを呼ぶのが得策でしょう。母上では無く…博麗神社にいる、父上の助けを────。
穹「それにしても…たった2体だけ、特異なだいだらぼっちが居ますね…。写真を撮って、父上に見せた方が良いでしょうか」
空中で静止し、カメラを特異なだいだらぼっちへ向けたその時。1体のだいだらぼっちが、大きく口を開け、叫び声を上げ始めました。
??「ぎぃやああああああああああああ!!!」
穹「ぎょえええええ!?」
鼓膜が破れるかと思うほどの大音量。私は、撮影する事を忘れ、急ぎ博麗神社へと向かい始めた。
?「父上!父上起きて下さい!緊急事態です!」
カルゴ「ん……」
父上…霊愛、そんな呼び方したっけか…?
いや、違うな…穹か…。
カルゴ「ふわぁぁ……おはよう、穹…。なんで、神社に居るんだ…?」
寝ぼけ眼を擦りながら枕元に跪く穹に問う。なにやら彼女は、焦っている様子だった。
穹「朝だと言うのに無縁塚からだいだらぼっちの大群が押し寄せて来ています!進行方向などから察するに、里へ向かっていると思われます!」
カルゴ「何だと!?」
だいだらぼっちの大群と聞き、俺の眠気は一瞬でどこかへ飛んでいった。しかも、また里か。
いつから幻想郷はあの土地になったのだろうか。
??「ぎゃああああああああああああああああああ」
遠くから、叫び声が聞こえてきた。人間の叫び声ではなく、巨人の咆哮だと思われる。
穹「あ…ま、またあの声だ…!あの変なだいだらぼっちが叫んでるんだ…!」
変なだいだらぼっちと聞き、俺の頭に2体の巨人がパッと浮かんだ。5巻で出てきた女型の巨人、1巻で出てきた鎧の巨人の2体だ。超大型巨人は叫ばないので除外している。鎧の巨人は、超大型巨人へ合図を送る時などに叫び声を上げるのだ。
カルゴ「おい、その“変なだいだらぼっち”って、どんな見た目だった?」
穹「パッと見は女性でした。だいだらぼっち達の先頭を歩きながら時折叫んでて……」
歩きながらだと?
おかしいな…巨人化能力者の巨人も無垢の巨人に狙われるから、歩く余裕は無いんだがな…。いや違う、この世界では、どの巨人も無垢の巨人だ!だから、女型の巨人も巨人に襲われず、さらには扇動してやがるんだ!だとしたら里がマズい!!
その結論に至った時。
バチンという強い衝撃が俺の頭に走った。
カルゴ「────ッ!!」
穹「どうしました!?」
俺が頭痛を感じたのと同時に、霊夢と霊愛が目を覚ました。寝惚けてはいない。何が起きたのか、瞬時に察したらしい。
カルゴ「おい、やべぇぞ霊夢…!」
霊夢「里全域に掛けた結界が破られた……!!」
ドドォォオオオオオオオオッ!!
小鈴「ふにゃっ!?…な、なに!?」
何気ない平和な朝を寝て過ごしていた私。だけど突然、爆音が聞こえてきて、私の眠りは終わりを告げた。寝巻きのままで外に飛び出す。
すると、里を妖怪から守るために囲われている、木造の塀が破られているのがわかった。
私の店は塀から遠い。なのになぜ、破られてるとわかったかというと─────。
里人「小鈴ちゃん、ここは危ねーど!破片がバラバラ降ってくらぁ!」
小鈴「わかってる!」
何かの強い衝撃によって空へ舞い上がった、塀の残骸が里に降り注いでくる。更に、破片が飛んできた方から、あの漫画で見たおぞましい外敵が…
《巨人》が、ノソノソと何体も歩いてきていた。
今は朝方なものだから、私みたいに寝ていた人は当然居るし、眠りが深い人なんかはまだ寝ていると思う。そして巨人は近くの民家に体当たりした。体当たりしたと思ったら、その中に手を伸ばす。
ああ、まさか…。
そのまさかだ。つい昨日も漫画で見たばかりの、あの絶望的な光景が、この里の中で…自分の目と鼻の先で広がっている。
里に響く、パキパキという怪音。小枝を折るかのような軽快な音で、巨人は人間を喰らっていく。
小鈴「そ、そんな…!」
あれが巨人…霊夢さん達が張った結界も破られ、里は恐怖心から生まれたバケモノに蹂躙されて、終わりを迎えてしまうのか……。
里の外に出るのは簡単だ。だけどそれじゃ、他の妖怪に捕まって食べられてしまうだけだ。
ズシン…ズシン…
巨人が、大きく口を開けて声も上げず笑いながら私に向かって歩いてきた。怖い。怖すぎて、足が震えて使い物にならない。大きい。生で見る巨人はこんなにも巨大なのか。
目測だけど、大体5mはある。昨日現れたという超大型巨人は60m級。だから、5mでも小さい方だとは思う。小さければ怖くないじゃないか。
頭ではそう思う。だけど、巨人の口から流れる、人間の血を見たら、そうは思えなくなってきた。
巨人が手を伸ばす。
もう、私はここで食べられて終わりだ────。
もうダメだ、と覚悟した瞬間、私の視界の端から炎のように赤い弾幕が発射され、巨人に命中。
怯んだのか、動きが止まった。
妹紅「おい小鈴、座ってないで早く逃げろ!」
小鈴「も…妹紅…さん…!」
迷いの竹林では色々とお世話になった、蓬莱人の藤原妹紅さんが、私を助けてくれた。
再び動き始めた巨人だけど、妹紅さんは怯まずに私に声をかけてくれる。
妹紅「早く逃げな!皆と一緒に、反対に逃げろ!ここは私と慧音で食い止めるから!!」
小鈴「け、慧音さんはどこに…」
妹紅「いいから逃げろッ!!」
弾幕を発射しながら怒鳴りつけられ、一瞬ビクッとしたけど弾かれるように走り出した。妹紅さんなら大丈夫。慧音さんなら大丈夫。
あの場に慧音さんは居なかったけど、多分、別の場所でさっきの妹紅さんみたいに他の人を助けて居るんだろう。
霊夢「ああ…そんな…!」
霊愛「みんなが…」
カルゴ「クソ…ッ!」
スキマで里に来た俺たちがまず最初に見たのは、体当たりされたように豪快に破壊された塀と門。そこから巨人たちが入っていったのだろう、近くの店や民家はもう全滅していた。
外の世界と違い建物の背が低いので、屋根よりも頭何個分も背が高い巨人が、沢山、里の中を徘徊しているのが見えた。
ここに来る直前に穹が言っていた通り、パッと見20体ほどの巨人が見える。
そして、異様にゴツイ巨人、サラサラ髪で体型が引き締まっている巨人を発見した。
鎧の巨人と、女型の巨人だ。
先に潰すのは女型か鎧で間違いないだろう。
体当たりといえば鎧だ。ならば、さらに塀に穴を開けられないように、鎧を先に倒すべきだ。
カルゴ「霊夢、俺はまず厄介な敵を倒してくる。2人は里の人の安全を!」
霊夢「言われなくても!」
スキマを開いた俺は鎧の巨人の背後に移動した。
俺に気付いてか気付かずかは知らないが、平地と化した里の中を散歩しているように見える。
カルゴ「雷武器『雷刀』!!」
両手に刀を出してうなじを切りつける。
だが、漫画の通りでまるで歯が立たず、パキンと刀が折れただけで終わった。
刃がダメなら弾幕もダメに決まっている。
そして、鎧とはいっても硬質化なので電気を通すかもわからない。となれば、こうするしかない。
カルゴ「融解『地上の人工太陽』!!」
巨大な火球を作り出し、それを鎧の巨人のうなじに当てる。ジュワワワワッと、とてつもない量の蒸気を上げ、火球が消えた頃には、うなじの鎧が剥がれかけていた。
カルゴ「えーと…調査兵団は……」
奇しくも俺の武器と同名の「雷槍」で鎧を剥がし爆発させて、鎧の巨人と戦ったんだ。
なら槍を刺して、爆発しろと強い思いを込めれば爆発するだろう。思いを形に。それがスペルだ。
カルゴ「混合武器『雷槍&雷爆』!!」
槍にいつもよりエネルギーを送り込んで、刺した後に爆発させる。それだけで「雷槍」と同じだ。
カルゴ「喰らえええええ!!」
ドスンと鈍い音と共に槍はうなじに刺さった。
丁度いい所に刺さったので、それを爆発させる。
周辺の鎧の欠片を撒き散らしながら、鎧の巨人はうつ伏せに倒れる。蒸気越しに見えるだけだが、再生はしていない。上手く倒せたらしい。
ならば次は、女型の巨人だ。
だが、見えていたはずの頭が見えない。
おかしいな、と振り返った瞬間─────。
女型「ああっ!」
カルゴ「ッぶ────」
俺の顔面に、女型の巨人の硬質化パンチが炸裂。
頭は吹き飛び、一旦は意識を失う。しかしすぐに再生し女型の傍へ行く。無垢の巨人でありながら格闘技や硬質化は使えるらしい。
1番やりにくい相手であることは間違い無しだ。
カルゴ「お前でも…兵長の速さには、勝てないんだもんなぁ…。雷装備『翼竜の舞』からの雷武器『雷刀』」
空中移動の素早さを上げて、まずは機動力を奪う為に足首から切り刻む。片足でも切られた女型はバランスを崩して尻もちをつく。
中に人間はいないと言うのに、弱点のうなじを、硬質化させた腕で守っている。足首の回復を待つつもりだろうが、当然俺は待たない。
腕を上げる筋肉を削ぎ、削ぎ、削ぎまくる。
やがて、足首が治る前にはなんとかうなじが顕になり、硬質化させた部分を殴って壊して、弱点を削ぎ落とした。
カルゴ「っ…かなり…厄介だった…」
妹紅「くそっ、みんなを守りきれなかった…!」
慧音「アイツらはほうぼうに散っていたからな…仕方がない部分も…多少はあるさ…くっ…」
早朝に始めた巨人掃討作戦は、午前10時を回る頃ようやく終わりを告げた。避難者らの安否確認をした所、死傷者数は200人以上にのぼっており、災害さながらの被害を出してしまった。
博麗の巫女の結界すら破られてしまっては、もう里を守る手段は無い。数時間話し合った結果は、幻想郷の実力者が、交代で入口に常駐するという結論に至った。
この惨状は瞬く間に幻想郷中に広まり、立体機動装置のより早い完成が、望まれるようになった。