夢の世界のレミリアたち3人を送り返した俺は、里の外れにある慧音の家に向かって飛ぶ。橙色の空には、烏が団体で舞っている。先頭にいるあの一際大きな烏がリーダーなのだろうか。
カルゴ「…っと、急がねぇとな…」
すれ違う団体さんをよそ目に、俺は速度を上げて進み続け、それから数分後、慧音宅に到着した。一人暮らしなので、小ぢんまりとしている木造の和造りの一軒家だ。壁も薄いので、屋内での音は普通に外に漏れていそうだが、不自然なほどに、シーンと静まり返っている。
玄関前に降り立った俺は、コンコンと玄関の扉を叩こうとするが、妖気を察知したらしい慧音が、俺が扉を叩く前に扉を開けた。
慧音「思いの外早かったな…入ってくれ」
照れ笑いのようなはにかんだ笑みを浮かべ、中に入るよう手で示す。「おじゃまします」と小さく頭を下げ、屋内に足を踏み入れる。木ならではのあのいい匂いが鼻をつく。
慧音「忙しいだろうに、呼び出して申し訳ない。いつまでも寺子屋に居る訳にもいかないのでな」
カルゴ「いや俺の方こそ…変なことに巻き込んで申し訳ない…。えと…どこから話せばいい?」
慧音「もう1人のお前はどこから出てきたか…。まずはそこから頼む」
カルゴ「わかった」
一瞬、どうして慧音の家に来たんだっけ?と来た理由を忘れかけたが…そうだ、俺の方から説明を後回しにしたのだった。そりゃ、慧音だって色々家事とかあるだろうし、いつまでも寺子屋にいる訳にいかないから、俺を自宅に呼んだのだろう。
カルゴ「…ってワケなんだ。抜け出したのは全員捕まえたから、もう心配は無いよ」
慧音「完全憑依…か。なかなか面白そうだ。今度妹紅に会った時は、彼女視点での話も聞いてみることにするよ」
完全憑依など諸々の説明中、慧音は、楽しそうに話を聞いてくれた。おかげで何だか嬉しくなり、つい話さなくてもいい事を話してしまった。
慧音「しかしなぁ…娘にも手を出していたとは、恐ろしい奴だなお前は…」
カルゴ「お、俺じゃないからな!?あくまでも、夢の俺の話であってだな……」
慧音「わかってるわかってる。…だがまぁ、私がアイツに言ったことも…間違ってはいなかった、というわけだな」
カルゴ「慧音、アイツになんて言ったんだ?」
慧音「……えっとだな……絶対に他言するなよ?もちろん、妹紅にもだぞ?」
カルゴ「わかった」
慧音「その…『私がこの身を差し出す代わりに…どうか巫月から手を引いてくれまいか』みたいな事を言ったと記憶している…///」
赤くなった顔を見られたくないのか、両手で顔を覆い隠す慧音。それでも、指などの隙間からは、赤い顔と荒くなった息が漏れている。
カルゴ「なんで巫月から?」
慧音「いつか娘にも手を出しそうで怖いからな、お前は…。さっき言っていた夢のお前のように」
カルゴ「うぐ…」
実はもう弦月姫とヤったよ〜…とか言えねぇ…。
いくら夢の弦月姫とはいえ、ヤッた事には変わりないからな…神よ、許して下さい…。
諏訪子《逆によく今まで我慢したよね。とっくに手を出しててもおかしくないじゃん》
カルゴ《なんで!?》
諏訪子《エスカルゴって堪え性無いから》
カルゴ《…!》
なかなか酷い事言うなこの神は…。確かに堪え性あるとは言えないけどさ!最近巫月以外と風呂に入らないのは自衛のためでもあるしね。
早苗《まさか樹里愛の事もそういう目で見てたりするんですか〜?》
カルゴ《俺は大丈夫…夢の俺じゃないから……。野外プレイ願望のある神とは違うんでね》
さなすわ《はうっ!?》
言われっぱなしは癪に障るので、ちょっぴり毒を吐くと可愛い反応を見せてくれる2人。ちょっと言い過ぎたかとも思うが、本当のことだからあの2人は反論できないだろう。
神綺《カルちゃんは本当にモテるのね、お母さん嬉しいわ♪》
カルゴ《そこ止めたりしないか…?》
神奈子《そうだ、義理とはいえ母親なのだから、息子の教育はしっかりするべきだ》
神綺《嫌ですわ。だって私、放任主義ですもの。カルちゃんにはのびのび育って欲しいからね♪》
神奈子《放任といえど、限度があるだろうに…》
神綺《あまり私の教育論にケチつけますと、その神社を別世界に送り込みますわよ?》
神奈子《許して下さい、何でもしますから》
神綺《ん?今なんでもするって…》
神奈子《………》
カルゴ《………》
これが「暇を持て余した神々の遊び」だろうか?
せめて、俺の頭の中でやらないでほしいものだ。
慧音「…で…その…」
カルゴ「!」
いけない、今は神の遊びに付き合ってる場合じゃないのだった。どこまで話しただろうか。
慧音「改めて言うが………どうやら私は、お前のことが…好き…らしい。もし、お前さえ良ければなんだが…私とも…恋仲になって欲しい…///」
顔を真っ赤にしつつ…けれども目はしっかり俺を見据えて、二度目の告白をする慧音。もちろん、ここまでされて断るほど非情ではない。答えは、イエス一択である。俺自身、慧音は好きである。恋愛的な意味では無かったが…大丈夫。きっと、これからも何とかなる。
カルゴ「…俺でいいのか?後悔しないか?」
慧音「しない。絶対にだ」
カルゴ「それじゃ…これからも宜しくな、慧音」
慧音「…ああ♪」
笑顔でガッチリ握手した俺達。そんなこんなで、ついに慧音は、俺の16人目の女となった。かなり多いが、これでまた寺子屋へ行く新たな楽しみができた。何とかして慧音も幸せにしてやらねば。
慧音「…本当に帰るのか?良いんだぞ、遠慮せず泊まっていっても…」
カルゴ「悪い。今日だけはダメなんだ。レミリアから呼び出し?くらってて」
帰ろうとすると、意外にも俺を引き止めに来た。
そんな慧音の顔は、普段の女教師の顔ではなく、1人の女性のそれになっていた。泊まりたいのは山々だが、今夜だけはダメだ。
慧音「そうか…先約があるなら仕方ない。また、寺子屋には来るんだろう?」
カルゴ「もちろん。お泊まりは…また今度な」
慧音「わかった。楽しみにしてる」
カルゴ「え…」
慧音「ふふっ…♪」
最後の最後に、艶やかに微笑んだ慧音は、静かに玄関の扉を閉め、屋内に戻っていった。扉の外を吹き抜ける秋風には、どこか喪失感の様なものを感じさせられたが、慧音の今の笑顔を思い出すとそんな感傷的な気分は吹き飛んだ。
カルゴ「……行くか」
小さく呟いた俺は、再び翼を広げて飛び立つ。
太陽は没し、街灯のない幻想郷は、真っ暗な闇に覆われていた。目はいいので飛行の問題は無い。
次のレミリアとの会話で、俺の……いや、俺達の運命が決まる。何としてでも、俺達全員の運命をハッピーエンドにもっていかなければ。
次回がかなりの分岐点に!
その原因は、いつものアレ!?