??「……あそこを出てから、およそ60年…か。月日が流れるのは、遅いようで早いものだな…。久しぶりに帰ってみるか…孫の顔を見に…」
妖夢「妖舞!パーティはもう少しだから、まずはそれに向けて修行よ!気を抜かないで、剣に集中しなさい!」
妖舞「はいっ!」
10月下旬のある日。妖夢たちは、今日も今日とて剣の修行を行っていた。時に厳しく、時に甘く…たまに血が飛ぶこともあったが、互いにその様な瑣末な事は気にしないほど、剣に没頭していた。
2人が仕える主人である幽々子は、そんな2人の様子を、縁側から微笑ましそうに眺めていた。
妖夢「さぁ、私に斬り込んで来なさい!あなたの剣如き、軽く見切れるんだからね!」
妖舞「…っだらァァっ!!」
妖夢「踏み込みが甘いッ!!そんなんじゃ、ただ走っているのと同義────」
幽々子「っ!」
─────が、そんな平和を破るように、1つの大きな気配が、冥界に入り込んだ。その気配は、ゆっくりと…しかし、確かに真っ直ぐ白玉楼へと向かってきている。
その気配に気付いたのは…妖夢と幽々子だけだ。気配の察知ばかりは、やはり経験の差であろう。
妖夢「───妖舞。少し1人で修行してなさい。侵入者が来た……」
妖舞「侵入者!?殺る殺る!俺が殺る!殺りたい殺りたい!俺が殺りたい!」
妖夢「ダメよ。この強さ…尋常じゃない。あなたなんて一太刀で
妖舞「ちぇっ…わかった」
妖夢(まさかとは思うけど…この気配って……?私がまだ幼かった頃に感じた、あの気配…)
幽々子(妖夢も気付いたようね。それにしても、どうしてこのタイミングで…?)
こうして話している内にも、その気配の持ち主は白玉楼の裏手辺りに到達した。ダダ漏れの気配を隠そうともしていない。まるで、「来なさい」と呼び出されているかのようだ。
そして、急いで妖夢も裏手へまわり、その侵入者と正面から対面する。
??「…久しぶりじゃな、妖夢。しばらく見ない間に、随分と大きくなったな」
妖夢「おじ……師匠…!?」
──突然の侵入者。それは、妖夢がまだ幼かった時分に突如として
頓悟とは、長期の修行を経ないで、一気に悟りを開くことである。
昔の西行妖の満開を直接目撃していることから、彼の年齢は1000歳を越えていると言われている。正確な年齢は、妖夢も…妖忌本人さえ知らない。
妖忌「剣の鍛錬はしっかり続けているか?」
妖夢「はい!」
妖忌「うむ」
しっかり答える妖夢に、妖忌は目を細めて頷く。
彼の纏う近寄り難い雰囲気や、その見た目通り、かなり厳正な性格だ。…が、孫娘である妖夢には笑顔を見せる。無論、剣の修行中は厳しい。
幽々子「おかえりなさい、妖忌。突然居なくなるから、結構心配したのよ?」
妖夢「幽々子様…」
妖忌「これはこれは、幽々子様御自ら…。御足労をおかけしまして、申し訳ございませぬ…」
畏まり、幽々子に対して深々と頭を下げる。
髪型は、妖夢と同じ銀髪をオールバックにして、頭の後ろに結んでいる髪型だ。髭は、顎にも鼻の下にも立派な髭を蓄えている。
幽々子「自分のお屋敷の周辺を歩くのに、足労も蝋燭も無いわ。自分の従者を迎えにこない主人がどこにいるのかしら?」
妖忌「…ありがとうございます、幽々子様…突然姿を消した私のことを、まだ従者と呼んで下さるのですな……」
幽々子「ふふっ、もちろん。…このまま白玉楼に来なさい、妖忌。貴方に会わせたい子が居るの」
妖忌「子……?」
妖夢(ゲッ…まずい…。師匠に会わせたら…!)
幽々子はそんな妖夢の気持ちを知ってか知らずか相変わらず飄々としている。妖忌は「はて?」と首を傾げ、妖夢は縮こまり、幽々子はニコニコとしながら、白玉楼に戻る。
そこではまだ、妖夢の息子である妖舞が、木剣で素振りをしていた。
妖忌「!?あの、少年は…?そ、そばに、半霊がついておりますが………」
幽々子「うふふっ♪…妖夢、妖舞くんを呼んで」
妖夢「はい。…妖舞、一旦休憩よ!持ったままでいいからちょっと来なさい!」
妖舞「はーい!(ん…?知らない爺さんがいる…。あれ?半霊まで…。てことは半人半霊なのか?)」
木剣を手に持ったまま、妖舞は主と母、そして、見慣れぬ老人の元へと急ぐ。父親からは「挨拶はしっかりな」と教わっていた妖舞は、曽祖父とは知らず、その老人にしっかり挨拶をする。
妖舞「こんにちは!」
妖忌「っ…こんにちは…」
唐突な妖舞の挨拶に、妖忌は一瞬たじろいだが、すぐに居住まいを正し、挨拶を返した。
幽々子「この子よ、妖忌。会わせたかった子は」
妖舞「?」
何の話か知らない妖舞は首を傾げる。そばにある半霊までも、人間体にならって首を傾げている。
妖忌「ゆ、幽々子様…この子は、まさか…?」
幽々子「そばに半霊が浮いているでしょう?」
妖忌「はい…」
妖夢「私の子なの」
妖忌「ッ!?…よ、妖夢の…子供…だと?ち、父親は一体どこに…それに、この子供の翼は…?」
妖夢「この子のお父さんは吸血鬼で、今は多分、博麗神社に居る。でも多分そろそろ来ると思う」
カルゴ「へぁっくしゅ!…風邪か…?馬鹿は風邪引かないんじゃなかったのか…?」
店員「ははっ、大丈夫かい兄ちゃん!」
カルゴ「多分大丈夫だよ。あ、お団子全部頂戴!全種類で全部な!」
店員「はいよっ!相変わらず食べてくれるねぇ!俺ァ嬉しいよ!」
カルゴ「へへっ、すんげぇ美味いからな!(9割は幽々子さんが食っちまうんだけどね…)」
妖忌「なにっ?父親がそばに居ないだと?子供をお前に押し付けて遊び呆けているだと!?」
妖夢「ん…んー…そうは言ってないし、それとは少し違うような…。あのね、この子のお父さんは物凄くモテるから、複数の家庭があって…」
妖忌「複数の!?」
妖夢「そ、それで、私もその人の妻の一人で…」
妖忌「まだ幼いお前に子を産ませて、挙句の果てには娶るだと!?」
妖夢(あーあ、面倒なスイッチ入っちゃったよ…こうなると中々収まらないんだよなぁ…。ごめんエスカルゴ…多分今日は来ない方がいい…。でも連絡手段が無いから無理かー…ほんとごめん…)
妖忌「一体何人女を囲っているのだそいつは!」
妖夢「んーとね…私の知る限りでは私含めて15人くらいだったような気がする…」
嘘をついては後が面倒臭いと思った妖夢は、自分が知る限りの情報で本当の事を祖父に伝えるが、やはり、祖父の顔は険しくなるばかりだった。
妖忌「………?こ、子供は…?」
妖夢「9人だよ。この子は7番目で、長男なの」
妖忌「9人だとッ!??!おのれ、どれだけ遊び呆けているのだそいつは!!!」
妖夢「遊んでるんじゃないよ!私たちを悲しませたくないからそうなってるだけ!」
妖忌「あちこちフラフラとしていて、家族なのにそばにおらず、子供をほっぽり出す!そんな奴と結ばれたところで真の幸せは掴めん!!」
妖夢「そんな事ないっ!私はこのままがいいの!元々は私から言い寄ったようなものなんだから!あいつは悪くない!」
妖忌「黙れッ!!」
妖夢「っ…!」
妖忌「儂は、お前をその様な者に育てたつもりは無い!何故そのような不埒な男に惚れた!!」
妖夢「そんなの私だって知らない!でもあいつが好きなの!この世で…ううん、世界中で誰よりも優しくて強くてカッコイイあいつが!」
妖忌「目を覚ませ妖夢!お前はその男に騙されているのだ!その男が来たら斬り殺してくれる!」
妖夢「待ってよ!何でそうなるの!?」
妖忌「そやつを殺せばお前の曇りきったその目もすぐに覚めようぞ!」
妖夢「私達を別れさせて、妖舞をどうする気!?子供はどうなるのよ!」
妖忌「子供に罪は無い。妖舞は儂が立派な剣士に育て上げよう。…が、その男は断じて許さん!」
妖夢「っ…私の旦那くらい、私に選ばせてよ…!私はもう子供じゃない!」
妖忌「フン、何とでも言え。その男さえ殺せば、全て解決する。……が、即座に殺すのは面白味に欠ける。少しは猶予をやろうではないか」
妖夢「だから、それじゃ─────」
その時…いつも通り白玉楼の庭に正円のスキマが開き…話題に上がっていたその人が現れた。
カルゴ「おっす、妖…ん?」
妖忌「………」
カルゴ「…?」
なんか知らない人に睨まれてる…なんだこの人?初めましてなのに酷いな?そんなに酷いんなら、こっちもそれなりの態度で対応するかんな?
……いや、待て。緑を基調とした服…デカい白玉みたいな
カルゴ「…妖夢、この方は?」
妖夢「えっとね…私のお爺ちゃんの…」
妖忌「魂魄妖忌と申す者だ」
うん、何となく察してた。めっちゃ怖ぇぇ…。
カルゴ「お爺様でしたか…俺はエs」
妖忌「貴様、儂の妖夢の何だ?妖夢からは旦那と聞いておるが」
ひとの話を遮るんじゃないよ…!てか、「儂の」ってこの人……さては、妖夢にデレデレだな!?
カルゴ「夫婦関係にあります」
妖忌「うぬ、貴様ァ…!たたっ斬ってくれるわ!剣を構えろ!儂と勝負しろ!!!」
カルゴ「え」
唐突すぎないか!?
妖忌「儂が勝利した暁には妖夢と別れ、大人しく身を引け!妖舞は儂が立派な剣士に育てようぞ!貴様の手は借りん!」
妖夢「そんな!エスカルゴは私より剣の腕は下…お爺ちゃんとだなんて勝ち目が…!」
妖忌「その程度の腕で儂の孫と…!益々許せんぞ糞餓鬼…!!」
糞餓鬼?そう言われちゃ黙ってはいられないな。
目を覚まさせてやらなくちゃな、この俺が。
カルゴ「残念ながら妖夢はもう俺のものだ」
妖忌「貴様ァァァッ!!」
妖夢(なんで煽るの!?)
カルゴ「…悪いが、俺は剣術家じゃないのでな。剣以外も使わせてもらうぞ」
買ってきた団子をスキマに仕舞いながら、睨む。
そして、剣を抜いた妖忌にも怯まず、少し距離をとる。…怖がっていない素振りを見せているが、実は俺の足は少しばかり震えている。
怖いものは怖い。
妖忌「構わぬ!!その全てを打ち砕き、儂の孫を取り戻してくれるわッ!!」
カルゴ「そうと決まれば────」
妖忌「待てッ!!」
カルゴ「?」
剣を抜こうとすると、妖忌が待てと声を上げる。「剣以外も使わせてもらう」と言ったのだが…。まさか訂正だろうか。
妖忌「名も知らぬ者と本気の剣を交えるつもりは無い!まずは名を名乗れ!」
さっき名乗ろうとしたんですがそれは…。
カルゴ「…我が名はエスカルゴ・スカーレット!魂魄妖夢の夫にして、この美しき幻想郷に住まう数多の女性を囲い、己の血脈を広げ続ける楽園の王なり!」
妖夢(なんでそこで煽るのよ!?お爺ちゃんは、そういったふしだらな事は絶対に許さない人…!エスカルゴなら一目見てわかるでしょ!?)
妖忌「楽園の王…?フン、面白い!その素っ首、跳ね飛ばしてくれるわッ!!」
カルゴ「言うぜ…!」
今度こそ剣を抜き、構える。俺は最初から二振りの剣をその手に持っている。そう、妖魔雷霊剣と暗黒斬月剣の二振りだ。どちらとも俺の気持ちに呼応し、普段よりも禍々しい気配を帯びている。
妖忌の方は、腰に差していた二振りの剣のうち、片方だけを取り出し、構える。隙のない構えだ。
妖忌(構えが素人のそれだ…。甘い…甘すぎる。この勝負…一太刀で終わる)
カルゴ「行くぜ、妖夢の爺ちゃん!」
妖忌「口を閉じろ餓鬼ィ!!」
To be continued......
妖夢→妖忌
通常時:お爺ちゃん
修行時:師匠
妖忌→妖夢
通常時:妖夢
修行時:妖夢