※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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以下、セリフが多くなります。
原作自体がセリフ多めなので、読んだ事ある人はわかってくれるはずです…。
そして、しばし子供達視点からになります。
語り手はエスカルゴ…的な感じですかね。





捜索、そして発見

穹「───さて。気持ちのいい汗をかいた所で、そろそろ樹里愛の捜索に乗り出しましょうかね」

 

子供達総出で行った激しい特訓を終えて、流水で汗を流し、茜がスキマで取り寄せたという新しい服に着替え、今度こそ本当に作戦会議に入る。

子供というのは実に気まぐれで、思い付いた事を実行する前にあれやこれやと脱線してしまうものである。ましてや、思った事は大抵なんとかなる能力持ちの子供だから尚更だ。

少しだけのつもりだった特訓も、想定より30分は長引いた(弦月姫談)。

 

巫月「だね。でもどこ探す?山は天狗が探してるってさっき茜言ってたじゃん。山から離れる時は絶対に早苗さんと一緒だから、やっぱ妖怪の山の中にいると思うんだよね」

 

弦月姫「早苗さんは、意外と縛りがキツイらしいですからね……。4歳になってもまだ、朝の散歩以外は単独で出掛けるのを禁止してるそうです」

 

霊愛「それで行方不明って…。これからは、朝の散歩すらも保護者同伴になりそうだね」

 

妖舞「つまんねー…」

 

4歳ならば保護者同伴が当たり前なのだが、幼い頃から比較的自由に育ってきたこの7人は、それこそが窮屈だと感じている。

ここは幻想郷なので、それでも通じるのだ。

 

穹「天狗総出で探しても見つからない…。いくらお粗末な捜索でも見つかりそうなものですがね。広いとはいえ、捜索部隊は1000人こえてますよ?見つからない方がおかしいと思うんですが」

 

霊愛「確かに…。やっぱ誘拐かな」

 

妖舞「もしもそうだったら、樹里愛が危ないな。いや、単なる行方不明でも、飯食べてないだろうから危ないには変わりないけど」

 

霊愛「珍しく頭使ってんじゃん妖舞。そうだよ、さっさと見つけなきゃ。手当り次第に探そうか?それとも分担する?」

 

さりげなく妖舞に毒を吐く霊愛だが、気付かない妖舞はやはり馬鹿である。

 

穹「ええ、分担ですね。幸いここには8人(・・)いますから、山を方位ごとに8分割して探しましょう。天狗に見つかって、追われたら気絶させる程度に撃退して下さいね。天魔様や守矢神社を通じて、親元へと報告されてしまいますから」

 

霊愛「それが良いね。昨日の夜あんな派手に啖呵切ったんだから、何としても今日中に見つけよ。あ、犯人は見つけ次第殺してもいいかな?」

 

「今日の夕飯は何がいい?」のような軽いノリで殺害してもいいか尋ねる霊愛。やはり霊夢の子であり、(害のある)妖怪には容赦無しだ。

 

穹「さぁ、犯人によりますが…。野良妖怪ならばそれで構わないでしょうね。組織に属している…そう、天狗とかの場合は、半殺し程度に押さえて下さい。天魔様に罰してもらいます。いや、皆で半殺しにしますかね」

 

茜「あははっ、天魔って絶対死刑にするよね♪」

 

穹「そりゃー、神の子に手を出した訳ですしね。罰当たりもいいところですし…それ以上に、山と守矢神社との関係が悪化しかねませんからねぇ。厳罰…いや、極刑は免れないかと思いますよ」

 

霊愛「いや、神の子以前にエスカルゴ(山の英雄)の子だよ?それだけで極刑に値しない?」

 

穹「言えてますね。毎回では無いとはいえ、あの天魔様を何度も下していますからね。山では今も英雄扱いされてますよ。当の本人は、『様付けは嫌だ』とか言っていますが」

 

霊愛「だね。でもさ、上からの命令は絶対とか…山ってブラックなのかな?」

 

穹「さぁ…。私は特例(母上)の子なので、普通の扱いをされてませんから…そこら辺はわかりかねます」

 

弦月姫「なぜ文さんは特例なんでしたっけ?」

 

穹「山の掟で、同種族の者以外と恋仲になってはいけないというのがあるんですがね、父上が特別なので母上も特別扱い、その子供である私も特別扱いされてるんですよ」

 

霊愛「天魔を倒しただけでそんなに優遇される…そりゃー大天狗の老害共も面白くないよね〜」

 

穹「あはははは……」

 

特例とはいえ、一応は山に仕える身である穹は、霊愛の毒舌発言を否定せずに、引き攣った笑いを浮かべる。穹本人も、大天狗に対してそのような思いを抱いているからである。

 

茜「お父さん、そんな感じの事が原因で、私達が生まれる前に、山の天狗達と衝突したんでしょ?山の裏に残ってる巨大なクレーターは、その時に出来たやつだってお母さん言ってた。あと、山が抉れてるのは、天魔がお父さんに向かって放った一撃が原因なんだって」

 

巫月「えっ」

 

霊愛「マジか」

 

穹「母上と天魔様から聞いたことありますね…」

 

弦月姫「初めて聞きました…」

 

妖舞「怖っ!?」

 

霊麗「見た事はあるけど、あれがお父さんの仕業ってのは信じ難いなぁ…」

 

茜「私達が生まれてからは天魔とぶつかってないらしいから、それ程の力を発揮する機会があまり無かったんじゃないかな」

 

一同「なるほど…」

 

改めて父親と天魔の恐ろしさを思い知った7人。

同時に、こんなことをしている場合ではない、とようやく思い出した。やはり子供の話は本題からズレやすい。

 

穹「と、とにかく!茜の調査によれば、天狗達は西側から南側を通っての東側の方に多く派遣したそうなので、危険なそちらを上の4姉妹、反対をそれ以外が担当するという事で!発見した際は、昨日にとりさんから頂いた信煙弾なるものを空へ撃って下さい!信号を見つけ次第、全員で向かい全員で犯人を半殺しにしましょう!捜索中は空のこまめな確認をお願いしますよ!信煙弾の発射後1分を目安に、犯人の処刑を開始します!」

 

7人「了解!」

 

超早口で作戦を伝えた穹。それを聞いた一同は、自信に満ちた顔つきで、居住地から妖怪の山へと散って行った。末の妹、樹里愛の捜索のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の博麗神社では、大人達が、様々な問題を前に頭を抱えていた。

議題1、子供達を連れ戻すか否か。

議題2、樹里愛の捜索について。

議題3、食料問題。

 

霊夢「まず食料が無くなるのは問題ね」

 

咲夜「あなたそればっかりね…。確かに気になる気持ちもわかるけど…。今はそれどころじゃないでしょ?」

 

霊夢「まぁそうね。でも、まずは簡単な問題から解決すべきじゃない?後回しにしてたって時間は待ってくれない。もう少しでお昼よ?」

 

早苗「私は別にいいです。ご飯が多少消える位、どうって事…ないですから。まずは、あの予告を信じる事にします。だから、早く探さないと…」

 

咲夜「…そうね。私も早苗の意見に賛成するわ。多少減ったって作ればいいだけだもの。お金なら旦那様が出してくれるでしょうし…ね♪」

 

カルゴ「ま、まぁ…そうですね。子供7人の食費なんてたかがしれてるし…」

 

咲夜「…ね、霊夢も文句無いでしょ?」

 

霊夢「う…うん…わかった。じゃあ次、子供達を連れ戻すか否か。…どうする?こっちとしては、危険じゃなさそうだし別にいいけど」

 

咲夜「…正直、弦月姫には戻ってきてもらいたいものね。今の紅魔館にはあの子が必要だし」

 

霊夢「なんで?あそこを実質的に仕切ってんのはあんたでしょ?」

 

咲夜「ええ、そこはずっと変わらないわ。けど、弦月姫のおかげでようやくメイド妖精たちが働くようになったのよ。少しずつだけどね」

 

咲夜さんが言うところによると、子供っぽい性格の妖精達と大人っぽい咲夜さんはそりが合わず、彼女らはあまりやる気が出なかったのだそう。

しかし、子供っぽい弦月姫のおかげで、少しずつやる気が出てきたらしく、メイド妖精達の仕事量は15年前に比べおよそ倍になってるそうだ。

 

霊夢「なるほど。妖夢と鈴仙は?」

 

妖夢「修行してるかが心配。安全面の方は…多分大丈夫だと思う。他の皆が一緒だからね。でも、やっぱり戻ってきて欲しいかな…」

 

鈴仙「妖夢に同じ」

 

霊夢「…エスカルゴは?」

 

少しの間を置いて全員の父親である俺に尋ねる。

俺の答えは、とうの昔に決まっている。

 

カルゴ「勿論、戻ってきて欲しいよ。無事だとはわかってても、やっぱり心配だしな」

 

霊夢「じゃ…連れ戻すことにしましょう。素直に応じてくれればいいけどね」

 

はぁ、と軽く溜息をつき、茶を口に運ぶ。

霊夢としては、どちらでも良かったらしい。育児放棄などではなく、子供達の強さを知ってのことらしいので、誰もそれを咎めたりはしない。

 

早苗「樹里愛を探すのを手伝って下さい!お願いします!あの子は戦闘訓練を殆どしていません、もしも襲われでもしたら……!」

 

咲夜「もちろん、わかっているわ。どちらも並行して進めましょう」

 

妖夢「とりあえず、山と無縁塚、里、紅魔館近くの廃洋館あたりかなぁ…怪しいのは」

 

鈴仙「山から竹林までは遠いから除外したの?」

 

妖夢「そーそー。竹林が危ないっていうのは有名だし、多分行かないんじゃないかな。それより、子供なら廃洋館や落とし物が豊富って事で有名な無縁塚、食べ物いっぱいの里が怪しいと思うな。山は…迷子になったとか。でも、念の為に竹林も探した方が良いのかな…」

 

鈴仙「そうだね。じゃあ、私は竹林探すね」

 

霊夢「んじゃ私は神社から里までの範囲でも…」

 

咲夜「では私は、紅魔館の周辺及び廃洋館を」

 

妖夢「私は無縁塚を。早苗さんは守矢神社の周辺とかをもう一度探してみて」

 

早苗「わかったわ!」

 

カルゴ「じゃあ俺は…妖怪の山全体、だな」

 

霊夢「決まりね。じゃあ、夜の8時までにまた、ここに戻ってきて」

 

一同「はい(おう)!」

 

話をようやくまとめた親達は、神社を留守にして幻想郷の各地へと散らばっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穹「うーん…どこにも居ないですね…。私がこれまでに見つけてきた㊙の洞穴にも居ないですし。これは、捜索が難航しそうですね…。母上と合流したい所ですが…あまり頼りたくないですね」

 

あまり人目に触れない洞窟なども探していた穹。しかしそこにも樹里愛の姿は無かった。

 

巫月「樹里愛ー!樹里愛ー!居ないのー!?」

 

天狗「ん?あ、お前は…!」

 

巫月「あ。雷武器『雷刀』!『双刀乱舞』!!」

 

天狗「ぎゃあああああ!!痺れたぁぁぁぁ!!」

 

巫月「うるさいなぁ、もうっ!えい!」

 

天狗「ッ……」

 

大声で探し回っていた巫月は、偶然通り掛かった天狗に見つかったので急いで気絶させ、その場に寝かせた。

 

弦月姫「うーん……動き回っている可能性があるから時間を止めたいんですが…能力は使わないと約束してしまったし…うぅぅ…やっちゃった…」

 

そう、樹里愛も移動している可能性があるので、時間を止めて探した方が良いのだ。しかし、先の解放区放送にて能力を使用しないと約束したのでそれが出来ないのだ。弦月姫は、後悔していた。

 

妖舞「樹里愛ー!出て来いコラー!ご飯残ってるからみんなで食おーぜー!」

 

兄貴の妖舞は、樹里愛をご飯で釣ろうとするが、やはりそれでも引っかからない樹里愛だった。

 

茜「北側は全土探したけどなぁ…。んー…どこに居るんだろ、樹里愛…大丈夫…?」

 

解散場所から殆ど動かず、大量のスキマを開いて各地を探す茜だが、やはり見つからない。

 

文「あやや〜…まずいですねぇ、樹里愛ちゃんがどこにも見あたりません…」

 

解放区に居た8人目。それは、穹を探していると思われていた文だった。要は、保護者役であり、天魔から話を引き出すための役だった。そして、その会話を茜が盗聴し、先の作戦を皆で立てる。そうしてこの解放区は成り立っていた。

文が話を引き出さなければ、茜も盗聴ができず、天狗の一歩先を行く作戦を、立てられないのだ。

 

霊愛「…神霊が告げてる。樹里愛は確かに、この先に連れて来られた…!」

 

霊麗「あっ、お姉ちゃん!」

 

勘と神霊の声を聞くなど、博麗の力を駆使して、怪しい場所へと辿り着いた霊愛。同時に、霊麗もその場へ到着した。

 

霊愛「霊麗も…ここが怪しいって思う?」

 

霊麗「思う。樹里愛、絶対ここに居るよ」

 

霊愛「よし、行こう!」

 

霊麗「うんっ!」

 

博麗姉妹は、鴉天狗の宿舎へ来ていた。2人共、この建物が怪しいと踏んでいる。門番はいるが、山の英雄の子供なので、ちょっとした挨拶1つで通る事が可能だった。

門番以外は、天魔の指示によって捜索に駆り出されている為にほぼ人気が無く、宿舎周辺はシーンと静まり返っている。

 

霊愛「…お邪魔しまーす…」

 

霊麗「しまーす」

 

扉を開け、そっと静かに中へ入る。屋内も同様にシーンとしていて、昼間なのにも関わらず何とも言えぬ不気味さを覚える。広い割に静かだから…だろうか。夜の竹林の方が、虫や鳥の声がして、まだマシに思えてくる程だ。

 

霊愛「静か…だね」

 

霊麗「だね。…これ、ギシギシミシミシ鳴るね。結構古い床板なのかな?」

 

霊愛「かもね。あれ?向こうの突き当たりだけ、なんか新しい床板だね」

 

玄関から見て右側を見た霊愛は、廊下の先のみが何故か綺麗な床板である事に気が付く。

 

霊麗「ホントだ。ちょっと見てみよっと」

 

霊愛「あっコラ霊麗…もうっ!」

 

興味津々な霊麗はその床板の方へと走り寄るが、見知らぬ建物内で1人になるのは危険だと考える霊愛はそれを追いかけ、共にその床の上に立つ。先に到着した霊麗は、そこから更なる発見をする。

 

霊麗「ね、お姉ちゃん。この床板の繋ぎ目から、風が漏れてきてるよ」

 

霊愛「え?…あ、ホントだ」

 

床に手を当てた霊愛は1ミリにも満たない僅かな隙間から漏れてきた風を感じ取り、驚いたような表情を見せる。

 

霊愛「この宿舎、土台はしっかりしてた…よね?天狗が居るからか、風に飛ばされないように強く固定されてる感じがしてたし…」

 

霊麗「してた。縁側みたいに下は空いてないし」

 

霊愛「てことは、もしかしたら…」

 

霊麗「もしかするかも?」

 

同じ事を思いついた博麗姉妹は、霊力で利き足を強化したあと、呼吸を合わせる。

 

姉妹「せーのぉ……えいっ!!」

 

バキャッと派手な音を立てて壊れる床板。2人の思惑通り、そこには広めの地下空間があった。

そう、ここはかつて、文が囚われていた地下牢。床板が新しくなっていたのは、彼女らの父親が、床板を殴ってぶち抜いたからである。

 

霊愛「驚いた…。何、ここ…地下牢?」

 

霊麗「しかも、牢の中に落ちちゃったね」

 

霊愛「どうする?一旦抜けて、穴を開け直す?」

 

霊麗「ううん、ここは任せて!何故かここの柵は新しくなってるけど、吸血鬼ならこんな牢、すぐ脱出できるから!」

 

霊愛「お願い!」

 

再び霊麗は霊力強化を行い、柵に手を掛け、事も無げに牢を破壊してしまう。ここも、かつて父が破壊した牢である。普段は、この牢屋は使われていないとはいえ、有事の際に備えて、床板同様に修理したのだった。

 

霊愛「すごいなぁ…流石は純粋な吸血鬼、だね」

 

霊麗「まぁね♪」

 

???「ゔー!ん゙ん゙ーーー!!」

 

姉妹「!?」

 

その時、地下牢の中の廊下を走りながら言葉を交わす姉妹は、呻き声の様な声を聞いた。2人は、樹里愛がここに居ると確信した。

霊力で脚を強化した2人は速度を上げ、地下牢の最深部に到達した。

そこには、口に布を巻かれ、手足を後ろで、縄で縛られて、床に転がされている樹里愛と、そばで食事をしていた鴉天狗がいた。

 

鴉天狗「んぐっ!?…ゲホッ、ゲホッゴホッ…。な、なんでここが…!?」

 

ドンドンと胸を叩き、2人の登場に目を丸くする鴉天狗。しかし霊愛はそんな問いには答えない。

 

霊愛「お前かァ…!霊麗、外で信煙弾!!」

 

霊麗「うん!」

 

背を向けて、入ってきた穴の方へと走り出す霊麗だが、その首根っこを、空間の裂け目から伸びてきた白い手が掴んだ。

 

霊麗「ふげっ!?」

 

そして、スキマから茜が飛び出した。

 

茜「もう発射したよ!ていうか呼んじゃうよ!」

 

霊愛「お願い!てか皆を監視してたの!?」

 

茜「その方が早いもんね!」

 

霊愛「そ、そっか…」

 

地下牢の廊下にいくつものスキマが開かれる。

さらにそこから、巫月、穹、弦月姫、妖舞、文が現れ、牢の前に立ちはだかる。

 

鴉天狗「あわわわわわ…」

 

腰を抜かした鴉天狗は、へたりこんだままで口をパクパクと動かす様は、さながら釣り上げられた魚の様であり、どこか滑稽に見える。

 

文「ほぉう…あなたですか、誘拐犯は…!」

 

子供達の中から1歩進み出た文は、団扇を片手に目の前の鴉天狗を見下ろす。同族がこんなことをしたとあり、その目は普通に怒った時よりずっと冷たく、見られただけで心の臓が縮み上がる様な恐ろしさを秘めていた。

 

鴉天狗「しゃ、射命丸文…な、なんでここに…」

 

文「あなたのような犯罪者なんかに、私の名前を呼ばれたくないです…ねッ!!」

 

文は思い切り団扇を振るい、更に風を操る能力を上乗せして、鴉天狗を牢の壁に叩き付けた。

 

鴉天狗「がはッ……ぐぅぅ…!」

 

文「…さぁ、あとは皆で好きにして下さい。私は先に、天魔様に報告してきますから。思いっ切りいたぶった後は、速やかに戻って下さい」

 

冷たい声と、淡々とした口調でそう言った文は、茜に頼んでスキマを開いてもらい、牢から出た。

 

霊愛「さて。皆、どうやって潰そうか?」

 

妖舞「ぶっ叩く!ハァァッ!!」

 

牢の扉は閉じられているので、妖舞はその鉄格子すらも切り飛ばして、鴉天狗に肉薄する。未だに腰を抑えていた鴉天狗はそれを避けられず、妖舞の重い一撃を食らってしまう。

 

鴉天狗「っぐぁぁっ!!」

 

弦月姫「あっコラ!もう殺したのですか?」

 

妖舞「へへん、峰打ちだぜ!」

 

ドヤりながら、切り飛ばした牢から出てくる。

一撃しか入れてないが、本人は満足したらしい。

 

巫月「エスカルゴの分までぶっ飛ばしてやる!!エスカルゴの技で!絶技『天翔雷霆零槍』!!」

 

自身の雷のエネルギーを全て引き出して、極太の槍の形と為す。

 

鴉天狗「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!!」

 

これから何をされるか察した鴉天狗は、顔を酷く引き攣らせ、壊れたレコードのように同じ言葉を何度も何度も繰り返す。

 

巫月「半殺しじゃなくて…4分の3殺しだよ!!やあぁぁぁっ!!!」

 

鴉天狗の腹部目掛けて、思い切り槍を投擲する。

それはヒュオッと風を切る音を出しながら、綺麗に腹を貫いた。普段使うのは硬度を落としているために肉を裂く事は無いのだが、今回の攻撃は、硬度を上げているので、文字通り串刺しになる。

 

鴉天狗「ッッ………!!?」

 

霊麗「ねー、もう面倒だから殺さない?結局は、害のある妖怪だしさ」

 

霊愛「組織に属してるから慎重にしなきゃダメ」

 

穹「そうです…よッ!!」

 

風を操り、空気弾を作った穹はそれらを串刺しの鴉天狗へと放つ。次いで、博麗姉妹が動き出す。

 

姉妹「姉妹符『緋想封印』!!」

 

今回は白が多めの、紅と白の弾幕が、ボロボロになった鴉天狗目掛けて飛んでいく。それは完全にオーバーキルだと思われるが、容赦しない。

 

鴉天狗「コヒュー……コヒュー……」

 

茜「もう虫の息だね〜。こんな奴に弾幕放っても力の無駄だし、もう帰ろ?」

 

妖舞「っとその前に…」

 

タタタッと牢に戻った妖舞は、樹里愛の口に巻かれていた布、手足を縛っているロープを解く。

 

樹里愛「お兄ちゃんっ!」

 

ようやく解放された樹里愛は、ひしと抱きつく。

満更でもない妖舞の様子に、フッと頬を緩ませる姉たち。

 

妖舞「もう大丈夫だぜ!さ、解放区に行こう!」

 

樹里愛「うん!」

 

茜「じゃ、スキマ開くよ!」

 

弦月姫「じゃあ帰る前に……」

 

鴉天狗「ッ!!?」

 

床に広げられたスキマに飛び込む前に、鴉天狗の脇腹へとナイフを投げて、見事に刺した弦月姫。容赦が無さすぎである。腹に綺麗に刺さったのを見届けた弦月姫は、スキマに飛び込む。

 

霊愛「うーわ、容赦なさ過ぎ…」

 

あはは…と軽く笑った霊愛が最後に飛び込んで、地下牢には静寂が戻った。

後には虫の息の鴉天狗だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルゴ「ん?なんだアレ…進撃の巨人に出てくる信煙弾っぽいな……」

 

パシュウウ…と、ゆったりしたスピードで、黒く細い煙が上がるのを見た俺は、予め腰に装備していた立体機動装置を動かし、煙の根元へ向かう。スキマを使わないのは、煙の根元がどこなのかが分からないからである。

 

 

 

カルゴ「宿舎…?」

 

門を通らずに、空路から煙の根元へ辿り着いた。信煙弾が発射されたのはここからで間違いなく、うっすらと煙が残っていた。

扉を開けて、宿舎の中へ入る。左右、正面と道は別れているが、ふと右を見た時、床に穴が空いているのを見つけた。

駆け寄り、そこがどこなのかを思い出した。

 

そーか…ここ、あン時に空けたとこじゃんか。

穴の下には真新しい床板…そうか、誰かがここに来て、ここから地下牢に入ったんだな?

ふむ…誰だ?

 

俺も穴に飛び込み、壊れた牢から出る。まるで、あの時に戻ったような不思議な感覚がする。

 

カルゴ「囚われのォ〜あやや〜♪…なんつって」

 

とりあえず、広い所ではこれを行うべきだ。反響定位…エコーロケーションである。

 

カルゴ「奥に…1人?神速『スウィフト』」

 

超スピードで地下牢を駆け、奥に到着した。

そこには、血だらけの鴉天狗が1人、虫のように転がっていた。そばには、湿って色が変わってる布と、2本の短いロープがある。

それだけでも、この鴉天狗が何をしたのか、なぜこうもボロボロになっているのか、瞬時に頭の中で強く結びついた。

 

カルゴ「湿ってる布は猿轡で…2本のロープは、手足の拘束の為に…か?テメェ……」

 

ハァハァと既に虫の息の鴉天狗の頭を踏みつけ、それらのアイテムの用途を尋ねる。当然だがもうこの天狗に返事を返す身体的余裕は無い。

 

鴉天狗「っ…はぁ……はぁ………」

 

カルゴ「この匂いと妖力と霊力…もしかすると、子供達が総出で来たな?…俺よりも先に…」

 

鴉天狗「………」

 

カルゴ「で、お前をボコして帰った、と。ふむ、突飛な推理だが多分合ってるだろ。答え合わせは必要ねぇくらい辻褄が合ってやがる。……なぁ?お前よォ、誰の娘誘拐したか、わかってんのか?

…俺に仇なす者には…死、あるのみだ」

 

頭を踏み付ける足に力を入れる。ミシミシッと、頭蓋骨が鳴っているのがわかる。

 

鴉天狗「ッ!??」

 

カルゴ「死んだ方が良いよなぁ?誘拐までして、ナニするつもりだったのかは知らねぇけどよォ?この俺と神の子を誘拐したんだから当然の罰だと思わねぇかよ?おい、答えろよ。失礼な奴だな?

……フンッ!!!」

 

パァン!と風船の破裂するような音がした。

辺りには鮮血が飛び散り、白骨が見え隠れする。

 

カルゴ「これなら俺の妖気は最小限に抑えられたハズだな。存在だけで妖気は残るが………」

 

ポケットから団扇を出し、フワリと扇(あお)ぐ。

 

カルゴ「…空気が動けば妖気は霧散する。これで俺と娘達がここに来たのは、誰にもわからない。

…文字通りの『そして誰もいなくなった』…だ」

 

スキマを開いた俺は博麗神社の風呂場に直行。

血を洗って、臭いを消すためである。スキマは、電力によるものなので、妖気は残らないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文「ただいま帰りましたよ〜!」

 

穹「おかえりなさい、母上!」

 

文「バッチリキメてきましたか?」

 

穹「もっちろんです!」

 

穹の言葉に、みんなは一様に頷く。そんな中で、囚われていた樹里愛だけ先に昼食を食べている。

お腹が空いていたのだ。

 

文「それでは、無事救出出来たことを祝して!」

 

一同「カンパーーーイ!!!」

 

玄武の沢にある、小さな小さな解放区。

そこには、明るくて暖かな時間が流れていた。

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