ベビー用品を買いに外の世界へ行こうとした俺。だがレミリアは、俺が外に行くと聞いて勢いよくベッドから跳ね起きた。まだ小さいとはいえど、お腹の子は大丈夫なのかと内心でヒヤヒヤする。
レミィ「ちょ、待って!外の世界に行くの!?」
カルゴ「うん、そうだよ」
少し話が長引く予感がしたので、開いたスキマを一旦閉じる。電力は少しでも温存しておきたい。
レミィ「私も行きたいわ!」
カルゴ「いや〜…すぐ帰ってくるから、出来れば留守番してて欲しいんだよな…」
レミィ「行きたい行きたい!あなたの子だけど、私の子でもあるんだから!」
カルゴ「姿見られたら面倒なことになるだろう」
レミィ「うー…マントか何かを被ればいいのよ!そうすれば見た目はただの子供だし!」
意外なことにレミリアは、己の見た目は子供だと認めているらしい。大人ぶる様な振る舞いが多く見受けられるので、その辺も大人だと思っているのかと思っていた。
カルゴ「仕方ないな…」
俺はポケットから光学迷彩スーツを取り出して、それを隅々までじっくり見る。そして創造魔法の呪文を唱えて、サイズはレミリアより少し大きめ且つ俺より小さめという絶妙なサイズの光学迷彩スーツを創造した。
光学迷彩のメカニズムは、創造主である俺自身が理解していないので、今作ったこの創造物にその機能は搭載されていない。ただの黒いマントだ。
カルゴ「ほら、それ羽織りな。外、行くぞ」
レミィ「! やった!」
俺もそれを羽織り、レミリアに手渡す。すると、ガッツポーズをして喜ぶ。やはり中身も子供だ。
カルゴ「誰にも言うなよな?」
レミィ「もちろんよ」
カルゴ「買い物するだけだから楽しくないぞ?」
レミィ「あなたと行くならどこでもいいわ」
どうやら、引くつもりはないらしい。仕方ない、連れて行くことにしよう。バレないといいが…。
カルゴ「じゃあ、店の裏にでも行くかな。あと、絶対に俺から離れるな。外は危ないから」
レミィ「ええ、わかってる。外は危険だものね。でも、危険な分だけ面白いってものよ」
商品を手に取るまでは手を離さないでおこう、と思ったので、レミリアの小さな手を取り、またもスキマを開き、外の世界へと移動した。
外は現在夕方。太陽はほとんど沈みかけていた。
丁度帰宅ラッシュの時間帯なのか、裏から見える道路は、どれもこれもすごく混んでいた。
レミィ「ケホッ…空気悪いわね」
カルゴ「マスクマスク…ゲホッゲホッ…」
空気の悪さを忘れていた俺は、すぐさまマスクを2つ創造し、レミリアに渡して自分にも着ける。
少しはマシになっただろう。
レミィ「ありがとう。それで、この店で買うの?どう見ても紅魔館より小さいんだけど」
店の裏側を指さしながら、なぜか建物の大きさを見て、嫌そうな顔をするレミリア。大きさが
カルゴ「大きさは問題じゃないさ。俺が赤ん坊の頃からこの店の使ってたから…多分、大丈夫だ。見本としては、な」
レミィ「ていうか、ここで買ったの使えば?」
カルゴ「ここにあるのは人間用だ。それを見て、吸血鬼用に改良するんだよ」
レミィ「そっか、ここって人間の店だったわね」
カルゴ「ほら、早く終わらせるぞ」
レミィ「うん」
再び手を引き、その店に入店。やはり、俺が外に居た頃とは全く違っているが、「子育て応援」の謳い文句は変わっていないらしい。
今一度確認するが、買いに来たのは、ベビー服、オモチャ、ベビーベッドの3種である。
レミィ「何から見る?」
カルゴ「服」
レミィ「男物?女物?いや、両方ね」
カルゴ「女物」
レミィ「どっちかわからないじゃない」
カルゴ「女子。俺の勘がそう言ってる」
レミィ「え〜?ま、あなたに任せるわ」
実は先日、予知夢を視てしまったのだ。レミリアが無事出産を終え、満面の笑みで抱き抱えているシーンの夢を。だから、女子という事がわかる。
レミリアはどちらが生まれてくるのかを楽しみにしているので、勘とだけ言っておくつもりだ。
ただ、その夢にはある大きな違和感があった。
窓から見える自然の景色は、どれも紅葉した木々だったのだ。現在の幻想郷のような。
レミリアは夏終わり頃に受精したのだから、春か夏直前に生まれてくるはずなのだが。遅産の割に赤ん坊は平均的な大きさだった。というか、遅産にしても遅すぎる。異常だ。
その1点だけが、どうしても腑に落ちないのだ。
レミィ「ちょっと、通り過ぎてるわよ」
カルゴ「!…あぁ、すまない」
考え事をしていた俺は、ベビー服コーナーを通り過ぎそうになるが、レミリアに教えてもらって、ギリギリで踏みとどまる。さて、何を買おうか。
花柄や無地、様々なものがある。
ピンクで模様無し…白で模様無し…花柄…。
レミィ「紅が無いんだけどなんなのこれ?」
カルゴ「シャツなら兎も角、赤ん坊が紅はな…」
レミィ「えー…絶対合うと思うんだけど」
カルゴ「……とりあえず、色とかは俺が想像して創造すれば着色できるから大丈夫だ。あくまでも見本を買いに来たんだからな?」
レミィ「そっか」
カルゴ「柄の練習をしたいから、花柄と…無地は要らないな。白い服を想像すれば創造できるし」
レミィ「なんかややこしいわね、想像だとか創造だとか…。頭こんがらがりそう」
カルゴ「ははっ…俺もだ」
とりあえず花柄の服を1着、腕に引っかけて次はオモチャコーナーへ向かう。柔らかいブロックやガラガラ、ボールなど、そういったものが多い。質感の練習に丁度いいので、柔らかいブロックをいくつか購入することにした。ボールだったら、紅魔館にもいくつかあったような気がする。
ガラガラは吸血鬼の力で遊んだら即壊れそうだ。
レミィ「次はなんだっけ?」
カルゴ「ベビーベッド。弦月姫のがあるんだが、これも使うのを許してくれなくてな…」
レミィ「あはは…
カルゴ「レミリアはどっち派だ?お下がりとかは賛成?反対?」
レミィ「手間とか考えたら賛成だけど、これから生まれてくるこの子に合うかわからないからね…どっちとも言えないわね」
カルゴ「あーーーーー…合うかどうかか…。全く考えてなかった。馬鹿だな俺…そりゃ咲夜さんも反対するっての…。弦月姫は銀髪だが、この子は俺かレミリアに似るだろうしなぁ…。その面から考えてもやっぱ似合わないだろうな…。まぁ服は後からどうにかなるか。ベッドは大きめかな?」
レミィ「そうね。未来の紅魔館の主となる高貴な赤ちゃんなのだから」
カルゴ「そこか」
何にせよ、大きなベッドなら咲夜さんもレミリアも納得してくれるだろう。マットレスや囲いの質を真似るためにも、やはり本物をゲットしたい。
俺たちが普段使用しているようなベッドの質と、ベビーベッドの質は全然違うのだから。
レミィ「これなんかどう?この店では一番大きなサイズだと思うんだけど」
カルゴ「『6歳まで使えるベビーベッド』だぁ?今はこんなのもあるんだなぁ。自分の子供を檻に閉じこめるつもりかよ」
レミィ「妖舞くんたちは何歳だっけ?」
カルゴ「4歳。もう少しで5歳だな」
レミィ「あの子たちがベビーベッドなんて、全く想像出来ないわ。とりあえずサイズの面で考えてこれにしましょう?」
カルゴ「だな。そろそろフラン起きるだろうし、早く会計済ませて早く帰ろう」
レミィ「そうね」
大きな箱を肩に乗せ、服やオモチャなどを反対の脇で抱えて、会計へ向かう。いつものことだが、レミリアは何も持たない。
店員「いらっしゃいませ!(多っ…面倒臭い…)」
誰が見ても明らかなほど、あからさまに顔を引き攣らせている。接客業は向いていなさそうだ。
レミィ「ねぇ、早く帰らなきゃ時間的にまずいんじゃない?何チンタラしてんのよトロいわね…」
店員がモタモタしているのを見かねたレミリアは隣の俺にそう呟く。聞こえていないか不安だが、聞こえていないと信じる他あるまい。
カルゴ「まぁまぁ…」
店員「────円になります。ポイントカードはお持ちでしょうか?」
カルゴ「ないです。それじゃ…」
財布から諭吉を6枚出し、荷物を持ってレジから離れようとする俺達。だが店員は、そんな俺達を大声で呼び止める。
店員「あの、お客様!」
カルゴ「お釣りは要らないよ」
店員「いえ、足りないんです!」
レミィ「ぶふぉっ!」
カルゴ「なん…だと…!?」
慌ててレジに戻り、残金を諭吉で支払い、逃げるように店から出て、また店の裏手へ回った。
レミィ「ククククッ……『お釣りは要らないよ』『足りないんです』…クククッ……。残念だったわねぇ、いい所見せようとしたのに!あははは!面白すぎて、思わず吹き出しちゃったじゃない!あっはははは!」
腹を抱えて、若干涙目になりながら笑い転げる。
今のアレは俺にとって間違いなく黒歴史モンだ。
カルゴ「そんな笑うなよ恥ずかしい…。あんまりそうやってると置いてくぞ?」
レミィ「私を置いて行ったら、今買った物が無駄になるけどそれでもいいの?」
カルゴ「ぐっ……。今のこと誰にも言うなよ?」
レミィ「わかってるわ。外に来たこと自体が秘密なんだから。…暫くは思い出し笑いできそう♪」
カルゴ「ったく…」
こうして俺たちは短い買い物デートを終え、再びスキマを開いて紅魔館に帰還した。
買った品物は全て弦月姫が創ってくれたポケット空間に入れたので、誰かにバレる心配は無い。
これを使い、質感や柄などを練習しなければ。
うー☆