妹紅「《怪力乱神を持つ程度の能力》…ってのはどういう能力なんだ?」
勇儀「さぁ、どういう能力だろうねぇ…」
ニコニコと楽しそうな笑みを浮かべ、妹紅を煙に巻く勇儀。怪力乱神とは、「怪」異、勇「力」、悖「乱」、鬼「神」の四つを指す語で、理屈では説明しきれないような不思議な現象や存在の事…だったような気がする。まさに勇儀だ。
カルゴ「大雑把に言えば、とんでもない馬鹿力の能力って事じゃないか?」(←のんき
勇儀「まぁ…大雑把に言えばそうなるかな」
妹紅「マジか」
勇儀「だが単なる馬鹿力と思うな…能力の方は、ちょいとばかり制御が難しいほどでねぇ…!!」
ギュッと拳を強く握りしめる勇儀。余りの握力の強さに爪が手のひらに食い込んでいるのか、聞き慣れないギチギチという音が聞こえてくる。
同時に、ゴゴゴゴ…と地面が唸りを上げ始めた。
カルゴ「もしかして…」
妹紅「能力を発動させた…のか?」
勇儀「はっはァ!今日の私は一味違うぞッ!!」
妹紅「ッ!!」
大声で空気を震わせてそう叫ぶと、地面を大きく陥没させて、こちらに突撃してくる。ゴツい拳が伸びてくるが、妹紅はそれを手で受け止める。
しかし、力を増した勇儀の拳を、妹紅がしっかり受け止めきれるはずもなく……。手はあっけなく吹き飛ばされ、辺りには鮮血が飛び散る。
妹紅「ッ……て、手が…っ!」
手が吹き飛ばされた腕を掴んで、あまりの激痛に顔を顰める。
勇儀「脆い…全く、脆いねェ。蓬莱人ってのは、復活するだけが取り柄かい?」
妹紅「
背中に炎の翼を出現させ、さらには懐から大量の御札を取り出して、霊夢の如く投げ付ける。炎の弾幕と混合させたその弾幕は、各々の弾の速さの違いが上手く撹乱に繋がっており、勇儀の行動をジワジワと鈍らせていく。
勇儀「っ、何だこの札…霊夢のと似通ってる?」
妹紅「私は昔、妖怪退治をしていたんでね!ある意味では、霊夢と私は同業者なのさ!」
そして、妹紅は炎の弾幕の他にも通常の妖力弾も織り交ぜ、声高々にスペルカードの宣言をする。
妹紅「滅罪『正直者の死』!!」
勇儀「小癪な…身動きが取りにくいねェ…!おいアンタ!正面から拳でかかってきなよ!」
妹紅「拳は私じゃなくエスカルゴの仕事だよッ!それより、余所見してて良いのかい!?」
勇儀「?…おっと、レーザー…ぐっ!?」
妹紅「ははははははっ!やっぱり、鬼って昔から変わらないね!いつも正直だ!だがそれ故に己の身を滅ぼす!それは何百年経っても全く変わっていないようだな!」
勇儀「お前…過去に鬼と戦った事があるのか…?ぐああっ、何なんだこのレーザーは…!」
鬼は古来より日本に伝わる妖怪。そして妹紅は、1300年以上生きていて、妖怪退治を営んでいた。
鬼と戦う機会も、それなりにあったことだろう。
妹紅「だから、スペル名の通りさ!正直者だと、このスペルは突破できないよ!これは、私が昔、対鬼用に開発した対魔術をルールに合わせて改良したもの!避けられるなら避けてみなよ!お前のような純粋なヤツには無理だろうがな!」
勇儀「何だいそれは、褒めてるのかい…?」
妹紅「ああそうさ!だがな、このスペルを正規のルートでクリアするにゃお前は真っ直ぐすぎる!このまま私の炎で焼かれろ!!」
波打つ弾幕を減らし、代わりに炎の弾幕をさらに多く発射し始めた妹紅。レーザーに打たれ、炎に焼かれ…このまま気絶してくれればとは思うが、やはり勇儀は一筋縄ではいかない。
勇儀「うおおおおおおおおお!!!」
野太い雄叫びを上げ、その発声だけで弾幕を発射する。空気が震え鼓膜が破れそうになるが、それを堪え、勇儀を見据えて弾幕を発射していく。
勇儀「このままだ…。正規ルートなんかどうでもいい…
妹紅「ハッ!良いね、面白いよ!!今までのどの鬼より手応えがありそうだ!!」
勇儀「私は四天王の一角!そんじょそこらの奴と同じように考えてると、痛い目見るよッ!!」
再び雄叫びを上げた勇儀は、自分に向かってくる弾幕をものともせず、全身に被弾しながらも真っ直ぐに突き進み、その鬼気迫る様に怯んだ妹紅は顔面に重い拳を食らってしまう。
勇儀「あぁ、頭が吹っ飛んじまったよ…。まぁ、すぐに復活するんだろう?」
勇儀の視線の先に、紅に輝く不死鳥が出現して、そこから無傷の妹紅が現れる。そして、首などの関節を鳴らし、四肢に炎を纏わせる。
勇儀「ほぅ、そんな事も出来るのか…。そろそろそっちの能力も見てみたいんだが…もしかするとその炎かな?」
妹紅「生憎だが、私の能力はもう見せてるよ。
《老いることも死ぬこともない程度の能力》さ。炎は妖術だよ」
勇儀「ほう、それが妖術だったのか。だが、その妖術でどこまで私とやれるかな?」
妹紅「まだ、本気は出しちゃいないよ!喰らえ、蓬莱『凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-』!」
勇儀「うおっ…!?」
何重もの正円状に発射される小粒の弾幕の後に、3列の弾幕が飛んできたり、大弾が、戦場のあちこちで爆ぜる。
勇儀「中々の爆風だな…。だが、私が近づけないほどでは無いな!!」
妹紅「くっ…ハァァァッ!!」
勇儀「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!!」
爆風の中でも構わず突っ込んでくる勇儀は、更に密度を増す弾幕をものともせず、拳の雨を降らせ妹紅を砕き、遥か彼方へ吹き飛ばす。
遠くにあったはずの塀に激突した妹紅は、何とか立ち上がって口元の血をグイッと拭う。砕かれた腕や腹に空いた穴は嫌な音を立てて再生した。
蓬莱人も吸血鬼も、死んでリセットしなければ、多少は再生に時間がかかるらしい。
妹紅「くっそぉ…まさか自分から突っ込んでくるなんてな…!そんなヤツは、アホなエスカルゴを含めて2人目だぞ…」
カルゴ「うぉい!随分ヒデェな!」
妹紅「はははっ…悪い悪い…。だが参ったなぁ…全然アイツに通じてないぞ、何なんだ?」
カルゴ「俺の剣も弾かれるよ。文字通りの鋼鉄の肉体してんだよ勇儀は。雷武器なんて、折れるし砕ける」
妹紅「うげっ…そりゃあ炎も効かないわけだな。じゃあ後は任せるかな」
カルゴ「昨日、霊夢と組んだ時に使ってたスペル使ってみたらどうだ?俺の霊力使っていいから」
妹紅「…オーケー、やってみる!」
勇儀「作戦会議は終わりかッ!?」
ドゴォッと地面に更なる大穴を空けて迫る勇儀。まだ距離があるにも関わらず、あまりの風圧に、妹紅は少しばかりフラついてしまう。
しかし、勇儀が目の前に来たタイミングで、遂に憑依時特有のスペルを発動させた。
妹紅「よし、エスカルゴ!遠慮なく力借りるぞ!『何度目かのこの命、夢想封印されるまで』!」
勇儀「ッッ!!!」
自らを青白い炎で包んで超巨大な弾として、動きながら、大きめの青白い炎の弾幕をバラバラ撒き散らす。これには、さすがの勇儀もズザザザッとブレーキをかけて様子を見る。だが、妹紅は中々炎から出てこない。
勇儀「参ったねェ、この熱さは流石にまずい…。お空くらいヤバいんじゃないか…?」
距離を取って、大きな弾幕を放ちながらで様子を見るが、相殺されているので効果が出ていない。
段々と焦れったくなってきた勇儀は声を上げる。
勇儀「おい!これじゃあ勝負にならないだろ!?いい加減に出てきたらどうだ!!」
するとそのタイミングで弾をばら撒くのをやめた妹紅は、マスターである俺と切り替わる。
(というか俺がタイミングをみて切りかえた)
カルゴ「そぉら、霊力弾喰らえッ!!」
虹色(黄色多め)の大きな弾幕が勇儀に向かう。
そして、勇儀はこのタイミングを逃さず、被弾を恐れずにさらに勢いを増して突撃してくる。
勇儀「この時を待っていたぞッ!!やっと来たかエスカルゴ!今度こそ私が勝つ!!」
カルゴ「それはどうかな!力を増してるのは俺も一緒なんだよ!!」
全ての霊力を使い果たしてスペルは終わったが、俺はここで次のスペルを発動させた。
カルゴ「根性『
身体の補強&身体能力の強化に特化したスペルを発動。これでもう、短時間とはいえ、鬼と同等の力を得た。あまりこれを使う機会がなかったが、これで、久しぶりに本気で殴り合えそうである。
勇儀「ヤバい力だ…なんだかビリビリするよ!」
カルゴ「こっから先は純粋な殴り合いだ!!」
勇儀「ああ!来い!!」
軸足を地面にめり込ませるほどにドッシリと強く構え、とんでもない風圧を発生させながら、拳を繰り出す。
カルゴ「うぉおおおおおおおっ!!」
勇儀「うおらあああああああああああッ!!!」
グシャッと気持ちの悪い音を立て勢いよく弾けたどちらかの手。痛みはほぼ感じないが、どうやら弾けたのは俺の手のようだ。手首から先が無く、肘からは衝撃に耐えかねた白骨が、皮膚を破って飛び出ている。骨まで一緒になって砕けたのか、飛び出ると同時に白い粉が空中に飛び散った。
カルゴ「ハンッ、この程度!」
手を振って血を払い、瞬時に再生したその手で、今度はストレートパンチをお見舞いする。
勇儀「少しは驚けよ…なっ!!」
顔に狙われたパンチを軽々と避けて、俺の脇腹に回し蹴りを放つ。反対側からは砕けた骨と赤黒い臓物が皮膚を破って吹き出す。
カルゴ「がッ……はぁっ、せぼ…ね………!」
幸い、かなり強く弾き飛ばされたので再生までの時間は空中でしっかりと稼ぐことができた。穴は塞がり、臓器や背骨は体内で繋がる。
カルゴ「やられっ放しではいらんねぇ…!」
口から垂れる血を拭い、ペッと血の混じった唾液を吐く。それと同時に、勇儀と同じように地面に穴を空けるほど強く地面を蹴り、相手の拳を砕かんとする勢いで殴り掛かる。
ガチッとぶつかり、互いに弾かれる。
勇儀「くっ、中々だな…!」
カルゴ「力借りるぞ妹紅!!爆炎雷『バーニングエレクトロアッパー』!!」
一時的に妹紅の力を大量に使い、雷との相乗効果により更に威力を上げ、勇儀へ腹パンチをする。
勇儀「がッ…はァッ……」
空中に打ち上げられる、勇儀の肢体。それを追う俺は、スキマを開いて彼女の向かう先へ先回りをする。そして次なるスペルを発動させる。
カルゴ「トドメだ勇儀ィ!獄炎雷『命の炎は燃え尽きぬ』!!!」
右手からは雷による極太レーザーを、左手からは炎による極太レーザーを発射し、勇儀を正面から攻撃して、地面へ強く強く叩きつける。
勇儀「ぐあああああああぁぁぁッッ!!!」
叩きつけられたと同時に大爆発を起こして、地底全体に大きな地震を起こす。爆風の中で、勇儀の叫びを確かに聞き、それが止み、煙が晴れるのを待たずにその場へ降り立つ。
そこでは、巨大なクレーターの中心ので大の字になって転がり、珍しくも口元から一筋の血を流す勇儀がいた。俺達が彼女のそばに来たのを感じたのか、うっすらと目を開けた。
勇儀「…ク、ソ………また、負けた…やるじゃ…ないか…………2人……と…も…………」
そう呟くと、真紅の瞳を隠すように瞼が閉じて、眠りについた。驚いて首筋に触ってみるが、幸いドクンドクンと強い脈拍を感じ取れたので、無事生きているらしい。
つまり、単に気絶しただけらしい。
遺言らしく言うので焦ったが…一応、安心だ。
妹紅「勝った…か。大した奴だな、この鬼は…」
カルゴ「だな…。俺も毎回死ぬほど苦戦してる。いや、毎回死んでるしな…」
妹紅「文字通り?」
カルゴ「ああ、文字通り」
妹紅「ははっ…不死身で良かったな」
カルゴ「ふふっ…そうだな」
その後は、気絶した勇儀を、向かおうとしていた彼女の家に運んで介抱し…しばらくして目覚めた彼女から飲みに誘われたので、妹紅との完全憑依を解き、俺はジュースで、妹紅は普通に酒を飲むという話でまとまり、地底の飲み屋に向かった。鬼の頑丈さには何年経っても本当に驚かされる。
エスカルゴ、大して活躍してなくて笑えますな。