力比べ(という名の暇潰し&腕試し)の当日。
紅魔館門前の平野には、可愛い娘たちが6人と、対戦相手の白狼天狗、鴉天狗戦闘部隊が居た。
人数は、目測でおよそ400+300人ほどである。
俺が白狼天狗と戦った時よりも増えているような気がするが、細かいことは気にしないでおこう。
あの頃幼かった天狗が成長して、今この場にいるというだけだと思う。
そして、その戦いを見守る観客…もとい親達が、門の向こうでその様子を見守っている。
もちろん、紅魔館の主やその妹も、そこにいる。
娘達と天狗軍の間には、主催者である天魔と俺がいる。これから一同へ向けて、“開会の言葉”的な事をするらしい。
天狗の長である天魔からと、子供達の親である、俺からである。何と言うかは既に決まっている。まずは、準コミュ障である天魔が、口を開いた。
天魔「あー…ゴホン。白狼天狗・鴉天狗の諸君。今日は、血が沸き肉が躍る様な、激しくも美しい戦いを楽しみにしておるぞ!!せいぜい、わしを楽しませてくれぃ!!」
グッと拳を握り、声を荒らげる天魔。
相変わらず、とても元気なお方である。
天魔直々の観戦とあり、白狼天狗や鴉天狗たちは固まっている。ものすごく緊張しているらしい。だが、天魔の言葉は続く。
天魔「皆に伝えた通りだが、今日の対戦相手は、エスカルゴの娘達6人じゃ!並の妖怪よりも数倍恐ろしい力を持っておる、心してかかれい!」
天狗達(だからって、この人数差で子供に負ける訳が無いだろう…)
天魔「…ほれ、次はお主じゃ」
カルゴ「ウッス。…えー、我が娘達よ」
天魔に脇腹を突かれて、言葉を催促された俺は、頭の中で作った台本通りの言葉を口に出す。
カルゴ「俺の娘達だから、この程度の人数差なら楽にひっくり返せると思っている。また、なんで夜に開催なのかは……互いに本気を出して戦える様に、という天魔様からの温情だ。しっかり戦いそれに報いてくれ。折角今夜は、俺達の大好きな満月なのだから。……以上だ」
天狗達(噂以上の親バカだ…。“楽に”だと?させないぞ、そんな事は…!あんな子供に負けると、本気で思っておられるのですか、天魔様…!随分見くびられたものです…!)
霊夢「アイツ…変わったわね」
魔理沙「どこら辺が?」
霊夢「こういう開会の言葉みたいなやつ…最初はガチガチで、トンチンカンな事しか言えなかったでしょ?ほら、異変解決後の宴会とか」
魔理沙「ははっ、そーだったな!あの頃の面影はもう無いなぁ…成長したもんだぜ」
霊夢「そうねぇ…」
カルゴ「それじゃ…始めますかね」
天魔「うむ!さぁ、身構えよ!!」
天魔の声を聞いた娘達、天狗達は、拳や刀を構え戦闘態勢に入る。その場にピリピリとした空気が流れ、殺気までも感じられるほどになる。
その様子を見た俺と天魔はほくそ笑んで、天魔は天狗達の背後へ、俺は観客達の居る門の手前まで移動する。ここは娘達の背後にあたる場所だ。
天魔「初めぃッ!!!」
天魔の鋭い声が耳に入るのと同時に、ワァァッと襲いかかってくる天狗達。姉妹間の司令塔こと、長女の巫月は早速指示を出す。
巫月「霊愛と霊麗はさっき言った通りにね!穹は弦月姫の援護!茜は、スキマで皆の前に運んで!私はとにかく、斬ったり飛ばしたりするから!」
5人「了解!!」
さっき言った…一体何と言ったのだろう、という疑問を抱いた直後、博麗姉妹が答えを漏らした。
霊愛「まさか好きに暴れさせてくれるなんてね!こんな機会、逃すはずが無いでしょ!」
霊麗「上手く調整出来ると良いけどな〜♪」
なるほど、博麗姉妹の膨大な力を有効活用させるには、型にハメた戦術ではなく、彼女らの好きに暴れさせるのが良いというわけだ。
どういう思考回路でそう指示を出したのかは俺にわからないが、多分そんな感じの思考だと思う。
穹「おや、巫月姉上の援護ではないのですか?」
巫月「私の雷はそんなに加速させられないから!でも、ナイフなら凄く加速するでしょ?」
穹「…!」
穹の加速能力もここ数年で詳しくわかってきた。
加速させる際、予め速い物を加速させるときは、加速度が大した事ない。しかし低速の物体ならば爆発的に加速するようになる。
雷は速度調整が出来ないので、巫月は、雷よりもナイフを加速させた方が良いと結論を出した。
巫月「さ、いくよ!散開ッ!!」
巫月の掛け声で、方々に散る6人姉妹。向かってきていた天狗達は、目の前で標的が消えたことによって驚きを隠せず、統率の取れていた動きから一転し、バラバラになり始めていた。
巫月「雷武器『雷刀』!雷速『疾風の電気兎』!やあぁぁぁっ!!」
刀を構える天狗達に、両手に刀を出した巫月は、移動速度を上げて突撃する。当然、天狗達はただではやられない。刀を受け止め周りの者が援護をするが、巫月は後ろ蹴りで刀をへし折る。
巫月「吹き飛べ!雷爆符『ギガサンダー』!!」
天狗達「うわぁっ!?」
巫月を囲うようにしていた天狗達は全方位に発射された巫月のエネルギーに耐えられず、皆一様に吹き飛ばされてしまう。
カルゴ「ヒュ〜…やるねぇ」
鈴仙「巫月、あの技使えたんだ…」
カルゴ「俺の雷のスペルは、大体使えるぜ。闇や霊力のは使えねぇし、自爆技は教えてないがな」
門のそばで戦いを見守っていた俺たちは、巫月の攻撃に息を呑む。特に、その技を使えた事を知らなかった鈴仙が。
鈴仙「そりゃ、自爆なんてされたくないからね。でも、やっぱり雷って強力だね」
カルゴ「まぁね♪」
霊愛「わっ…お姉ちゃん、ハデにやったね〜…」
霊麗「そーだね〜」
その頃の博麗姉妹は、戦場の一角で起こった爆発が、姉の攻撃によるものだと瞬時に察していた。
伊達に長く組んでいない。
霊麗「こっちもアレくらいハデにやろっ♪」
霊愛「…だね!目の前の奴、まとめて倒そ!」
姉妹は霊夢直伝の巫女の構えを取って、目の前に立ちはだかる天狗達を睨みつける。
天狗達「巫女の娘だからと図に乗るなよ?」
霊愛「図に乗るも何も、私達があんたらみたいな天狗に負けるわけないじゃない。私達、『2人の最強の吸血鬼の娘』……博麗霊夢とエスカルゴの娘だよ?」
霊麗「あははっ、それ言っちゃダメだよ♪ 普通の天狗さんが可哀想♪」
天狗達「普通…!?」
霊愛「わかる?私達には最強の血が流れてるの。多少訓練してるってだけの奴には負けないから。やるよ霊麗!」
霊麗「うんっ♪」
姉妹「姉妹符『緋想封印』!!」
2人から膨大な妖力と霊力が溢れ出して、弾幕の形をとり、天狗達へ向かっていく。紅白の弾幕…まさに、2人の力を表している。
霊夢「…驚いた。あの子達、あんな複合スペルを考えてたんだ」
カルゴ「はは…知らなかったな…」
姉妹の複合スペルの存在を初めて知った俺達は、その強さに身震いする。霊力と妖力とは、決して交わることの無い力だととある文献で読んだ事がある。俺自身は薬の影響だが、それ以外ではほぼありえない現象らしい。
だが、それを可能にするのが“血”だ。強大な霊力の持ち主である霊夢の血、強大な妖力の持ち主である俺の血が上手く混ざった事で、生まれながらにして強大な2力をその身に宿しているのだ。
霊愛が妖力に目覚めるのは満月の夜だけとはいえども、この2人が組めば…もしかしたら巫月にも勝てるかもしれない。
霊夢「霊愛が吸血鬼になってるからかしら?私とあんたが力合わせた時に近い強さね。どうなっているの?」
カルゴ「どうなっているのって…そりゃこっちのセリフだぜ?いつの間にあんな強くなってた?」
霊夢「さぁ…」
俺は、自分が少しでも目を離している隙に巫月が成長していた、12年前の事を思い出した。
カルゴ「…子供って、知らねぇ内に成長するモンだったな…いつの間にか忘れてたよ」
霊夢「そうね…」
だからって、急成長しすぎだとは思うが。子供の成長とは、とても嬉しいものである。どうせ俺が負けるのなら、娘や妻に負けたいと思う。
勿論、出来ることならば絶対に負けたくないが。
霊力、もしくは魔力だけ、という縛りをしたら…もう俺は、この娘達には勝てないだろう。
弦月姫「さて…と。お父様に迷惑かけない程度に時間を止めなければいけませんね」
カチャリ、とナイフを構える弦月姫。そばには、司令塔から援護を言い渡された穹が控えている。その眼前には、天狗の群れが迫ってきている。
穹「ですね。…と言っても、私は時止めの影響をモロに受けてしまうんですが…」
弦月姫「ふふっ…だったら時を止めないで、動き回れば良いだけの事です♪」
穹「そうですね!行きましょう!」
弦月姫「はいっ!」
穹は父親譲りの筋力で弦月姫を持ち上げ、天狗の頭上を飛翔する。穹は弦月姫に触れているので、弦月姫の発射するものは、弾幕でもナイフでも、加速させる事が出来る。
天狗達「クッ、行かれた!追え、追えぇぇぇ!」
弦月姫「逃げも隠れもしません、よっ!!」
天狗達「ッ!?」
唐突に放たれた、普段見ることがない程の速さの妖力弾を全身に浴びる天狗達。しかし、弦月姫の弾幕で与えられるのは痛みだけだ。すぐに体勢を立て直した天狗達は、穹に吊るされている弦月姫に刀を投げる。
穹「弦月姫っ!!」
弦月姫「この程度の速さで……っ!」
飛んでくる幾本もの刀を、両手に持つナイフ2本のみで払い落としていく。伊達に咲夜さんと俺のナイフを受けていない娘である。
投げナイフが得意な咲夜さんと、飛ばしナイフが得意な俺の投げ技と違い、所詮付け焼き刃な技。本職には到底及ばず、僅かなダメージすら与える事は適わなかった。
弦月姫「さぁ、トドメよ!メイド秘技『お仕事は効率的に』!!」
時を止めた弦月姫は、
他にも様々な箇所へ配置している。
弦月姫「解除!!」
天狗達「ゔッ!? ぐあああっ、足…肩がッ!」
足が、肩が、と叫びながら、地面でのた打ち回る天狗達。穹は、そんな天狗達を見下ろしながら、弦月姫を地面に下ろす。
穹「どこに刺したのですか?」
弦月姫「刺したのではなく、膝を支える筋肉及び
穹「ひぇっ…筋肉や筋を切られたら…」
弦月姫「立てませんし、腕も上げられません♪」
穹「ひええええぇぇぇ……!」
咲夜「なるほど、考えたわね。投げたナイフを、刺すのではなく、切るのに使うとは…」
カルゴ「怖い怖い怖い……。行動不能に陥らせるだけで言えば俺よりも長持ちしますね…」
咲夜「けれど、相手が素早く動いていたら意味が無いですね。…いえ、速く発射すれば何とかなるでしょうか?」
カルゴ「多分そうですね。あっ…時止めの影響を受けない俺なら大丈夫かな……うーん…また今度戦うことにするか…」
茜「……」
天狗達「あの八雲様の娘だが、臆するな!今だ、即座に制圧せよ!!」
茜「んーとぉ……えいっ♪」
天狗達「うわっ!?」
茜は、自分と天狗達との間や、それぞれの足元にスキマを開き、姉達の元へと送り届ける。
巫月「あはぁ、キタキタ♪」
霊愛「もう一発キメよ!」
霊麗「だねっ♪」
弦月姫「おや、まだ切られ足りないのですかね?ふふっ、今日はナイフの手入れが大変ですね♪」
穹「ひぇぇ…恐ろしや…」
茜「もう、送るのめんどくさいなー…」ボソッ
ポソリと呟いた茜は、天狗達が恐れを為して近付かないことをいい事に、足元に転がる小石を軽く蹴飛ばす。これでは隙だらけである。
天狗達「しめた!今だ、かかれぇぇぇ!!」
茜「もう皆、潰しちゃおっかなぁ♪ 廃線『ぶらり廃駅下車の旅』!!」
天狗達「ぎゃああああああああああ!!!」
紫「ふふっ…あの無尽蔵さ、見てるだけでも快感すら覚えるわ。あの子も楽しめてるみたい」
電車に轢かれ、撥ねられ、ボコボコにされる天狗達を見ている紫さんは、愉悦の笑みを浮かべる。
カルゴ「向かえば正面にスキマが…動かなくても足元にスキマが…。もう、おっかないとしか…」
霊夢「どこにいてもスキマの餌食ねぇ。だけど、浮かべばあのスキマに呑まれないのに…。そこに気付かないんだから、よほど余裕が無いのねぇ、あの天狗達は」
紫「そうねぇ…」
戦場には、阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。雷の落ちる音もするし爆音もする。風を切る音、悲鳴、暴風、金属音に打撃音…。
様々な音を拾ってばかりの耳が壊れそうだ。
そして、とうとう決着がついた。
門前に広がる、大勢の白狼天狗と鴉天狗達。地面には、大小のクレーターが沢山残されていた。
それを見た天魔は、目を見開いて小さく呟いた。
天魔「なんともまぁ…思ったより圧倒的じゃな」
紫「これがエスカルゴの子供達よ、
天魔「我々天狗の非力さをよーく思い知ったわ!カッカッカッ!」
星空を見上げ、元気良く笑う天魔。この様子なら暇潰しも出来たことだろう。それから、門の上に立った天魔は大きく息を吸って────…。
天魔「12歳以下の幼子にこてんぱんとは、一体どういう事じゃお前らァァァ!!」
天狗達「ひぇぇ〜…」
天狗達「お許しを〜……」
その後、しばらくの間その場で天魔直々の説教が続いた。その間俺は、娘達とデートや遊びなどの約束をした。その日はみんなで、紅魔館に泊まることになり…各部屋からベッドを運んで、キングサイズを越えるほどの巨大なベッドを作り、皆で一緒に眠りについた。
二つ名一覧(仮決め)
姉妹間の司令塔
巫月・優曇華院・スカーレット
満月限定の妖怪巫女
博麗霊愛
亜光速の見習い新聞記者
射命丸穹
完全で瀟洒には程遠い従者
十六夜弦月姫
生来の天才妖怪巫女
博麗霊麗
神出鬼没の幼いスキマ妖怪
八雲茜
茜とエスカルゴの意外な繋がり
スカーレット(英語 scarlet)は、色名の1つで、やや黄味の赤を表す。 緋色は植物のアカネの根を原料とする茜染の一種で、濃く、暗い赤色を茜色というのに対し、最も明るい茜色を緋色という。
外から来たエスカルゴは当然この事も知ってる。
紫さんの跡継ぎだから八雲性にしなきゃいけないので、スカーレットの意味を込めて茜とした。