※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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感想、並びに評価ありがとうございます…!
それらが来る度に創作意欲が湧きます。



逃げ出した夢の住人

擬似完全憑依異変が終結した、数時間後の朝。

今日はやる事が多い。幻想郷中に散らばる本人にそっくりな「夢の世界の住人」を13人発見して、紫さんに引き渡すのだ。

勿論これは、俺が紫さんに頼み込んで完全憑依をさせてもらう事になった代償で、しかも前もって説明をされていたので、嫌な気はしない。

寧ろ、皆の本音を聞けるあまりない機会なので、これを利用してこれからの役に立てられるかも、という、利用する気持ちまで湧き上がってきた。

使えるものは何でも使い、利用してやる。本音を無理矢理言わせようとしても、それは違うような気がする。自然に本音を聞かせて欲しいものだ。

 

 

 

───1人目───

 

巫月に聞いた話によると、姉妹間でかなり遊んだそうなので、子供たちは全員…いや、ほぼ全員は脱走していそうだ。

恐らくだが、茜だけは脱走していないかとっくに連れ戻されているような気がする。あの能力は、放置しておくにはマズ過ぎるシロモノだからだ。下手をすれば幻想郷を覆うこの2つの結界を解除しかねないのだから、紫さんも手を打ったはず。

…と考えるのは、単なる甘えだろうか。

まぁいい、見つけ次第何とかしよう。

 

カルゴ「────さて、どうするか…」

 

妖怪の山の麓まで来たは良いが、子供達が現れる気配はまったく無い。なぜ山に来たかというと、戦いたがりの子供がここで天狗に襲いかかるかもしれないからだ。

もしこの予感が当たれば…かなり迷惑なのだが。

 

夢??「うおおおお!やったるぞオラー!伐採じゃ伐採〜!!」

 

夢???「いけいけ〜!ぜーんぶ切り飛ばせー!」

 

魔法の森から、子供の声が聞こえてきた。やはりこちらに向かってきているらしく、2人の声は、段々と近付いてきている。叫びの内容から察するところ、山というより魔法の森の中で暴れているだけらしいが…早くしないと迷惑である。

位置を捉えた俺は、スキマを開き森の中へ入り、声の主の2人を発見した。

 

夢妖舞「伐採じゃ〜い!全部切り飛ばしてやる!ふははははははは!!」

 

夢樹里愛「あはは!もっとやれお兄ちゃーん!」

 

妖舞は刀を振り回して木を斬り飛ばし、樹里愛はそんな妖舞に同調してピョコピョコ飛び跳ねる。幼子の力で木が斬れるなんて…と思うが、妖舞は俺の息子だし、特に不思議でも何でもなかった。単に馬鹿力なだけだ。

 

カルゴ「おいコラ!何やってんだお前ら!」

 

夢妖舞「うわ見つかった!」

 

夢樹里愛「あ、パパ!今ねー、木とかをぜーんぶ切り飛ばしちゃおーとしてたの!斬ったあとは、私が雷落として燃やそーって!」

 

何言ってんだか父親の俺にもわからんな。随分とハチャメチャな事をするつもりらしいな。はぁ、夢の世界の奴ってこんなのばっかりなのか?

なんだか、先が思いやられるよ…。

 

カルゴ「何でそんなことする必要がある?」

 

夢樹里愛「んー…修行が上手くいかないからその八つ当たりかなー…。だぁって、すぐ疲れるし、天気弄ると力無くなるし」

 

夢妖舞「俺もそんな感じかなぁ。居合でも母上に勝てないし…もうなんの為に修行してんだかな。

………って、現の俺は思ってる」

 

小生意気にポケットに手を入れて、本音を漏らす兄と妹。八つ当たりとは実に子供らしい…。

 

カルゴ「…わかった。そこら辺については、後で現のお前らに言っておくとしよう。さ、お前らは夢の世界に帰るんだ」

 

夢妖舞「…いつか、母上に勝てるかなぁ?」

 

カルゴ「真面目に特訓していけば、な。俺だって能力を使わなきゃ…剣じゃ妖夢には勝てないさ」

 

なお、これは本当である。剣だけで勝負すると、俺は妖夢に勝てない。瞬間的とはいえど、妖夢は文以上の速度を出すので目が全然追いつかない。それだけじゃなく、刀を振る速さ、攻撃の鋭さが段違いなのだ。

 

夢妖舞「じゃ、父上より先に剣で母上に勝つ!」

 

剣を振り上げ、大きな目標を打ち立てる夢妖舞。この分ならば、妖舞は大丈夫だろう。俺に似て、真っ直ぐな性格だ。

 

カルゴ「おう、その意気で頑張れや。…樹里愛、お前もだぞ。上手くいかないこともあるだろう。だが、練習していけば必ず上手くいく。とにかく数をこなすんだよ。大して修行しないうちから、そんな風にへこたれるな。早苗が何もせずあんな風になったと思うのか?」

 

夢樹里愛「うーん…………思わない!」

 

カルゴ「そうだ。…八つ当たりするんなら、自然じゃなくて俺に当たれ。トコトン煽ってやるぞ」

 

夢妖舞「煽るんかい!!」

 

カルゴ「ふん、まぁそれは冗談だ。紫さーん!」

 

そして、紫さんはすぐに現れて…大人しくなった2人を、夢の世界へと連れていった。

 

 

 

 

 

───3人目───

 

妖舞と樹里愛が抜け出しているという事は、同じくらいの時間完全憑依していた、文と穹まで抜け出している可能性が高い。

あの2人には追い付けないので、現の2人に協力してもらう他無い。文に追いつけるのは文と穹、穹に追いつけるのは穹だけだ。絶対的な速度だと本人に頼むしか無い。

「あなた1人で」とは言われたが、こればかりはどうにもならないと思うのだが。結界や壁などで囲めなければ捕まえられない。

空全体を網で覆うわけにもいかないのだから。

 

カルゴ「文〜、穹〜……あん?」

 

文の仕事場に行くと、同じ靴が2組ずつあった。

もしかすると…もしかするかもしれない。

 

文「おお〜エスカルゴさん!丁度いい所に!今、夢の世界の私と穹とお話していたのですよ!」

 

夢文「あやや〜…もう連れ戻されちゃいます?」

 

穹達「父上ー!」

 

カルゴ「あわわわっ…文と穹が2人ずつ…」

 

広いとは言えない玄関に、文が2人と穹が2人の計4人に出迎えられた。どうやら逃げるつもりは無いらしい。ただ、夢の世界から来た文だけは、帰るのを少しだけ残念そうにしていた。

見分けはつかないが、彼女の発言でわかった。

 

夢文「もう帰らなきゃダメですかね?」

 

カルゴ「えーと…うん、出来ればもう夢の世界に帰ってほしい…かなぁ?……?」

 

文「………………」

 

瞳を潤ませて、若干上目遣いでそんなことを言うので、ハッキリ言えずタジタジになってしまう。現の文が笑顔でこちらを見ているが、その笑顔に黒い感情が見え隠れしている。夢の世界の自分に嫉妬しているのだろうか…?

 

夢穹「やっと現の父上に会えたのにー…。まぁ、父上の仰ることなら従いますかね…。向こうでもまた夢の父上になら会えますし」

 

カルゴ「素直に聞いてくれてよかった…。あと、夢の世界の俺は現(こっち)に来てるのか?」

 

夢穹「勿論来てますよ。『授業参観だー!!』と言ってはしゃいでましたから、今頃は巫月姉上の居る寺子屋に居るのでは無いかと思われます」

 

カルゴ「ふむ、慧音の寺子屋ね。じゃ、まず先に文と穹を夢の世界に送ったら行こう」

 

夢文「むぅ…もう少し私と話をしていたかったのですが…しょうがないですねぇ。もっとも、現のエスカルゴさんに会うという最低限の目標は達成できたので、良しとしますかね」

 

カルゴ「ごめんな、わざわざ来たのにすぐに帰れなんて…。あんま野放しには出来ないらしくて」

 

夢文「私達が現の世界に来てはいけないのはよく分かってるので大丈夫ですよ。皆さんに便乗しただけですので」

 

カルゴ「うん…」

 

こちらも何とか、素直な2人のおかげで話し合いで決着がついて…。紫さんに迎えに来てもらったあとは、現の2人と軽く会話し、夢の俺が居ると言われた、慧音の寺子屋へと飛んで向かった。

 

 

 

 

 

───5人目───

 

寺子屋へ向かう途中、夢の2人と思しき人物が、俺の前に姿を現した。霊愛と霊麗の2人だ。何故そのように疑ったかというと、霊愛の表情が豊かすぎるからだ。普段無愛想な霊愛らしくない。

霊麗については……夢と思しき霊愛と一緒に居るから、という安直な理由である。

 

夢霊愛「…ねぇお父さん、またお母さんとエッチするつもりなの〜?そうならさ、ちゃんと防音はしてよね?私達いつも寝られないんだからさ〜。3番目は男の子が良いかな〜。妹が出来たから、弟も欲しいな〜なんて思ってるんだよね〜」

 

やけにお喋りだし、喋り方が妙に霊麗っぽい…。

これが霊愛の本音だとしたら、本当の霊愛は妹の霊麗の様に表情豊かで間延びした喋り方…という事になるが…。やはり姉妹、似ている…。

霊愛が夢の住人なのは、もう間違いないだろう。

問題は霊麗だが…。

 

カルゴ「…霊麗、お前はどっち(・・・)だ?」

 

?霊麗「どっちだと思う?」

 

訊ねてもニコニコとするばかり。だがこれはもう答えと受け取っていい。何故なら、霊麗と霊愛に『完全憑依を多用すると夢の世界の住人が出る』という事は伝えていないからだ。

「どっち」…とは、夢か現かを指している。何についてなのかを言っていないのだから。しかし、それに対しての「どっちだと思う?」という事は今の質問内容を理解したという事に他ならない。

見事、カマかけに引っかかってくれた。

 

カルゴ「2人共、夢の世界の住人…だな?」

 

夢霊愛「うんそうだよ。でも戻るつもりは無いよ」

 

夢霊麗「折角現の世界に来たんだし。現の私達と戦うってのも良いかもね〜。どこにいるのか全くわからないけどさ」

 

夢霊愛「今日は買い物する予定だったはず……。里に居なかったって事は、もう帰って博麗神社に居るのかな。…て事で、私達は神社に行くから」

 

身を翻して、博麗神社の方へ向かい始めた姉妹。

逃がすまいとする俺は、そんな2人の前に先回りして通せんぼする。

 

カルゴ「行かせない。ここでお前らを止める」

 

夢霊愛「え〜何で?別に危害を加えようっていう訳じゃないんだよ?」

 

カルゴ「無闇に接触させるべきではないからだ。だから…即刻、幻想郷から立ち去ってもらうぞ」

 

夢霊麗「そんな…お父さんになんて絶対勝てないじゃん…。どうする?お姉ちゃん…」

 

夢霊愛「決まってるじゃん。…倒す。今すぐに」

 

夢霊麗「…!そうだね!なんたって私達は…」

 

夢姉妹「博麗霊夢の娘なんだから!」

 

どうやら聞く耳を持たないらしいな。仕方ない、戦うしかないか。あーあ、なんでよりにもよってこの2人と戦うことになるんだよ…。

下手すりゃあ、俺と霊夢が力合わせた時くらいに強くなるんだぞこの2人…。流石、血の繋がりがあるだけの事はあるよね。

 

カルゴ「良いだろう、かかって来い。少しばかり厳しく相手してやる」

 

夢霊愛「させない!必殺技で終わらせてあげる!いくよ霊麗、合わせなさい!本気出すよ!」

 

夢霊麗「わかってるっ!本気でいくよ!」

 

夢姉妹「姉妹符『緋想封印』!!」

 

カルゴ「!!」

 

姉妹の中の膨大な霊力と妖力が、紅と白の弾幕の形を取って溢れ出す。その密度たるや、まさに、不可能弾幕のそれに近い。

 

カルゴ「くぅぅっ…!!」

 

しかもダメージがほかの弾幕とは段違いである。

流石、次期博麗の巫女は違う。これでは、鎧とてすぐに破壊されてしまうだろう。

普通の弾幕ならば特攻だって出来た。だが今回は押しに押されていてそれが叶わない状況にある。仕方ないが、スペルを使うしかあるまい。

 

カルゴ「スペルカード発動ッ!喰らえ2人共!!雷極『夢想封印・迅雷』!!」

 

電力弾と霊力弾が姉妹へと向かう。だがその間に大半が相殺されてしまい…先に俺の方のスペルの時間が切れてしまった。

 

カルゴ「なっ…俺の方が後に発動したのに!?」

 

夢霊愛「2人なんだから時間も倍になるでしょ?お父さんとお母さんのがそうみたいにさ」

 

夢霊麗「そーそー♪」

 

カルゴ「うっ……ぐうぅっ…!!」

 

殺す時に近い攻撃力だ。意識が遠のくような感覚すら覚える。死んだとしても復活できる俺だが、気絶となればそうはいかない。たとえ俺でも気絶してしまえばオシマイなのだから。

 

夢霊愛「もう少しっ…!」

 

夢霊麗「このまま力で押せるよ!もし勝てたら、夢の中で教えてあげよ!これで勝てるよって!」

 

夢霊愛「そうだね…でも油断は禁物だよ!」

 

カルゴ「………るな…!」

 

夢霊愛「ん?」

 

カルゴ「調子に乗るなァァァァッ!!!」

 

夢姉妹「キャッ!?」

 

叫ぶと同時にエネルギーを爆散させ、超高密度な弾幕を掻き消すと同時に、ダメージを与える。

 

夢霊愛「何、今の…風だけで手と足が痺れた…」

 

夢霊麗「翼もだよお姉ちゃん……」

 

カルゴ「フー……親に勝つなんざまだまだ早い。残念だが、俺はまだ負けない。次でお前達2人を気絶させ、紫さんに引き渡す。次に目が覚めたら夢の世界だろうさ」

 

夢霊愛「へ…へぇ…。でも…なんで?なんでお父さんは、こんなに強く娘に手を出せるの?」

 

カルゴ「何でって…見た目は俺の娘でもお前らは俺の娘じゃないだろう?」

 

夢霊愛「えっ…?」

 

カルゴ「夢の世界のお前らは夢の世界の俺の娘。現の俺の娘ではないのさ」

 

夢姉妹「……!!」

 

次のスペルで2人を気絶させた俺は、しっかりと紫さんに引き渡して、今度こそ慧音の寺子屋へと向かった。2人ずつ捕まえているので、そこそこ良いペースでやる事が進んでいる。この分なら、今日と言わず午前に全てが終わるかもしれない。

残り、7人────…。

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