「着いたわ♪」
「おお…!」
外に着いた。
ん〜、夜の冷たい空気が何とも気持ちいい。
「ま、咲夜来るまで座って待ってましょ」
「そだな」
丸テーブル1つに、周りを囲む様に椅子が4脚ある。
俺らはそれに腰掛ける。
「ふう…。咲夜さんまだかなー…」
「いくら仕事が早い咲夜でも、こんなすぐには無理よ、全く…」
レミリアが苦笑する。
「そりゃーねー…。…で、何で急に紅茶飲もうなんて?」
「紅茶飲むのに理由が要るかしら?」
「いやまぁ…要らないけどさ。なにか別の考えが有るんじゃないの?」
冗談めかして言ってみる。
「………」
え?図星か?
「まさか…図星なのか?」
「…まぁね」
「ほー…」
「最近つまんないわね」
なんだ唐突に。
「そうか?」
「なんかこう…刺激が欲しいのよねー…」
「へぇ…」
何が言いたい?
「外で思いっ切り遊びたいのよ」
…え?
「…今でも思いっ切り遊んでないか?」
「そうじゃないわ。…傘があるでしょう?」
「あるな」
「あれ持ってると手が塞がるし、何かと不便じゃない?」
「あー…」
俺と咲夜さんでフランとレミリアをおんぶした時のことを思い出す。あの時は確か…俺のズボンに傘引っ掛けて歩いたんだったな。
「そうだな、不便だな」
「そこで、よ」
「…?」
「パチェと色々話し合ってね、私たちに影響が無い程度に太陽の光を遮断する方法、思い付いたわ」
…え?なんだ急に。つーかそれって…。
いや、その前に…。
「いや、そんな事しなくても、夜外で思いっ切り遊べばいいじゃんか」
「はぁ…わかってないわね…」
ため息をつく。
「何をだ?」
「夜なんて……そうね、例えば…人里の店とかは閉まってるでしょう?私は昼間、外で思いっ切り遊びたいのよ」
「そんな滅茶苦茶な…だって俺らは吸血…」
バンッ!
レミリアがテーブルを叩く。
「滅茶苦茶じゃないわ!普通の妖怪や人間は傘なんてなくても外で遊んでるのに、私たちだけそんなのって無いわよ!フランもそう思うわよね?」
「うん!!」
フランが強く大きく頷く。
「ええ……まぁ落ち着け…」
言ってることはわかる。
「ひろーい原っぱで、咲夜やパチェ…みんなで追いかけっことかもしてみたいわ〜…」
先程とはうって変わって、うっとりとした感じで言うレミリア。
「ふむ…」
「でも、そうするには、私たちは自分で傘持たなくちゃいけないし…」
「うん」
「それってあんまりだと思わない?」
「そうだな…」
とりあえず簡単にまとめると…。
「昼間の野外で思いっ切り遊ぶには…傘が必要。でもそれは不便だし嫌だから、太陽の光を遮断するしかない…と。そういう事だな?」
「そうね」
うーん…俺はどうするべきなんだ?
例えとは言え、人里とか言ったからにはそこそこ大規模なんだろうし…本来なら止めるべきなのだろう。
「…それで?それやったらどうなるってんだ?」
「当然、霊夢が止めに来るでしょうね。他の奴らからしたら迷惑だもの」
「霊夢?」
まさか…と思いつつ、会ったことないから知らないふりしとく。
「ああ、あなたは霊夢に会ったことないのよね」
「そだな」
「博麗神社の巫女で、妖怪退治を生業としてるみたい。詳しくは知らないし、本気を見たことはないけど、かなりの力の持ち主らしいわ。この幻想郷の結界を維持するっていう仕事もあるみたいね」
「ほ、ほう…」
ひえぇぇぇぇ…
「本気で戦っても、まず勝ち目は無いでしょうね」
「えええ……」
「そこで、止めに来た巫女に条件を提示するのよ」
「条件?」
「そ。『少しの間だけ太陽の光を遮断させてくれ、しばらく遊んだら元に戻すから』ってね」
「そんなん許してくれるのか?」
「…許してくれたらしばらく遊びましょ。許してくれなかったら……」
「…許してくれなかったら?」
「勝負申し込んで、もし私たちが勝ったらそれを許してもらいましょ」
さっき勝ち目無い言ってたばかりじゃん…。
まーいいけどさ…。それより…
「少しの間ってどれくらいだ?」
「ほんの1週間だけよ」
「1週間!?」
「その間だけでも、外で思いっ切り遊ばせてもらいましょうよ」
こうもしつこく「外で」「思いっ切り」と連呼するからには、よっぽど溜まってるんだな…。
仕方…無いか…。
「俺は…何をするんだ?」
「霊夢を倒して」
「…は?」
「もちろん、門番は置いとくけど…起きてるかわからないからね…。けど、玄関から来るのは間違い無いから、あなたはそこで待ってて。霊夢が来たら条件を伝えて、ダメだったらやっつけて」
「なんで玄関から来るってわかるんだ?」
「玄関以外から来るのは魔理沙くらいだからね」
「へ、へぇ…」
たしかにそうかもな。
「私たちは、もしもあなたがやられた時のために、控えとして残ってるわ」
…俺1人で霊夢の相手?
「あっ、咲夜さんは!?」
「私の独断で行う事だもの…咲夜まで巻き込むわけにはいかないわ」
「うぇ〜…」
案外優しいんだな…。
「ん?さっき、パチュリー様と話し合ってって言ってたよな?」
「言ったわよ?」
「パチュリー様はこの戦いには参加…」
「呼んだかしら?」
ギクゥッ
「あ…パチュリー様…」
なんでここに?
「レミィったら…この前言ってたあれ、ホントに実行するつもりなのかしら?」
「あら、ダメかしら?というか、なんでここにパチェが居るの?」
「外の空気を吸いに来ただけよ。それでエスカルゴ。私が…なに?」
「あ…えっと…」
「答えなさい」
「…もしそれを実行するなら、パチュリー様もこの戦いに参加するのかな〜、と…」
「…してもいいけど…魔理沙の相手だけね」
「え?魔理沙?何故に?」
「霊夢が妖怪退治に行こうとすると、魔理沙が別ルートで来るのよ」
「ほえ〜…」
「同じ魔法使い同士、私が直々に倒してあげるわ」
おお、魔理沙のことを魔法使いって認めてる…!
「じゃ、魔理沙はパチェがお願いね」
「ええ。侵入経路はなんとなく予想はついてるわ」
すげ!というか…なんか乗り気じゃね?
まぁ断られるよりずっとイイけどな。
「魔理沙以外の奴が来たらどうするんだ?」
念の為聞いておく。
「魔理沙以外の誰かが首を突っ込むとは思えないけど…そうね…その時もエスカルゴにお願いするわ」
…マジすか…。
「…りょーかい…」
「決まりね」
「そ、そうだな…。決行日はいつだ?」
「そうねぇ…。パチェ、あなたはいつが良い?」
「明日か明後日…出来るだけ早めがいいかしら…」
えっ、ちょま…。
「わかったわ。なら…明後日にしましょう」
マジか…。
「わーい!楽しみだな〜!」
フランが楽しそうな声を上げる。
うーん、明後日か…。
ん?1週間って言ったら…月曜も入ってるから鈴仙と会う日も入ってるよな。どうしたものか…。
「浮かない顔ね、どうしたの?」
「あ、ああ…来週の月曜も鈴仙のとこ行く約束してるんだが、もしこれが成功したら行けなくなるのかなって思ってな」
「ふぅん…。ま、1週間のうちの1日くらいなら良いわよ。その日以外はずっと私たちの相手してもらうけど」
「そーそー♪1日ならね♪」
「お…そうか、ありがとう」
ホッとしたぜ…。
「紅茶をお持ちしました」
あ、咲夜さん来た。
「あら、来たわね。…咲夜、あなたに言っておくことがあるの」
「なんでしょうか」
「明後日は、あなたは1日休んでなさい」
「…はい?何故ですか?」
「ちょっと…朝から秘密の予定が出来てね。忙しくなるから、その間だけゆっくりしてて貰いたいの」
「私もお手伝いします」
「いいわ。私の独断で行う事だもの」
「しかし…」
「しかしもかかしもないわ。これは当主命令よ。明後日はゆっくりしてなさい」
「………わかりました…」
当主命令ってオイオイ…職権濫用か〜?
そんな横暴な言い方…。ま、レミリアらしいっちゃらしいがな。たまには休ませてあげてるか。
「では、皿洗いして来ます」
「ご苦労様」
「いえ」
「…さて。成功の前祝いよ。乾杯!」
レミリアが音頭をとる。
「カンパーイ♪」
「…やれやれ…」
「乾杯」
4人で乾杯する。
果たして、成功するだろうか……。
「ほら、見てみなさい。満月が綺麗よ」
「わ〜♪」
「中々ね」
「すっげ…」
そこから見る満月は、とても紅く、大きく見えた。
その後。
既に3人でベッドの中に居る。
「…ねぇお姉様」
「なに?」
「なんで咲夜だけ仲間はずれなの?」
「仲間はずれじゃないわよ。いっつも私たちのために働き詰めだからね、たまには休ませてあげたいじゃない?」
「それはそうだけど…なんでその日に?」
「なんとなくよ」
「なんとなく?」
「ええ。深くは考えてないわ」
「そう…」
「なんで?」
「ううん、なんでも…」
「決行は明後日…なら、明日は何するの?」
「フランは察しが悪いわね…」
「なによー、もう」
「エスカルゴ、教えてあげなさい」
ビクッ
黙って話を聞いてた俺はビックリした。
えーと?明日は何をするか?
「明日は決行日の前日だから…その準備ってところかな?」
「そうよ」
「なるほど〜!流石エスカルゴね!」
「へへ…」
「これくらい誰にでもわかることよ」
「そうかなぁ〜?」
「そうよ」
「ふーん…」
「ふーんって、あんたねぇ…」
「はいはい、そこまでそこまで。明日準備するんなら早く寝た方が良いんじゃ無いのか?」
俺を挟んで言い合いはやめて欲しいから2人を止める。
「むぅ…」
「ふんっ…まぁいいわ。エスカルゴの言う通りね」
「よしよし。じゃ、寝よか〜」
2人をナデナデする。
「えへへ、ナデナデ久しぶり〜」
「そうか?」
「そうよ。あ、あとほっぺムニムニもしてないわ」
「む、そうか。ならムニムニさせてくれ」
「うんっ♪」
ムニムニ…ムニムニ…
「フランのは相変わらず柔らかいなぁ〜♪」
「エスカルゴのも相変わらず硬いわ〜」
「ちょっと!フランのばっか触ってないで私のも触ってよ!」
ゴキッ
「アウチ」
見合ってムニムニし合ってたのに、頭を持って無理矢理レミリアの方に向かせたから首が鳴った。
「わかったわかった…2人の同時に触るから」
「全くもう…」
片手でムニムニする。
両手で触りたかったが仕方ない。
怒らせたくはないからな。
「ホントね、エスカルゴの硬いわ」
「そう言うレミリアのは柔らかいな」
「お姉様のとどっちが柔らかい?」
「迷うから答えない」
『答えてよっ!』
「どっちも柔らかい!」
『ダメー!』
「ハイハイ、ほらもう寝るぞ〜」
『逃げないで〜!』
「明日の朝答えてやっから!な?」
「…絶対だからね」
「わかったわかった。よし、寝るぞ」
『おやすみなさーい…』
「…手、忘れてるぞ」
『あっ!…えへへ…』
ギュッ
『おやすみなさーい!』
「ほい、おやすみ…」
はぁ…紅霧異変起こすのか…。
霊夢…どんくらい強いのかな…?
異変を起こすことに対し、一抹の不安を覚えながら眠りについた。
はい、という訳で…。紅霧異変です。
…頑張ります!!!
エス:「勝たせろよ?」
筆者:「さあな」
エス:「おいおい、マジかよ」
筆者:「せいぜい頑張ってくれ」
エス:「気ィ乗らねぇなぁ…。咲夜さんどーすんだよ」
筆者:「レミリアに任せるさ」
エス:「ケッ…わぁったよ」