クオリティ安定してくれよ頼むから…。
鈴仙「次の方ー、どうぞー」
弦月姫「……」
カルゴ「そう緊張すんなって…」
永遠亭に来て受け付けを済ませた弦月姫は、話すことすら困難になる程ガチガチに緊張している。客としてなら何度も来た事があるが、患者として訪れるのは人生初なのだ。
永琳「あら、弦月姫ちゃん?どうしたのかしら」
いつも通り白衣を纏い、老眼眼鏡をかけてカルテを読んでいた永琳。現在の弦月姫は至って健康。熱は無いし血圧も正常の範囲内だ。
弦月姫「おとっ、お父様…」
カルゴ「症状くらい自分で言いなさい…」
カチカチと奥歯の鳴る音までも聞こえてきた。
なにもそこまで緊張しなくても良いだろうに…。
弦月姫「な、何もしてないのに…幻聴が聞こえてきたんです…。ここに来る時も……」
そう、迷いの竹林内でも弦月姫の幻聴は起こり、彼女を苦しませたのだ。なんでも、「風ガ気持チ良イネー」「ソウダネー」「寝ソウダネー」とか聞こえてきたらしい。
よく分からないが、ほのぼのしている。
永琳「幻聴?それはまずいわね、脳に何か異常があるのかもしれない」
弦月姫「そんな!?」
やはり脳か、と俺は頷く。幻聴や幻覚といえば、麻薬を摂取することによって脳に異常が起こり、聞く・見ることが多いからだ。
でも幻想郷には麻薬なんて無い(と思う)ので、それ以外の何らかの原因で脳に何か起こったのは容易に想像ができる。
カルゴ「どうにか出来ませんかね…」
永琳「任せなさい、持てる技術全て使って、隅々まで検査するから」
弦月姫「お願いします!」
永琳の言う“持てる技術”の中には当然、月の技術も含まれている。これならば脳に起こった異常もすぐに発見できることだろう。
約2時間後
永琳「検査結果が出たわ」
何枚もの紙をカルテに挟み、待合室に来た永琳。脳だけに限らず、全身を調べたので、その結果も膨大な量だった。
弦月姫「どうだったんですか…?」
永琳「結論から言うと、異常無しよ」
カルゴ「!?」
弦月姫「なぜです!?だって確かに何かの話し声みたいな幻聴が聞こえてきたんですよ!?」
永琳「…と言われても、月の技術を総動員してもNo abnormalと表示されるだけだし……ハッキリ言って、私にはもうお手上げな状態なのよ」
弦月姫「そんな……」
悲痛な声を漏らした彼女の目からは、一筋の涙が流れる。これからは気味の悪い幻聴と付き合って生きていかねばならないという絶望感が、彼女の中で渦巻いているのだろう。
永琳「肉体的には異常が無くても、精神的に異常を来たしてるのかもしれないわ。何か心配事や、その他あなたを悩ませるものはある?」
弦月姫「いえ…この幻聴だけです…」
永琳「ふむ…。精神的でも何かしらの原因があるなら何かできるんだけど…精神的で原因不明じゃ私にはもう何も出来ないわ…」
弦月姫「……」
永琳の話を聞き、頭の中で、点と点が繋がった…ような気がした。だから、それを確かめるべく、永琳に1つの疑問を投げかける。
カルゴ「精神的…か。それって、概念的なものに属しますか?」
永琳「まぁ…物質的ではないからね」
カルゴ「なるほど」
永琳「なにかわかったの?」
カルゴ「いえ、まだ憶測の域ですが。とりあえず試してみます。ありがとうございました」
永琳「診察代は無料でいいわ」
カルゴ「お言葉に甘えて」
一礼して弦月姫の手を引いて診療室を出て、鈴仙と軽く言葉を交わしてから、診療所を後にする。
カルゴ《母さん》
神綺《はいはい、お母さんと聞いて!》
母さんこと魔界神の神綺を呼ぶと、すぐに反応をしてくれた。相変わらず元気で優しそうな声だ。
カルゴ《母さんは概念的なこともできるでしょ?ちょっとお願いがあるんだけど、良いかな?》
神綺《…それは、弦月姫ちゃんを
カルゴ《創り変える訳が無いじゃんか。サラッとなんて事を言うのさ…さすが魔界神だなぁ》
神綺《そうよね。とにかくすぐに来なさい》
カルゴ《うん。頼むね》
神綺《ええ》
竹林内を歩いていた俺たちは立ち止まって、俺は背中の黒光りする剣をスラリと抜く。
弦月姫「お、お父様…?何を…」
カルゴ「これから魔界に行って、母さんに弦月姫を診てもらうんだ」
弦月姫「お父様のお母様…あっ、以前お会いしたあの神様の…。でもなぜ剣を?」
カルゴ「スキマだと俺自身の力を使うから。これなら楽に開ける」
竹林に冥道斬月波を放った俺は、娘の手を引いてその中に飛び込み、一気に魔界の奥の奥へと移動してしまう。やはり、すごく楽だ。もしスキマを開けなかったら、博麗神社の裏山登りからだ。
神綺「よく来たわね、2人共。さ、中に入って」
パンデモニウム前に行くと、いつもの様に母さんと夢子が出迎えてくれた。言われるがまま客間へ行き、柔らかソファに腰掛け、神綺と向き合う。
神綺「幻聴ねぇ。ちょっと待ってね、頭の中とか色々さらってみるから」
弦月姫「は…はい…」
室内には重苦しい空気が漂う。弦月姫は緊張した表情のまま硬直しているので、実際に今何が起こっているのかを把握出来ているのは、母さんだけらしい。魔界神の凄さを改めて思い知った。
神綺「…別段、精神が病んでる訳でも無いわね。とすれば、精神でも無いわ。…ねぇ、その幻聴が聞こえる時の状況とかを教えてくれないかしら?」
弦月姫「幻聴が初めて聞こえてきたのは…確か、花壇のお手入れをしていた時で…。そのときは、ただ一言だけが聞こえてきて…回数を重ねる内に会話までもが聞こえてくるようになったんです。ハーブ園でも聞こえますし…」
神綺「で、さっきは竹林内でも聞こえてきた?」
弦月姫「そうです」
神綺「ふーん…朧気だけど何となくわかったわ」
弦月姫「ホントですか!?」
神綺「ねっ、夢子ちゃん?」
脇に立つ夢子に向かって、軽くウインクをする。表情こそ何も変わっていないが、もしかしたら、夢子にもなにかわかったのだろうか。
夢子「はい。どちらの例も、植物がそばにある時なので、植物が関係しているのかと思われます」
カルゴ「!!」
そういえば状況とか聞いてなかったな…。成程、俺にも少し、突破口が見えてきたぞ。
夢子「現に、今は聞こえてこないでしょう?玄関ではどうでしたか?」
弦月姫「どちらも大丈夫です」
夢子「…以上の事から、植物関連と思われます。しかも会話という事ですので、植物の会話を聞く能力、もしくは植物と意思疎通の出来る能力等が開花しつつあるのではないでしょうか」
弦月姫「新しい能力…?」
神綺「そういう事。じゃあ、能力の方面に絞ってもう一度さらってみるわね」
弦月姫「はい!」
さっきまでの暗い顔とは一転し、パァッと明るい表情になった。幻聴ではなく能力という可能性が出てきたのだから、安心もするしワクワクするのだろう。ニコニコと口角が上がっているのを見ていると、俺までも思わず頬が緩んでしまう。
そして数分後、
神綺「はい、検査結果出たわ。結論から言うと、
《植物を操る程度の能力》…の、成長途中ね」
弦月姫「…会話を聞くのではないのですか?」
神綺「会話を聞くのはあくまでも初期段階なの。カルちゃんは、初めてその能力を使った時は弾幕ではなく足の強化だけだったのでしょう?」
カルゴ「そうだね」
神綺「だから、会話を聞くのはあくまでも初歩。これから成長し続けるんだけど…問題があるの」
弦月姫「問題とは?」
神綺「カルちゃんのそれとは違って、声を聞いて会話ができるだけだから鍛えようがないのよね。だから、いつになったら次の段階に…操る段階に行けるかがわからないの」
カルゴ「ふむ」
弦月姫「そうなんですか…」
神綺「でも、そこは神である私に任せなさいな!能力剥奪、付与、成長、退化まで何でもこなせる私なら、成長させてあげられるから!」
弦月姫「ふおぉぉ…!流石です神綺様っ!!」
ドンッと強く胸を叩く神綺を見て、弦月姫はキラキラとした目を向け、俺と夢子は苦笑する。
「神である私に任せなさい」などという言葉は、諏訪子様たち3柱からも聞いたことがない。
神綺「私が見たところでは、この能力には数々の段階があるわ。まず、声を聞くだけ。次に会話。弦月姫ちゃんが叫んだら黙ったそうだから、この段階までは来てるでしょうね」
弦月姫「…帰ったらハーブさん達に謝ろ…」
そう呟いたのを聞き、隣に座っている俺は黙って弦月姫の頭を撫でた。
神綺「会話の次は、受信のオン・オフね」
弦月姫「受信のオン・オフ?」
神綺「四六時中、植物の頭に声が流れてきちゃ、お花畑とかに行けなくない?」
弦月姫「あはは…そうですね…」
確かにそれはそうだ。そういえば幽香さんは声を聞くことができるのだろうか?話しかけている所はたまに目にするが…。
神綺「オン・オフの次は、強制成長よ。文字通り強制的に成長させるの。種を植えて水をあげて、能力を使えばすぐにでも新鮮な果実が採れるわ」
弦月姫「おぉ…!」
神綺「次の段階になると、能力を経由してあなたの力を植物に流して、植物から弾幕を発射できるようになるわ」
カルゴ「あれ、それって幽香さんと同じ…」
神綺「確か幽香ちゃんは《花を操る程度の能力》だったかしら。彼女は花だけ。でもあなたは植物全般よ。彼女の上位互換の能力ね」
弦月姫「わ、私が…?あの風見幽香さんの能力の上位互換の能力をこの身に…」
カルゴ「スゲェッ!?…あれ?母さん、幽香さん知ってるのか?」
神綺「ええ知ってるわ。ちょこちょここの魔界に遊びに来るもの。だけど、私が知ってるのは風見幽香ではなくて、普通の幽香よ?苗字無しの」
カルゴ「えっ……なんかアリスの時みたいだな。能力とか似通ってるけど別人かな?」
神綺「多分ね。…話を戻すけど、植物から弾幕を発射できる様になった先は……ごめんなさいね、よくわからなかったわ。さらに段階があるのか、成長はそこまでなのかもわからなかった」
弦月姫「いえ、大丈夫です!幻聴なんかではないという事がわかったので!」
神綺「そう、良かったわ。じゃあ、どこまで成長させて欲しい?」
すると、俯いてうーんと悩み始めた弦月姫。
しかし、すぐに顔を上げて、神綺にこう告げた。
弦月姫「強制成長までお願いします!」
神綺「わかったわ。そこまで行けば最終段階まで行くのも容易いでしょう。まずは力に慣れてね」
弦月姫「はいっ!」
こうして、新たな力《植物を操る程度の能力》を見事自分のモノにした弦月姫は、意気揚々と館に帰り、怒鳴った植物達に謝り、紅魔館の住人達に能力を披露し、皆に褒められていた。
美鈴との関係も、しっかり元通りになったので、これでもう悩むことは何も無い。
俺は、一応永琳に報告に行ってから、今日の宿泊場所へ向かう事にした。
次回!ま・さ・か・の………エロです!
抜けるレベルにまでしたいんですが…うーむ…。
頑張ります!!お相手が誰なのかは…秘密です♪