ネットの反応が特に面白かったですね。
霊夢「…とりあえず、里には来てみたけど…」
魔理沙「特に異常は無い…か?」
咲夜「そのようね。平和でイイけど」
里へ訪れた俺達が目にしたのは、いつも通り平和な里であった。巨人の襲来もあったが復旧・復興作業は既に終わり、元通りの姿になっていた。
カルゴ「んじゃー、別な───…」
別な所に行こう、と提案しようとしたその時。
里人「きゃあああああああ!!」
一同「ッ!?」
突然、里の中から悲鳴が聞こえてきた。このタイミングで悲鳴とあり、俺たちの頭の中に、「大人しい妖怪の凶暴化」という言葉が浮かんだ。
魔理沙「行ってみようぜ!」
霊夢「そうね!」
声の聞こえてきた方へ近付いているのか、人々が怯えた表情で走ってきた。この先に何かいるのはもはや間違いない。
魔理沙「はぁ、はぁ…ここか…?」
里に流れる一筋の運河。その傍に生えている一本の柳の下に、胴体から離れた頭だけがフヨフヨと浮かんでいる奇妙な少女と出会った。
魔理沙「里の人間達を脅かしたのはお前だな!」
赤蛮奇「……驚かないの?頭が離れてるのよ?」
魔理沙「その程度何とも思わん」
魔理沙の言葉に、俺たち3人も頭を縦に振る。
何せ、頭が離れるくらいならば俺にとっては日常茶飯事だからである。というより、他の妖怪達の方が濃いヤツなので、この程度では…という意味合いが強いだろう。
赤蛮奇「私を見ても怖がらないなんて許さない」
魔理沙「お前程度の妖怪なんて、もう倒し飽きたからな。とうに見慣れちまったぜ」
言い方が酷いな…まぁ確かにそうだけどさ。
赤蛮奇「そんな傲慢が妖怪の反逆を生むんだよ。夜も昼も、恐怖で歩けなくしてやる!!」
そう言い切ると同時に弾幕を発射し始めた。全方向に伸びる、速度は遅めのホーミング弾。地味に追尾してくるので、ホーミングだと思う。
赤蛮奇「首符『クローズアイショット』!!」
スペルカードの発動を宣言する赤蛮奇は、直線に素早く伸びるレーザーと、頭部を発射する。
カルゴ「うおっ!?」
頭だけが飛んでくるのはなかなかシュールな絵面である。妖怪は見慣れていても、ちょっと怖い。頭の速度は遅いが、しつこく追尾してくる。斬り飛ばしたいが、一応本人の頭なので下手に攻撃はできないと思う。
胴体の放つレーザーは大した事ないが、はっきり言って鬱陶しい。当然だが、避けるのに邪魔だ。ならば、先に胴体のみの動きを封じてレーザーの発射を辞めさせ、次に頭の動きを止める。恐らくこれが良いだろう。
レーザーは邪魔で、頭は追尾だけだからだ。
…いや、胴体に攻撃するにしても頭が邪魔だ。
ならば同時に攻撃するのがいいだろうか。…段々頭がこんがらがってきた。こうしてゴチャゴチャ考えるのは嫌いだ。とりあえず行動あるのみだ。
カルゴ「深淵『ブラックホール』!!」
頭「ん…?ひ、引き寄せられ…」
魔理沙「おっ?」
カルゴ「今だ、先に胴体を攻撃だ!」
魔理沙「了解だぜっ!」
頭「こ、これしき……!」
歯を食いしばって漂う頭だが、魔理沙はそちらに目もくれず、胴体にミニ八卦炉を向ける。
魔理沙「恋符『マスタースパーク』!!」
いつも通りのキメ技を放ち、勝利を確信した俺。
しかし、彼女のミニ八卦炉から出たのはいつもの虹色光線では無く─────。
魔理沙「うわわわわ!?な、なんだこりゃ!?」
カルゴ「えぇ!?」
マスパの代わりに発射されたのは、黒紫色の禍々しい色のレーザー。しかも、威力が上がっているのかとんでもない轟音と膨大なエネルギーが周囲に漏れ出ている。
魔理沙「ちょちょっ、これはダメだ!!」
マズいと判断した魔理沙はレーザーの発射を中断して、通常弾幕での攻撃に移行する。一部始終を見ていた霊夢と咲夜さんは、付喪神化した道具を使用することの危うさを感じ取ったようだった。今のレーザーの不具合は、確実に今起こっている異変と関係がある。いや、そう思うのが自然だ。
魔理沙「何なんだ今の…」
カルゴ「だったら俺が!喰らえ、『エスカルゴ・スパーク』!!」
両手から2本の極太レーザーを発射する。道具を使っていないからか、こちらは大丈夫である。
透過レーザーを喰らった胴体だが、あまり効いていないのか、倒れはしなかった。
そして、スペルを終了したのか、吸い込まれずに漂っていた頭部が胴体に戻った。
赤蛮奇「くっ、なかなかやるじゃないの!飛頭『マルチプリケイティブヘッド』!」
カルゴ「うわっ!?」
霊夢「うわー…」
咲夜「どれが本物かしら…」
赤蛮奇の次のスペルカードはなんと、頭を5つに分身させ、それぞれの頭の両方の目からビームを出させるという、アブノーマルなスペルだった。しかも、青色のゆっくりめの弾幕までも発射してくるらしい。素早いレーザーとゆっくりな弾幕…速度をズラしてくる弾幕は、俺の苦手な種類だ。さとりとの課題に、加えておくとしよう。
咲夜「とりあえずこれ…にっ!」
1本のナイフを1つの頭へ飛ばす。サクッと勢いよく刺さった頭は偽物だったのか、そのまま煙となって消えてしまった。
霊夢「だったら私はこれよ!喰らいなさい、妖器『無慈悲なお祓い棒』!!」
自我のあるお祓い棒を振り回し、頭を消し、頭を消し…残り1つになるまで、消しまくった。その残った頭が本物だったのか、胴体に戻って、次のスペルカードの詠唱に入った。
赤蛮奇「飛頭『デュラハンナイト』!!」
すると、これまた頭と胴体が離れてしまう。
頭は1つだけだが、素早く縦横無尽に動きながら目からビームを乱発する。胴体は、最初のスペルのようなグネグネと動くレーザーを、大量に発射する。レーザーとレーザーの組み合わせ…これも俺が苦手とする種類の弾幕である。
どうやら俺は、赤蛮奇とは相性が悪いらしい。
もうさっさと決着をつけたい。だがここは里の中なので、あまり派手なスペルは、使用不可能だ。
カルゴ「霊夢、複合スペルでキメんぞ!」
霊夢「それがいいわね!あんまここで長引かせるものでもないしね!」
霊夢にも俺の意図は伝わったらしい。俺は霊力に遷移し、霊夢の霊力と同調させ、力を合わせる。
レイカル「絶鬼愛『封殺夢雷』!!!」
封印効果のある方を発動させた俺達は、一時的に赤蛮奇の妖力を封印し、スペルを強制終了させた上で気絶させる。
霊夢「ふぅ…。里の中は戦いにくいわね」
カルゴ「全くだよ…」
魔理沙「だな…」
咲夜「中々に大変だったわね」
気絶した赤蛮奇を近くの路地の壁に寄りかからせ俺達はまた行動を開始する。次の目的地はもう、決まっている。
普段は大人しく(?)、里の中で暮らしている…。
小傘「えぇ?姫と赤蛮奇が凶暴化してたぁ?」
霊夢「そ。あんたは…一応大丈夫そうね。なんか知ってることあったら教えてくれないかしら」
鍛冶屋の多々良小傘は、どうやら大丈夫らしい。それを確認した俺は、内心でホッとしていた。
小傘にはこの剣を作ってもらったという恩があるので、出来ることならば戦いたくなかったのだ。
小傘「知ってること…うーん、特には無いなぁ。今日もいつも通り、鍛冶仕事をしてただけだし。普段大人しい妖怪が凶暴化するってんなら、竹林にでも行ってみればどうかな?」
霊夢「なんで?」
小傘「ほら、あそこは大人しい狼がいるでしょ?ないとは思うけど、確認がてら…うん」
霊夢「ふむ…」
誰だっけ、と言わんばかりに悩む霊夢と魔理沙。そもそも、それが誰なのか考えすらしない澄まし顔の俺と咲夜さん。
小傘「それにしても妙だねぇ…。力のあるヤツが凶暴化じゃなく、力の無いヤツが凶暴化なんて。吸血鬼のお嬢様は大丈夫なんでしょ?」
咲夜「ええ」
小傘「へ〜…不思議なこともあるもんだねぇ」
魔理沙「全くだ」
小傘「エスカルゴの剣…なんかヤバいね。まるで封印解かれた直後の魔剣みたいな気配だよ。体は大丈夫なの?」
カルゴ「うん、大丈夫。…まぁ、とりあえずさ、竹林行ってみようぜ?確認の為にさ。というか、竹林と言えば巫月の行動範囲だし…危ないかも」
霊夢「あの子なら大丈夫だと思うけど……用心に越したことはないわね、行きましょ」
小傘「もう夜になっちゃうから、できるだけ早く行って!しかも今日は満月の日!あの子、満月になると変身しちゃうよ!」
霊夢「わかったわ」
魔理沙「合点承知之助だぜ!」
咲夜「失礼します」
カルゴ「そんじゃーな!ありがと!」
駆け足で工房から出た俺たちは、迷いの竹林へと真っ直ぐに飛び始める。狼の妖怪という事から、空ではなく地上を闊歩していると予想して、地上から向かうことにした。迷わぬよう、俺が出したロープに続きながら。
カルゴ「あーあ…夜になっちまった」
秋の日は釣瓶落としとはよく言ったものであり、オレンジ色に輝いていた空はもう闇に包まれて、キラキラとまたたく星と、煌々と輝く満月が空にあるばかりだ。
空気が綺麗だと、見える景色も実に素晴らしい。
魔理沙「うーむ、周りが良く見えんな」
霊夢「私は見えるわ」
咲夜「私も」
カルゴ「俺も」
魔理沙「お前らは吸血鬼だからだろ!というか、4人中3人が吸血鬼って!吸血鬼率高くね!?」
霊夢「それには同意するわ」
咲夜「同意しか無いわね」
カルゴ「禿同」
あっけらかんと答える俺達に、頭の上にグルグルマークを浮かべていそうな顔をする魔理沙。
どういう反応を期待していたのだろう。
そして、そんな会話をしながら進んでいた俺たち異変解決一行であったが、俺の鼻が突然、異臭を感知したので3人に止まるよう頼む。
魔理沙「異臭だぁ? 私はそんなの感じないぜ?」
と、魔理沙は笑い飛ばすが。
霊夢「どこら辺から? どんな臭いがするの?」
咲夜「もしや、その狼の臭いですか?」
俺の鼻の良さを知っている2人は、逆に詳しく、臭いについて尋ねてくる。…これは獣の臭いだ。
カルゴ「多分、狼の妖怪ってのが近くに───」
影狼「呼んだ?」
一同「……」
まさかの御本人の登場に驚きを隠せない俺たち。
探す手間が省けて丁度いいが。
影狼「私を退治しに来たのね?」
カルゴ「……」
何だこの天子みたいな発言は…。
魔理沙「あー、退治されたいようだな」
霊夢「ええ、暴れるようならね」
影狼「あなたたちに私が倒せるかしら?」
咲夜「ヤル気満々ね」
満月ということで気が昂っているのだろう。俺もその例に漏れずに、少しばかり気が昂っている。吸血鬼は満月が大好きだ。
魔理沙「ぶっ飛ばしてやるぜ、この八卦炉でな!覚悟しやがれ!」
影狼「ふふふ、当たるもんなら当ててみな!月に祝福されたこの地で闘う不幸を悔やむがいい!」
ニヤリと口元を歪めた影狼は、前触れもなく弾幕を発射し始める。時計回り、反時計回りに動く、これまた苦手なタイプの弾幕だ。
斜めからの弾幕は、やはり苦手である。
カルゴ「殲滅『Breath of Thunderstorm』!!」
苦手は、ぶっつけ本番では無理して対処せずに、素直に相殺という解決法を使う。被弾して下手に体力を減らしても意味が無いからだ。
影狼「咆哮『ストレンジロア』!!」
弾幕を粗方相殺されてしまった影狼は、1枚目のスペルカードを発動させる。大きめの弾幕が影狼を中心に現れ、赤い小粒の弾幕と形を変えて動き始める。
バラバラと動く系のスペルは、対チルノで慣れてしまっているので、これは大丈夫だ。
咲夜「お夕飯は弦月姫が準備するとはいえ…早く帰るに越したことは無いわよね。旦那様、ここは複合スペルで一息に片付けてしまいましょう」
カルゴ「オッケーです!」
咲夜「では…!」
カル咲「愛刃『2人きりの世界』!!!」
時を止め、咲夜さんは金属製のナイフを配置し、俺は電力のナイフを大量に配置する。全方位だ。勿論不可能弾幕にならない程度には抑えている。
咲夜「…解除ッ!」
影狼「あれっ……うぎゃああああっ!?」
呆気なく全身に被弾した影狼は気絶。大人しく、その場に寝かせておいた。
魔理沙「ヒュー…容赦ねぇぜ…」
霊夢「抜け穴を対象の背後に作るとか…。気付かなかったら不可能弾幕って言われるわよ…?」
咲夜「不可能弾幕じゃないから、そう言われても別に構わないわ。霊夢がそう認知してれば、ね。背後の抜け穴は、旦那様の考案でね。ギリギリで抜けられる程度の穴は作らないとなぁと仰って、わざと開けてるんだから」
霊夢「いやまぁ、開けるのがルールなんだけど。…とりあえず、次はどうする?」
咲夜「うーん……」
怪しい対象である影狼を倒した事により、俺達は若干、手持ち無沙汰となった。……が、しかし。次の目標が、また向こうからやって来てくれた。
霊夢「…なんか変ね。特にあの雲」
魔理沙「ああ。風が騒いでるぜ」
咲夜「次の舞台は上空かしら」
ザアァァッと竹林を吹き抜けた風を浴びた霊夢は空を見て呟き、魔理沙は帽子をかぶり直してからニヤリと笑い、咲夜さんは優雅に髪を直す。
3人共、空に浮かぶ奇妙な雲を見ている。
カルゴ「じゃあ、行くか。あの雲の中まで」
霊夢「そうね。あそこにこの異変の元凶が居ると私の勘が告げているわ」
咲夜「ふふっ…頼りにしてるわよ、霊夢」
魔理沙「霊夢の取り柄は勘だけだからな!よし、このまま飛んでくぜ!」
箒にまたがって、魔理沙は上空へ向かい始める。霊夢は無言でそれを追って、咲夜さんはそんな2人に苦笑いをして、俺に手を差し伸べる。
咲夜「行きましょう、旦那様♪」
カルゴ「ですね♪」
その手を取った俺は翼を大きく広げ、先に発った2人を追いかけ始めた。