お楽しみに!
俺とレミリアのあいだにできた娘、レイチェルが生まれてから、早くも半月の時が流れた。そこで俺たちは、10月の満月の夜、みんなを集めてレイチェルのお披露目会を企画した。
(みんなには満月鑑賞会と言ってあるのだが。)
やはり妖怪は、人間に比べてかなり成長が早い。
首なんて、生まれた翌日にはすわっていた程だ。
数日で「あー」と喋り始め、さらに数日が経てばよちよち歩きが出来るようになった。その時は、俺もレミリアも小躍りして喜んだものだ。
半月が経った今では、たまにコケるが走れる。
簡単な日常会話程度ならば、何とか可能である。
俺やレミリアがどこかへ行こうとすれば小走りで追いかけて来るのだが、それがまた凄く可愛い。
ちなみに、レイチェルの愛称はレーテであるが、本人が自分の名前を完全に覚えるまでは、愛称は使わない予定だ。ゴチャゴチャに覚えてしまった場合、色々とややこしくなるだろう。
服装はレミリアとお揃いである。2人が並ぶと、レミリアとレミリア人形にしか見えない。
毎度の事なのでもう慣れたのだが、やはり「俺の遺伝子薄くね?」と思ってしまう。
レイチェルの能力はもちろんまだ不明だ。
お披露目会の時には母さんも呼ぶつもりなので、念のために聞いておいた方が良いだろう。もしも強すぎる能力だった場合は、それが暴走した時の対策を考えておきたい。間違っても図書館の更に地下へ閉じ込めるなどという愚策は実行しない。
レミィ「レイチェル?今夜は色んな人が紅魔館に遊びに来るけど、驚いちゃダメよ?」
レーテ「うん!」
咲夜さんと弦月姫がパーティの準備をして、俺は分身を2人のサポートに行かせ、地下の図書館でまったりしている。フランも一緒だ。レイチェルは俺の膝の上にいて、共に魔導書を読んでいる。
カルゴ「レイチェルは人見知りしないからなぁ…多分、そこら辺は大丈夫だろう。皆を呼んだって言っても、姉兄とその母親と魔理沙だけだし」
レミィ「それでも10人以上居るでしょ。今まではチルノやそこらの奴としか会ってなかったけど、今夜会うのは血が繋がってる姉兄よ。だから少し心配なのよね、パニック起こさないか…」
フラン「お姉様って変なとこで心配性だよねー。そんなの大丈夫だって。ねっ♪」
レーテ「だいじょぶ!」
腰に手を当て、ニッと笑うレイチェル。レミリアが幼かった頃もこんな感じだったのだろうか…。
フラン「いつも思うことだけど、レイチェルってお姉様が小さくなったみたいね。瓜二つだし」
レーテ「?」
レミィ「そうね。レイチェルはきっと、私に似て強く美しい吸血鬼になってくれるわ♪」
フラン「お姉様に?何言ってるの?強くなったらそれはエスカルゴ譲りでしょ?お姉様ったら私やエスカルゴより弱いもん」
レミィ「そそそんな事ないし!」
フラン「ここ数年エスカルゴに勝ったことある?あっ、夢のお姉様じゃなくてね?」
レミィ「……無いかも」
フラン「お姉様より私の方が強いしね〜!」
レミィ「それは分からないわよ?」
図書館にブワッと溢れる2人の妖気。まずい、と感じた俺は、咄嗟にフランとレミリアの頭に手を置く。今まで撫でられ続けていたレイチェルは、「撫でるのやめちゃうの?」と言わんばかりに、寂しげな瞳で俺を見上げる。
カルゴ「まぁまぁ落ち着けって2人共。どちらにせよ、もうちょっとレイチェルが大きくなったら少しずつ教えていこう。もしも本人が嫌がったらやらせなくていい。こういうのは気が向いたらでいいのさ。誰かに強要されても、やる気が無きゃ全く身につかねぇから。あと、どっちが強いとかそういうのはどっちでもいい。どっちも強いよ。それじゃダメなのか?」
レミィ「姉としてのプライドがぁ…」
フラン「プリン取られて泣いてるのに、プライドなんてあったのね。知らなかったわ〜」
レミィ「何年前の話をしてるのよっ!」
フラン「割と最近の話だけど。そっかー、お姉様ったらエッチに夢中で忘れてるんだぁ〜♪」
口元に手を当てて、煽るように笑うフラン。なぜこうも姉を煽るのか、未だによくわからない。
レミィ「それはフラン、あなたもでしょ!?」
フラン「そうだよ」
カルゴ「そうだよ(便乗)」
レミィ「あっさり…」
とその時、図書館の扉が開き、メイド2人が中に入ってきた。どうやら準備が整ったらしい。
送ったはずの分身は、
咲夜「お嬢様、お披露目会の準備が整いました。また、もうじき皆様が到着される頃かと」
レミィ「そうね。さ、そろそろ上に行きましょ。レイチェル、初めてのパーティ楽しんでね」
レーテ「はーいっ!」
弦月姫(可愛い…)
先日、レイチェルの姉である弦月姫から、とある悩みを打ち明けられた。それは、妹のレイチェルに対して、姉として接するべきか、それとも主の娘として接するべきか、という悩みだ。
咲夜さんは当然、後者を選ぶ。だが俺は前者だ。
意見が分かれたのでレミリアに訊ねた所、彼女は俺と同じく、前者を選択した。よって弦月姫は、姉としてレイチェルに関わっている。
レミィ「レイチェルは私とこっちに来てね。後でみんなと合流よ」
レーテ「う?おとーしゃまは?」
レミィ「お客様たちのお迎えに行くのよ。すぐに来るから大丈夫よ。安心なさい」
レーテ「ん…」
サプライズでレイチェルを登場させるつもりだ。だからパーティが始まるまで2人は別室待機だ。
因みにレイチェルは既にファザコンの毛がある。少し、俺が甘やかしすぎたのかもしれない。
玄関まで来た俺とフランは、メイド2人と一緒にお客を出迎えていた。客が来る度に、咲夜さんか弦月姫が客をパーティ会場に案内する。
カルゴ「おぉ、みんな来たな。ん?霊夢にしては時間より早く来るなんて珍しいな」
霊愛「なんか久しぶりだね」
霊麗「久しぶり〜」
霊夢「ご馳走だからね。早く来て食べなきゃまた幽々子に全部食べられるわ」
妖夢「今日は紫様の所行くって言ってたけど…。紫様もここに来るのかな?」
茜「お母さんは後から来るって言ってたよ」
と、上半身だけニュッと出した茜が答える。妖夢は見るからに顔を引き攣らせ、苦笑いする。
妖夢「そ、そうなんだ…」
妖舞「押忍!父上!」
早苗「お久しぶりです!今日がお披r痛ァッ!?」
ネタばらししようとする早苗に、軽くデコピンをする。諏訪子様も神奈子様もそこら辺はちゃんと分かっているというのに、本当にKYだ。
諏訪子「あはは〜…。ね、また今度、久しぶりにヤッちゃお〜ね♪」
神奈子「そればっかりだな諏訪子は…。なんだかすまんな、エスカルゴよ…」
樹里愛「やっほ〜パパ〜」
文「どもども!なんだかお久しぶりですね!今日その理由が明かされるんですね!まぁなんとなく察していますけどね!」
穹「こんばんは父上。しばらく来なかった理由、私はイマイチ分からないのですが…」
霊夢、妖夢、早苗が「なぜしばらくの間こちらに泊まらなかったのか」を訊ねてこないのは、多分みんな理由を察しているからだと思われる。
ずっと前からの約束だが、子供が生まれる直前の1ヶ月は、その母親と過ごすことに決めている。各場所に泊まっていないのは半月だが、それでもほぼ全員が察していることだろう。
当然、時間があれば会いに行っているので、俺のこの忙しい生活はあまり変わっていないのだが。
鈴仙「来たよ♪」
巫月「エスカルゴ〜!!ムギューッ!!」
鈴仙は可愛らしく微笑み、対する巫月は勢いよく俺に抱きつく。ピョコピョコ跳ねる娘が館の中に入った頃、彼方から魔理沙が飛んできた。門前でフワリと着地した彼女は、眠りこける美鈴を一瞥して笑い、足音も軽やかに玄関に来た。
魔理沙「わざわざ招待してくれてありがとうな!流れ星もだが、満月の鑑賞も悪くないな!」
にしし、と笑った魔理沙も館の中に入れる。客は紫さん以外全員が揃った。もうパーティを始めて構わないだろう。
カルゴ「…よし、とりあえずテラスで開会して、それからレミリアたちを呼びに行こう」
フラン「私は魔理沙と喋ってるわね」
カルゴ「おうよ」
満月鑑賞会と銘打ったので、パーティ会場は庭に通じているテラスである。客より一足遅れて場に到着した俺は、血のジュースが入っているグラスを高々と持ち上げ、乾杯の音頭をとる。
カルゴ「美しい満月に、乾杯!」
一同「カンパーーーイ!!」
魔理沙「おぉーい。乾杯はいいけど、ここの主のレミリアが居ないぜ?」
カルゴ「あぁ、そうだね。今呼んでくるよ」
その言葉を待ってた、と言わんばかりにニヤけた俺は、血のジュースを一気に飲み干して、2人の居る別室へスキップで向かった。
みんなの反応が、ものすごく楽しみである。