擬似完全憑依異変1日目。
色々と境界をいじってきた紫さんから、「準備が出来た」と連絡をもらった俺達は、まずは愛しの霊夢と完全憑依してみる事にした。
俺がマスターで、霊夢がスレイブだ。
気が付くとそばに霊夢がおらず…一瞬焦ったが、すぐ「憑依に成功したのか」と気付いた。
霊愛「ちょっとお母さんと変わってみてよ」
カルゴ「おう」
娘にせがまれた俺は、その場で霊夢と代わる。
無事に交代できて、今度は霊夢が表に出てくる。
霊夢「うん、ちゃんと出来てるわね」
カルゴ「なんかすげぇな…」
霊夢の声を聞いて、再び俺が表に出る。
霊夢の事前説明の通り、確かに一部の感情は共有しているらしい。今俺達が共有している感情は、「好奇心」あたりだろう。恐らく。
霊愛「すごいなー…霊麗、私達もやらない?」
霊麗「やるやるー!じゃー私スレイブね!」
霊愛「敢えてスレイブ?まぁ、私がマスターって言おうとしてたから丁度良いかな」
妹の霊麗が、姉の霊愛に憑依する。これで、俺達4人家族は憑依によって2人になった。見た目は2人でも中身は4人とは、何とも不思議な事だ。流石は幻想郷…なんでもありか。
カルゴ「おー…。なんか凄いな。軽く戦うか?」
霊愛「やめとくよ。だって練習してないし」
カルゴ「それもそうか。とりあえず…」
霊夢「ん?」
カルゴ「あ…これだと霊夢のほっぺ触れない…?え?まさかそんな……」
コロコロ入れ替わってみるが、やはり触れない。
(完全憑依というものをまだ理解し切ってない)
霊夢「何を今更…。触れないでしょそりゃあ」
カルゴ「はぁ!?なんだよそりゃ!辞めだ辞め!霊夢とは完全憑依しねぇぞ!」
霊夢「はぁ!?」
カルゴ「触れないならダメだ!やっぱりフランと完全憑依してくる!」
霊夢「ちょ、待て!まだ練習してないでしょ!」
カルゴ「霊夢のほっぺ触りたいんだよ!」
霊夢「後で触らせてやるから今は練習するのよ!スレイブが苦手な私が手伝ってあげるんだから、感謝しなさいよこの変態!」
カルゴ「くっ…赤くなるまで触ってやるからな、覚悟しろよ!終わるまでは我慢してやるっ…!」
霊夢「はいはい、いつもの事ね…」
姉妹(1人コントでもしてるみたいだな…)
その後、しばらく戦い方などの練習をした俺は、なんとなく完全憑依のコツを掴んだ気がする。
その場その場に応じて効果的な攻撃をすることが出来るとは、なんと便利なのだろうか。しかも、組んでいる相方の力も、多少は借りる事が出来るらしい。が、使い過ぎると色々危なそうなので、そこそこにしておこう。
完全憑依に副作用があるように、力を借りるのも何かしらの副作用があってもおかしくない。
カルゴ「霊鬼符『鬼想雷封穴』!!」
霊愛「夢想封印に雷混ざるとか、面倒臭いなぁ!お母さんの霊力とかめっちゃ混ざってんじゃん!お父さんのくせに!」
カルゴ「親父だからだよっ!まだまだ娘には負けねぇぞ!霊愛、霊麗!」
弾幕として放つ力の割合を変える。
雷4割の霊力6割から7割と3割にする。途中で割合を変えるのは、結構大きな意味がある。
そう、翻弄だ。
霊力による弾幕は雷の弾幕より遅い。そこから、雷の弾幕が増えればどうなるか。
速い弾幕が増えるというわけだ。遅い弾幕に目が慣れてきた頃に切り替えれば、あとは…………。
霊愛「あぐっ……くっ、よりによって足に…!」
被弾し、痺れて動きが鈍くなる。後は、攻撃力が高かったり封印効果の高い技を放ち、この戦いはジ・エンドだ。
カルゴ「雷極『夢想封印・迅雷』!!」
トドメはオリジナル夢想封印でキメた。ちゃんと手加減をしたので、気絶はしていない。娘を気絶させるなんてそんな鬼畜の所業…俺はできない。暴走中なら仕方ないのだが…。
霊愛「被弾しまくった…」
霊麗「どのタイミングで切り変わればいいかまだよくわかんないね…。練習するしかないかー」
被弾してしまった右足を庇うようにして歩いて、縁側に座って足を休ませる。霊夢の感想を聞いてみようと思い、切り替わってみる。
霊夢「初戦にしてはまずまずかしら?」
カルゴ「まずまずかよ…。素直に褒めてくれてもイイんだぜ?」
霊夢「いや、まずまずよ。もっと、カチッと割合切り替えられるわ。チンタラ切り替えてると文や咲夜みたいな頭のキレるやつにはすぐバレるし」
カルゴ「結構急に変えたつもりだったんだが…」
霊夢「つもりになってるだけ。更に早く切り替え出来るから大丈夫。私とあんたのメインの属性が違うからこそできる事なんだからしっかりして。できるでしょ、あんたなら」
カルゴ「うん…頑張るよ」
霊夢「私の勘によれば、そろそろ魔理沙が誰かに憑依して、もしくは憑依されてここに来るはず。きっと挑んでくるからちょちょいと倒しましょ」
カルゴ「お、おう…」
すると丁度そのタイミングで、境内の石畳から、眩いばかりの光が出現した。これは魔理沙が転送魔法を使った時の光だ。
光が止み、魔理沙の声が聞こえてきた。
魔理沙「よう霊夢、エスカルゴ!」
カルゴ「おう。完全憑依、楽しんでるか?」
魔理沙「もちろんだぜ、ありがとな!またこれを出来る機会が来るなんて思ってもみなかったぜ!しかも、私を選んでくれたなんてなぁ。紫からも聞いて驚いたよ!」
そして、魔理沙がスレイブと入れ替わる。前回、最初はこいしと組んでいたらしいが、今回はあの紅白と組んでいた。
妹紅「本当にな!また完全憑依を楽しめるとは、思ってなかったよ!長生きはするもんだなぁ♪」
いつになく満面の笑みで、背伸びをしたり、肩を回してみたりする。“楽しい”を全身で表しているように見える。長生きというか、妹紅は不老不死だしなぁ、と思ってしまう。
魔理沙「あれからまだ、16、7年ほどだがな…。あれ、思ったより経ってる?」
妹紅「だろ?で、エスカルゴはどうだ?完全憑依楽しんでるか?」
カルゴ「もっちろん!ところで、俺のスレイブが誰かわかるかな?」
魔理沙「縁側にいるのが霊愛だから霊夢か霊麗の2択だな。霊夢か」
妹紅「霊夢だろ?」
霊夢「普通にバレバレね…」
カルゴ「あはは…」
そして魔理沙は、霊夢が予想していた通りの言葉を俺達に向けて言い放つ。
魔理沙「なぁ、勝負しないか?お前と霊夢vs私と妹紅でだ!完全憑依の先輩として、色んなことを教えてやるぜ!」
カルゴ「オッケー!受けて立つぜ!」
霊夢「望む所よ!さぁ、さっきのスペルで一気に倒してしまいなさいっ!」
カルゴ「おうよっ!」
こうして俺達と魔理沙達の戦いが始まった。
速さはそこそこだが密度は薄めの、雷の通常弾幕を放ち、魔理沙の小型星型弾幕を掻き消す。
先に動いたのは魔理沙だ。
魔理沙「恋符『マスタースパーク』!!」
極太レーザーだけに飽き足らず大型の星型弾幕も一緒に放つ魔理沙。魔法使いになってから本当に威力が上がり、面倒な事になった。
カルゴ「『冥道斬月波』!!」
レーザーを避ければ背後の木がダメージを受けるので、スキマを開いて、レーザーを飲み込んで…彼女らの背後に繋げたのだが……。
妹紅「そう来るのは読めてたよ!惜命『不死身の捨て身』!!」
カルゴ「ッ!?」
自分からレーザーに向かい、大きな爆発を起こしレーザーを綺麗に掻き消す。
カルゴ「くっ…頼む霊夢!」
霊夢「はいはい!霊鬼符『鬼想雷封穴』!!」
妹紅「んんっ!?」
魔理沙「うっ、来たか新しいやつ…!」
力の温存の為か相殺せずに避けていく。しばらくして霊夢は、弾幕の割合を切り替える。
魔理沙「うわっ、急に早くなった…頼む妹紅!」
妹紅「待て待て待て、急に言われても…んぐっ!イテテテッ!目が追いつかないぞ…?」
霊夢(やっぱり妹紅にはそんなに効かないか…。雷と炎だからかな。だったら魔理沙を……!)
策を思いついた霊夢は、俺の別な力を使役する。
今度は、雷ではなく膨大な妖力だ。
妹紅「霊力と妖力か…本来なら交じることの無い2つの力を合わせやがった…」
魔理沙「こっからは私がやるぜっ!魔符『スターダストレヴァリエ』!」
霊夢「かかったわね!さぁ、キメなさい!」
カルゴ「おう!一閃『Mishap of Thunder』!」
魔理沙「げぇっ!?」
魔理沙の頭上に魔法陣を作った俺は、妹紅と切り替わらない内に雷を落としてしまう。魔理沙には普通に雷が効くので、魔理沙を誘い出したのだ。
魔理沙「くおぉっ…間に…合わなかった……」
呻く魔理沙は、手が痺れているらしく、ブルブルと震えながら箒にしがみついていた。切り替えも今ならできるはずなのだが、それをしないのは…もしかしたら雷には切り替えを封じる力でもあるのだろうか?
霊夢「危なかったけど、キメられたわね」
カルゴ「うん。他のにすればよかったとは思うが勝ててよかったよ」
霊夢「次は気を付けて」
カルゴ「オッス」
その後は完全憑依を解き、娘2人も交えて6人で談笑し、組み合わせを変えてたくさん戦った。
結果としては、霊夢がいる方は確実に勝った。
俺と霊夢がぶつかった時には霊夢が勝って、それ以外とぶつかった時には俺が勝ち…。
意外にも、相性がよかったのは妹紅だった。
妹紅「なぁ、明日は一緒に地底で暴れないか?」
カルゴ「えー…地底で完全憑依可能なのはお空とさとりの2人だけだよ?」
妹紅「うーん…いや、あの鬼がいるだろ?宴会の度にお前に絡む1本角のさ」
カルゴ「勇儀か。あの人は1対1を好むけどな…まぁ聞くだけ聞いてみるか」
妹紅「おうっ♪ それじゃ、明日のお昼過ぎにこの神社に来るから、一緒に行こうな!」
カルゴ「わかったよ。また明日な」
妹紅「ああ!じゃーな!」
明日は妹紅と地底に、という約束をして、彼女は自分の家に帰って行った。それを見送った俺も、神社に戻る。しかしそこには、腕組みして眉間にシワを寄せる霊夢と、背後にはニヤける霊愛が。
カルゴ「どした?」
霊夢「随分とまぁ良い雰囲気だったわね。しかも私の前で。見せ付けてくれるじゃないの」
カルゴ「そう見えたか?照れるなぁ。でも妹紅が聞いたら怒りそうだな」
霊夢「そうかしら?寧ろ照れるんじゃない?」
カルゴ「妹紅が?…うむむ…想像が出来ないな。とりあえず飯作るか」
霊夢「あ、うん…。…とにかくね、私の前で他の女とイチャつかないで」
カルゴ「わかった」
イチャつきと非イチャつきの区別がつかない…。
だってさっきの俺達、喋ってただけじゃないか。
うーむ…気を付けるしかないか。
霊愛「残念だな〜。お母さんに叱られるお父さん見たかったのに」
カルゴ「またそんな事言う…」
霊愛「地底行くんだっけ?とりあえず頑張って。妹紅に迷惑かけない事ね」
カルゴ「わぁってんよ」
結局その日は、霊夢、霊愛、霊麗、魔理沙、妹紅と戦い、組んで、完全憑依1日目を終えた。
明日はかなりの強敵とぶつかる事になりそうだ。