霊夢「ねぇ…本当にやるの?」
紫「ええ、勿論。前の代が居るうちに次の育成をしているのだから。それに、霊愛ちゃんは半妖。適正を見たいわ」
霊夢「そうじゃなくて、エスカルゴが犠牲になるかもしれないって所について言ってんの!」
カルゴ「俺が犠牲になるとか、ありえないから。マジになるなっての」
霊夢「この前弦月姫ちゃんに負けたんでしょ?」
カルゴ「うぐ…。いや、あれはフランと弦月姫のペアに負けたのであってな、娘には負けてねぇ」
霊夢「この負けず嫌い…。でも……絶対、生きて帰ってきてよね。これっきりなんてイヤよ」
カルゴ「心配すんな」
霊愛「……っ!?」
ある日の朝。突然、膨大な量の強い妖気を感じた私は、布団から飛び起きた。霊麗も。
でも、おかしなことに、障子越しに見える野外が真っ暗だ。私は、吸血鬼の血を引いているから、時計も見える。時刻は午前9時の少し前。私たち姉妹は、慌ててお母さんのいる寝室へ向かう。
霊愛「お母さん、外が!」
私たちがお母さんの寝室に行くと、既に巫女服に着替えているお母さんが居た。流石に、こういう非常時の行動は誰よりも早い。
霊夢「何してるの霊愛、さっさと着替えなさい!朝っぱらから異変だわ!霊麗はまだお留守番よ!あなたにはまだ早いわ!」
霊麗「はい!」
霊愛「わかった、すぐ着替え…て………」
そして、今気付いた2つ目の“おかしな事”。
お母さんと寝ていたはずの、お父さんが居ない。
霊愛「お父さんは?」
霊夢「気付いたらもう居なかったのよ、アイツ。というか霊愛、この妖気自体がアイツのでしょ?隠すつもりも無いみたいね…!」
霊愛「てことは、異変の主犯はお父さん!?」
霊夢「十中八九。ほら、着替えて外行くわよ!」
朝ご飯も食べず、素早く着替えた私は外に出る。
そこで私とお母さんは驚くべきものを目にした。
霊愛「噴火…?」
霊夢「いや、違う…」
妖怪の山から真っ黒な煙が出ている…様に見えるけどよく見れば煙じゃないことがわかる。あれは真っ黒な霧だ。…だけど、人間や夜目が効かない妖怪の為なのか、所々から細い陽の光が差し込んでいる。前にお父さんがあんなスペルを使ってたような気がする。
霊愛「山から出てるって事は山の中にお父さんが居るんだね。だったら直行しよ」
霊夢「待って」
山へ向かおうとする私を、不自然にもひきとめるお母さん。こんな時に止めるなんてらしくない。
霊夢「この霧に乗って、アイツの妖気は幻想郷中に広がってる。それにアイツは分身とか作れる。わざわざあそこに留まる理由が無いのよ」
霊愛「あ…」
霊夢「それに、感覚研ぎ澄ませればわかると思うけど、妖気の出どころは火口だけじゃない。各地からアイツの強い妖気が出てる」
疑いつつも、妖気の感度を上げる。確かに色々な場所からお父さんの強すぎる妖気を感じられた。方角からして、妖怪の山から2ヶ所…それから、紅魔館から1ヶ所…永遠亭から1ヶ所。
どれもお父さんがよく行くところだ。
霊夢「…私は紅魔館と永遠亭行くから、あなたは山の2ヶ所に行ってきなさい」
霊愛「わかった」
その場でお母さんと分かれた私は、山に真っ直ぐ向かう。思えば、今挙げた3箇所の中で博麗神社から一番遠いのが、私が向かってる妖怪の山だ。遠いところを押し付けられた感がある。
お母さんはまず永遠亭に行ったらしく、とっくに姿は見えなくなっていた。
チルノ「やいやい!」
霊愛「?」
湖の近くを通ると、チルノが私の前に現れた。
小さい頃から遊んでるけど、相変わらずチルノはうるさい。よく言えば元気いっぱいだ。
チルノ「どこ向かってるのか知らないがあたいと勝負しろ!夏が終わって段々力が戻ってきた!」
霊愛「面倒。通らせてもらうよ」
チルノ「問答無用!雹符『ヘイルストーム』!」
ったく、相変わらず話聞かないなぁチルノは…!
ルーミアの方がまともな会話できるよ!
霊愛「もうっ、しょうがないなぁ!」
チルノ「おっ、やる気になったなー!それそれ、喰らえ喰らえ〜!!」
チルノの発射する氷の弾幕を、避けて避けて避けまくる。確かに、真夏の頃と違って密度は濃いし弾速もかなり上がっている。それでも、少し強い程度の奴は私の敵じゃない。
霊愛「キメる!霊符『夢想妙珠』!!」
チルノ「ふぎゃあぁぁぁぁ!!」
私の弾幕でチルノの弾幕を掻き消し、本人に連続でダメージを与えると、地上に墜落していった。
私はそんなチルノの事は気にせず、先へと進む。
もう一度、妖気の探知をする。永遠亭から出てた強い妖気は消えた。という事はお母さんが何かを倒したという事。次は紅魔館に来るに違いない。
私はこのまま山に向かうべき…なんだけど……。
霊愛「…たまにはいいよね」
お母さんの言ったことに逆らって、私はすぐ近くの紅魔館へ向かった。たまにはお母さんを相手にドヤりたい。何だか、急にそう思えてきた。
弦月姫「お姉様」
霊愛「弦月姫…。何?私の邪魔をするの?」
紅魔館の上空から入ろうとすると、突然目の前に2つ下の妹、弦月姫が現れた。ここに来る時に、時を止めたらしい。時止めの影響を受ける私からすれば、瞬間移動にしか見えない。
というか、笑顔が不自然でどことなく不気味だ。
弦月姫「それはこちらのセリフですわ、お姉様。邪魔も何も、お姉様は侵入者なのです。こうして紅魔館の敷地に入ってしまっているのですから。侵入者の排除は私の仕事です」
霊愛「排除が仕事って言うのなら、異変の解決は私の仕事よ。解決の為にそこを退きなさい」
弦月姫「イヤです。私には私の仕事があるので、それを放棄することはできません」
妹は営業スマイルを崩さない。異母姉妹とはいえ家族だからこそわかる。本当の笑顔じゃなくて、これは営業スマイルだ。
霊愛「あーもー…しょうがないな、ぶっ飛ばす!勝負よ弦月姫、私が勝ったら退きなさい!」
弦月姫「私が勝ったら神社へ引き返してイチから出直して下さい」
同時に弾幕を発射し始める。私の方は霊力弾を、弦月姫はナイフを投げる。急に現れて急加速するナイフは、避けるだけで精一杯…ではないけど、かなり心臓に悪い。
弦月姫「やはりこっちにしますか…!」
霊愛「!」
弦月姫が地面に手を翳すと、メコッと地面を突き破って、土を飛ばしながら植物が伸びてきた。
巨大なバラ、ユリ、パンジー、その他よくわからない、生理的に受け付けない触手のような気持ち悪い植物なども生えてきて、私たちを囲む。
弦月姫「パンジーさん、弾けちゃってください!種符『エクストラマシンガン』!!」
弦月姫がそう言うと、パンジーが弦月姫の妖気を帯びた種を沢山飛ばしてきた。大きく避けようとしても、植物の壁が邪魔でそうもいかない。
弦月姫「ユリさん、花符『甘い息』!」
霊愛「うっ…!?」
そばにあった白百合から、甘ったるい匂いのする気体が吐き出され、それを吸ってしまった私は、段々と頭がクラクラとしてきた。
おかげで、連続して被弾してしまいそうになる。
結界を張ろうと思うが、正面だけだと、背後から種を発射されるので同じ事だ。なら、自分諸共、全方向囲めばいいだけの話だ。
霊愛「夢符…『二重結界』…!」
甘い気体はまだ残っているので、あんまり呼吸をしない方がいい。ともかく自分の身はこの結界で防げるので、頭がハッキリするまでの持久戦だ。
弦月姫「ふふふっ、まんまと私の術中にハマってくれましたね、お姉様♪」
霊愛「はぁ…?」
弦月姫「私と戦う時は…己を囲んだら負けです♪薔薇符『棘蔓地獄締め』!!」
私たちを囲んでいた植物の中から、数本のとても太いバラが伸びてきて、結界を締め付ける。更にその棘のおかげで、結界にはどんどん傷がつく。
霊愛「なっ…傷が!」
結界を修復しようと霊力を使う。しかし、こんな使い方は初めてで、修復には思ったよりたくさん霊力を使うことを、たった今知った。
待って、焦らないで私…。これ以上無駄に霊力を消費するとあとがもたない。だったら、あの刺に触れるのを覚悟で…薔薇がこちらに向かってきた時にできたあの細い隙間から、植物の壁を抜ける…。そう、それが最善の策…よね?だったら、結界が壊れるのと同時に、弾幕でこのトゲトゲのツルを退かすのが良いかな。
弦月姫「さぁ、仕上げですお姉様!もっと強く…もっと締め付けるのです!!」
霊愛「────ッ!?」
薔薇の締め付けが強くなって、結界がバキバキと音を立てて崩れ始める。思ったよりずっと強い。
霊愛「霊符『夢想封印 散』!」
弦月姫「!」
ヒビ割れた結界を、自分で内側から壊し、薔薇のツルも弾き飛ばして囲みから脱出する。そして、先程囲まれながら作戦を練った通り、植物の壁の隙間から外に出る。
弦月姫(しまった、こちらが囲まれる形に…!)
霊愛「結構いい攻撃だったけど、まだまだ私には届かないよ、弦月姫!霊符『夢想封印』!!」
まだ植物の壁の中に居る弦月姫諸共、かなり力を上げた必殺スペルでトドメをさした。
弦月姫「まだまだ詰めが甘いですね…私…」
紅魔館上空での姉妹対決を終えた私は、お母さんが来る前に軽く探索して妖怪の山へ向かう。
館を探索した結果、なにもわからなかった。妹を倒したら、あの強大な妖気まで消えてしまった。おかしな事だが、本当にそう感じた。まるで狐につままれたようだ。
とにかく、何も無いのであればあとはお母さんに任せるべきだと、あとはお母さんに押し付けて、私は妖怪の山へ使うことにしたのだ。
霊愛「…やっと眠気が治まった…」
頬をパチンと軽く叩いた私は、飛行速度を上げて山へ乗り込んだ。
異変解決(の為の探索)が霊愛にとっての正義。
侵入者の排除が弦月姫にとっての正義。
正義のぶつかり合いって良い…良くない?
リクエスト久しぶりに来ました。このオリ異変が終わったらリクエスト編にいきますね。